土地売却の流れと注意点は?
相続や住み替えで土地を売却する際、「どんな手続きが必要なのか」「高く売るにはどうすればいいのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、国土交通省や国税庁の公式情報をもとに、土地売却の流れ、高く売るためのポイント、税金、相続土地を売却する際の注意点を解説します。
初めて土地を売却する方でも、必要な手続きと注意点を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 土地売却は①相場調査、②複数社査定、③媒介契約、④売却活動、⑤売買契約、⑥決済・引渡しの6ステップで進む
- 高く売るコツは境界確定・測量(費用60-100万円、期間数カ月)を事前に実施し、複数社査定で適正価格を把握すること
- 譲渡所得税(長期20.315%、短期39.63%)の計算と確定申告が必須
- 相続土地の場合は相続登記の義務化(2024年4月〜)に注意し、取得費加算の特例も検討すべき
土地売却の基本的な流れ(6ステップ)
土地売却は、以下の6ステップで進みます。各ステップの所要期間と注意点を把握しましょう。
①相場調査と価格の目安
国土交通省の不動産情報ライブラリで、過去の不動産取引価格(約547万件)を参照し、相場を調査します。
- 所在地・地目・面積を入力して検索
- 近隣の取引事例を確認
- 公示地価・基準地価も参考にする
相場を把握することで、不動産会社の査定額が適正かどうかを判断できます。
②不動産会社選定・複数社査定
HOME4Uによると、複数社(3-5社)に査定を依頼することで、適正価格を把握できます。
- 査定額だけでなく、根拠が明確な会社を選ぶ
- 土地売却の実績が豊富な会社を選ぶ
- 担当者の対応が丁寧かどうかを確認
査定額が高いだけでなく、「なぜその価格なのか」を明確に説明できる会社を選びましょう。
③媒介契約の種類と選び方
ieulによると、媒介契約には3種類あります。
| 媒介契約の種類 | 複数社依頼 | 自己発見取引 | レインズ登録 | 報告義務 | 
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 可能 | 可能 | 任意 | なし | 
| 専任媒介 | 不可(1社のみ) | 可能 | 義務(7日以内) | 2週間に1回以上 | 
| 専属専任媒介 | 不可(1社のみ) | 不可 | 義務(5日以内) | 1週間に1回以上 | 
(出典: ieul)
どれを選ぶべきか:
- 複数社に依頼して競争させたい → 一般媒介
- 1社に集中して手厚いサポートを受けたい → 専任媒介
- 自己発見取引も禁止して完全に任せたい → 専属専任媒介
一般媒介は競争原理が働きますが、積極的に営業されにくい傾向があります。専任媒介は手厚いサポートが期待できますが、囲い込み(他社に物件情報を出さない)リスクがあります。
④売却活動(広告・内覧)
不動産会社が広告を出し、購入希望者を募ります。
- ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)への掲載
- レインズ(不動産会社間の情報共有システム)への登録
- チラシ・新聞広告
土地の場合、建物と異なり内覧はありませんが、現地確認を求められることがあります。草刈りや清掃をしておくと印象が良くなります。
⑤売買契約の締結
購入希望者が見つかったら、売買契約を締結します。
- 手付金: 売買価格の10%程度を受領
- 重要事項説明: 不動産会社(宅地建物取引士)が買主に説明
- 契約書の作成: 売買契約書に署名・押印
契約時には、引渡し日、残金の支払い方法、瑕疵担保責任の有無などを明確にします。
⑥決済・引渡しの手続き
残金を受領し、所有権移転登記を行います。
- 残金の受領: 売買価格 - 手付金
- 所有権移転登記: 司法書士が法務局で手続き(買主が登記費用を負担することが多い)
- 境界確認: 測量図・境界確認書を買主に引き渡す
決済が完了すると、土地の所有権が買主に移転し、売却が完了します。
高く売るためのポイント
土地を高く売るためには、以下の3つのポイントを押さえましょう。
境界確定・測量の重要性
HOME4Uによると、境界未確定のまま売却すると、引渡し後に隣地所有者との境界トラブルが発生するリスクがあります。
確定測量の費用と期間:
