土地購入の流れと注意点とは
注文住宅の建築や投資目的で土地購入を検討する際、「何から始めればいいのか」「どんな調査が必要なのか」と不安に感じる方は少なくありません。土地購入は建物と異なり、目に見えない制約(用途地域・建築制限・地盤等)が多く、購入後に「希望の建物が建てられない」トラブルも発生します。
この記事では、土地購入の全体的な流れ、失敗しない土地選びのポイント、現地調査・役所調査で確認すべき事項、契約時の注意点、諸費用の内訳を、国土交通省・各自治体の公式情報を元に解説します。
初めて土地を購入する方でも、必要な知識を身につけ、安心して契約できるようになります。
この記事のポイント
- 土地購入の流れは、希望条件整理→土地探し→現地調査→役所調査→資金計画→契約→決済の順で進む
- 失敗しない土地選びには、接道義務・用途地域・地盤・インフラの4点を必ず確認する必要がある
- 現地調査では境界・地盤・インフラ・周辺環境を、役所調査では用途地域・建築制限・都市計画・ハザードマップをチェックする
- 契約時には重要事項説明・売買契約書・瑕疵担保責任・住宅ローン特約を必ず確認する
- 諸費用は土地代金の7-10%程度(仲介手数料・登記費用・不動産取得税・測量費等)が目安
土地購入の流れを時系列で理解する
土地購入は、希望条件の整理から決済・引渡しまで、複数のステップを踏んで進めます。各ステップで必要な準備と注意点を理解することが重要です。
希望条件の整理と予算設定
まず、土地購入の目的(注文住宅建築・投資・駐車場等)と希望条件を整理します。立地(駅からの距離・学区・商業施設へのアクセス)、広さ(建築予定の建物に必要な面積)、予算(土地代金+諸費用)を明確にします。
予算設定では、土地代金だけでなく、諸費用(7-10%程度)と建築費用も考慮する必要があります。総予算を設定し、土地にいくらまで充てられるかを計算しましょう。
土地探しの方法(不動産会社・自治体の空き地バンク等)
土地探しには以下の方法があります。
- 不動産会社: 不動産ポータルサイト(SUUMO・HOME'S等)や地域の不動産会社に相談。複数社に依頼すると選択肢が広がる。
- 自治体の空き地バンク: 移住促進のため、格安の土地情報を提供している自治体もある。購入費用の補助制度がある場合もあり、チェック推奨。
- 建築会社: 注文住宅を建てる場合、建築会社が土地探しをサポートしてくれることもある。
2025年時点の地価動向は、全国平均で4年連続上昇していますが、都心部と地方で二極化が進んでいます。HOME4Uでは、地価動向の詳細を確認できます。
資金計画と住宅ローン事前審査
土地購入には多額の資金が必要です。自己資金で賄えない場合は、住宅ローンの利用を検討します。住宅ローンは、土地のみの購入より、土地+建物のセット購入の方が金利が低い場合が多いです。
住宅ローン事前審査では、年収・勤続年数・他の借入状況等を金融機関が審査します。事前審査に通過すると、購入申込や契約がスムーズに進みます。
購入申込から重要事項説明まで
希望の土地が見つかったら、不動産会社に購入申込書を提出します。申込書には、希望購入価格・手付金額・引渡し希望日等を記載します。
売主が申込を承諾したら、宅地建物取引士による重要事項説明を受けます。重要事項説明では、土地の権利関係・法規制(用途地域・建築制限)・インフラ状況・取引条件等を書面で説明されます。不明点は必ず質問し、納得した上で契約に進みましょう。
売買契約と手付金の支払い
重要事項説明を受けた後、売買契約を締結します。売買契約書には、売買価格・手付金(通常10%程度)・引渡し日・瑕疵担保責任(契約不適合責任)・特約条項(住宅ローン特約等)が記載されています。
手付金は、契約時に売主に支払う金銭で、契約の証として機能します。買主が契約を解除する場合は手付金を放棄、売主が解除する場合は手付金の倍額を返還する必要があります。
住宅ローン本審査から決済・引渡しまで
売買契約後、住宅ローンの本審査を申し込みます。本審査では、事前審査より詳細な書類(源泉徴収票・課税証明書・売買契約書等)を提出します。
本審査に通過したら、決済日に残金を支払い、土地の引渡しを受けます。同時に所有権移転登記を行い、土地の所有者が売主から買主に変更されます。登記手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。
失敗しない土地選びの4つのポイント
土地選びで必ず確認すべき4つのポイントを解説します。これらを怠ると、購入後に「希望の建物が建てられない」「追加費用が高額になった」等のトラブルが発生する可能性があります。
接道義務の確認(建築基準法第43条)
