土地売買で気をつけることを完全網羅:トラブル防止の重要ポイント

公開日: 2025/11/11

土地売買で気をつけることとは:トラブル防止の3つのフェーズ

土地の売買を検討する際、「トラブルを避けるために何を確認すればいいのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地売買の全プロセス(購入前調査、契約時、決済時)で気をつけるべきポイントを、国土交通省法務省国民生活センターの公式情報を元に解説します。

初めて土地を売買する方でも、重要な確認事項を漏れなく把握し、安全な取引ができるようになります。

この記事のポイント

  • 土地売買は購入前調査、契約時、決済時の3つのフェーズで確認すべき事項が多岐にわたる
  • 購入前は登記・境界・用途地域・接道状況・インフラ・地盤・土壌汚染・ハザードマップを徹底確認
  • 契約時は重要事項説明を事前に受け取り、内容を十分に検討する時間を確保することが重要
  • 境界未確定の土地は購入後に隣地所有者との紛争リスクがあるため、購入前に境界確定測量を推奨
  • 専門的な調査は土地家屋調査士・司法書士に依頼し、不明点は不動産業者・弁護士に相談する

購入前の調査項目:土地の権利関係と物理的状況を徹底確認

土地購入前の調査は、トラブル防止の最も重要なフェーズです。

登記簿謄本の確認と境界の確定(筆界確定の重要性)

登記簿謄本の確認: 法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を取得し、以下の項目を確認します。

  • 所有者: 売主が真の所有者か確認
  • 抵当権・地役権: 担保設定や他の権利が設定されていないか確認
  • 面積: 登記簿上の面積と実測面積が一致するか確認

境界の確定: 法務省の筆界特定制度によると、筆界(ひっかい)は不動産登記法上の土地の境界線であり、所有者の合意では変更できません。

境界未確定の土地は、購入後に隣地所有者との紛争リスクがあります。購入前に土地家屋調査士による境界確定測量(費用30-80万円)を実施し、隣地所有者との合意書面を取得することを強く推奨します。

用途地域・建築制限・接道状況の確認(建築基準法第43条)

用途地域の確認: 都市計画法に基づき、土地は13種類の用途地域(住居系・商業系・工業系等)に分類されます。用途地域により建築できる建物の種類・規模が制限されるため、自治体の都市計画課で確認が必要です。

接道状況の確認: 建築基準法第43条により、都市計画区域内で建物を建てる場合、幅員4m以上の道路に2m以上接している必要があります(接道義務)。

接道義務を満たさない土地は、再建築不可となるため、建築確認申請前に必ず確認してください。

インフラ整備・地盤・土壌汚染・ハザードマップの確認

インフラ整備状況:

  • 上下水道・ガス・電気が整備されているか確認
  • 未整備の場合、引き込み費用(数十万~数百万円)が必要

地盤調査: スウェーデン式サウンディング試験等で地盤の強度を確認します。軟弱地盤の場合、地盤改良費用(50-200万円)が必要です。

土壌汚染調査: 工場跡地・ガソリンスタンド跡地等では、有害物質(鉛・砒素・トリクロロエチレン等)が含まれるリスクがあります。過去の土地利用履歴を確認し、必要に応じて土壌汚染調査(費用50-200万円)を実施してください。

ハザードマップの確認: 洪水・土砂災害・地震のハザードマップを確認し、災害リスクを把握します。自治体のウェブサイトや国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で閲覧可能です。

契約時に確認すべきポイント:重要事項説明と契約書の精読

契約時は、法的義務と契約条件を正確に理解することが重要です。

重要事項説明の内容確認(宅地建物取引業法第35条)

国土交通省の資料によると、宅地建物取引業法第35条に基づき、宅地建物取引士が契約前に重要事項説明を行う義務があります。

重要事項説明の主な内容:

  • 用途地域・建築制限(建ぺい率・容積率)
  • インフラ整備状況(上下水道・ガス・電気)
  • 法令制限(都市計画法・建築基準法・農地法等)
  • 契約条件(手付金・契約不適合責任の範囲・期間)

重要事項説明は契約当日に受けることも法的には可能ですが、内容を十分に検討できず、不利な条件を見落とすリスクが高くなります。契約の数日前に重要事項説明書を受け取り、不明点を質問する時間を確保することを強く推奨します

契約書の精読と契約不適合責任の範囲(2020年4月民法改正)

契約書の精読: 売買契約書を必ず精読し、以下の項目を確認してください。

  • 売買代金・支払方法・支払時期
  • 土地の面積(実測面積か登記簿面積か)
  • 引渡し時期・条件
  • 契約不適合責任の範囲・期間

契約不適合責任: 2020年4月の民法改正で、瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更されました。

契約内容と異なる不具合(例:土壌汚染、地下埋設物、境界相違等)が発覚した場合、買主は売主に対して以下を請求できます。

  • 追完請求(補修・代替物の引渡し等)
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約解除

契約書で「契約不適合責任を免除」とする条項がある場合、購入後に不具合が発覚しても売主に責任を問えないため、慎重に検討してください。

手付金の金額と返金ルール(解約手付と違約手付の違い)

