不動産にかかる税金を完全網羅|取得・保有・売却の税負担を解説

公開日: 2025/10/27

不動産にかかる税金とは|取得・保有・売却で発生する税金の全体像

不動産の購入や売却を検討する際、「どんな税金がかかるのか」「合計でいくら必要なのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産にかかる税金を「取得時」「保有時」「売却時」の3段階に分けて整理し、それぞれの税率・計算方法・軽減措置を、国税庁総務省の公式情報を元に解説します。

不動産ライフサイクル全体の税負担をイメージでき、軽減措置を活用した節税対策も理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産にかかる税金は「取得時」「保有時」「売却時」の3段階に分類される
  • 取得時:不動産取得税・登録免許税・印紙税(一度だけ)
  • 保有時:固定資産税・都市計画税(毎年)
  • 売却時:譲渡所得税・住民税・印紙税(売却時に一度)
  • 各税金には軽減措置があり、要件を満たせば税負担を大幅に抑えられる

取得時にかかる税金|不動産取得税・登録免許税・印紙税

不動産を取得する際には、3つの税金が発生します。

不動産取得税:宅地評価額×1/2×3%

不動産取得税は、不動産を取得した際に都道府県が課す地方税です。

税率:

  • 土地・住宅:固定資産税評価額 × 3%(2027年3月31日まで)
  • 宅地:固定資産税評価額 × 1/2 × 3%(2027年3月31日まで)

軽減措置:

  • 新築住宅:固定資産税評価額から1,200万円控除(床面積50㎡以上240㎡以下)
  • 中古住宅:築年数により350-1,200万円控除(耐震基準適合住宅)

例えば、固定資産税評価額2,000万円の新築住宅用地(200㎡)の場合:

不動産取得税 = (2,000万円 × 1/2 - 1,200万円) × 3% = 0円(控除により非課税)

登録免許税:評価額の1.5-2.0%

登録免許税は、不動産の登記(所有権移転登記、抵当権設定登記等)の際に国に納める税金です。

登記の種類 税率(原則) 軽減税率(2027年3月31日まで)
所有権移転登記(売買・土地) 評価額の2.0% 1.5%
所有権移転登記(売買・建物) 評価額の2.0% 0.3%(住宅用家屋)
抵当権設定登記 債権金額の0.4% 0.1%(住宅用家屋)

(出典: 登録免許税の税額表(国税庁)を基に作成)

例えば、評価額3,000万円の土地・建物を購入し、2,500万円の住宅ローンを組む場合:

  • 所有権移転登記(土地): 1,500万円 × 1.5% = 22.5万円
  • 所有権移転登記(建物): 1,500万円 × 0.3% = 4.5万円
  • 抵当権設定登記: 2,500万円 × 0.1% = 2.5万円
  • 合計: 29.5万円

印紙税:契約書の記載金額により変動

印紙税は、不動産売買契約書や建築請負契約書に貼付する収入印紙の税金です。

契約金額 印紙税(原則) 軽減税率(2027年3月31日まで)
500万円超-1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超-5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超-1億円以下 60,000円 30,000円

(出典: 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(国税庁)を基に作成)

保有時にかかる税金|固定資産税・都市計画税

不動産を所有している間、毎年発生する税金があります。

固定資産税:評価額×1.4%(毎年納税)

固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に市区町村が課す地方税です。

税率: 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率、市区町村により異なる場合あり)

住宅用地の特例:

  • 小規模住宅用地(200㎡まで):評価額 × 1/6
  • 一般住宅用地(200㎡超):評価額 × 1/3

新築住宅の減額措置:

  • 一戸建て:3年間、税額1/2(認定長期優良住宅は5年間)
  • マンション:5年間、税額1/2(認定長期優良住宅は7年間)

例えば、固定資産税評価額2,000万円の土地(150㎡)・建物(1,000万円)を所有する場合:

  • 土地: 2,000万円 × 1/6 × 1.4% = 約4.7万円
  • 建物: 1,000万円 × 1.4% = 14万円(新築3年間は7万円)
  • 合計: 約18.7万円/年(新築3年間は約11.7万円/年)

都市計画税:評価額×最大0.3%

都市計画税は、市街化区域内の不動産所有者に市区町村が課す地方税です。

税率: 固定資産税評価額 × 最大0.3%(市区町村により異なる)

住宅用地の特例:

  • 小規模住宅用地(200㎡まで):評価額 × 1/3
  • 一般住宅用地(200㎡超):評価額 × 2/3

都市計画税は固定資産税と合わせて納税通知書が届き、年4回に分けて納付します。

売却時にかかる税金|譲渡所得税・住民税・印紙税

不動産を売却する際には、売却益に対して税金が課されます。

譲渡所得税・住民税:短期39.63%・長期20.315%

譲渡所得税・住民税は、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に課される税金です。

計算式: 譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)

