土地の売買【完全ガイド】流れ・税金・注意点を解説

公開日: 2025/11/1

土地の売買とは?売主・買主が知っておくべき基礎知識

土地を売却・購入する際、「どんな手続きが必要なのか」「どれくらいの期間がかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。土地売買は建物と異なり、境界確定や地中埋設物など特有の注意点があり、事前の理解が重要です。

この記事では、土地売買の流れ・必要書類・税金・注意点を、国土交通省国税庁の公式情報を元に解説します。

初めて土地売買に取り組む方でも、契約から引き渡しまでの全体像を理解し、スムーズに手続きを進められるようになります。

この記事のポイント

  • 土地売買は査定から引き渡しまで3-6ヶ月程度が目安
  • 売主側は境界確定測量(費用30-100万円・期間3-6ヶ月)が必要になる場合がある
  • 買主側は重要事項説明で法令制限・権利関係を確認し、住宅ローン審査を経て決済へ
  • 譲渡所得税は長期譲渡(5年超保有)20.315%・短期譲渡(5年以下)39.63%、特別控除3000万円等の節税措置あり
  • 土地特有の注意点(境界確定・地中埋設物・土壌汚染・用途制限等)を事前に確認することがトラブル防止の鍵

土地売買の流れ(売主側)

売主側の手続きは、査定から引き渡しまで5つのステップに分かれます。所要期間は3-6ヶ月程度が目安です。

ステップ1: 査定・価格決定

複数の不動産会社に査定を依頼し、売却価格を決定します。査定では以下の要素が考慮されます。

査定額は不動産会社により異なるため、3社以上に依頼して比較することをおすすめします。所要期間は1-2週間程度です。

ステップ2: 媒介契約の締結

不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には3種類があります。

媒介契約の種類 特徴 メリット デメリット
専属専任媒介 1社のみ、自己発見取引不可 積極的な営業活動、レインズ登録義務あり 他社と比較できない
専任媒介 1社のみ、自己発見取引可 レインズ登録義務あり 他社と比較できない
一般媒介 複数社可、自己発見取引可 複数社で競争 営業活動が消極的になる可能性

仲介手数料の上限は、売買価格が400万円超の場合、売買価格×3%+6万円+消費税です。例えば、売買価格3,000万円の場合、仲介手数料の上限は105.6万円(税込)となります。

ステップ3: 売却活動(広告・内見)

不動産会社が広告を出し、購入希望者の内見対応を行います。土地の場合、以下の準備が必要です。

  • 境界標の確認(見つからない場合は境界確定測量が必要)
  • 草刈り・ゴミの撤去
  • 測量図・登記事項証明書の準備

所要期間は1-3ヶ月程度ですが、立地や価格により変動します。

ステップ4: 売買契約の締結

購入希望者が見つかったら、売買契約を締結します。契約時には以下を確認します。

重要事項説明書の記載内容:

  • 物件の所在・面積・用途地域
  • 権利関係(所有権・抵当権等)
  • 法令制限(建築基準法・都市計画法等)
  • インフラ整備状況(上下水道・ガス等)
  • 契約不適合責任(瑕疵担保責任)の範囲

(出典: 国土交通省 重要事項説明書様式

売買契約書の記載内容:

  • 売買価格・支払方法
  • 手付金の額(売買価格の5-10%が一般的)
  • 引き渡し時期
  • 契約解除条件
  • 印紙税(2025年時点、1000万円超5000万円以下→1万円、5000万円超1億円以下→3万円、軽減措置適用で半額)

手付金は契約成立の証拠であり、買主が契約解除する場合は放棄、売主が契約解除する場合は倍返し(手付金の2倍を買主に支払う)が原則です。

ステップ5: 決済・引き渡し

契約締結から1-2ヶ月後、決済・引き渡しを行います。当日の流れは以下の通りです。

  1. 残代金の受領(買主→売主)
  2. 所有権移転登記の申請(司法書士が代行)
  3. 鍵・書類の引き渡し
  4. 固定資産税の清算(1月1日時点の所有者が納税義務を負うため、引き渡し日以降の日割り分を買主が負担)

売主側の必要書類:

  • 登記済権利証または登記識別情報通知書
  • 印鑑証明書(3ヶ月以内)
  • 固定資産税評価証明書
  • 境界確認書・測量図
  • 身分証明書

所有権移転登記の費用(登録免許税・司法書士報酬)は買主負担が一般的です。

土地売買の流れ(買主側)

買主側の手続きも5つのステップに分かれます。

ステップ1: 土地探し・情報収集

土地探しの方法は以下の通りです。

希望条件(予算・立地・面積・用途地域等)を明確にし、複数の物件を比較することをおすすめします。

ステップ2: 現地調査・重要事項説明

現地調査では、以下を確認します。

  • 接道状況(建築基準法の接道義務:幅員4m以上の道路に2m以上接道)
  • 境界標の有無
  • 隣地の状況(越境物・境界トラブルの有無)
  • 用途地域・建ぺい率・容積率(市区町村のWebサイトで確認可能)
  • インフラ整備状況(上下水道・ガス・電気の引き込み状況)