手付金: 売買代金の5-20%が一般的です。

解約手付: 契約後、一定期間内であれば以下の条件で解約可能です。

  • 買主: 手付金を放棄して解約
  • 売主: 手付金の倍額を返還して解約

違約手付: 契約違反(例:買主が残代金を支払わない、売主が土地を引き渡さない)があった場合、手付金がペナルティとして没収されます。

手付金の返金ルールを契約書で必ず確認してください。

決済時の注意点:所有権移転登記と実測精算

決済時は、権利移転と金銭授受を確実に行います。

所有権移転登記と残代金支払いの同時履行

民法第533条により、所有権移転登記と残代金支払いは同時履行が原則です。

決済の流れ:

  1. 司法書士が登記手続きに必要な書類を確認
  2. 買主が残代金を売主に支払う
  3. 司法書士が法務局で所有権移転登記を申請
  4. 登記完了後、登記識別情報(権利証)を買主が受領

登記手続きは専門的なため、司法書士に依頼することを推奨します(費用5-15万円)。

実測精算と境界標の現地確認

実測精算: 登記簿上の面積と実測面積が異なる場合、差額を精算します(公簿取引の場合は精算なし)。

実測精算の有無は契約書で事前に確認してください。

境界標の現地確認: 決済時に現地で境界標(コンクリート杭・金属プレート等)が設置されているか確認し、隣地所有者との境界合意書面を保管します。

よくあるトラブル事例と防止策:実際の事例から学ぶ

国民生活センターに寄せられた土地売買トラブルから、代表的な事例を紹介します。

境界トラブル(境界未確定・越境物)

事例: 境界未確定の土地を購入後、隣地所有者から「境界が違う」と主張され、建築工事が中断。

防止策: 購入前に土地家屋調査士による境界確定測量(費用30-80万円)を実施し、隣地所有者との合意書面を取得。越境物(塀・樹木の枝等)がある場合、売主に是正を求めるか、覚書を取得。

接道義務違反(再建築不可)

事例: 幅員4m未満の道路にしか接していない土地を購入後、建築確認申請が下りず、再建築不可と判明。

防止策: 建築基準法第43条の接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接道)を満たすか、購入前に自治体の建築指導課に確認。

地下埋設物・土壌汚染の発覚

事例: 工場跡地を購入後、地下から産業廃棄物が発見され、撤去費用(数百万円)が発生。

防止策: 購入前に過去の土地利用履歴を確認し、工場・ガソリンスタンド等があった場合は土壌汚染調査(費用50-200万円)を実施。契約書で契約不適合責任の範囲・期間を明確化。

まとめ:土地売買は購入前調査と専門家への相談が不可欠

土地売買では、購入前調査(登記・境界・用途地域・接道・インフラ・地盤・土壌汚染・ハザードマップ)、契約時の確認(重要事項説明・契約書・手付金・契約不適合責任)、決済時の確認(所有権移転登記・実測精算・境界標)の3つのフェーズで漏れなくチェックすることが重要です。

調査を怠ると、境界紛争、再建築不可、地下埋設物・土壌汚染等の重大なトラブルに発展するリスクが高くなります。

専門的な調査は土地家屋調査士・司法書士・不動産鑑定士に依頼し、不明点は不動産業者・弁護士に相談することを強く推奨します。信頼できる専門家のサポートを受けながら、安全な土地取引を実現しましょう。

よくある質問

Q1土地売買で必ず不動産会社を通す必要がありますか?

A1法律上、個人間で直接売買することも可能(民法上の売買契約)です。ただし、重要事項説明義務・契約書面交付義務等の宅建業法上の保護が受けられず、トラブル時のリスクが高くなります。境界確定、登記手続き、契約書作成等の専門知識が必要なため、不動産会社または司法書士・土地家屋調査士への相談を推奨します。

Q2境界が確定していない土地は買わない方がいいですか?

A2境界未確定の土地は購入後に隣地所有者との紛争リスクがあり、建築時にトラブルが発生しやすくなります。購入前に売主負担で境界確定測量(費用30-80万円)を実施してもらうことを推奨します。売主が応じない場合、買主自身が費用負担して確定測量を行うか、購入を見送る選択肢も検討すべきです。

Q3重要事項説明は契約当日に受けても大丈夫ですか?

A3宅建業法では契約前の説明義務はありますが、事前交付の義務はありません。しかし、契約当日では内容を十分に検討できず、不利な条件を見落とすリスクが高くなります。契約の数日前に重要事項説明書を受け取り、不明点を質問する時間を確保することを強く推奨します。急かされても即決せず、納得できるまで契約を保留してください。

Q4土壌汚染調査は必ず必要ですか?

A4法律上、工場跡地等では土壌汚染対策法により調査が義務付けられる場合があります。それ以外の土地でも、過去に工場・ガソリンスタンド・クリーニング店等があった場合、有害物質(鉛・砒素・トリクロロエチレン等)が含まれるリスクがあります。購入前に土地利用履歴を確認し、リスクがあれば土壌汚染調査(費用50-200万円)を実施することを推奨します。