土地売却の全体像 - 流れ・期間・費用の目安
相続した土地や使わない土地を売却したいが、「何から始めればいいのか分からない」「費用や税金はどれくらいかかるのか」と不安を感じる方は少なくありません。
この記事では、土地売却の流れ(事前準備〜確定申告)、費用・税金の内訳と計算例、高く売るコツを、国土交通省・国税庁の公式情報を元に解説します。
土地売却の経験が少ない方でも、全体像を把握し、安心して売却を進められるようになります。
この記事のポイント
- 土地売却は、事前準備→査定→媒介契約→売却活動→売買契約→決済・引き渡し→確定申告の7ステップ(3〜6ヶ月程度)
- 売却にかかる費用は、売却価格の5〜7%程度(仲介手数料、測量費、登記費用、印紙税、譲渡所得税等)
- 譲渡所得税は、所有期間5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%(長期・短期で税率が大きく異なる)
- 特別控除(居住用財産3000万円控除、空き家特例、取得費加算の特例等)を活用すれば税金を軽減できる
- 高く売るコツは、適切な時期、複数社への査定依頼、境界確定、更地 vs 古家付きの判断
土地売却の流れ【7ステップで解説】
土地売却は、以下の7ステップで進めます。
ステップ1:事前準備(書類確認・境界確認)
所要期間: 2週間〜1ヶ月
売却前に、以下の書類を確認・準備します。
| 書類 | 内容 | 入手方法 | 
|---|---|---|
| 登記済権利証または登記識別情報 | 土地の所有権を証明 | 購入時に法務局から交付 | 
| 固定資産税納税通知書 | 固定資産税の金額を確認 | 毎年4〜6月に自治体から送付 | 
| 境界確認資料 | 土地の境界を確認 | 購入時の測量図、境界確認書 | 
| 身分証明書、実印、印鑑証明書 | 契約時に必要 | 市区町村で取得(印鑑証明書) | 
境界が不明確な場合は、この段階で境界確定測量を検討してください(詳細は後述)。
ステップ2:査定依頼(複数社への一括査定)
所要期間: 1〜2週間
不動産会社に査定を依頼し、売却価格の相場を把握します。複数社(3〜5社)に査定を依頼し、査定価格と根拠を比較しましょう。
査定方法:
- 机上査定: 物件情報のみで簡易査定(数日で結果)
- 訪問査定: 現地調査を行い詳細査定(1〜2週間で結果)
国土交通省の土地総合情報システムで、周辺の実際の取引価格を確認することもできます。
ステップ3:媒介契約の締結(専属専任・専任・一般)
所要期間: 数日〜1週間
不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には3種類あります。
| 種類 | 複数社との契約 | 自己発見取引 | レインズ登録 | 活動報告 | 
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介契約 | 不可(1社のみ) | 不可 | 5日以内に登録義務 | 1週間に1回以上 | 
| 専任媒介契約 | 不可(1社のみ) | 可 | 7日以内に登録義務 | 2週間に1回以上 | 
| 一般媒介契約 | 可(複数社) | 可 | 登録義務なし | 報告義務なし | 
レインズ(不動産流通機構)に登録されると、全国の不動産会社が物件情報を閲覧できるため、買い手が見つかりやすくなります。
ステップ4:売却活動(広告・内覧対応)
所要期間: 1〜3ヶ月
不動産会社が広告を出し、買い手を募集します。購入希望者から内覧(現地確認)の依頼があれば、対応します。
売却活動中のポイント:
- 土地の現況を正確に説明(接道状況、日照、周辺環境等)
- 購入希望者からの質問に誠実に対応
- 価格交渉があれば柔軟に検討
3ヶ月経過しても買い手が見つからない場合は、価格の見直しや不動産会社の変更を検討しましょう。
ステップ5:売買契約の締結(手付金・契約書作成)
所要期間: 1〜2週間
買い手が見つかったら、売買契約を締結します。
契約時に行うこと:
- 重要事項説明: 不動産会社が買主に物件の詳細を説明
- 売買契約書の作成: 売却価格、引き渡し日、特約事項等を記載
- 手付金の受領: 売却価格の5〜10%程度を受領(契約の証拠)
- 印紙税の納付: 契約書に印紙を貼付(売却価格により異なる)
