不動産と税金の基礎知識
不動産の購入や保有、売却には、さまざまな税金が関わってきます。「どんな税金がかかるのか分からない」「全体像を把握したい」と感じる方は多いでしょう。不動産税金は複雑で、購入時・保有時・売却時の各段階で異なる税金が発生します。
この記事では、不動産に関わる税金の全体像を、初心者にも分かりやすく時系列(購入→保有→売却)で整理します。国税庁や総務省などの公的機関の情報を元に、各税金の概要と大まかな税率を提示し、詳細は個別記事へリンクします。
不動産税金の全体像を把握し、適切な準備を進めましょう。
この記事のポイント
- 不動産税金は「購入時」「保有時」「売却時」の3段階で発生
- 購入時:不動産取得税・登録免許税・印紙税がかかる
- 保有時:固定資産税・都市計画税が毎年かかる
- 売却時:譲渡所得税・住民税・印紙税がかかる
購入時にかかる税金
不動産を購入する際には、物件価格以外に複数の税金が発生します。購入時の税金は、取得後6ヶ月~1年後に納税通知が来るものもあるため、事前に把握しておくことが重要です。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を取得した際に都道府県が課税する地方税です。
税率:
- 土地・住宅:固定資産税評価額の3%
- 非住宅(店舗・事務所等):固定資産税評価額の4%
納税時期: 取得後6ヶ月~1年後に納税通知書が届く
軽減措置: 新築住宅や中古住宅(一定の要件を満たす)の場合、評価額から一定額を控除できる特例があります。例えば、新築住宅は評価額から最大1,200万円控除できます。
登録免許税
登録免許税は、不動産の所有権移転登記や抵当権設定登記を行う際に国が課税する税金です。
税率:
- 所有権移転登記(土地):固定資産税評価額の1.5%(軽減税率適用時)
- 所有権移転登記(建物):固定資産税評価額の0.3%(軽減税率適用時)
- 抵当権設定登記:債権額の0.1%(軽減税率適用時)
納税時期: 登記時に法務局で納付
軽減税率は期限付きの特例のため、適用期限を確認しましょう。
印紙税
印紙税は、不動産売買契約書や建築請負契約書に貼付する税金です。
税額(売買契約書):
- 1,000万円超~5,000万円以下:1万円(軽減税率適用時)
- 5,000万円超~1億円以下:3万円(軽減税率適用時)
納税時期: 契約時に印紙を購入・貼付
印紙税も軽減税率の特例があり、期限付きです。
保有時にかかる税金
不動産を保有している間は、毎年固定資産税と都市計画税が課税されます。これらは地方税で、市区町村に納付します。
固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に課税される市区町村税です。
税率: 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)
納税時期: 毎年4期(4月・7月・12月・2月頃)に分納、または一括払い
固定資産税評価額は、市区町村が3年ごとに見直します。土地・建物の時価の約70%が目安です。
住宅用地の特例: 住宅用地の場合、以下の軽減措置があります。
| 区分 | 軽減率 | 
|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額を1/6に軽減 | 
| 一般住宅用地(200㎡超) | 評価額を1/3に軽減 | 
この特例により、固定資産税が大幅に減額されます。
都市計画税
都市計画税は、都市計画区域内の土地・建物に課税される市区町村税です。
税率: 固定資産税評価額 × 最大0.3%(市区町村により異なる。お住まいの地域の税率は、市区町村の公式サイトまたは納税通知書で確認してください)
納税時期: 固定資産税と一緒に納付
都市計画税も、住宅用地の特例があります(小規模住宅用地は1/3、一般住宅用地は2/3に軽減)。
売却時にかかる税金
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税と住民税が課税されます。売却時には印紙税もかかります。
譲渡所得税・住民税
譲渡所得税・住民税は、不動産売却益(譲渡所得)に課税される税金です。
計算式:
譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)
税率:
- 所有期間5年超(長期):所得税15.315% + 住民税5% = 20.315%
- 所有期間5年以下(短期):所得税30.63% + 住民税9% = 39.63%
所有期間によって税率が約2倍異なるため、売却時期の選択が重要です。
納税時期: 確定申告(翌年2-3月)で納付
詳細は「不動産売却益にかかる税金の計算方法」の記事をご参照ください。
印紙税
売買契約書に印紙を貼付します。税額は購入時と同じです。
不動産に関するその他の税金
上記以外にも、不動産に関連する税金があります。
相続税・贈与税
不動産を相続または贈与により取得した場合、相続税または贈与税が課税されます。
相続税:
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数
遺産総額が基礎控除額を超える場合に課税されます。
贈与税:
年間110万円の基礎控除があり、これを超える贈与に課税されます。
小規模宅地等の特例などの軽減措置もあります。
消費税
建物の購入・建築時には消費税が課税されます(税率10%)。ただし、土地は非課税です。
課税・非課税の区分:
- 建物: 課税
- 土地: 非課税
- 個人間売買(中古住宅): 非課税
- 不動産業者からの購入: 課税
不動産税金の軽減措置
不動産税金には、さまざまな軽減措置が用意されています。適切に活用することで、税金を大幅に減額できます。
住宅用地の特例
固定資産税・都市計画税において、住宅用地の評価額を軽減する特例です。
- 小規模住宅用地(200㎡以下): 固定資産税評価額を1/6に軽減
- 一般住宅用地(200㎡超): 固定資産税評価額を1/3に軽減
新築住宅の軽減措置
新築住宅の場合、一定期間(一般住宅3年、マンション5年)、固定資産税の税額が1/2に減額されます。
適用要件:
- 床面積が50㎡以上280㎡以下
- 居住用であること
3,000万円特別控除
居住用財産を売却する場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。
適用要件:
- 自己の居住用財産であること
- 居住しなくなってから3年以内の譲渡
- 過去2年以内に同特例を受けていない
譲渡所得が3,000万円以下の場合、税金はゼロになります。
まとめ
不動産税金は、購入・保有・売却の各段階で発生します。
購入時の税金:
不動産取得税(3-4%)、登録免許税(0.1-1.5%)、印紙税(1-3万円程度)
保有時の税金:
固定資産税(評価額×1.4%)、都市計画税(評価額×最大0.3%)が毎年課税
売却時の税金:
譲渡所得税・住民税(20.315%または39.63%)、印紙税
各税金には軽減措置も用意されているため、適用要件を確認して活用しましょう。不動産税金は複雑なので、不明点がある場合は税理士に相談することをおすすめします。
