土地所在図とは何か
土地の売買や相続、融資を控えた際、「土地所在図」という書類の提出を求められることがあります。しかし、「土地所在図とは何か」「公図とどう違うのか」「どこで取得できるのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、土地所在図の定義と用途、類似書類(公図、地積測量図)との違い、取得方法を、法務局や法務省の公式情報を元に解説します。
土地所在図の見方や必要な場面を理解し、スムーズに取得できるようになります。
この記事のポイント
- 土地所在図は1筆の土地の所在(位置・形状・隣地地番)を表示する図面で、多くは地積測量図と一体化している
- 公図は明治時代の課税台帳が元で精度が限定的、土地所在図は測量に基づく正確な図面という違いがある
- 取得方法は法務局窓口(450円)、オンライン申請(郵送450円・窓口受取430円)、登記情報提供サービス(361円)の3種類
- 登記情報提供サービスで取得した図面には公印がなく、証明書としての効力がないため注意が必要
- 土地所在図は分筆登記等の際に作成されるため、古い土地や未分筆の土地には存在しないことがある
土地所在図とは
土地所在図は、不動産登記規則第76条に基づき、1筆の土地の所在を表示する図面です。
記載内容:
- 方位(北の方角)
- 土地の形状(境界線)
- 隣地の地番
- 縮尺(1/250、1/500等)
(参考: 法務省 不動産登記規則第73条第1項の規定により法務大臣が定める土地所在図等の作成方式)
土地所在図は、多くの場合、地積測量図と同一用紙に記載されます。実務上は「地積測量図」として一体化しているため、単独で「土地所在図」という名称で提供されることは少ないです。
土地所在図が必要な場面
土地所在図は、以下のような場面で必要となります(法務局の案内による)。
- 土地の売買: 売買契約時に、土地の正確な位置・形状を確認するため
- 融資・担保設定: 金融機関が担保物件の位置・形状を確認するため
- 境界確定: 隣地との境界を確認するため
- 相続手続き: 相続財産の土地の所在を確認するため
- 分筆・合筆登記: 土地を分割・統合する際の添付書類として
土地所在図は、土地の正確な位置・形状を示す公的な図面として、不動産取引や登記手続きで広く利用されています。
類似書類との違い
土地所在図と混同されやすい書類に、公図と地積測量図があります。それぞれの違いを明確に理解することが重要です。
公図との違い
公図は、地図に準ずる図面として法務局に備え付けられる図面です。
| 項目 | 土地所在図 | 公図 |
|---|---|---|
| 作成時期 | 分筆登記等の際に測量して作成 | 明治時代の課税台帳が元 |
| 精度 | 高い(測量に基づく) | 限定的(大まかな位置関係のみ) |
| 用途 | 正確な位置・形状の確認 | 土地の大まかな位置関係の把握 |
| 法務局での単独取得 | 少ない(地積測量図と一体化) | 多い |
(参考: 法務局 土地・建物の地図・図面など)
公図は明治時代の課税台帳が元であり、測量に基づいていないため、精度は限定的です。ただし、土地の大まかな位置関係を把握するには有用であり、多くの不動産取引で参考資料として使用されます。
地積測量図との関係
地積測量図は、1筆の土地の測量結果を表示する図面です。
| 項目 | 土地所在図 | 地積測量図 |
|---|---|---|
| 記載内容 | 土地の所在(位置・形状・隣地地番) | 土地の測量結果(面積・境界点の座標) |
| 作成目的 | 土地の所在を明示 | 土地の面積・境界を明示 |
| 実務上の扱い | 地積測量図と同一用紙に記載されることが多い | 土地所在図と一体化 |
(参考: 株式会社ゾノ事務所 法務局にある「地図」「公図」「地積測量図」の違い)
実務上、土地所在図と地積測量図は同一用紙に記載されることが多く、一体として扱われます。分筆登記や地積更正登記の際に作成されるため、古い土地や未分筆の土地には存在しないことがあります。
土地所在図の取得方法
土地所在図は、法務局窓口またはオンライン申請で取得できます。
法務局窓口での取得
手順:
- 管轄の法務局または法務局証明サービスセンターに行く
- 「地図・図面証明書交付申請書」を記入
- 地番を指定(住所ではなく地番が必要)
- 法務局によると、2025年時点の手数料は450円です(収入印紙または現金)
- 証明書付きの図面を受け取る
(参考: 法務局 登記事項証明書(土地・建物)、地図・図面証明書を取得したい方)
メリット:
- 即日取得可能
- 窓口で相談しながら取得できる
- 公印付きの証明書として使用可能
デメリット:
- 平日のみ営業(土日祝休み)