手付金は、契約が成立した証拠として受領します。買主が契約を解除する場合は手付金を放棄し、売主が解除する場合は手付金の2倍を返還します。
ステップ6:決済準備(登記書類・測量完了)
所要期間: 1〜2ヶ月
決済までに、以下の準備を行います。
- 境界確定測量の完了: 測量が未完了の場合は完了させる(費用30〜80万円、期間1〜2ヶ月)
- 登記書類の準備: 所有権移転登記に必要な書類を準備
- 住宅ローンの完済: ローンが残っている場合は完済し、抵当権抹消登記を準備
ステップ7:決済・引き渡し(残代金受領・所有権移転)
所要期間: 1日
決済当日、以下の手続きを行います。
- 残代金の受領: 売却価格から手付金を差し引いた残代金を受領
- 所有権移転登記: 司法書士が法務局で登記手続きを行う
- 仲介手数料の支払い: 不動産会社に仲介手数料を支払う
- 鍵・書類の引き渡し: 土地に関する書類を買主に引き渡す
決済は、銀行の一室等で行うのが一般的です。決済完了後、土地の所有権が買主に移転します。
確定申告(翌年2〜3月)
土地を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、翌年の2月16日〜3月15日に確定申告を行い、譲渡所得税を納付します。
確定申告で必要な書類:
- 確定申告書(譲渡所得の内訳書)
- 売買契約書の写し
- 取得費を証明する書類(購入時の契約書等)
- 譲渡費用の領収書(仲介手数料、測量費等)
特別控除を適用する場合は、追加書類(住宅用家屋証明書、耐震基準適合証明書等)が必要です。
土地売却にかかる費用
土地売却にかかる費用は、売却価格の5〜7%程度です。
仲介手数料
不動産会社に支払う手数料です。法律で上限が定められています。
計算式(売却価格400万円超の場合):
- 仲介手数料 = 売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税
例:
- 売却価格3,000万円の場合:
- 仲介手数料 = 3,000万円 × 3% + 6万円 + 消費税 = 105.6万円
仲介手数料は、契約時に半額、決済時に残額を支払うのが一般的です。
測量費(境界確定測量)
土地の境界を明確にするための測量費用です。隣地所有者の立ち会いが必要です。
費用相場:
- 一般的な住宅地: 30〜50万円
- 隣地が多い・面積が広い: 50〜80万円
測量は必須ではありませんが、買主が安心して購入できるため、売却価格に反映できる可能性があります。
登記費用
所有権移転登記、抵当権抹消登記にかかる費用です。
| 項目 | 費用 | 負担者 | 
|---|---|---|
| 所有権移転登記(登録免許税) | 固定資産税評価額の2% | 買主 | 
| 所有権移転登記(司法書士報酬) | 5〜10万円 | 買主 | 
| 抵当権抹消登記(登録免許税) | 1物件あたり1,000円 | 売主 | 
| 抵当権抹消登記(司法書士報酬) | 1〜3万円 | 売主 | 
売主の負担は、抵当権抹消登記の費用のみです(ローンが残っている場合)。
印紙税
売買契約書に貼付する印紙税です。売却価格により異なります。
| 売却価格 | 印紙税(軽減後) | 
|---|---|
| 500万円超〜1,000万円以下 | 5,000円 | 
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 10,000円 | 
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30,000円 | 
(2027年3月31日まで軽減措置適用)
土地売却にかかる税金
土地を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
- 取得費: 土地の購入価格 + 購入時の仲介手数料 + 測量費等(不明な場合は売却価格の5%)
- 譲渡費用: 仲介手数料 + 測量費 + 登記費用 + 印紙税等
例:
- 売却価格: 3,000万円
- 取得費: 2,000万円(購入価格1,900万円 + 購入時の仲介手数料100万円)
- 譲渡費用: 200万円(仲介手数料105万円 + 測量費50万円 + その他45万円)
- 譲渡所得 = 3,000万円 - 2,000万円 - 200万円 = 800万円
長期譲渡所得と短期譲渡所得
国税庁によると、譲渡所得税の税率は、土地の所有期間により異なります。
