土地売却とは|売却を成功させるための基礎知識
土地を売却する際、「何から始めればいいのか」「手続きは複雑なのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、土地売却の流れ(6つのステップ)、費用・税金の具体的な金額目安、高く売るための実践的なコツを、国土交通省・国税庁の公式情報を元に解説します。
初めて土地を売却する方でも、全体像を理解し、スムーズに手続きを進められるようになります。
この記事のポイント
- 土地売却は6ステップ(査定依頼→媒介契約→売却活動→売買契約→決済・引渡し→確定申告)で進む
- 仲介手数料は「売買価格×3%+6万円×消費税」、測量費は数十万円が目安
- 譲渡所得税は所有期間5年未満が39.63%、5年以上が20.315%と大きく異なる
- 複数社に査定依頼、境界確定、更地化の判断が高く売るためのポイント
- 売却後は翌年の2月16日〜3月15日に確定申告が必須
土地売却の6つのステップ|流れを完全理解
土地売却は以下の6ステップで進みます。各ステップで「何をするか」「なぜ必要か」「注意点」を理解しておくことが重要です。
ステップ1:査定依頼(複数社に依頼する理由)
不動産会社に土地の査定を依頼します。査定では、土地の立地、面積、形状、周辺相場などを考慮して、売却予想価格が提示されます。
複数社に査定依頼する理由は、各社で査定額が異なるためです。1社だけでは相場が分からず、安く売却してしまうリスクがあります。一括査定サービスを活用すれば、複数社に一度に依頼できます。
ステップ2:媒介契約の締結(専属専任・専任・一般の選び方)
信頼できる不動産会社を選び、媒介契約を結びます。媒介契約には以下の3種類があります。
| 契約種別 | 複数社への依頼 | 自己発見取引 | レインズ登録 | 活動報告 | 
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 不可(1社のみ) | 不可 | 義務(5日以内) | 週1回以上 | 
| 専任媒介 | 不可(1社のみ) | 可能 | 義務(7日以内) | 週2回以上 | 
| 一般媒介 | 可能(複数社) | 可能 | 任意 | 任意 | 
(出典: 国土交通省)
専属専任・専任媒介は1社に専念して売却活動を行うため、不動産会社が積極的に動いてくれる可能性が高くなります。一般媒介は複数社に依頼できますが、各社の優先度が下がるリスクがあります。
ステップ3:売却活動(レインズ登録と広告展開)
不動産会社が売却活動を開始します。専属専任・専任媒介の場合、レインズ(REINS)という不動産会社専用の物件情報ネットワークに登録され、全国の不動産会社が物件情報を閲覧できるようになります。
広告はインターネット、チラシ、店頭掲示などで展開されます。内覧希望者が現れた場合は、立ち会いまたは不動産会社に任せます。
ステップ4:売買契約の締結(重要事項説明と契約不適合責任)
買主が見つかったら、売買契約を締結します。契約前に、不動産会社から重要事項説明が行われます。重要事項説明では、土地の権利関係、法令上の制限、インフラ設備などが説明されます。
契約不適合責任(2020年民法改正後)に注意が必要です。契約不適合責任とは、売却物件が契約内容に適合しない場合、買主が追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除を行える制度です。
売買契約書には、契約不適合責任の免責特約や期間制限を明記し、売却後のトラブルを防ぐことが重要です。
ステップ5:決済・引渡し(所有権移転と鍵の引渡し)
契約締結から約1ヶ月後、決済・引渡しを行います。買主から売買代金を受け取り、所有権移転登記を行います。登記は司法書士に依頼するのが一般的です。
土地に建物がある場合は、鍵の引渡しや残置物の撤去を行います。抵当権が設定されている場合は、決済と同時に抵当権抹消登記を行います。
ステップ6:確定申告(売却後の義務)
土地を売却して利益が出た場合、翌年の2月16日〜3月15日に確定申告が必須です。売却益は「譲渡所得」として課税されます。
確定申告を怠ると、無申告加算税(15〜20%)と延滞税が課されるため、必ず期限内に申告してください。売却損の場合は申告不要ですが、損益通算で節税できる場合があります。
土地売却にかかる費用|仲介手数料・測量費・登記費用の目安
土地売却時には以下の費用がかかります。売買価格2000万円の場合の具体例も示します。
仲介手数料の計算方法(売買価格×3%+6万円×消費税)
不動産会社に支払う仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法で以下のように定められています(国土交通省)。
- 売買価格200万円以下: 売買価格×5%+消費税
- 売買価格200万円超〜400万円以下: 売買価格×4%+2万円+消費税
- 売買価格400万円超: 売買価格×3%+6万円+消費税
例: 売買価格2000万円の場合
- 仲介手数料: 2000万円×3%+6万円 = 66万円
- 消費税10%: 66万円×1.1 = 72.6万円
測量費の目安(境界確定測量で数十万円)
境界が不明確な土地は、境界確定測量を実施する必要があります。土地家屋調査士に依頼し、隣地所有者の立会いのもと境界を確定します。
測量費の目安は以下の通りです。
- 境界確定測量: 30〜80万円(土地の広さ・隣地の数により変動)
- 現況測量: 10〜30万円(境界確定なし)
抵当権抹消費用・登記費用(数万円)
抵当権が設定されている場合、抵当権抹消登記が必要です。司法書士に依頼する場合、1〜3万円程度が目安です。
所有権移転登記の費用(登録免許税)は買主負担が一般的ですが、売主負担になるケースもあります。
売買価格2000万円の場合の総費用例:
- 仲介手数料: 72.6万円
- 測量費: 50万円(境界確定測量)
- 抵当権抹消費用: 2万円
- 合計: 約124.6万円
土地売却にかかる税金|譲渡所得税の計算方法と節税対策
