不動産売却の流れを7ステップで解説|必要書類・期間・費用まで完全ガイド

公開日: 2025/10/31

不動産売却の流れを7ステップで解説

不動産売却を初めて検討している方にとって、「何から始めれば良いのか」「どんな手順で進めるのか」は大きな不安材料です。

この記事では、不動産売却の全体の流れを7ステップ(情報収集・相場調査、査定依頼、媒介契約、売却活動、売買契約、決済・引渡し、確定申告)で時系列に整理し、「いつ何をすべきか」を明確にします。

国土交通省国税庁の公式情報を元に、各ステップの期間目安・必要書類・注意点を具体的に示し、初めての売却でも安心して進められる実用的なガイドです。

この記事のポイント

  • 不動産売却は全体で3-6ヶ月が目安(情報収集1-2週間、査定1-2週間、売却活動1-3ヶ月、決済1-2ヶ月)
  • 媒介契約には専任媒介と一般媒介があり、それぞれメリット・デメリットが異なる
  • 仲介手数料は売却価格×3%+6万円+消費税(400万円超の場合)
  • 譲渡所得税は所有期間5年超で20.315%、5年以下で39.63%
  • 必要書類は各ステップで異なり、事前準備が重要

ステップ1:情報収集・相場調査(期間1-2週間)

売却を決めたら、まず市場相場を調べて売却価格の目安を把握します。

相場調査の方法

  1. 不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)で類似物件の販売価格を確認
  2. 国土交通省 不動産取引価格情報検索で過去の成約価格を確認
  3. 路線価、公示地価を参考にする(土地の場合)

相場把握のポイント

  • 同じエリア、同じ築年数、同じ広さの物件を比較
  • 販売価格(売り出し価格)と成約価格(実際に売れた価格)は異なることが多い
  • 相場より高すぎる価格設定では買い手がつかない

この段階で、おおよその売却価格の目安を把握しておくことで、次のステップの査定依頼時に適正な査定額かどうかを判断できます。

ステップ2:査定依頼(期間1-2週間)

複数の不動産会社に査定を依頼します。

査定の種類

  • 机上査定:物件情報のみで概算価格を算出(即日-数日)
  • 訪問査定:実際に物件を訪問して詳細に査定(1-2週間)

複数社に依頼すべき理由

査定額は不動産会社により異なる場合があります。3-5社に査定依頼し、査定額の根拠を比較することが重要です。

注意点

査定額が高い業者が必ずしも良い業者とは限りません。媒介契約獲得のために高額査定を提示する悪質業者も存在します。査定額の根拠(過去の取引事例、市場動向等)を確認し、信頼できる不動産会社を選びましょう。

ステップ3:媒介契約(期間1週間)

不動産会社を選んだら、媒介契約を締結します。

媒介契約の種類

国土交通省によると、媒介契約には3種類があります。

項目 専任媒介 専属専任媒介 一般媒介
複数社への依頼 不可 不可 可能
自己発見取引 可能 不可 可能
レインズ登録 7日以内 5日以内 任意
報告頻度 2週間に1回以上 1週間に1回以上 任意
契約期間 3ヶ月以内 3ヶ月以内 制限なし

専任媒介のメリット・デメリット

  • メリット:1社に集中して販売活動を任せられる、手厚いサポートが期待できる、レインズ登録義務あり
  • デメリット:囲い込みリスク(他社への物件情報開示を渋る)、販売活動が消極的な会社だと売却が長引く

一般媒介のメリット・デメリット

  • メリット:複数社の販売活動を比較できる、囲い込みリスクが低い
  • デメリット:各社のモチベーションが低くなる傾向、報告義務がないため進捗が見えにくい

選び方

  • 専任媒介:手厚いサポートを期待したい、信頼できる不動産会社を見つけた場合
  • 一般媒介:人気エリアの物件で複数社に販売活動を任せたい場合

契約期間は3ヶ月以内(一般媒介を除く)のため、効果が見られない場合は契約更新時に不動産会社を変更することも検討できます。

ステップ4:売却活動(期間1-3ヶ月)

媒介契約締結後、販売活動がスタートします。

販売活動の内容

  • 不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)への掲載
  • レインズ(REINS)への登録
  • チラシ配布
  • オープンハウス開催
  • 内覧対応

内覧対応のポイント

内覧は買い手が物件を実際に見る重要な機会です。

内覧前の準備

  • 清掃を徹底する(特に水回り:キッチン、浴室、トイレ)
  • 不要な物を片付けてスッキリさせる
  • 照明をつけて明るい印象にする
  • 換気をして臭いを取り除く(ペット、タバコ等)

