土地が売れない理由と対策:価格設定から活用方法まで
「土地を売りに出しているのに、全く問い合わせがない」「値下げしても買い手がつかない」と悩んでいませんか。土地が売れない原因は、価格設定、立地・インフラ、建築制限、境界未確定、販売方法など複数の要因が考えられます。
原因を特定すれば、適切な対策を取ることができます。また、売却以外の選択肢(賃貸、国庫帰属、寄付、等価交換)も検討することで、解決の道が見えてきます。
この記事では、国土交通省や法務省の公式情報を元に、土地が売れない5つの主要原因と対策、売却以外の選択肢を解説します。
この記事のポイント
- 土地が売れない主要原因は価格設定、立地・インフラ、建築制限、境界未確定、販売方法の5つ
- 価格設定は周辺相場と比較し、段階的に値下げする戦略が有効
- 建築制限(接道義務違反、市街化調整区域)がある土地は売却が困難だが、隣地への売却や用途変更で解決できる場合がある
- 売却以外の選択肢として、賃貸、国庫帰属制度(2023年施行)、寄付、等価交換も検討できる
土地が売れない5つの主要原因
土地が売れない原因は、大きく分けて以下の5つです。それぞれの原因に応じた対策を取ることが重要です。
①価格設定が高すぎる
最も多い原因は、価格設定が周辺相場より高すぎることです。
価格設定が高すぎる理由:
- 土地の購入時の価格を基準にしている(現在の相場より高い)
- 思い入れがあり、高値で売りたいという希望が強い
- 不動産業者の査定を鵜呑みにして、相場を確認していない
対策:
- 周辺の売却事例を調査し、相場を確認する
- 複数の不動産業者に査定を依頼し、平均値を算出する
- 段階的に値下げする戦略(3ヶ月ごとに5-10%値下げ)を立てる
国土交通省「不動産取引価格情報検索」で、周辺の取引価格を調べることができます。
②立地・インフラが不便
駅から遠い、バス便がない、水道・電気が未整備等、立地・インフラが不便な土地は売却が困難です。
立地・インフラの問題:
- 駅から徒歩30分以上、バス便がない
- 上下水道が未整備で、引き込み工事が必要(費用100万円以上)
- 電気が引かれていない
- 周辺に商業施設・学校・病院がない
対策:
- インフラ整備費用を負担して売却する(上下水道引き込み工事を売主が負担)
- 隣地の所有者に売却する(隣地と一体で使えるため、価値が上がる)
- 価格を大幅に下げる(立地・インフラの不便さを価格で補う)
インフラ整備費用を負担すると、売却価格は下がりますが、売却の可能性は高まります。
③建築制限がある
建築基準法の接道義務違反、市街化調整区域、農地法の制限等、建築制限がある土地は売却が困難です。
建築制限の例:
- 接道義務違反: 幅員4m以上の道路に2m以上接していない土地(再建築不可)
- 市街化調整区域: 都市計画法で市街化を抑制すべき区域(原則として建築不可)
- 農地: 農地法により、農地の売買は農業委員会の許可が必要
対策:
- 建築可能性を調査する(市区町村の建築指導課で確認)
- 接道義務違反の場合、隣地を購入して接道義務を満たす
- 市街化調整区域の場合、用途変更(農地・資材置き場等)を検討
- 農地の場合、農業委員会の許可を取得する(転用許可も必要)
建築制限がある土地は、隣地の所有者に売却するのが最も現実的な選択肢です。隣地と一体で使えるため、隣地所有者にとって価値が上がります。
④境界が未確定
隣地との境界が未確定の土地は、買主が融資を受けにくく、売却が困難です。
境界未確定の問題:
- 隣地との境界標がない、境界が不明確
- 隣地所有者との境界紛争がある
- 買主が金融機関から融資を受ける際、境界確定を求められる
対策:
- 測量士に依頼して境界確定測量を行う(費用30-80万円程度)
- 隣地所有者と協議し、境界確認書を作成する
- 境界紛争がある場合、弁護士に相談して解決する
測量費用は売主が負担するのが一般的です。費用はかかりますが、境界確定により売却の可能性は大幅に高まります。
⑤販売方法が適切でない
媒介契約の種類、広告の方法、不動産業者の選定等、販売方法が適切でないと売却が困難です。
販売方法の問題:
- 一般媒介契約で複数社に依頼しているが、業者の販売意欲が低い
- 専任媒介契約で1社に依頼しているが、広告が不足している
- 不動産業者が土地の売却に不慣れ(住宅専門の業者等)
対策:
- 専任媒介契約に変更し、1社に集中して販売活動を依頼する
- 業者を変更する(土地売却に強い業者を選ぶ)
- 複数の不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)に掲載する
- 写真・動画を充実させる(ドローン撮影等)
専任媒介契約の方が、業者の販売意欲が高くなる傾向があります。ただし、3ヶ月経っても売れない場合は、業者を変更することも検討しましょう。
売却以外の選択肢①:土地を賃貸に出す
売却が困難な場合、土地を賃貸に出すという選択肢があります。売却せずに賃料収入を得ることができます。
借地権の種類(普通・定期)
土地を貸すには、「普通借地権」と「定期借地権」の2つの契約方法があります。
借地権の比較:
| 項目 | 普通借地権 | 定期借地権 |
|---|---|---|
| 契約期間 | 30年以上 | 50年以上(一般) |
| 更新 | あり | なし |