- 法務局に行く手間がかかる
オンライン申請
登記・供託オンライン申請システムで、オンライン請求が可能です。
手順:
- 登記・供託オンライン申請システムにアクセス
- 利用者登録(初回のみ)
- 「登記事項証明書・地図等証明書交付請求」を選択
- 地番を指定して請求
- 手数料を電子納付
- 郵送(450円)または窓口受取(430円)を選択
手数料:
- 郵送: 450円
- 窓口受取: 430円(法務局で受け取る場合)
メリット:
- 24時間365日いつでも請求可能
- 郵送なら自宅で受け取れる
- 窓口受取なら手数料が20円安い
- 公印付きの証明書として使用可能
デメリット:
- 利用者登録が必要
- 到着まで数日かかる
登記情報提供サービス
登記情報提供サービスで、オンラインで図面をPDF形式で取得できます。
手数料: 361円(証明書なし)
メリット:
- 最安値
- 即座にPDFで取得可能
- クレジットカード決済
デメリット:
- 公印がなく、証明書としての効力がない
- 融資・売買等で証明書が必要な場合は使えない
(参考: 株式会社ローリス 登記情報提供サービスを使って公図を取得する方法)
重要: 登記情報提供サービスで取得した図面は、証明書としての効力がないため、融資・売買等で公的な証明書が必要な場合は使用できません。内容確認や参考資料としてのみ使用できます。
土地所在図の見方
土地所在図には、以下の情報が記載されています。
記載が必要な内容
不動産登記規則第76条によると、土地所在図には以下の項目が必須です。
必須項目:
- 方位: 北の方角を矢印で表示
- 土地の形状: 境界線で囲まれた土地の形状
- 隣地の地番: 隣接する土地の地番を記載
- 縮尺: 1/250、1/500、1/1000等
- 作成年月日: 測量を実施した日付
(参考: 法務省 不動産登記規則第73条第1項の規定)
地積測量図と兼用する場合
実務上、土地所在図と地積測量図は同一用紙に記載されることが多いです。
地積測量図に追加される項目:
- 面積: 土地の面積(㎡)
- 境界点の座標: 各境界点のX・Y座標
- 測量方法: 測量の基準(世界測地系等)
- 土地家屋調査士の署名・押印: 測量を実施した土地家屋調査士の情報
(参考: 株式会社ENGA 地積測量図と公図の疑問を土地家屋調査士が回答)
地積測量図と一体化している場合、土地の所在だけでなく面積・境界点の座標も確認できるため、より詳細な情報を得られます。
土地所在図に関する注意事項
土地所在図を取得・利用する際には、以下の点に注意が必要です。
土地所在図がない土地もある
土地所在図は、分筆登記等の際に作成されるため、古い土地や未分筆の土地には存在しないことがあります。
対処法:
- 公図や14条地図で代替する
- 新たに測量して土地所在図を作成する(土地家屋調査士に依頼)
証明書と情報の違い
土地所在図には「証明書」と「情報」の2種類があります。
| 種類 | 取得方法 | 公印 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 証明書 | 法務局窓口、オンライン申請 | あり | 融資・売買等の公的な証明 |
| 情報 | 登記情報提供サービス | なし | 内容確認・参考資料のみ |
融資・売買等で証明書が必要な場合は、必ず法務局窓口またはオンライン申請で公印付きの証明書を取得してください。
有効期限はない
土地所在図自体に有効期限はありません。ただし、分筆・合筆等で土地の形状が変わった場合は、古い図面は現状を反映しないため、最新の図面を取得する必要があります。
証明書の取得日は記載されるため、融資・売買等では「3ヶ月以内の証明書」等の条件が求められることがあります。
まとめ
土地所在図は、1筆の土地の所在(位置・形状・隣地地番)を表示する図面であり、多くは地積測量図と一体化しています。公図は明治時代の課税台帳が元で精度が限定的ですが、土地所在図は測量に基づく正確な図面という違いがあります。
取得方法は法務局窓口(450円)、オンライン申請(郵送450円・窓口受取430円)、登記情報提供サービス(361円)の3種類です。登記情報提供サービスは最安値ですが、公印がなく証明書としての効力がないため、融資・売買等で証明書が必要な場合は使用できません。
土地所在図は分筆登記等の際に作成されるため、古い土地や未分筆の土地には存在しないことがあります。その場合は公図や14条地図で代替するか、新たに測量して作成する必要があります。
次のアクションとして、まず自分の土地の地番を確認し、法務局またはオンライン申請で土地所在図を取得してください。土地の売買や相続を控えている場合は、早めに証明書付きの図面を取得しておくことをおすすめします。
