短期譲渡所得税率は39.63%!計算方法と節税対策を解説

公開日: 2025/10/31

短期譲渡所得税率とは

不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税がかかります。その税率は、所有期間により「短期」と「長期」に分かれ、大きく異なります。

この記事では、短期譲渡所得税率の仕組み、計算方法、軽減措置、節税のポイントを、国税庁の公式情報を元に解説します。

短期譲渡所得税率は39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)と高率であり、長期譲渡所得税率20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)と比べ約2倍です。所有期間5年以内で売却する場合、税負担が大きくなるため、売却タイミングの検討が重要です。

この記事のポイント

  • 短期譲渡所得税率は39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)で、所有期間5年以内の不動産売却に適用される
  • 長期譲渡所得税率20.315%と比べ約2倍の税率で、5年を境に税負担が大きく変わる
  • 所有期間の判定は「売却年の1月1日時点」で行われるため、実際の所有期間より短く判定される場合がある
  • 譲渡所得の計算式は「売却価格 - 取得費 - 譲渡費用」で、取得費・譲渡費用を正確に計上することが節税のポイント
  • マイホーム特例(3,000万円特別控除)を使えば、短期譲渡でも税負担を大幅に軽減できる

短期譲渡所得と長期譲渡所得の違い

所有期間5年が境界線

国税庁の公式サイトによると、不動産の譲渡所得は所有期間により以下のように分類されます。

区分 所有期間 税率
短期譲渡所得 5年以内 39.63%(所得税30.63% + 住民税9%)
長期譲渡所得 5年超 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)

短期譲渡所得税率は長期の約2倍であり、5年を境に税負担が大きく変わります。

所有期間の判定方法(1月1日基準)

所有期間の判定は、「売却年の1月1日時点」で行われます。これが非常に重要なポイントです。

具体例:

  • 取得日: 2020年4月1日
  • 売却日: 2025年5月1日
  • 実際の所有期間: 5年1ヶ月
  • 判定: 売却年(2025年)の1月1日時点では所有期間4年9ヶ月 → 短期譲渡所得

このケースでは、実際には5年以上所有していても、1月1日基準で判定されるため短期譲渡となり、39.63%の高率が適用されます。

売却タイミングを数ヶ月遅らせることで長期譲渡所得となり、税率が20.315%に下がる可能性があるため、売却時期の検討が重要です。

短期譲渡所得税の計算方法

譲渡所得の計算式

譲渡所得は以下の式で計算されます。

譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用

  • 売却価格: 不動産を売却した価格
  • 取得費: 不動産を取得した際の価格 + 購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税等) + 改良費(リフォーム費用等)
  • 譲渡費用: 売却時の諸費用(仲介手数料、測量費、建物解体費(土地売却のため建物を解体した場合)等)

具体的な計算例

前提条件:

  • 売却価格: 5,000万円
  • 取得費: 4,000万円(購入価格3,800万円 + 購入時諸費用200万円)
  • 譲渡費用: 200万円(仲介手数料等)
  • 所有期間: 4年(短期譲渡所得)

計算:

  1. 譲渡所得 = 5,000万円 - 4,000万円 - 200万円 = 800万円
  2. 短期譲渡所得税 = 800万円 × 39.63% = 約317万円

同じ条件で長期譲渡所得(所有期間5年超)の場合:

  • 長期譲渡所得税 = 800万円 × 20.315% = 約163万円
  • 差額 = 約154万円

5年を境に約154万円の税負担差が生じます。

取得費不明の場合の概算取得費

相続した不動産等で取得費が不明な場合、国税庁の規定により、売却価格の5%を概算取得費として計上できます。

ただし、概算取得費は非常に低いため、譲渡所得が大きくなり税負担が増えます。可能な限り、購入時の契約書や領収書を探し、実際の取得費を証明することが節税につながります。

マイホーム特例(3,000万円特別控除)

特例の適用要件

国税庁の公式サイトによると、マイホーム(居住用財産)を売却した場合、所有期間に関係なく3,000万円まで譲渡所得から控除できる特例があります。

適用要件:

  • 自分が住んでいる家屋、または家屋とその敷地を売却すること
  • 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却先が配偶者や直系血族等の特別な関係者でないこと
  • 過去3年以内にこの特例を受けていないこと

短期譲渡でも適用可能

マイホーム特例は所有期間に関係なく適用できるため、短期譲渡所得でも利用可能です。

計算例(前述の例を修正):