| 所有期間 | 区分 | 税率 | 
|---|---|---|
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%) | 
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63%(所得税30.63% + 住民税9%) | 
重要: 所有期間は、売却した年の1月1日時点で判断します。例えば、2019年7月に購入し2025年1月に売却した場合、売却した年(2025年)の1月1日時点での所有期間は5年未満となり、短期譲渡所得となります。
例(所有期間5年超の場合):
- 譲渡所得: 800万円
- 税額: 800万円 × 20.315% = 約162万円
特別控除で税金を軽減
国税庁によると、以下の特別控除を適用すれば、譲渡所得から一定額を差し引くことができます。
| 特別控除 | 控除額 | 適用要件 | 
|---|---|---|
| 居住用財産3000万円控除 | 3,000万円 | 自己居住用の住宅・土地、居住しなくなった日から3年以内に売却 | 
| 空き家特例 | 3,000万円 | 相続した空き家を一定期間内に売却、耐震基準適合等の要件あり | 
| 取得費加算の特例 | 相続税の一部 | 相続した土地を相続開始後3年10ヶ月以内に売却 | 
例(居住用財産3000万円控除を適用した場合):
- 譲渡所得: 800万円
- 控除: 800万円(3,000万円の範囲内)
- 課税譲渡所得: 0円 → 税額0円
特別控除を適用するには、確定申告時に必要書類を提出する必要があります。詳細は税理士に相談してください。
高く売るコツ
土地を高く売るためのコツを5つ紹介します。
適切な売却時期の見極め
不動産市場は、時期により需給が変動します。一般的に、1〜3月(転勤・入学シーズン)は需要が高まり、売却しやすい傾向があります。
また、周辺で大型開発(駅の新設、商業施設の建設等)が予定されている場合は、開発前に売却すると価格が上がる可能性があります。
複数社への査定依頼
1社だけでなく、3〜5社に査定を依頼し、査定価格と根拠を比較しましょう。査定価格が高すぎる会社は、契約を取るために高値を提示している可能性があります。査定の根拠(周辺の取引事例、土地の条件等)を確認し、信頼できる不動産会社を選びましょう。
境界確定測量の実施
境界が不明確な土地は、買主が不安を感じ、売却価格が下がる可能性があります。境界確定測量(費用30〜80万円)を実施することで、買主の不安を解消し、売却価格に反映できる可能性があります。
更地 vs 古家付きの判断
古い建物が残っている土地を売却する場合、更地にするか古家付きで売却するかを判断する必要があります。
| 選択肢 | メリット | デメリット | 
|---|---|---|
| 更地 | 買主が建築計画を立てやすい | 解体費用がかかる(100〜200万円程度) | 
| 古家付き | 解体費用がかからない | 買主が解体費用を見込むため価格が下がる可能性 | 
周辺の取引事例、古家の状態、解体費用を考慮して判断しましょう。不動産会社に相談することをおすすめします。
広告・内覧対応の工夫
売却活動中は、以下の工夫で買主の印象を良くしましょう。
- 土地の清掃: 雑草を刈り、ゴミを撤去
- 周辺環境の情報提供: 学区、買い物施設、交通アクセス等を整理
- 柔軟な価格交渉: 買主の予算に応じて柔軟に対応
まとめ:専門家に相談しながら安心して売却を
土地売却は、事前準備→査定→媒介契約→売却活動→売買契約→決済・引き渡し→確定申告の7ステップで進めます。一般的に3〜6ヶ月程度かかります。
売却にかかる費用は、売却価格の5〜7%程度(仲介手数料、測量費、登記費用、印紙税、譲渡所得税等)です。譲渡所得税は、所有期間5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%と大きく異なるため、売却時期の判断が重要です。
特別控除(居住用財産3000万円控除、空き家特例、取得費加算の特例等)を活用すれば、税金を大きく軽減できます。高く売るコツは、適切な時期、複数社への査定依頼、境界確定測量、更地 vs 古家付きの判断です。
不動産会社、税理士、司法書士等の専門家に相談しながら、安心して売却を進めましょう。
