一軒家の固定資産税の相場はいくら?
一軒家の購入を検討する際、または既に所有している場合、「固定資産税がいくらかかるのか」「相場はどれくらいか」と不安に感じる方は少なくありません。固定資産税は毎年支払う税金であり、長期的な家計負担に直結するため、正確に把握しておくことが重要です。
この記事では、一軒家の固定資産税の相場と計算方法について、総務省や国土交通省の公式情報を元に解説します。土地部分と建物部分の計算方法、新築住宅の軽減措置、都市計画税との合計額まで、具体例を用いて分かりやすく説明します。
初めて一軒家を購入する方でも、必要な税額を正確に見積もれるようになります。
この記事のポイント
- 一軒家の固定資産税の相場は年10-20万円程度(評価額2000-4000万円の場合)だが、立地・築年数により大きく変動する
- 固定資産税は土地部分(住宅用地特例適用で評価額×1/6)と建物部分(評価額×1.4%、新築は3-5年間1/2軽減)を分けて計算
- 市街化区域内では都市計画税(評価額×0.3%以下)も加算され、合計1.7%の税率となる
- 新築住宅は3年間(長期優良住宅は5年間)税額の1/2が軽減される
- 評価額は3年ごとに評価替えがあり、税額が変動する可能性がある
固定資産税の基礎知識
固定資産税を正しく理解するために、まず基本的な仕組みを確認しましょう。
固定資産税とは(毎年1月1日時点の所有者に課される市町村税)
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・家屋・償却資産の所有者に課される市町村税です。総務省によると、標準税率は1.4%ですが、市町村により異なる税率を設定している場合があります。
一軒家の場合、土地と建物の両方が課税対象となります。納税義務者は1月1日時点の登記簿上の所有者であり、年の途中で売買した場合でも、1月1日時点の所有者が1年分を納税します(売買時に日割り精算するのが一般的)。
課税標準(評価額に特例措置を適用した金額)
固定資産税を計算する基礎となる金額を「課税標準」といいます。課税標準は、市区町村が決定する「固定資産評価額」に対して、住宅用地の特例等を適用した後の金額です。
固定資産評価額は、土地は地価公示価格の70%程度、建物は再建築価格の5割程度が目安とされています。例えば、時価3,000万円の土地なら評価額は約2,100万円、建築費2,500万円の建物なら評価額は約1,250万円程度となります(あくまで目安)。
標準税率(1.4%)
固定資産税の標準税率は1.4%です。つまり、課税標準額(評価額に特例を適用した金額)に1.4%を乗じた金額が税額となります。ただし、市町村により1.4%より高い税率を設定している場合もあるため、所在地の市町村のウェブサイトで確認することをおすすめします。
一軒家の固定資産税の計算方法
一軒家の固定資産税は、土地部分と建物部分を分けて計算します。それぞれに特例措置や軽減措置が適用されるため、計算方法を理解しておくことが重要です。
土地部分の計算(住宅用地の特例適用)
居住用の宅地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税評価額が大幅に軽減されます。国土交通省の資料によると、住宅用地の特例は以下の通りです。
| 区分 | 面積 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 | 
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 200m²以下 | 評価額×1/6 | 評価額×1/3 | 
| 一般住宅用地 | 200m²超 | 評価額×1/3 | 評価額×2/3 | 
(出典: 国土交通省)
例えば、土地評価額1,500万円、面積150m²(200m²以下)の場合、固定資産税の課税標準は1,500万円×1/6=250万円となります。これに標準税率1.4%を乗じると、土地の固定資産税は250万円×1.4%=3.5万円です。
