固定資産税を滞納するとどうなる?督促から差し押さえまでの流れ
固定資産税の納付が難しく、「滞納してしまったらどうなるのか」と不安に感じている方は少なくありません。延滞金や差し押さえといったリスクがありますが、具体的にどのような流れで進むのか、対処法はあるのか、正確な情報を知りたいと思う方も多いでしょう。
この記事では、固定資産税を滞納した場合のリスク、延滞金の計算方法、督促から差し押さえまでの流れ、早期相談による分納・徴収猶予の可能性を、総務省・各市区町村の公式情報を元に解説します。
経済的に困窮している方でも、早めに対処することで解決の道が開けることを理解し、実践的な行動ができるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税の滞納は決して珍しくないが、放置すると延滞金や差し押さえといった深刻な事態に発展する
- 延滞金は納期限翌日から発生し、2024年時点で納期限翌日から1ヶ月以内は年7.3%、1ヶ月経過後は年14.6%
- 督促状発送後10日経過で法律上は差し押さえ可能だが、実務上は通常3-4ヶ月後に実行される
- 早期に市区町村へ相談すれば、分納(最大12回の月払い)や徴収猶予制度(災害・病気等)を利用できる可能性がある
- 時効(5年)は実務上ほぼ成立せず、「時効まで逃げ切る」ことは不可能
固定資産税滞納後の流れ:督促状から差し押さえまで
固定資産税を滞納すると、市区町村から段階的に通知が送られ、最終的には財産の差し押さえに至ります。以下、時系列で流れを整理します。
納期限経過:延滞金の発生開始
固定資産税の納期限(通常、年4回に分けて納付)を過ぎると、納期限の翌日から延滞金が発生します。総務省によると、2024年時点では、納期限翌日から1ヶ月以内は年7.3%、1ヶ月経過後は年14.6%の延滞金が課されます。
督促状送付:納期限後20日以内
地方税法により、市区町村は納期限後20日以内に督促状を送付する義務があります。督促状には、納付期限と延滞金の金額が記載されています。
重要: 督促状発送後10日経過で、法律上は差し押さえが可能になります。ただし、実務上はすぐに差し押さえされることは少なく、通常は次の段階に進みます。
催告書・電話連絡:数ヶ月後
督促状を無視すると、数ヶ月後に「催告書」が送付されたり、市区町村の納税課から電話連絡が入ったりします。この段階でも、まだ分納等の相談に応じてもらえる可能性が高いです。
財産調査:銀行口座・給与照会
催告にも応じない場合、市区町村は滞納者の財産調査を開始します。銀行口座の照会や勤務先への給与照会が行われ、差し押さえ可能な財産を特定します。
差押予告通知書:最終警告
財産調査の結果を踏まえ、市区町村は「差押予告通知書」を送付します。これは差し押さえの最終警告で、期限までに納付または連絡がない場合、差し押さえが実行されます。
差し押さえ実行:不動産・給与・預金等
差押予告通知書の期限を過ぎると、差し押さえが実行されます。差し押さえの対象は、預金(最も差し押さえしやすい)→給与(手取りの1/4まで)→不動産(換金に時間がかかる)の順で行われることが一般的です。
給与差し押さえでは勤務先に通知が入るため、職場に滞納の事実が知られる可能性があります。
延滞金の計算方法:2024年最新の税率
延滞金は納期限翌日から発生し、日数と税率に応じて計算されます。ここでは、2024年時点の最新税率で計算方法を解説します。
延滞金の税率:1ヶ月以内年7.3%、1ヶ月経過後年14.6%
総務省によると、2024年1月1日から延滞金率が調整され、以下の税率が適用されています。
| 期間 | 延滞金の税率 | 
|---|---|
| 納期限翌日から1ヶ月以内 | 年7.3% | 
| 1ヶ月経過後 | 年14.6% | 
延滞金は毎年税率が調整されるため、滞納時には最新の税率を確認することが重要です。
具体的な計算例:10万円を6ヶ月滞納した場合
固定資産税10万円を6ヶ月滞納した場合の延滞金を計算します。
1ヶ月目(納期限翌日から1ヶ月以内、年7.3%):
10万円 × 7.3% × 30日 / 365日 = 約600円
2-6ヶ月目(1ヶ月経過後、年14.6%):
10万円 × 14.6% × 150日 / 365日 = 約6,000円
合計延滞金: 約6,600円
計算時の注意点: 延滞金は、1,000円未満は切り捨てとなります。また、本税(固定資産税本体)が1,000円未満の場合、延滞金は発生しません。
差し押さえの実態:どの財産がいつ差し押さえられるか
差し押さえは法律に基づいて行われる強制的な手続きです。実際にどの財産が、いつ差し押さえられるのかを解説します。