税率:

所有期間 所得税 復興特別所得税 住民税 合計
短期譲渡(5年以下) 30% 0.63% 9% 39.63%
長期譲渡(5年超) 15% 0.315% 5% 20.315%

※所有期間は「譲渡した年の1月1日時点」で判定します。

3000万円控除:居住用財産の特例

居住用財産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。

適用要件:

  • 自分が住んでいた家を売却(投資用不動産は対象外)
  • 売却先が配偶者・直系血族でない
  • 前年・前々年にこの特例を受けていない

例えば、3,000万円で購入した自宅を5,000万円で売却(所有期間6年、譲渡費用180万円)した場合:

  • 譲渡所得: 5,000万円 - 3,000万円 - 180万円 = 1,820万円
  • 3,000万円控除適用: 1,820万円 - 3,000万円 = 0円(控除により非課税)

印紙税:売買契約書に貼付

売却時も、売買契約書に印紙税(取得時と同様)が必要です。

(出典: 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(国税庁)

相続・贈与による不動産取得時の税金|相続税・贈与税

売買以外の不動産取得原因として、相続・贈与があります。

相続税

相続税は、相続により財産を取得した際に課される国税です。

基礎控除: 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数

例えば、法定相続人3人の場合:

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

相続財産の評価額が4,800万円以下なら相続税はかかりません。

不動産の評価方法:

  • 土地:路線価または固定資産税評価額 × 倍率
  • 建物:固定資産税評価額

小規模宅地等の特例を活用すると、居住用宅地330㎡まで評価額を80%減額できます。

贈与税

贈与税は、贈与により財産を取得した際に課される国税です。

基礎控除: 年間110万円

年間110万円を超える贈与には、累進税率10-55%が適用されます。

まとめ|不動産税金の全体像を把握し、軽減措置を活用しよう

不動産にかかる税金は、取得・保有・売却の各段階で異なります。取得時は不動産取得税・登録免許税・印紙税、保有時は固定資産税・都市計画税、売却時は譲渡所得税・住民税・印紙税が発生します。

各税金には軽減措置があり、要件を満たすことで税負担を大幅に抑えられます。例えば、取得時の住宅用軽減措置、保有時の住宅用地特例(評価額×1/6)、売却時の3000万円控除などです。

適用要件を満たすか、事前に税理士や税務署に相談することをおすすめします。正確な税金計算と節税対策により、無理のない資金計画を立てましょう。

よくある質問

Q1不動産の税金はすべて一括で支払うのですか?

A1いいえ。取得時(不動産取得税、登録免許税、印紙税)は取得直後に支払いますが、保有時(固定資産税・都市計画税)は毎年4-6月頃に納税通知書が届き、年4回に分けて納付します。売却時(譲渡所得税・住民税)は翌年の確定申告(2月16日~3月15日)で納税します。それぞれタイミングが異なるため、資金計画を立てる際は注意が必要です。

Q2不動産を取得しても税金がかからないケースはありますか?

A2あります。相続で取得した場合、相続税の基礎控除額(3,000万円 + 600万円×法定相続人数)を超えなければ相続税はかかりません。また、贈与税も年間110万円以下の贈与なら非課税です。さらに、住宅用の軽減措置を活用すれば、不動産取得税が控除により0円になる場合もあります。

Q3固定資産税はいつから支払いが始まりますか?

A3固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されます。例えば2025年3月に購入した場合、2025年分は前所有者が支払い、2026年1月1日時点であなたが所有者なら2026年分から支払いが始まります。ただし、売買時は日割り精算が一般的で、引渡し日以降の固定資産税を買主が負担する形で売買代金に含められることが多いです。

Q4譲渡所得税の3000万円控除は誰でも使えますか?

A4いいえ。「居住用財産」として、自分が住んでいた家を売却する場合のみ適用されます。投資用不動産や別荘は対象外です。また、売却先が配偶者・直系血族でないこと、前年・前々年にこの特例を受けていないこと等の要件があります。居住期間が10年以上なら軽減税率(所得税10.21%、住民税4%)も併用可能です。

Q5不動産の税金を節税する方法はありますか?

A5各税金の軽減措置・特例を活用しましょう。①取得時:住宅用の軽減措置(不動産取得税、登録免許税)により税負担を大幅に抑えられます。②保有時:住宅用地の特例(固定資産税評価額×1/6)により、居住用不動産は固定資産税が軽減されます。③売却時:3000万円控除、軽減税率を活用できます。適用要件を満たすか税理士に相談することをおすすめします。