重要: 特定空家に指定されると住宅用地の特例が適用されなくなり、税額が6倍に跳ね上がります。空き家にせず、定期的に管理・利用することが重要です。
建物部分の計算(新築軽減措置適用)
建物部分の固定資産税は、建物の固定資産評価額に標準税率1.4%を乗じて計算します。新築住宅の場合、一定期間税額の1/2が軽減される「新築住宅の軽減措置」が適用されます。
国土交通省によると、新築住宅の軽減措置は以下の通りです(2026年3月31日まで延長)。
| 住宅の種類 | 軽減期間 | 軽減内容 | 
|---|---|---|
| 一般住宅(一戸建て) | 3年間 | 税額の1/2軽減 | 
| 長期優良住宅(一戸建て) | 5年間 | 税額の1/2軽減 | 
| マンション(一般) | 5年間 | 税額の1/2軽減 | 
| マンション(長期優良) | 7年間 | 税額の1/2軽減 | 
(出典: 国土交通省)
例えば、建物評価額1,200万円の新築一般住宅(一戸建て)の場合、通常の固定資産税は1,200万円×1.4%=16.8万円ですが、3年間は16.8万円×1/2=8.4万円に軽減されます。
軽減期間終了後は通常税額に戻りますが、建物の評価額は経年劣化により下がるため、税額は徐々に減少する傾向があります。
都市計画税との合計(市街化区域内の場合)
市街化区域内の一軒家では、固定資産税に加えて都市計画税も課されます。総務省によると、都市計画税は制限税率(上限)0.3%で、都市計画事業や土地区画整理事業の財源となる目的税です。
都市計画税も住宅用地の特例が適用され、小規模住宅用地(200m²以下)は評価額×1/3、一般住宅用地(200m²超)は評価額×2/3に軽減されます。
具体例:土地評価額1,500万円(150m²)、建物評価額1,200万円(新築)の一軒家
| 項目 | 計算式 | 金額 | 
|---|---|---|
| 土地の固定資産税 | 1,500万円×1/6×1.4% | 3.5万円 | 
| 建物の固定資産税(軽減後) | 1,200万円×1.4%×1/2 | 8.4万円 | 
| 土地の都市計画税 | 1,500万円×1/3×0.3% | 1.5万円 | 
| 建物の都市計画税 | 1,200万円×0.3% | 3.6万円 | 
| 合計 | 17.0万円 | 
市街化区域内の一軒家では、固定資産税1.4%+都市計画税0.3%=合計1.7%の税率となります。市街化調整区域や非線引き都市計画区域では都市計画税は課されません。
一軒家の固定資産税を安くする方法
一軒家の固定資産税を安くするためには、以下の3つの方法があります。
新築住宅の軽減措置(3年間または5年間、税額の1/2軽減)
新築住宅は、一般住宅で3年間、長期優良住宅で5年間、税額の1/2が軽減されます。この軽減措置は2026年3月31日までに新築された住宅が対象です(延長される可能性もあるため、最新情報を確認してください)。
新築時には自動的に適用されるため、特別な手続きは不要です。ただし、長期優良住宅の認定を受ける場合は、建築前に所管行政庁に申請する必要があります。
長期優良住宅の認定(軽減期間が2年間延長)
長期優良住宅とは、耐震性・省エネ性・維持管理のしやすさ等に優れた住宅として認定されたものです。固定資産税の軽減期間が一般住宅より2年間長く、一戸建ては5年間(一般住宅は3年間)、マンションは7年間(一般住宅は5年間)税額の1/2が軽減されます。
長期優良住宅の認定を受けるには、建築前に所管行政庁に申請し、審査を受ける必要があります。認定には数万円の費用がかかりますが、固定資産税の軽減期間が延長されるだけでなく、住宅ローン控除の控除額が増額される等のメリットもあります。
住宅用地の特例の維持(空き家にしない)
住宅用地の特例は、居住用の宅地に適用される軽減措置です。しかし、特定空家に指定されると、この特例が適用されなくなり、税額が6倍に跳ね上がります。
