買ってはいけない土地とは?購入前に知るべき4つのリスク
初めての土地購入を検討する際、「どんな土地を避けるべきか」が分からず不安に感じる方は少なくありません。購入後に「家が建てられない」「災害リスクが高い」「権利トラブルに巻き込まれた」といった問題が発覚すると、取り返しがつきません。
本記事では、国土交通省の公式情報を元に、法的・物理的・環境的・権利関係の4つのリスクを持つ土地の特徴と、購入前に確認すべきポイントを解説します。
この記事のポイント
- 法的リスク:接道義務を満たさない(再建築不可)、市街化調整区域(建築制限あり)、セットバック要(敷地面積が減る)
- 物理的リスク:浸水リスク(ハザードマップで確認)、地盤が弱い(軟弱地盤)、がけ地・急傾斜地、土壌汚染
- 環境的リスク:騒音・振動(幹線道路・鉄道沿い)、日照・通風不良、悪臭(工場・廃棄物処理施設近く)
- 権利関係のリスク:境界が未確定、抵当権・差押え登記がある
- 購入前に重要事項説明書・登記簿謄本・ハザードマップ・現地調査で必ず確認
法的リスクのある土地|建築制限で家が建てられない
接道義務を満たさない土地(再建築不可)
建築基準法第43条により、建築物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接している必要があります。これを「接道義務」と言います。
接道義務を満たさない土地は、現在の建物を解体すると新たな建築ができない「再建築不可物件」となります。
再建築不可物件のリスク:
- 住宅ローンが組みにくい(金融機関が担保価値を低く評価)
- 資産価値が大幅に低い
- 将来の建て替えができない
購入前に法務局で公図・地積測量図を確認し、接道状況を必ず確認しましょう。
市街化調整区域の土地(建築制限あり)
都市計画法により、「市街化調整区域」は「市街化を抑制すべき区域」と定められており、原則として住宅や店舗の建築が制限されます。
建築可能なケース:
- 農業従事者の住宅
- 既存宅地(一定の要件を満たす場合)
- 開発許可を受けた区域
ただし、都道府県知事の許可が必要で、許可基準は自治体により異なり、手続きが複雑です。購入前に必ず自治体の都市計画課に確認しましょう。
セットバックが必要な土地(敷地面積が減る)
道路幅員が4m未満の場合、建築基準法により**道路中心から2m後退(セットバック)**する必要があります。
セットバックにより、実質的な敷地面積が減少し、建築できる建物の大きさが制限されます。セットバック部分は私有地ですが、道路として提供する必要があり、建物を建てることはできません。
物理的リスクのある土地|災害・地盤・汚染のリスク
ハザードマップで浸水リスクを確認
国土交通省のハザードマップポータルサイトで、洪水・土砂災害・津波のリスクを確認できます。
ハザードマップで確認すべき事項:
- 洪水浸水想定区域(河川の氾濫リスク)
- 土砂災害警戒区域(がけ崩れ・土石流のリスク)
- 津波浸水想定区域(海岸近くの土地)
浸水想定区域でも、リスクの程度と価格次第では選択肢になる場合もあります。ただし、浸水頻度が高い地域や土砂災害警戒区域は避けるべきです。
火災保険・地震保険の加入可否、保険料も確認しましょう。
地盤が弱い土地(軟弱地盤)
地盤が弱い土地は、建物の沈下・傾斜のリスクがあります。地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良工事(費用50-100万円程度)が必要です。
軟弱地盤のサイン:
- 過去に水田・池・沼だった土地
- 埋立地
- 谷底・低地
自治体の地盤情報データベースや、地盤サポートマップ等のサービスで事前に確認できます。
がけ地・急傾斜地
がけ地・急傾斜地は、建築基準法の「がけ条例」により建築制限がかかる場合があります。
がけ条例の基準(自治体により異なる):
- がけの高さが2m以上
- 勾配が30度以上
- がけの下端から一定距離内(がけ高さの2倍程度)
がけ地の場合、擁壁の設置(費用数百万円~)が必要になることもあります。
土壌汚染のリスク
過去に工場・ガソリンスタンド・クリーニング店があった土地は、土壌汚染のリスクがあります。
土壌汚染対策法により、一定規模以上の土地取引や特定施設の廃止時に、指定調査機関による土壌汚染状況調査が義務化されます。
調査方法は以下の通りです。
- 地歴調査(過去の土地利用状況を確認)
- 概況調査(表層土壌のサンプリング)
- 詳細調査(汚染が疑われる場合)