建築基準法第43条により、建物の敷地は幅員4m以上の道路に間口2m以上で接する必要があります(接道義務)。災害時の避難経路・緊急車両の接近経路を確保するための規定です。
接道義務を満たさない土地は再建築不可となり、新築・建替えができません。既存建物の修繕は可能ですが、資産価値が低く、住宅ローンも組みにくいです。
例外として、但し書き道路(建築基準法第43条2項)の許可を得られる場合もありますが、購入前に自治体の建築指導課に相談が必須です。裾野市の公式サイトでは、接道義務の詳細を確認できます。
用途地域と建築制限の調査
都市計画法に基づき、建築物の用途・規模を制限する地域区分が「用途地域」です。用途地域は以下の13種類に分類されます。
| 用途地域 | 建築制限 |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅専用、店舗・事務所は原則不可 |
| 第二種低層住居専用地域 | 低層住宅専用、小規模店舗は可 |
| 第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅専用、中規模店舗は可 |
| 第二種中高層住居専用地域 | 中高層住宅専用、中規模店舗・事務所は可 |
| 第一種住居地域 | 住宅と店舗・事務所の混在 |
| 第二種住居地域 | 住宅と店舗・事務所・遊戯施設の混在 |
| 準住居地域 | 道路沿いの商業施設と住宅の混在 |
| 田園住居地域 | 農地と低層住宅の調和 |
| 近隣商業地域 | 近隣住民向けの商業施設 |
| 商業地域 | 商業施設中心、高層ビル可 |
| 準工業地域 | 軽工業と住宅の混在 |
| 工業地域 | 工場専用、住宅も可 |
| 工業専用地域 | 工場専用、住宅不可 |
用途地域ごとに建蔽率(敷地面積に対する建築面積の割合)・容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)・高度制限が設定されています。購入前に自治体の都市計画課で確認しましょう。
国土交通省の公式サイトでは、用途地域の詳細を確認できます。
地盤の強度とインフラ状況の確認
地盤が軟弱な土地は、建物を建てる前に地盤改良工事(杭打ち・表層改良等)が必要です。費用は50-150万円程度かかり、予算に大きく影響します。
購入前に地盤マップ(自治体や地盤調査会社が提供)で、対象地の地盤状況を確認することを推奨します。また、過去の液状化履歴やハザードマップも併せて確認しましょう。
インフラ(上下水道・ガス・電気)の引込状況も重要です。敷地前面に上下水道管が通っていない場合、引込工事に数十万円〜百万円以上かかる場合があります。
土地の形状と日当たり・周辺環境
土地の形状(正方形・長方形・不整形)は、建築効率に影響します。不整形地(旗竿地・三角地・傾斜地)は、正方形地より価格が安い傾向にありますが、建築制限が厳しく、希望の建物が建てられない場合もあります。
日当たり・眺望・騒音・嫌悪施設(工場・墓地・高圧線等)の有無も現地で確認しましょう。平日と休日、朝・昼・夕で周辺環境が変わる場合もあるため、複数回の訪問を推奨します。
現地調査と役所調査で確認すべき事項
土地購入前に必ず実施すべき2つの調査を詳しく解説します。
現地調査のチェックリスト(境界・地盤・インフラ・周辺環境)
現地調査では、以下の項目を確認します。
- 境界標の有無: 隣地との境界を示す杭やプレートが設置されているか。境界が不明確な場合は境界確定測量(50-100万円、3-6ヶ月)が必要。
- 測量図の確認: 測量図がある場合でも、現地と一致しない可能性があるため、境界標を現地で確認。
- 地盤の状態: 水はけ・地盤マップ・過去の液状化履歴を確認。
- インフラの引込状況: 上下水道・ガス・電気が敷地前面まで来ているか、引込工事の費用を確認。
- 周辺環境: 日当たり・騒音・嫌悪施設の有無を複数回訪問して確認。
SUUMOでは、現地調査のチェックリストを詳しく解説しています。
役所調査のチェックリスト(用途地域・建築制限・都市計画・ハザードマップ)
役所調査では、自治体の都市計画課・建築指導課で以下の項目を確認します。
- 用途地域: 建築物の用途・規模の制限
- 建蔽率・容積率: 建築可能な建物の規模
- 高度地区: 建物の高さ制限
- 都市計画道路: 将来的に道路が拡張される予定があるか(拡張予定地は建築制限あり)
- ハザードマップ: 洪水・土砂災害・地震等のリスク
調査を怠ると、購入後に「希望の建物が建てられない」「将来的に立退きが必要になる」等のトラブルが発生する可能性があります。
土地購入の契約時に注意すべきポイント