重要事項説明は、宅地建物取引士が契約前に行う説明義務(宅建業法35条)です。物件情報・法令制限・権利関係等を詳細に説明し、買主が十分理解した上で契約に進みます。

ステップ3: 売買契約の締結

売主側と同様、売買契約書に署名・押印し、手付金を支払います。契約締結後8日以内であれば、クーリングオフ制度により無条件解除が可能です(ただし、事務所等での契約締結時は適用外)。

ステップ4: 住宅ローン申込・審査

住宅ローンを利用する場合、金融機関に申込を行います。審査期間は1-2週間程度です。

住宅ローン利用時の必要書類:

  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
  • 収入証明書(源泉徴収票・確定申告書等)
  • 売買契約書・重要事項説明書
  • 物件の登記事項証明書

住宅ローンが承認されない場合、「ローン特約」により契約を白紙解除できる条項を設けることが一般的です。

ステップ5: 決済・所有権移転登記

売主側と同様、決済日に残代金を支払い、所有権移転登記を行います。登記費用(登録免許税・司法書士報酬)は買主負担が一般的で、登録免許税は土地の固定資産税評価額の2%(2025年時点)です。

土地売買でかかる税金と費用

土地売買では、売主・買主双方に税金・費用が発生します。

譲渡所得税の計算方法(売主側)

土地売却により利益が出た場合、譲渡所得税が課されます。計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡収入 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除

  • 譲渡収入: 売却価格
  • 取得費: 購入時の価格・仲介手数料・登記費用等(不明な場合は譲渡収入の5%)
  • 譲渡費用: 仲介手数料・測量費・解体費等
  • 特別控除: 居住用財産3000万円控除、公共事業5000万円控除等

(出典: 国税庁 No.1440 譲渡所得

税率(2025年時点):

  • 長期譲渡所得(5年超保有): 所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315% = 20.315%
  • 短期譲渡所得(5年以下保有): 所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税0.63% = 39.63%

計算例:

  • 譲渡収入: 3,000万円
  • 取得費: 2,000万円
  • 譲渡費用: 100万円(仲介手数料・測量費等)
  • 保有期間: 8年(長期譲渡所得)

譲渡所得 = 3,000万円 - 2,000万円 - 100万円 = 900万円

譲渡所得税 = 900万円 × 20.315% = 約183万円

不動産取得税・印紙税(買主側)

不動産取得税: 土地取得時に課される地方税で、固定資産税評価額の3%が課税されます(2027年3月31日まで軽減措置適用)。

印紙税: 売買契約書に貼付する印紙税は、売買価格に応じて決定されます(2027年3月31日まで軽減措置適用で半額)。

売買価格 印紙税(軽減後)
1000万円超5000万円以下 1万円
5000万円超1億円以下 3万円
1億円超5億円以下 6万円

(出典: 国税庁)

仲介手数料・登記費用(双方)

仲介手数料: 不動産会社に支払う成功報酬で、上限は以下の通りです(400万円超の場合)。

仲介手数料(上限) = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税

例: 売買価格3,000万円の場合、仲介手数料(上限)= 3,000万円 × 3% + 6万円 + 消費税 = 105.6万円(税込)

登記費用: 所有権移転登記の登録免許税(土地の固定資産税評価額の2%)と司法書士報酬(5-10万円程度)がかかります。

節税のための特別控除

国税庁によると、以下の特別控除を適用できる場合があります。

  • 居住用財産の3000万円特別控除: 居住用財産を譲渡した場合、3000万円まで譲渡所得から控除
  • 公共事業等の5000万円特別控除: 公共事業のために土地を譲渡した場合、5000万円まで控除
  • 相続空き家の3000万円特別控除: 相続した空き家を譲渡した場合、要件を満たせば3000万円まで控除

詳細は税理士に相談することをおすすめします。

土地売買特有の注意点

土地売買には、建物売買と異なる特有のリスクがあります。

境界確定測量の必要性と手続き

境界確定測量とは: 隣地所有者立会いのもと、土地家屋調査士が境界を確定する測量です。買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関が境界確定を条件とすることが多いです。

費用相場: 30-100万円(土地の面積・形状により変動)

所要期間: 3-6ヶ月(隣地所有者との調整に時間がかかる場合あり)

手続きの流れ:

  1. 土地家屋調査士に依頼
  2. 隣地所有者に立会いを依頼
  3. 境界標の設置・測量図の作成
  4. 境界確認書に署名・押印

境界が確定していない土地は、売却後に隣地とのトラブルに発展するリスクがあるため、売却前に境界確定測量を実施することを推奨します。

地中埋設物・土壌汚染のリスク

地中埋設物: コンクリートガラ・産業廃棄物・旧建物の基礎等が地中に埋まっている場合、撤去費用(数十万円~数百万円)が発生します。契約前に売主・買主間で費用負担を明確にする必要があります。