土地を売却して利益が出た場合、譲渡所得税と住民税が課されます。
譲渡所得税の計算式(売却益-取得費-譲渡費用)
譲渡所得は以下の計算式で求めます(国税庁)。
譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
- 取得費: 土地を購入した際の価格、購入時の諸費用、設備費など
- 譲渡費用: 仲介手数料、測量費、広告費、解体費など
取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費とみなすことができます(概算取得費)。
長期譲渡・短期譲渡の税率の違い(5年が分岐点)
譲渡所得税の税率は、所有期間により大きく異なります(2025年時点)。
| 所有期間 | 税率(所得税+住民税) | 
|---|---|
| 5年以下(短期譲渡所得) | 39.63%(所得税30.63% + 住民税9%) | 
| 5年超(長期譲渡所得) | 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%) | 
(出典: 国税庁)
所有期間5年超の場合、税率が約半分になります。売却時期を調整できる場合は、5年を超えてから売却することで節税できます。
3000万円特別控除の適用条件(居住用財産のみ)
居住用財産(自宅の敷地)を売却した場合、譲渡所得から最大3000万円を控除できます。ただし、以下の要件があります。
- 自分が住んでいた家屋またはその敷地を売却
- 売却先が配偶者・直系血族等でないこと
- 前年・前々年に3000万円控除を受けていないこと
空き地や賃貸用の土地は対象外です。居住用財産に該当するか、税理士に相談して確認することをおすすめします。
土地を高く売るための5つのコツ|実践的なノウハウ
土地を高く、スムーズに売却するための実践的なコツを5つ紹介します。
1. 複数社に査定依頼する(一括査定サービスの活用)
不動産会社によって査定額が異なるため、複数社に査定依頼することが重要です。一括査定サービスを活用すれば、一度の入力で複数社に依頼でき、相場を正確に把握できます。
査定額だけでなく、営業担当者の対応や売却実績も比較しましょう。
2. 境界を確定しておく(トラブル防止と信頼性向上)
境界が不明確な土地は、買主が購入を躊躇するリスクがあります。売却前に境界確定測量を実施し、境界を明確にしておくことで、買主の信頼を獲得でき、スムーズな取引が可能になります。
境界確定には隣地所有者の立会いが必要なため、時間がかかる場合があります。早めに準備しましょう。
3. 更地化の判断(建物解体のメリット・デメリット)
古い建物が建っている土地は、更地にすべきか判断が必要です。
更地化のメリット:
- 買主の選択肢が広がる(新築を建てたい人も購入できる)
- 境界が明確になる
- 売却価格が上がる可能性がある
更地化のデメリット:
- 解体費用がかかる(木造100〜150万円、RC造200〜300万円)
- 固定資産税が上がる(住宅用地の特例が外れる)
- 解体後も売れるとは限らない
不動産会社と相談し、周辺の売却事例を参考に判断しましょう。
4. 売却時期を見極める(市況と税制を考慮)
不動産市況は時期により変動します。一般的に、春(2〜4月)と秋(9〜11月)は需要が高まる時期とされています。
また、所有期間5年超で長期譲渡所得の税率(20.315%)が適用されるため、税制面でも売却時期を考慮しましょう。
5. 売却理由を正直に伝える(買主の信頼獲得)
売却理由を正直に伝えることで、買主の信頼を獲得できます。「相続で取得したが活用予定がない」「住み替えのため」などの理由は、買主にとって納得しやすく、スムーズな交渉につながります。
隠していた情報が後で発覚すると、契約不適合責任で追及されるリスクがあります。
土地売却の注意点|トラブルを防ぐためのポイント
土地売却で陥りがちなトラブルと対策を説明します。
契約不適合責任とは(2020年民法改正後の新ルール)
2020年の民法改正により、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変更されました。契約不適合責任では、売却物件が契約内容に適合しない場合、買主は以下を請求できます。
- 追完請求: 修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しを請求
- 代金減額請求: 追完不能または拒絶時に代金減額を請求
- 損害賠償請求: 損害が発生した場合に賠償を請求
- 契約解除: 重大な契約不適合の場合に契約解除
売買契約書には、契約不適合責任の免責特約や期間制限(引渡し後3ヶ月など)を明記し、売却後のトラブルを防ぎましょう。
境界未確定のリスク(後日トラブルの原因)
境界が不明確なまま売却すると、後日、買主と隣地所有者の間で境界トラブルが発生するリスクがあります。売主が契約不適合責任を問われる可能性もあります。
境界確定測量を実施し、境界標を設置しておくことで、トラブルを未然に防げます。
確定申告を忘れずに(無申告加算税・延滞税のリスク)
土地を売却して利益が出た場合、翌年の2月16日〜3月15日に確定申告が必須です。確定申告を忘れると、無申告加算税(15〜20%)と延滞税が課されます。
売却損の場合は申告不要ですが、損益通算で他の所得と相殺できる場合があるため、申告を検討しましょう。
まとめ|土地売却を成功させるために
土地売却は、6つのステップ(査定依頼→媒介契約→売却活動→売買契約→決済・引渡し→確定申告)で進みます。費用は仲介手数料・測量費・登記費用で売買価格の5〜8%程度、税金は所有期間5年超なら20.315%、5年未満なら39.63%が目安です。
高く売るためには、複数社に査定依頼、境界確定、更地化の判断、売却時期の見極め、売却理由を正直に伝えることが重要です。
契約不適合責任、境界未確定、確定申告漏れに注意し、信頼できる不動産会社や税理士に相談しながら、スムーズな売却を目指しましょう。
