固定資産税を払わないとどうなる?滞納のリスクとは
固定資産税は地方税法により全国民に課される納税義務です。「払わなくても大丈夫だろう」と軽く考えてはいけません。払わなかった場合は法的措置(督促、延滞金、差し押さえ、公売)が段階的に実行され、最終的には住む場所を失う可能性もあります。
この記事のポイント
- 固定資産税を払わないと、納期限後20日以内に督促状が届き、延滞金が発生する(2025年は納期限翌日から1ヶ月以内:年2.4%、それ以降:年8.7%)
- 督促状送付後10日で法的に差し押さえが可能となり、預貯金、給与、不動産等が対象になる
- 差し押さえられた不動産は公売または競売にかけられ、売却価格は市場価格の6-7割程度が一般的
- 自己破産・債務整理でも固定資産税は免除されないため、支払いが困難な場合は早期に自治体の収納課に相談すべき
この記事では、固定資産税を払わなかった場合の段階的な流れと正しい対処法を、総務省や各市区町村の公式情報を元に解説します。
固定資産税を滞納した場合の段階的な流れ
固定資産税を払わないと、自治体は以下の段階的な流れで法的措置を実行します。裁判所の判決なしで自治体が直接実行できる点が特徴です。
①督促状の送付(納期限後20日以内)
納期限までに納付しなかった場合、納期限から20日以内に市区町村から督促状が送付されます。督促状は法的な納付催促であり、受け取った時点で延滞金が発生します。督促状送付後10日経過すると、法的に財産の差し押さえが可能になります。
②延滞金の発生(納期限翌日から)
延滞金は納期限の翌日から発生します。2025年の延滞金利率は、納期限翌日から1ヶ月以内が年2.4%、それ以降が年8.7%です。京都市の公式サイトによると、延滞金利率は毎年変動するため、執筆時点(2025年10月)の情報であることを明記します。
例えば、税額10万円を3ヶ月滞納した場合、延滞金は以下のように計算されます。
- 1ヶ月目:10万円 × 2.4% ÷ 12 ≒ 200円
- 2-3ヶ月目:10万円 × 8.7% ÷ 12 × 2 ≒ 1,450円
- 合計:約1,650円
ただし、税額2,000円未満の場合、または延滞金が1,000円未満の場合は加算されません。
③催告書の送付
督促状を無視すると、催告書が送付されます。催告書は督促状よりも強い警告で、この段階で納付しないと財産調査・差し押さえに進みます。
④財産調査(預金口座、給与、不動産等)
催告書も無視すると、自治体は滞納者の財産状況を調査します。調査対象は、預貯金、給与、不動産、動産(自動車等)、債権等です。金融機関や勤務先に照会が行われ、財産が把握されます。
⑤財産の差し押さえ
財産調査の結果、差し押さえ可能な財産が確認されると、自治体は財産を強制的に確保します。差し押さえは裁判所の判決なしで実行されるため、督促状送付後10日以降はいつでも実行される可能性があります。ただし、実際には自治体により運用が異なり、催告や財産調査を経て差し押さえに至るまで3-4ヶ月程度が一般的です。
給与が差し押さえられた場合でも、全額没収されるわけではありません。国税徴収法により、給与の4分の1まで(手取り月額が44万円を超える場合は33万円を超える部分)が差し押さえ対象となり、最低限の生活費は保護されます。
⑥不動産の公売または競売
差し押さえられた不動産は、公売または競売にかけられます。公売は自治体が主体、競売は裁判所が主体となります。売却代金が滞納税金に充てられ、残債があれば自己負担となります。
延滞金の発生と計算方法
延滞金は納期限の翌日から自動的に発生します。2025年の延滞金利率と計算方法を理解し、早期納付の重要性を認識してください。
2025年の延滞金利率(納期限翌日から1ヶ月以内:年2.4%、それ以降:年8.7%)
2025年の延滞金利率は、納期限翌日から1ヶ月以内が年2.4%、それ以降が年8.7%です。延滞金利率は毎年変動するため、最新情報は自治体の公式サイトで確認してください。