- 費用: 60-100万円(隣地の数や地形により変動)
- 期間: 数カ月(隣地所有者全員の立会いが必要)
買主側が融資を受ける場合、金融機関が測量を要求するケースも多いため、事前に確定測量を実施すべきです。
複数社査定のメリット
HOME4Uによると、複数社(3-5社)に査定を依頼することで、適正価格を把握できます。
- 査定額の高い会社だけでなく、根拠が明確な会社を選ぶ
- 査定額にバラつきがある場合、なぜ差があるのかを確認
- 複数社の査定を比較することで、相場観が身につく
1社だけの査定では、価格が適正かどうか判断できません。必ず複数社に依頼しましょう。
売却タイミングの考え方
売却タイミングは、市況だけでなく、税制優遇も考慮して判断します。
- 市況: 不動産価格が上昇傾向にある場合、高く売れる可能性がある
- 税制優遇: 相続から3年以内の特例(後述)など、期限がある優遇措置を活用
急いで売る必要がない場合は、市況を見ながらタイミングを計ることも選択肢の一つです。
土地売却にかかる税金
土地を売却して利益が出た場合、譲渡所得税がかかります。国税庁の情報をもとに、税金の計算方法を解説します。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税は、以下の計算式で算出されます。
譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
- 取得費: 土地を取得した際の購入代金と取得にかかった費用の合計
- 譲渡費用: 仲介手数料、測量費、印紙税など、売却にかかった費用
譲渡所得に対して、所有期間に応じた税率が適用されます。
| 所有期間 | 税率(所得税+住民税) | 
|---|---|
| 長期譲渡(5年超) | 20.315% | 
| 短期譲渡(5年以下) | 39.63% | 
(出典: 国税庁)
所有期間が5年を超えると、税率が約半分になります。売却タイミングを検討する際は、所有期間も考慮しましょう。
取得費が不明な場合
取得費が不明な場合(契約書・領収書が残っていない場合)、売却代金の5%を概算取得費として使用可能です(国税庁の規定)。
ただし、実際の取得費が5%を超える場合は税負担が重くなるため、契約書・通帳・領収書等を探して証明できるか確認すべきです。
3000万円特別控除と軽減税率
マイホーム(土地+建物)を売却した場合、譲渡所得から最大3000万円を控除できる特例があります。
ただし、土地のみの売却では適用されないケースが多いため、注意が必要です。建物を取り壊してから土地を売却する場合、取り壊しから1年以内であれば適用される場合があります。詳細は税理士に相談しましょう。
確定申告の必要性
土地を売却した翌年の2月16日〜3月15日に、確定申告が必須です。譲渡所得税の計算は複雑なため、税理士に相談することをおすすめします。
相続土地を売却する際の注意点
相続した土地を売却する場合、以下の2つの注意点があります。
相続登記の義務化(2024年4月〜)
ieulによると、2024年4月から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記を経ずに売却はできないため、まず相続登記を完了させる必要があります。相続登記の手続きは司法書士に依頼するのが一般的です(費用4-10万円程度)。
取得費加算の特例
相続税を納めた場合、相続から3年10ヶ月以内の売却で取得費加算の特例を適用可能です。
この特例により、相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税を軽減できます。相続税申告前に売却すると計算が複雑になるため、税理士に相談してから進めるべきです。
まとめ:土地売却は計画的に進めよう
土地売却は①相場調査、②複数社査定、③媒介契約、④売却活動、⑤売買契約、⑥決済・引渡しの6ステップで進みます。
高く売るコツは境界確定・測量(60-100万円、数カ月)を事前に実施し、複数社査定で適正価格を把握することです。譲渡所得税(長期20.315%、短期39.63%)の計算と確定申告も必須です。
相続土地の場合は相続登記の義務化(2024年4月〜)に注意し、取得費加算の特例も検討しましょう。
土地売却について不明点がある場合は、不動産会社や税理士に相談しながら、計画的に準備を進めることをおすすめします。