  • 譲渡所得: 800万円
  • マイホーム特例: -800万円(3,000万円以内のため全額控除)
  • 課税譲渡所得: 0円
  • 税額: 0円

譲渡所得が3,000万円以内であれば、短期譲渡でも税負担をゼロにできます。

他の特例との併用

住宅ローン控除との併用は不可です。マイホーム特例を受けた年を含めて前後2年間(計5年間)は、新居で住宅ローン控除を受けられません。

どちらが有利かをシミュレーションした上で判断してください。

節税のポイント

売却タイミングの検討

所有期間が5年に近い場合、売却時期を数ヶ月遅らせることで長期譲渡所得となり、税率が39.63% → 20.315%に下がります。

**判定基準は「売却年の1月1日時点」**であるため、12月に売却する場合と翌年1月以降に売却する場合で判定が変わる可能性があります。

売却を急がない場合、税負担を軽減するために売却時期を調整することを検討してください。

取得費・譲渡費用を正確に計上

譲渡所得を減らすためには、取得費・譲渡費用を正確に計上することが重要です。

取得費に含められるもの:

  • 購入価格
  • 購入時の仲介手数料、登記費用、不動産取得税
  • リフォーム費用、増改築費用
  • 建物の減価償却費(取得費から差し引く)

譲渡費用に含められるもの:

  • 売却時の仲介手数料
  • 測量費、建物解体費(土地売却のため建物を解体した場合)
  • 売却のための広告費

領収書や契約書を保管し、正確に計上することで節税につながります。

専門家(税理士)への相談

不動産の譲渡所得税は計算が複雑であり、特例の適用判断も難しいため、税理士への相談を推奨します。

確定申告の際に申告漏れや誤りがあると、追徴課税や延滞税が発生する可能性があるため、専門家のサポートを受けることが安心です。

まとめ:5年を境に税率が大きく変わる

短期譲渡所得税率は39.63%と高率で、所有期間5年以内の不動産売却に適用されます。長期譲渡所得税率20.315%と比べ約2倍の税率であり、5年を境に税負担が大きく変わります。

所有期間の判定は「売却年の1月1日時点」で行われるため、実際の所有期間が5年を超えていても短期譲渡と判定される場合があります。売却タイミングを数ヶ月遅らせることで税率が下がる可能性があるため、慎重に検討してください。

マイホーム特例(3,000万円特別控除)を使えば、短期譲渡でも税負担を大幅に軽減できます。適用要件を確認し、該当する場合は必ず活用しましょう。

譲渡所得の計算は複雑であり、取得費・譲渡費用の正確な計上、特例の適用判断等、専門知識が必要です。税理士に相談しながら、適切な節税対策を行うことをおすすめします。

よくある質問

Q1所有期間4年11ヶ月で売却した場合、短期譲渡所得ですか?

A1売却年の1月1日時点で判定されます。例えば2020年2月取得、2025年1月売却の場合、実際の所有期間は4年11ヶ月ですが、2025年1月1日時点では4年11ヶ月と判定され、短期譲渡所得となります。売却を翌年に遅らせれば長期譲渡所得となり、税率が39.63% → 20.315%に下がります。

Q2相続した不動産の所有期間はどう計算しますか?

A2相続した不動産の所有期間は、被相続人(亡くなった方)が取得した日から計算されます。例えば、親が2015年に取得し、2023年に相続、2025年に売却した場合、所有期間は2015年から計算され、長期譲渡所得となります。相続により所有期間が引き継がれるため、有利になる場合があります。

Q3取得費が不明な場合、どうすれば良いですか?

A3取得費が不明な場合、売却価格の5%を概算取得費として計上できます。ただし、概算取得費は非常に低いため、譲渡所得が大きくなり税負担が増えます。可能な限り、購入時の契約書や領収書を探し、実際の取得費を証明してください。不動産会社や法務局で履歴を調べることも検討しましょう。

Q4マイホーム特例と住宅ローン控除は併用できますか?

A4併用できません。マイホーム特例を受けた年を含めて前後2年間(計5年間)は、新居で住宅ローン控除を受けられません。どちらが有利かをシミュレーションした上で判断してください。一般的に、譲渡所得が大きい場合はマイホーム特例の方が有利になる傾向があります。

Q5短期譲渡所得税はいつ払いますか?

A5譲渡所得税は確定申告で納付します。売却した年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告を行い、所得税を一括納付します。住民税は翌年6月以降に分割(4回)で納付します。納税資金を確保しておくことが重要です。税理士に相談しながら手続きを進めることをおすすめします。