延滞金の計算例
税額10万円を3ヶ月滞納した場合の延滞金は約2,600円です(前述の計算を参照)。滞納期間が長引くほど延滞金は累積するため、早期に納付することが重要です。
延滞金が免除されるケース(税額2,000円未満等)
税額2,000円未満の場合、または延滞金が1,000円未満の場合は延滞金が加算されません。また、災害等の特別な事情により徴収猶予が認められた場合は、延滞金が軽減または免除される場合があります。詳細は自治体の収納課に確認してください。
財産差し押さえと不動産の公売のリスク
滞納が続くと、自治体は財産を差し押さえ、不動産を公売または競売にかけます。公売と競売の違い、売却価格の目安を理解し、早期対応の重要性を認識してください。
差し押さえ対象となる財産(預貯金、給与、不動産等)
差し押さえ対象となる財産は、預貯金、給与、不動産、動産(自動車、貴金属等)、債権等です。預貯金は優先的に差し押さえられることが多く、金融機関に照会が行われます。給与は4分の1まで(手取り月額が44万円を超える場合は33万円を超える部分)が差し押さえ対象となります。
公売と競売の違い
公売は自治体が主体となり、差し押さえた財産を強制的に売却する手続きです。裁判所の許可が不要で、督促→催告→財産調査→差し押さえ→公売の流れが迅速に進みます。一方、競売は裁判所が主体となり、債権者の申し立てに基づいて実施されます。公売の方が手続きが簡素で、競売よりも早く住む場所を失うリスクがあります。
公売時の売却価格(市場価格の6-7割程度)
公売時の売却価格は、市場価格の6-7割程度が一般的です。例えば、市場価格3,000万円の不動産が公売で1,800万円(6割)で売却された場合、残債(滞納税+延滞金)が1,800万円を超えていれば、売却後も債務が残ります。この場合、自己負担で残債を支払う必要があり、オーバーローン状態になる可能性があります。
支払いが困難な場合の正しい対処法
固定資産税の支払いが困難な場合は、放置せずに早期に自治体の収納課に相談してください。以下の対処法を検討することで、状況を改善できる可能性があります。
分納相談(月々の分割払い)
一括納付が困難な場合、自治体の収納課に相談して分納(分割払い)を申し出ることができます。月々の返済額を調整し、無理のない範囲で納付できるようになります。ただし、分納中も延滞金は発生し続けるため、早期に完済することが重要です。分納の条件は自治体により異なるため、詳細は収納課に確認してください。
徴収猶予(災害、病気、事業の休廃止等)
災害、病気、事業の休廃止等により一時的に納税が困難な場合、申請により一定期間の納税を猶予する制度があります。徴収猶予が認められた場合、猶予期間中は延滞金が軽減または免除されます。分納と異なり、徴収猶予は延滞金の負担を軽減できるため、該当する場合は申請を検討してください。
減免申請(災害、生活保護受給等)
災害による被害、生活保護受給等の特別な事情がある場合、申請により固定資産税の一部または全部が免除される制度があります。減免の適用要件は自治体ごとに異なるため、詳細は市区町村の固定資産税担当部署に確認してください。申請期限もあるため、早めに相談することが重要です。
まとめ:固定資産税は放置せず早期対応が重要
固定資産税を払わないと、督促→延滞金→差し押さえ→公売と段階的に法的措置が実行されます。自己破産・債務整理でも免除されないため、放置は禁物です。支払いが困難な場合は早期に自治体の収納課に相談し、分納や徴収猶予、減免申請を検討してください。
相談することで延滞金の軽減や免除が受けられる可能性があります。納税義務を軽視せず、早期対応で最悪の事態を回避することが重要です。次のアクションとして「市区町村の収納課に相談予約」「徴収猶予・減免の要件確認」を検討してください。