差し押さえまでの期間:通常3-4ヶ月
滞納問題の専門機関によると、差し押さえまでの期間は通常3-4ヶ月です。督促状→催告→財産調査→差押予告→差し押さえの順に進みます。
ただし、市区町村により対応が異なるため、早い場合は2ヶ月程度で差し押さえに至るケースもあります。
差し押さえの対象財産:預金→給与→不動産の順
差し押さえの対象財産は、以下の順で実行されることが一般的です。
| 優先順位 | 財産の種類 | 理由 | 
|---|---|---|
| 1 | 預金 | 最も差し押さえしやすく、即座に換金可能 | 
| 2 | 給与 | 継続的な収入があるため、毎月一定額を差し押さえできる(手取りの1/4まで) | 
| 3 | 不動産 | 換金に時間がかかるため、最終手段として実行される | 
給与差し押さえの影響: 給与差し押さえでは、市区町村から勤務先に通知が入るため、職場に滞納の事実が知られる可能性があります。また、手取り給与の1/4まで差し押さえられるため、生活に大きな影響が出ます。
差し押さえは実際に行われる
「差し押さえは実際にはされない」という楽観的な誤解は危険です。督促状発送後10日経過で法律上は差し押さえ可能であり、実際に差し押さえされるケースも多く存在します。早期相談により差し押さえを回避することが重要です。
固定資産税が払えない場合の対処法:早期相談が鍵
固定資産税が払えない場合、「放置」ではなく「早期相談」が解決の鍵です。市区町村への相談により、分納や徴収猶予制度を利用できる可能性があります。
市区町村納税課への早期相談:分納の申し出
固定資産税が一括で払えない場合、市区町村納税課に相談することで、分納が認められる可能性があります。
分納の仕組み:
通常、固定資産税は年4回に分けて納付しますが、さらに細かく分割することが可能です。市区町村により異なりますが、最大12回(月払い)の分納も認められるケースがあります。
分納の注意点:
分納中も延滞金は発生し続けます。そのため、できるだけ早く完納することが重要です。また、分納の約束を守らないと、直ちに差し押さえが実行される可能性があります。
徴収猶予制度の利用:災害・病気・事業損失等
自治体によると、災害・病気・事業損失等のやむを得ない事情がある場合、「徴収猶予制度」を利用できます。
徴収猶予の要件:
- 災害により財産に損害を受けた
- 本人または家族が病気・負傷した
- 事業が廃止または休止した
- 事業に著しい損失を受けた
徴収猶予のメリット:
- 申請により1年以内の納税猶予が認められる
- 猶予期間中は延滞金が免除される
- 差し押さえの執行が停止される
申請方法: 市区町村納税課に相談し、必要書類(診断書、廃業届、損失を証明する書類等)を提出します。
相談窓口のリスト
| 相談窓口 | 内容 | 
|---|---|
| 市区町村納税課 | 分納、徴収猶予の相談 | 
| 法テラス(日本司法支援センター) | 無料法律相談(所得要件あり) | 
| 弁護士会の無料相談 | 多重債務、法的トラブルの相談 | 
| 社会福祉協議会 | 生活福祉資金貸付制度の相談 | 
放置せず早期相談することで、解決の選択肢が増えます。
時効はあるか?「時効まで逃げ切る」は不可能
固定資産税に時効はありますが、実務上ほぼ成立しません。「時効まで逃げ切る」ことは不可能と考えるべきです。
地方税法上の消滅時効は5年
地方税法では、固定資産税の徴収権は納期限から5年で消滅時効を迎えます。しかし、実務上は以下の理由でほぼ成立しません。
時効が中断される理由:
- 督促状の送付
- 催告書の送付
- 財産調査
- 差し押さえの実行
これらの行為により時効が中断され、再び0からカウントされます。市区町村は定期的に督促や財産調査を行うため、時効が成立することはほとんどありません。
違法行為の助長は禁止
「時効まで逃げ切れる」という情報を信じて滞納を続けると、延滞金が膨らみ、差し押さえのリスクが高まるだけです。早期に市区町村に相談し、分納や徴収猶予制度を利用することが現実的な解決策です。
まとめ:固定資産税滞納は放置せず早めの対処を
固定資産税の滞納は決して珍しくありませんが、放置すると延滞金や差し押さえといった深刻な事態に発展します。督促状が届いた時点で、早めに市区町村納税課に相談しましょう。
分納(最大12回の月払い)や徴収猶予制度(災害・病気等のやむを得ない事情がある場合、1年以内の猶予)を活用することで、解決の道が開けます。「払えないから放置」ではなく「払えないから相談」という姿勢が重要です。
まずは市区町村納税課に連絡し、現在の状況を正直に説明することから始めましょう。早期対処により、差し押さえを回避し、生活を立て直すことができます。