| 返還 | 極めて困難 | 確実に返還 |
| 賃料相場 | 土地価格の1-2% | 土地価格の2-3% |
普通借地権は、地主からの解約が極めて困難です。定期借地権なら、期間満了で確実に土地が返還されます。
賃料収入と固定資産税の関係
賃料収入で固定資産税をカバーできれば、土地を保有し続けることができます。
賃料収入の計算例(土地価格3,000万円の場合):
- 定期借地権の賃料相場: 土地価格の2-3% = 年間60-90万円(月5-7.5万円)
- 固定資産税・都市計画税: 年間15-20万円
- 手取り収入: 年間40-70万円
賃料収入で固定資産税をカバーし、余剰分を家計に充てることができます。
売却以外の選択肢②:国庫帰属制度を利用する
相続等で取得した土地を手放したい場合、2023年4月27日に施行された相続土地国庫帰属制度を利用できます。
相続土地国庫帰属制度とは(2023年施行)
相続土地国庫帰属制度は、相続等で取得した土地を一定の要件下で国に帰属させることができる制度です。
制度の概要:
- 対象: 相続または遺贈により取得した土地
- 申請先: 法務局(土地の所在地を管轄する法務局)
- 審査手数料: 1.4万円/筆
- 負担金: 20万円~(土地の面積・地目により異なる)
申請手続きと要件(法務局)
申請には以下の要件を満たす必要があります。
承認されない土地(例):
- 建物がある土地
- 担保権・使用収益権が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地(通路等)
- 土壌汚染がある土地
- 境界が明らかでない土地
- 崖がある土地(勾配30度以上、高さ5m以上)
要件を満たさない土地は承認されません。詳細は法務省の公式サイトで確認してください。
売却以外の選択肢③:寄付・等価交換・低価格売却
国庫帰属制度の要件を満たさない場合、他の選択肢も検討できます。
自治体・法人への寄付(受け入れ条件厳しい)
自治体や法人(社会福祉法人、NPO等)に寄付する方法があります。ただし、受け入れ条件は非常に厳しいです。
自治体への寄付:
- 公共事業用地(道路・公園等)として使える土地のみ受け入れ
- 原則として寄付は受け付けない自治体が多い
法人への寄付:
- 受取側に贈与税・不動産取得税・登録免許税が課される(数十万円~)
- 税負担があるため、引き受け手が見つかりにくい
寄付は現実的には非常に困難です。
等価交換・隣地への売却
等価交換や隣地への売却も選択肢の一つです。
等価交換:
- 自分の土地と相手の土地を交換する
- 立地の良い土地と交換できれば、売却しやすくなる
- 交換差金が発生する場合、譲渡所得税が課される
隣地への売却:
- 隣地所有者に売却する(隣地と一体で使えるため、価値が上がる)
- 相場より安くても、隣地所有者なら購入してくれる可能性が高い
隣地への売却は、建築制限がある土地や不整形地の場合に特に有効です。
買取業者への売却(相場の7-8割)
不動産を直接買い取る買取業者に売却する方法もあります。
買取業者のメリット・デメリット:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 早く現金化できる(1週間~1ヶ月)、仲介手数料不要 |
| デメリット | 買取価格は市場価格の7-8割程度になる |
買取業者は再販目的で購入するため、買取価格は市場価格より大幅に安くなります。ただし、早く現金化したい場合や、仲介で売れない場合は検討する価値があります。
よくある質問
土地を放棄することはできますか?
土地所有権の放棄は民法上認められていません(違法)。相続土地国庫帰属制度(2023年施行)を利用すれば、一定の要件下で国に帰属させることができますが、放棄とは異なります。
固定資産税を払い続けるのが辛いです。
固定資産税の負担を減らす方法として、以下があります。
- 土地を賃貸に出し、賃料収入で固定資産税をカバーする
- 相続土地国庫帰属制度を利用する(審査手数料・負担金が必要)
- 買取業者に売却する(相場の7-8割でも現金化)
固定資産税を滞納すると、延滞税が課され、最悪の場合は差し押さえられます。早めに対策を取ることをおすすめします。
土地が売れるまでどれくらいかかりますか?
立地・価格・建築制限等により異なりますが、一般的には3ヶ月~1年程度が目安です。
- 好立地・適正価格: 3ヶ月以内
- 普通の立地・やや高値: 6ヶ月~1年
- 不便な立地・建築制限あり: 1年以上
3ヶ月経っても問い合わせがない場合は、価格設定や販売方法を見直すことをおすすめします。
まとめ:原因を特定して適切な対策を
土地が売れない原因は、価格設定、立地・インフラ、建築制限、境界未確定、販売方法の5つに大別されます。原因を特定し、それぞれに応じた対策(価格見直し、インフラ整備、境界確定、業者変更等)を取ることが重要です。
売却が困難な場合、売却以外の選択肢(賃貸、国庫帰属制度、寄付、等価交換、隣地への売却、買取業者)も検討しましょう。特に相続土地国庫帰属制度(2023年施行)は、一定の要件下で国に土地を帰属させることができる新しい制度です。
「土地が売れない」と諦めずに、複数の選択肢を比較して、自分に合った解決方法を見つけることをおすすめします。不動産業者、弁護士、税理士等の専門家に相談することも有効です。
