連帯債務型住宅ローンとは?共働き夫婦に注目される理由
共働き夫婦が住宅ローンを組む際、「夫婦で借りたいけど諸費用は抑えたい」「住宅ローン控除を夫婦で受けたい」と考える方は多いのではないでしょうか。
この記事では、連帯債務型住宅ローンを取り扱う銀行、ペアローンとの違い、メリット・デメリット、選び方を解説します。住宅金融支援機構のフラット35、三井住友銀行、地方銀行等の公式情報を元に、状況別の最適な選び方をお伝えします。
この記事のポイント
- 連帯債務型は契約1本で諸費用が半分で済み、夫婦とも住宅ローン控除を受けられる
- フラット35、三井住友銀行(クロスサポート)、地方銀行(群馬銀行、大垣共立銀行等)で取り扱いがある
- 通常は団信加入が1人のみだが、フラット35のデュエット(+0.18%)や三井住友銀行のクロスサポートなら夫婦とも加入可能
- ペアローンとの違いを理解し、諸費用重視なら連帯債務型、団信重視・選択肢の多さならペアローンを検討
(1) 夫婦で住宅ローンを組む3つの方法(連帯債務・ペアローン・連帯保証)
夫婦で住宅ローンを組む方法には以下の3つがあります。
- 連帯債務型: 夫婦が連帯して1つの住宅ローンを借りる(契約1本)
- ペアローン: 夫婦それぞれが住宅ローンを契約する(契約2本)
- 連帯保証: 一方が債務者、もう一方が連帯保証人となる(契約1本)
これらの違いは、契約本数、諸費用、住宅ローン控除、団信加入の可否にあります。
(2) 連帯債務型が選ばれる理由(諸費用節約・住宅ローン控除)
連帯債務型が選ばれる主な理由は以下の2つです。
- 諸費用が1契約分で済む:ペアローンは契約2本のため印紙代・事務手数料が2倍かかるのに対し、連帯債務型は1契約分のみ
- 夫婦とも住宅ローン控除を受けられる:連帯保証では債務者のみ控除を受けられるが、連帯債務型では夫婦とも受けられる
ただし、取扱銀行が限られるため、選択肢を広げたい場合はペアローンも検討する必要があります。
連帯債務型の基礎知識|ペアローン・連帯保証との違い
連帯債務型の仕組みと、ペアローン・連帯保証との違いを理解しましょう。
(1) 連帯債務型の仕組み(契約1本、夫婦とも債務者)
連帯債務型は、夫婦が連帯して1つの住宅ローンを借りる方法です。契約は1本ですが、夫婦とも主債務者と同等の債務を負うため、どちらも返済義務を負います。
たとえば、3,000万円の住宅ローンを連帯債務で借りた場合、夫が2,000万円、妻が1,000万円を負担するのではなく、夫婦とも3,000万円の債務を負う形になります。ただし、住宅ローン控除は持分に応じて適用されます。
(2) ペアローンとの違い(契約本数・諸費用・団信加入)
連帯債務型とペアローンの主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 連帯債務型 | ペアローン |
|---|---|---|
| 契約本数 | 1本 | 2本 |
| 諸費用 | 1契約分 | 2契約分(2倍) |
| 住宅ローン控除 | 夫婦とも適用 | 夫婦とも適用 |
| 団信加入 | 通常は1人のみ(デュエット等は除く) | 夫婦とも加入可能 |
| 取扱銀行 | 限定的(フラット35、一部地方銀行等) | 多い(ほとんどの銀行で取り扱い) |
ペアローンは諸費用が2倍かかる一方、夫婦とも団信に加入できる点がメリットです。
(3) 連帯保証との違い(債務の負担範囲・住宅ローン控除の可否)
連帯債務型と連帯保証の違いは、住宅ローン控除の適用と債務の負担範囲にあります。
- 連帯債務型: 夫婦とも債務者のため、住宅ローン控除を受けられる
- 連帯保証: 連帯保証人は債務を保証するのみで、住宅ローン控除は債務者のみ
住宅ローン控除を最大限活用したい場合は、連帯債務型またはペアローンを選択しましょう。
連帯債務型住宅ローンを取り扱う銀行一覧
連帯債務型住宅ローンを取り扱う主要銀行を紹介します。取り扱い状況は変更される可能性があるため、必ず各金融機関の公式サイトで最新情報をご確認ください。
(1) フラット35(全国の取扱金融機関)
フラット35は、全国300以上の金融機関で取り扱われており、連帯債務型の代表的な選択肢です。
特徴:
- デュエット(夫婦連生団信): 金利+0.18%で夫婦とも団信に加入可能、どちらかが死亡・高度障害になっても全額弁済される
- 対象者: 法律婚・事実婚・婚約者・同性パートナーも対象
- 金利: 取扱金融機関により異なる(2025年時点で1.5%前後が目安)
フラット35の詳細は、住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。
(2) 都市銀行(三井住友銀行のクロスサポート等)
都市銀行では取り扱いが限られますが、三井住友銀行がクロスサポートという連生団信付き住宅ローンを提供しています。
三井住友銀行「クロスサポート」:
- 連生団信: 夫婦どちらかに万一があっても残高ゼロになる
- 金利: 店頭金利に連生団信特約分が上乗せ(詳細は要問い合わせ)
- 特徴: 連帯債務型ではなく連生団信を付加する形式だが、類似の効果がある
詳細は、三井住友銀行の公式サイトでご確認ください。
(3) 地方銀行(群馬銀行・大垣共立銀行・千葉銀行・南都銀行等)