土壌汚染が判明した場合、浄化費用(数百万円~数千万円)がかかることもあります。
環境的リスクのある土地|騒音・日照・悪臭の問題
騒音・振動の多い土地(幹線道路・鉄道沿い)
幹線道路・鉄道沿い・工場近くの土地は、騒音・振動の問題があります。
騒音のレベル:
- 住宅地の環境基準:昼間55dB以下、夜間45dB以下
- 幹線道路沿い:70-80dB(会話が困難なレベル)
騒音レベルは時間帯で大きく異なるため、現地調査(平日・休日、朝・昼・夕の時間帯別)で確認することが重要です。
日照・通風が悪い土地
建物に囲まれた土地、北向きの土地は、日照・通風が悪くなります。
日照不足の影響:
- 室内が暗く、照明費用がかさむ
- 湿気が多く、カビが発生しやすい
- 洗濯物が乾きにくい
現地調査で、日照時間(特に冬至の時期)を確認しましょう。
悪臭のある土地(工場・廃棄物処理施設近く)
廃棄物処理施設・下水処理場・工場近くの土地は、悪臭の問題があります。
悪臭は風向きにより変わるため、現地調査で複数回訪問し、風向き別に確認することをおすすめします。
権利関係のリスク|登記簿・境界で後からトラブル
境界が未確定の土地
境界が未確定の土地は、隣地とのトラブルの原因になります。
境界確定の重要性:
- 境界未確定のまま売却すると、買主とのトラブルに
- 隣地所有者との境界トラブル(訴訟リスク)
- 建築時に境界が確定していないと、建築確認が下りない場合がある
確定測量図(境界標の位置を示した測量図)の有無を確認し、未確定なら売主に測量を依頼しましょう。測量費用は50-100万円程度です。
抵当権・差押え登記がある土地
登記簿謄本に抵当権・差押え登記がある土地は、所有権移転に問題が生じる可能性があります。
抵当権のリスク:
- 売主が住宅ローンを完済していない場合、抵当権が残る
- 抵当権が抹消されないまま売却されると、買主が競売リスクを負う
差押え登記のリスク:
- 税金滞納等で差押えられた土地は、所有権移転ができない場合がある
購入前に法務局で登記簿謄本を取得し、抵当権・差押え登記の有無を必ず確認しましょう。
購入前に必ず確認すべき4つのチェックポイント
重要事項説明書で法的制限を確認
不動産会社は、宅地建物取引業法により、契約前に「重要事項説明書」で法的制限を説明する義務があります。
重要事項説明書で確認すべき事項:
- 接道義務を満たしているか
- 市街化調整区域かどうか
- セットバックが必要か
- がけ条例の制限はあるか
- 災害リスク(ハザードマップの説明)
不明点は必ず質問し、理解できるまで説明を求めましょう。
登記簿謄本で権利関係を確認
法務局で登記簿謄本を取得し、以下を確認します。
- 所有者(売主が真の所有者か)
- 抵当権・差押え登記の有無
- 地積(面積が登記簿と実測で一致するか)
登記簿謄本は誰でも取得可能で、手数料は600円(窓口)、490円(オンライン)です。
ハザードマップで災害リスクを確認
国土交通省のハザードマップポータルサイトで、洪水・土砂災害・津波のリスクを確認します。
自治体の公式サイトでも、より詳細なハザードマップが公開されている場合があります。
現地調査で環境を確認
現地調査は、**最低3回(平日・休日、朝・昼・夕の時間帯を変えて)**訪問しましょう。
現地調査で確認すべき事項:
- 騒音・振動(時間帯で大きく異なる)
- 日照(特に冬至の時期)
- 近隣住民の様子(夜間の騒音トラブルのリスク)
- 雨天時の水はけ
- 夜間の街灯・治安
可能なら季節を変えて(夏・冬)訪問すると、より正確にリスクを把握できます。
まとめ|土地購入は慎重に、リスクと価格のバランスを見極めよう
買ってはいけない土地の特徴を、法的・物理的・環境的・権利関係の4つのリスクに分けて解説しました。
重要なポイント:
- 法的リスク(接道義務・市街化調整区域)は購入前に必ず確認
- 物理的リスク(ハザードマップ・地盤・土壌汚染)は調査で把握
- 環境的リスク(騒音・日照・悪臭)は現地調査で確認
- 権利関係のリスク(境界・抵当権)は登記簿謄本で確認
問題のある土地でも、リスクを理解し、価格が安ければ選択肢になる場合もあります。重要なのは、事前のリスク把握と対策の検討です。
次のアクションとして、信頼できる不動産会社や専門家(弁護士・不動産鑑定士・土地家屋調査士)に相談し、詳細な調査を依頼することをおすすめします。
土地購入は人生で最も高額な買い物の一つです。慎重に検討し、後悔のない選択をしましょう。
