不動産の支払調書とは│提出義務と記載内容を完全解説
不動産の購入や売却を行う際、「支払調書とは何か」「誰が提出するのか」「自分は何をすれば良いのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産の支払調書の定義、提出義務者(不動産業者、買主等)、記載内容、提出期限を、国税庁の公式情報を元に解説します。
支払調書の仕組みを理解することで、不動産取引をスムーズに進められるようになります。
この記事のポイント
- 支払調書とは、不動産の購入・売却を国税庁に報告する法定調書の一つ
- 提出義務者は不動産業者(仲介・売主)、個人間取引では買主が提出
- 記載内容は物件情報、売買価格、譲渡人・譲受人の情報、支払年月日等
- 提出期限は支払確定日の翌年1月31日まで
- 一般個人(買主・売主)は原則として提出不要だが、法定調書の情報は確定申告で使用
不動産の支払調書とは│法定調書の一つ
不動産の支払調書とは、不動産の購入・売却を国税庁に報告する「法定調書」の一つです。国税庁によると、正式名称は「不動産等の譲受けの対価の支払調書」と「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の2種類があります。
不動産等の譲受けの対価の支払調書
この支払調書は、不動産を購入した際に、買主または仲介した不動産業者が国税庁に提出する書類です。
目的:
- 不動産取引の透明性を確保
- 譲渡所得税の課税漏れを防止
- 国税庁が不動産取引を把握
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
この支払調書は、不動産業者が仲介手数料を受け取った際に、不動産業者自身が国税庁に提出する書類です。
目的:
- 仲介手数料の収入を国税庁が把握
- 不動産業者の所得税の課税漏れを防止
一般の買主・売主は、これらの支払調書を直接提出する必要はありませんが、不動産業者から提出された情報は国税庁で管理され、確定申告の際に参照されます。
提出義務者│誰が支払調書を提出するのか
支払調書の提出義務は、取引の形態により異なります。
不動産業者(仲介・売主)が提出義務者の場合
不動産業者が仲介した場合:
- 不動産業者が「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を提出
- 仲介手数料を受け取った不動産業者は「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」も提出
不動産業者が売主の場合:
- 不動産業者が「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を提出
一般の買主・売主は、不動産業者が提出するため、自分で提出する必要はありません。
個人間取引では買主が提出義務者
個人間で不動産を売買した場合(不動産業者が介在しない場合)、買主が「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を提出する義務があります。
提出義務の条件:
- 個人間取引である
- 支払金額が100万円を超える
個人間取引は少ないですが、親族間売買や知人間売買の場合は買主が自分で提出する必要があります。
一般個人(買主・売主)の対応
一般の買主・売主は、以下の対応が求められます。
買主の対応:
- 不動産業者が仲介した場合: 提出不要(不動産業者が提出)
- 個人間取引の場合: 買主が提出(支払金額100万円超の場合)
売主の対応:
- 提出不要(不動産業者または買主が提出)
- ただし、確定申告は別途必要(譲渡所得が発生した場合)
記載内容│支払調書に記載される情報
支払調書には、以下の情報が記載されます。
物件情報
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 物件の所在地 | 土地・建物の住所 | 
| 物件の種類 | 土地、建物、マンション等 | 
| 面積 | 土地面積、建物延床面積 | 
| 構造 | 木造、鉄筋コンクリート造等 | 
売買価格
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 支払金額 | 不動産の売買価格 | 
| 固定資産税精算金 | 含まれる場合は明記 | 
譲渡人(売主)の情報
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 氏名・名称 | 個人名または法人名 | 
| 住所 | 譲渡人の住所 | 
| マイナンバー | 個人の場合はマイナンバー | 
譲受人(買主)の情報
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 氏名・名称 | 個人名または法人名 | 
| 住所 | 譲受人の住所 | 
| マイナンバー | 個人の場合はマイナンバー | 
支払年月日