土地購入の契約時には、法的事項を必ず確認しましょう。
重要事項説明の確認事項
重要事項説明は、宅地建物取引士が契約前に行う説明義務(宅地建物取引業法第35条)です。以下の項目が説明されます。
- 土地の権利関係(所有権・抵当権・地役権等)
- 法規制(用途地域・建築制限・都市計画)
- インフラ状況(上下水道・ガス・電気の引込状況)
- 取引条件(手付金・引渡し日・契約解除の条件)
説明を受けずに契約すると、後でトラブルになる可能性があります。不明点は必ず質問しましょう。
売買契約書の記載内容と手付金
売買契約書には、以下の項目が記載されています。
- 売買価格
- 手付金(通常10%程度)
- 引渡し日
- 瑕疵担保責任(契約不適合責任)
- 特約条項(住宅ローン特約等)
手付金は、契約の証として売主に支払う金銭です。買主が契約を解除する場合は手付金を放棄、売主が解除する場合は手付金の倍額を返還する必要があります。
瑕疵担保責任と契約不適合責任
民法改正(2020年4月)により、瑕疵担保責任が契約不適合責任に変更されました。契約不適合責任とは、引渡された土地が契約内容と異なる場合、売主が責任を負う制度です。
土地の場合、地中埋設物(コンクリートガラ・産業廃棄物等)や土壌汚染が発見された場合、売主に除去費用を請求できます。契約書に「現状有姿」「瑕疵担保責任免責」と記載されている場合は、売主が責任を負わない可能性があるため注意が必要です。
特約条項の確認(住宅ローン特約等)
住宅ローン特約とは、住宅ローンの本審査が通らなかった場合、契約を無条件で解除できる特約です。この特約がない場合、ローンが通らなくても手付金を放棄して契約を解除する必要があります。
住宅ローンを利用する場合は、必ず住宅ローン特約を契約書に記載してもらいましょう。
三井住友トラスト不動産では、土地取引に関わる法律を詳しく解説しています。
土地購入にかかる諸費用の内訳
土地購入時には、土地代金以外に諸費用が必要です。諸費用は土地代金の7-10%程度が目安です。
仲介手数料と登記費用
| 項目 | 内容 | 目安額(3,000万円の土地の場合) |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 取引額×3%+6万円+消費税(400万円超の場合) | 105.6万円 |
| 登記費用(登録免許税) | 固定資産税評価額×1.5%(土地) | 30-45万円 |
| 登記費用(司法書士報酬) | 所有権移転登記の手数料 | 5-10万円 |
仲介手数料は不動産会社に支払う成功報酬です。契約不成立なら支払不要ですが、測量費等の実費は別途請求される場合があります。
不動産取得税と印紙税
| 項目 | 内容 | 目安額(3,000万円の土地の場合) |
|---|---|---|
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額×3%(2027年3月31日まで) | 30-60万円 |
| 印紙税 | 契約書の記載金額により変動 | 1-3万円 |
不動産取得税は、土地を取得した際に都道府県に支払う税金です。宅地の場合、固定資産税評価額が1/2に軽減されます(2027年3月31日まで)。
測量費とその他の費用
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 境界確定測量費 | 隣地所有者の立会いのもと境界を確定 | 50-100万円(3-6ヶ月) |
| 現況測量費 | 現況の測量のみ(境界確定なし) | 10-30万円 |
| 地盤調査費 | 建物を建てる前の地盤強度調査 | 5-10万円 |
境界が不明確な場合は境界確定測量が必要です。測量図がある場合でも、現地と一致しない可能性があるため、購入前に境界標を現地で確認することを推奨します。
諸費用の詳細は、aukaで確認できます。
土地購入の流れと注意点まとめ
土地購入は、希望条件整理→土地探し→現地調査→役所調査→資金計画→契約→決済の順で進みます。失敗しない土地選びには、接道義務・用途地域・地盤・インフラの4点を必ず確認する必要があります。
現地調査では境界・地盤・インフラ・周辺環境を、役所調査では用途地域・建築制限・都市計画・ハザードマップをチェックしましょう。契約時には重要事項説明・売買契約書・瑕疵担保責任・住宅ローン特約を必ず確認し、不明点は質問することが重要です。
諸費用は土地代金の7-10%程度(仲介手数料・登記費用・不動産取得税・測量費等)が目安です。資金計画に諸費用を含め、複数の不動産会社に相談しながら、無理のない土地購入を進めましょう。