土壌汚染: 過去に工場・ガソリンスタンド等があった土地は、土壌汚染調査が必要です。汚染が発覚した場合、浄化費用(数百万円~数千万円)がかかるため、契約前に調査を実施することをおすすめします。

契約不適合責任: 民法改正(2020年)により、売主は契約内容との不一致について責任を負います。地中埋設物・土壌汚染が発覚した場合、買主は売主に対して損害賠償請求・契約解除を求めることができます。

用途制限・建築制限の確認

用途地域: 都市計画法により、土地の用途(住宅・商業・工業等)が制限されています。用途地域は市区町村のWebサイトで確認できます。

建築制限: 以下の制限があり、建築可能な建物の規模・形状が決まります。

  • 建ぺい率: 敷地面積に対する建築面積の割合
  • 容積率: 敷地面積に対する延床面積の割合
  • 高さ制限: 北側斜線制限・道路斜線制限等
  • 接道義務: 幅員4m以上の道路に2m以上接道

購入前に建築制限を確認し、希望する建物が建築可能かを確認することをおすすめします。

契約不適合責任(瑕疵担保責任)

民法改正(2020年)により、「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変更され、買主保護が強化されました。売主は契約内容との不一致について責任を負い、買主は以下を請求できます。

  • 追完請求: 修補・代替物の引き渡し
  • 代金減額請求: 契約不適合の程度に応じた代金減額
  • 損害賠償請求: 契約不適合により生じた損害の賠償
  • 契約解除: 契約不適合が重大な場合

売買契約書で責任の範囲・期間を明記することが重要です。

まとめ:土地売買は専門家と一緒に進めよう

土地売買は、売主・買主双方にとって契約から引き渡しまで3-6ヶ月程度かかる大きな取引です。売主側は境界確定測量・譲渡所得税の計算、買主側は重要事項説明の確認・住宅ローン審査等、多くの手続きが必要です。

土地特有の注意点(境界確定・地中埋設物・土壌汚染・用途制限等)を事前に確認し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。仲介手数料・譲渡所得税等の費用も事前に把握しておくことで、無理のない資金計画を立てられます。

信頼できる不動産会社や司法書士、税理士等の専門家に相談しながら、安全かつスムーズに土地売買を進めましょう。

よくある質問

Q1土地売買に仲介業者は必須ですか?

A1必須ではありませんが、個人間売買(親族間・知人間)でもトラブル防止のため司法書士や土地家屋調査士への依頼を推奨します。重要事項説明義務・契約書作成・登記手続き等の専門知識が必要なため、不動産会社の仲介が一般的です。仲介手数料の上限は売買価格×3%+6万円+消費税(400万円超の場合)で、専門家のサポートを受けることでトラブルリスクを大幅に減らせます。

Q2境界が確定していない土地は売却できますか?

A2売却自体は可能ですが、買主が住宅ローンを利用する場合は金融機関が境界確定を条件とすることが多いです。トラブル防止のため、売却前に境界確定測量(費用30-100万円・期間3-6ヶ月)を実施することを推奨します。境界が確定していない場合、売却後に隣地とのトラブルに発展するリスクがあるため、土地家屋調査士に依頼して境界を確定しておくことが安全です。

Q3土地売買の手付金はいくらが相場ですか?

A3売買価格の5-10%が一般的です。手付金は契約成立の証拠であり、買主が契約解除する場合は放棄、売主が契約解除する場合は倍返し(手付金の2倍を買主に支払う)が原則です。金額は売主・買主の協議で決定しますが、高額すぎると買主の負担が大きく、低額すぎると契約の拘束力が弱まるため、適切な金額設定が重要です。

Q4譲渡所得税の確定申告はいつまでですか?

A4土地を売却した年の翌年2月16日~3月15日が確定申告期間です。譲渡所得がある場合は申告義務があり、期限を過ぎると延滞税・無申告加算税が課される可能性があります。特別控除(居住用財産3000万円控除等)を適用する場合も確定申告が必要です。確定申告書には売買契約書・取得費の領収書・譲渡費用の領収書等の添付が必要なため、早めに準備しておくことをおすすめします。

Q5土地の売買契約書に印紙税はいくらかかりますか?

A5売買価格に応じて印紙税額が決定します(2025年時点、軽減措置適用で2027年3月31日まで半額)。例: 1000万円超5000万円以下→1万円、5000万円超1億円以下→3万円。印紙は契約書に貼付して消印(割印)が必要です。印紙が貼付されていない場合、過怠税(印紙税額の3倍)が課されるため、契約締結時に必ず確認してください。