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 支払年月日 | 決済日(残代金支払日) | 
これらの情報は、国税庁が不動産取引を把握するために使用されます。
提出期限│いつまでに提出するのか
支払調書の提出期限は、支払確定日の翌年1月31日までです。
例:
- 2025年3月に決済(残代金支払)
- 提出期限: 2026年1月31日
提出期限を過ぎると、罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科される可能性があります。ただし、実際には税務署から督促があることが多く、すぐに罰則が適用されるわけではありません。
提出方法
支払調書の提出方法は、以下の3つがあります。
| 提出方法 | 内容 | 
|---|---|
| 書面提出 | 税務署の窓口または郵送 | 
| e-Tax | オンラインで提出(電子申告) | 
| 光ディスク | CD-R等で提出(大量の場合) | 
不動産業者は、年間の取引件数が多いため、e-Taxでの提出が一般的です。個人間取引の買主が提出する場合は、書面提出が一般的です。
支払調書と確定申告の関係│売主は確定申告が必要
支払調書は国税庁への報告、確定申告は自分の申告
支払調書は、不動産業者または買主が国税庁に報告する書類です。一方、確定申告は、売主が自分の譲渡所得を申告する手続きです。
支払調書と確定申告の違い:
| 項目 | 支払調書 | 確定申告 | 
|---|---|---|
| 提出義務者 | 不動産業者または買主 | 売主(譲渡所得が発生した場合) | 
| 提出先 | 税務署(国税庁) | 税務署(国税庁) | 
| 提出期限 | 支払確定日の翌年1月31日 | 売却した翌年の2月16日-3月15日 | 
| 目的 | 不動産取引の報告 | 譲渡所得税の申告 | 
売主は確定申告が必要(譲渡所得が発生した場合)
不動産を売却して利益が出た場合、売主は確定申告が必要です。支払調書が提出されていても、確定申告は別途必要です。
確定申告が必要なケース:
- 譲渡所得が発生した場合(利益が出た場合)
- 3000万円特別控除等の特例を適用する場合(譲渡所得が0円になる場合でも申告必須)
確定申告が不要なケース:
- 譲渡所得が発生しなかった場合(利益が出なかった場合)
- 特例を適用しない場合
確定申告をしないと、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。計算が複雑なため、税理士への相談を推奨します。
支払調書の情報は確定申告で参照される
支払調書で報告された情報は、国税庁のデータベースに登録されます。確定申告の際、国税庁は支払調書の情報と確定申告の内容を照合し、申告漏れや虚偽申告をチェックします。
照合されるポイント:
- 売却価格(譲渡価額)
- 売却年月日
- 物件の所在地
そのため、確定申告では支払調書の情報と一致する内容を申告することが重要です。
よくある疑問│支払調書に関するQ&A
支払調書は自分に届きますか?
支払調書は、国税庁に提出される書類であり、原則として買主・売主には届きません。ただし、不動産業者によっては、参考として買主・売主に写しを渡すことがあります。
支払調書を紛失した場合は?
支払調書は買主・売主が保管する書類ではないため、紛失しても問題ありません。確定申告に必要な情報(売却価格、売却年月日等)は、売買契約書や決済時の書類で確認できます。
仲介手数料も支払調書に記載されますか?
仲介手数料は、「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」に記載されます。ただし、この支払調書は仲介手数料を受け取った不動産業者が提出するもので、買主・売主が提出する「不動産等の譲受けの対価の支払調書」には記載されません。
マイナンバーは必要ですか?
支払調書には、譲渡人(売主)と譲受人(買主)のマイナンバーの記載が必要です。不動産業者が支払調書を提出する場合、不動産業者が買主・売主にマイナンバーの提供を求めます。
個人間取引で買主が支払調書を提出する場合、売主のマイナンバーを記載する必要があります。ただし、マイナンバーの取得が困難な場合は、住民票の写し等で代替できる場合もあります。
まとめ:支払調書の仕組みを理解してスムーズな取引を
不動産の支払調書は、不動産の購入・売却を国税庁に報告する法定調書の一つです。提出義務者は不動産業者(仲介・売主)、個人間取引では買主が提出します。記載内容は物件情報、売買価格、譲渡人・譲受人の情報、支払年月日等です。
提出期限は支払確定日の翌年1月31日までです。一般個人(買主・売主)は原則として提出不要ですが、法定調書の情報は確定申告で使用されます。売主は、譲渡所得が発生した場合、確定申告が別途必要です。
支払調書の仕組みを理解することで、不動産取引をスムーズに進められます。不明点がある場合は、不動産業者や税理士に相談しながら進めましょう。