内覧時の対応

  • 笑顔で丁寧に対応する
  • 物件の良い点を積極的にアピール
  • 質問には正直に答える(不具合も隠さず告知)
  • 価格交渉には柔軟に対応する姿勢を見せる

価格交渉

買い手から価格交渉が入ることが一般的です。

価格交渉の相場

  • 売り出し価格の5-10%程度の値引き交渉が一般的
  • 相場より高い価格設定の場合、より大きな値引きを求められる

対応方法

  • 事前に最低売却価格(これ以下では売らない価格)を決めておく
  • 即答せず、不動産会社と相談してから回答
  • 値引きする代わりに、引渡し時期を調整してもらう等の条件交渉も検討

3ヶ月以内に反応がない場合は、価格設定が高すぎる可能性があります。市場相場と比較し、価格調整を検討しましょう。

ステップ5:売買契約(期間1週間)

買い手が決まったら、売買契約を締結します。

重要事項説明

契約前に、宅地建物取引士による重要事項説明があります。

説明内容

  • 物件の詳細(所在地、面積、構造等)
  • 法令上の制限(用途地域、建ぺい率、容積率等)
  • 設備の状況
  • 契約条件

買主に対して行われる説明ですが、売主も同席することが一般的です。

売買契約書の締結

契約時の流れ

  1. 重要事項説明書の説明・確認
  2. 売買契約書の読み合わせ
  3. 署名・押印
  4. 手付金の受領(売却価格の1-2割が一般的)
  5. 仲介手数料の一部支払い(通常は半額)
  6. 印紙税の納付

契約書の確認ポイント

  • 売却価格、手付金額、残代金の支払日
  • 引渡し日
  • 契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)の範囲と期間
  • 設備の故障・不具合の告知内容
  • 契約解除条項(手付解除、ローン特約等)
  • 固定資産税・都市計画税の精算方法

手付金について

手付金は契約の証として買主が売主へ支払う金銭です。契約解除権の担保として機能します。

  • 買主都合の解除:手付金を放棄して解除可能
  • 売主都合の解除:手付金の倍額を買主に返還して解除可能

ステップ6:決済・引渡し(期間1-2ヶ月)

売買契約から1-2ヶ月後に決済・引渡しを行います。

決済時に必要な書類

売主が用意する書類

  • 登記済権利証または登記識別情報
  • 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
  • 固定資産税納税通知書
  • 実印
  • 本人確認書類(運転免許証等)
  • マンションの場合:管理規約、使用細則、維持費の領収書等
  • 建築確認済証、検査済証(戸建ての場合)

登記済権利証(権利証)を紛失している場合でも、司法書士の本人確認制度で対応可能です。事前に司法書士に相談しましょう。

決済の流れ

決済当日の流れ

  1. 残代金の受領
  2. 仲介手数料の残額支払い
  3. 登記手続き(司法書士が代行)
  4. 鍵の引渡し
  5. 固定資産税・都市計画税の精算

仲介手数料の計算

仲介手数料の上限は以下の通りです。

  • 売却価格400万円超の場合:売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税

計算例

  • 売却価格3,000万円の場合:3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円 + 消費税10% = 105.6万円

登記手続き

所有権移転登記は司法書士に依頼するのが一般的です。

登記費用

  • 所有権移転登記:買主負担
  • 抵当権抹消登記(住宅ローン残債がある場合):売主負担、5-15万円程度

住宅ローン残債がある場合、決済時に売却代金でローン残債を一括返済し、抵当権を抹消します。残債が売却価格を上回る場合(オーバーローン)は、自己資金で補填または買い替えローンを検討する必要があります。

ステップ7:確定申告(翌年2-3月)

売却翌年の確定申告で譲渡所得税を申告・納付します。

譲渡所得税の計算

国税庁によると、譲渡所得税は以下の計算式で算出されます。

譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用

  • 取得費:購入価格、購入時の諸費用、リフォーム費用等
  • 譲渡費用:仲介手数料、印紙税、登記費用、測量費等

税率

所有期間 税率(所得税+住民税)
5年以下(短期譲渡所得) 39.63%
5年超(長期譲渡所得) 20.315%

(所有期間は売却年の1月1日時点で判定)

計算例

  • 売却価格:3,000万円
  • 取得費:2,000万円
  • 譲渡費用:150万円
  • 譲渡所得:850万円
  • 所有期間6年の場合:850万円 × 20.315% = 約173万円