特定空家とは、倒壊の危険がある、著しく衛生上有害、景観を損なう、周辺の生活環境の保全に不適切な状態にある空き家を指します。空き家にせず、定期的に管理・利用することで、住宅用地の特例を維持できます。
相続等で空き家になった場合は、賃貸に出す、売却する、定期的に清掃・換気を行う等の対策を講じましょう。
都市計画税との違い
固定資産税と都市計画税は別々の税金ですが、納税通知書は一緒に送付されます。ここでは両者の違いを明確にします。
固定資産税は、全国すべての土地・建物に課される一般税です。標準税率は1.4%で、市町村の一般財源として使われます。
一方、都市計画税は、市街化区域内の土地・建物にのみ課される目的税です。制限税率(上限)は0.3%で、都市計画事業や土地区画整理事業の財源として使われます。市街化調整区域や非線引き都市計画区域では都市計画税は課されません。
| 項目 | 固定資産税 | 都市計画税 | 
|---|---|---|
| 課税対象 | 全国すべての土地・建物 | 市街化区域内の土地・建物 | 
| 税率 | 標準税率1.4% | 制限税率0.3%以下 | 
| 用途 | 一般財源 | 都市計画事業・土地区画整理事業 | 
| 住宅用地特例 | 200m²以下は評価額×1/6 | 200m²以下は評価額×1/3 | 
市街化区域内の一軒家では、固定資産税と都市計画税の両方が課されるため、合計で評価額の約1.7%の税金を毎年支払うことになります。
固定資産税の納付方法と納期
固定資産税の納税通知書は、毎年4-6月頃に市区町村から送付されます。納期は年4回(4月、7月、12月、2月等、市区町村により異なる)に分割払いが一般的です。一括前納割引を実施している自治体もあるため、納税通知書で確認しましょう。
支払い方法
支払い方法は、以下の選択肢があります。
- 納付書による現金払い: 金融機関、コンビニエンスストア、市区町村の窓口で支払い
- 口座振替: 指定口座から自動引き落とし(手続きは市区町村の窓口で)
- クレジットカード払い: 自治体によっては対応(手数料がかかる場合あり)
- スマホ決済: PayPay、LINE Pay等(自治体により対応が異なる)
口座振替にすれば払い忘れを防げますが、残高不足に注意が必要です。スマホ決済は手軽ですが、決済上限額(1回あたり30万円等)がある場合があります。
評価額の確認方法
固定資産税の評価額は、納税通知書に記載されています。また、市区町村の固定資産税課で固定資産課税台帳を閲覧することもできます(所有者本人または委任を受けた代理人のみ)。
評価額は3年ごとに評価替えが行われ、経年劣化により建物の評価額は下がり、土地の市況により評価額が変動します。評価替えの年度は、令和3年度、令和6年度、令和9年度…のように3年ごとです。
評価額が実際の時価と大きく乖離していると感じる場合は、固定資産評価審査委員会に審査の申し出(不服申立て)を行うこともできます。
まとめ:一軒家の固定資産税は評価額・立地で大きく変動
一軒家の固定資産税の相場は年10-20万円程度ですが、評価額・立地・築年数により大きく変動します。土地部分は住宅用地の特例(200m²以下は評価額×1/6)が適用され、建物部分は新築住宅で3年間(長期優良住宅は5年間)税額の1/2が軽減されます。
市街化区域内では都市計画税(評価額×0.3%以下)も加算され、合計1.7%の税率となります。評価額は納税通知書で確認でき、3年ごとに評価替えが行われるため、税額は変動する可能性があります。
新築住宅の軽減措置や長期優良住宅の認定を活用することで税額を抑えられます。また、特定空家に指定されると住宅用地の特例が適用されなくなり、税額が6倍に跳ね上がるため、空き家にせず定期的に管理・利用することが重要です。
次のアクションとして、納税通知書の確認、評価額の妥当性チェック、長期優良住宅の認定検討を推奨します。不明点は市区町村の固定資産税課に問い合わせましょう。