以下の地方銀行で連帯債務型の取り扱いがあります(2025年時点)。
- 十六銀行: 十六信用保証付夫婦連帯債務型住宅ローン(2025年4月時点で取り扱い継続)
- 群馬銀行: 連帯債務型住宅ローン
- 大垣共立銀行: 連帯債務型住宅ローン
- 千葉銀行: 連帯債務型住宅ローン
- 南都銀行: 連帯債務型住宅ローン
取り扱い有無・条件は金融機関により異なるため、各銀行の公式サイトまたは窓口で最新情報をご確認ください。
(4) 各銀行の特徴と金利・手数料の比較
各銀行の金利・手数料は以下の要素で異なります。
- 金利: 変動金利は0.3%〜0.5%前後、固定金利(フラット35等)は1.5%前後(2025年時点)
- 事務手数料: 借入額の2.2%(税込)が一般的
- 団信特約: デュエット(フラット35)は+0.18%、クロスサポート(三井住友銀行)は別途上乗せ
金利・手数料は時期や条件により変動するため、複数の金融機関で見積もりを取り、比較することを推奨します。
連帯債務型のメリット・デメリット
連帯債務型のメリットとデメリットを整理します。
(1) メリット①:諸費用が1契約分で済む(印紙代・事務手数料)
ペアローンは契約2本のため、印紙代・事務手数料が2倍かかります。一方、連帯債務型は契約1本のため、諸費用を抑えられます。
たとえば、借入額3,000万円の場合:
- 連帯債務型: 事務手数料66万円(3,000万円 × 2.2%)
- ペアローン: 事務手数料132万円(1,500万円 × 2.2% × 2本)
約66万円の節約になります。
(2) メリット②:夫婦とも住宅ローン控除を適用できる
連帯債務型では、夫婦とも住宅ローン控除を受けられます。持分に応じて控除額が決まるため、夫婦とも所得税・住民税の還付を受けられます。
たとえば、借入額3,000万円(夫2,000万円、妻1,000万円の持分)の場合、夫は年間最大14万円、妻は年間最大7万円の控除を受けられる可能性があります(2025年時点の税制)。
(3) デメリット①:団信加入が1人のみ(デュエット除く)
一般的な連帯債務型では、団信加入は主債務者のみです。連帯債務者が死亡・高度障害になっても、債務は残ります。
ただし、フラット35のデュエット(+0.18%)や三井住友銀行のクロスサポートなら、夫婦とも団信に加入できます。団信を重視する場合は、これらの商品を検討しましょう。
(4) デメリット②:取扱銀行が限定的
多くの民間銀行では連帯債務型の取り扱いがなく、選択肢が限られます。一方、ペアローンはほとんどの銀行で取り扱いがあります。
複数の銀行を比較検討したい場合は、ペアローンの方が選択肢が多い点に注意が必要です。
(5) デメリット③:離婚時の債務分割が複雑
離婚しても連帯債務から外れることはできず、債務が継続します。共有名義の不動産を売却しても、残債がある場合は夫婦で分担する必要があります。
離婚時の取り決めを事前に明確にしておく、または弁護士に相談することを推奨します。
ペアローンとの比較|どちらを選ぶべきか
連帯債務型とペアローンを比較し、状況別の選び方を解説します。
(1) 契約本数・諸費用の比較
| 項目 | 連帯債務型 | ペアローン |
|---|---|---|
| 契約本数 | 1本 | 2本 |
| 諸費用(印紙代・事務手数料) | 1契約分 | 2契約分(約2倍) |
| 諸費用の目安(借入3,000万円) | 約66万円 | 約132万円 |
諸費用を抑えたい場合は連帯債務型が有利です。
(2) 団信加入の比較
| 項目 | 連帯債務型 | ペアローン |
|---|---|---|
| 団信加入 | 通常は1人のみ | 夫婦とも加入可能 |
| デュエット(フラット35) | 夫婦とも加入可能(+0.18%) | - |
| クロスサポート(三井住友銀行) | 夫婦とも加入可能(別途上乗せ) | - |
団信を重視する場合は、ペアローンまたはデュエット・クロスサポート付きの連帯債務型を検討しましょう。
(3) 住宅ローン控除の比較
連帯債務型・ペアローンとも、夫婦とも住宅ローン控除を受けられます。この点では差はありません。
(4) 状況別の選び方(諸費用重視/団信重視/選択肢の多さ)
諸費用を抑えたい場合:
- 連帯債務型(フラット35、地方銀行)を検討
団信を重視する場合:
- ペアローン、またはデュエット(フラット35)、クロスサポート(三井住友銀行)を検討
選択肢の多さを重視する場合:
- ペアローン(ほとんどの銀行で取り扱いがあり、金利・条件を比較しやすい)
まとめ|状況別の最適な選び方
連帯債務型住宅ローンは、契約1本で諸費用を抑えつつ、夫婦とも住宅ローン控除を受けられる点がメリットです。フラット35、三井住友銀行(クロスサポート)、地方銀行(群馬銀行、大垣共立銀行等)で取り扱いがあります。
通常は団信加入が1人のみですが、フラット35のデュエット(+0.18%)や三井住友銀行のクロスサポートなら夫婦とも加入できます。諸費用重視なら連帯債務型、団信重視・選択肢の多さならペアローンを検討しましょう。
取り扱い状況や金利・手数料は金融機関により異なるため、複数の金融機関で見積もりを取り、比較することを推奨します。詳細な返済計画や税金の計算については、ファイナンシャルプランナーへの相談をおすすめします。