居住用財産の3,000万円特別控除

国税庁によると、居住用財産(マイホーム)売却時は3,000万円特別控除が適用可能です。

適用要件

  • 自己の居住用財産であること
  • 居住しなくなってから3年以内の売却
  • 過去2年以内に同特例を利用していないこと

控除額

  • 譲渡所得から最大3,000万円を控除
  • 所有期間の長短は不問

この特例により、多くの自宅売却では譲渡所得税が発生しません。ただし、控除後の利益がゼロ以下でも確定申告は必須です。税理士への相談をおすすめします。

売却にかかる期間と費用のまとめ

期間の目安

ステップ 期間
情報収集・相場調査 1-2週間
査定依頼 1-2週間
媒介契約 1週間
売却活動 1-3ヶ月
売買契約 1週間
決済・引渡し 1-2ヶ月
確定申告 翌年2-3月
合計 3-6ヶ月

費用の目安

項目 金額
仲介手数料 売却価格×3%+6万円+消費税(400万円超)
譲渡所得税 利益の20.315%(長期)または39.63%(短期)
印紙税 1-3万円(売却価格により異なる)
抵当権抹消費用 5-15万円(住宅ローン残債がある場合)
その他 引越し費用、測量費(必要に応じて)
合計 売却価格の5-10%が目安

売却時の注意点

契約不適合責任

2020年4月の民法改正により、瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更されました。

契約不適合責任とは

売買契約時に約束した内容(品質、数量等)と異なる不適合があった場合、売主が負う責任です。

責任の内容

  • 修補請求(修理)
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約解除

対策

  • 建物の不具合は事前に告知する
  • 設備の故障を正直に伝える
  • 契約書で責任範囲・期間を明確にする

相続登記義務化(2024年4月施行)

相続した不動産を売却する場合、法務省の相続登記義務化により、相続から3年以内に登記しないと過料(10万円以下)が課されます。

相続登記が未了の場合は、売却前に登記を完了させる必要があります。司法書士に相談しましょう。

まとめ

不動産売却は7ステップ・3-6ヶ月の流れで進みます。各ステップの期間目安・必要書類・費用を事前に把握し、計画的に進めることが重要です。

売却を成功させるポイント

  1. 複数社に査定依頼し、信頼できる不動産会社を選ぶ
  2. 媒介契約の種類を理解し、自分に合った契約を選ぶ
  3. 内覧対応を丁寧に行い、物件の魅力をアピール
  4. 価格交渉には柔軟に対応する姿勢を見せる
  5. 譲渡所得税を早めに試算し、納税資金を確保

次のアクション

  • 市場相場を調べて売却価格の目安を把握
  • 複数の不動産会社に査定依頼
  • 必要書類を準備(登記済権利証、固定資産税納税通知書等)

信頼できる不動産会社や専門家(司法書士、税理士)と相談しながら、安心して売却を進めましょう。

よくある質問

Q1不動産売却にかかる期間は?

A1不動産売却にかかる期間は全体で3-6ヶ月が目安です。内訳は、情報収集・相場調査1-2週間、査定依頼1-2週間、媒介契約1週間、売却活動1-3ヶ月、売買契約1週間、決済・引渡し1-2ヶ月です。売却活動期間は物件の立地・価格設定・市況により大きく変動します。人気エリアの物件や適正価格の場合は1ヶ月以内で買い手がつくこともありますが、3ヶ月以上かかるケースも珍しくありません。

Q2不動産売却にかかる費用はいくら?

A2不動産売却にかかる費用は売却価格の5-10%が目安です。主な費用は、仲介手数料(売却価格×3%+6万円+消費税)、譲渡所得税(利益の20-40%、ただし居住用財産は3,000万円特別控除で多くの場合0円)、印紙税(1-3万円)、抵当権抹消費用(5-15万円、住宅ローン残債がある場合)です。例えば、3,000万円で売却の場合、150-300万円程度かかります。

Q3不動産売却に必要な書類は?

A3不動産売却に必要な主な書類は、登記済権利証または登記識別情報、印鑑証明書、固定資産税納税通知書、実印、本人確認書類です。マンションの場合は管理規約・使用細則・維持費の領収書、戸建ての場合は建築確認済証・検査済証も必要です。登記済権利証を紛失している場合でも、司法書士の本人確認制度で対応可能です。必要書類は各ステップで異なるため、不動産会社に確認しながら準備しましょう。

Q4不動産売却で税金はかかる?

A4不動産売却で利益が出た場合、譲渡所得税がかかります。税率は所有期間5年超で20.315%、5年以下で39.63%です。ただし、居住用財産(マイホーム)売却時は3,000万円特別控除が適用可能で、多くの場合は譲渡所得税が発生しません。控除適用後の利益がゼロ以下でも確定申告は必須です。譲渡所得税の試算は早めに行い、納税資金を確保することをおすすめします。詳細は税理士に相談しましょう。