変動型住宅ローン金利の見直し頻度とは
変動型住宅ローンを検討する際、「金利はどれくらいの頻度で見直されるのか」「急に返済額が大きく変わるのではないか」と不安に感じる方は多いでしょう。金利の見直しルールを理解していないと、将来の返済計画が狂うリスクがあります。
この記事では、変動型住宅ローンの金利見直し頻度、5年ルール・125%ルールの仕組み、金利上昇時のリスクと対策を、金融庁や金融機関の公式情報を元に解説します。
この記事のポイント
- 変動型住宅ローンの金利見直しは**半年ごと(年2回)**が一般的
- 5年ルール:返済額の見直しは5年ごと(金利が変わっても返済額は5年間固定)
- 125%ルール:返済額の増加は前回の125%まで(急激な負担増を防ぐ)
- 金利が上昇しても返済額が固定されると、元金が減らず利息だけ払う「未払利息」が発生する可能性
- 2025年3月に日銀がマイナス金利を解除し、今後の金利上昇リスクに備えた対策が必要
変動型住宅ローンの金利見直し頻度
変動型住宅ローンの金利は、市場金利の変動に応じて定期的に見直されます。
半年ごと(年2回)が一般的
多くの金融機関では、変動型住宅ローンの金利見直しは**半年ごと(年2回)**です。具体的には、以下のタイミングで見直されることが一般的です。
- 4月1日:前年10月~3月の市場金利を反映
- 10月1日:当年4月~9月の市場金利を反映
金利が見直されると、新しい金利が適用され、利息部分が変動します。ただし、返済額が直ちに変わるわけではありません(後述の5年ルール)。
基準金利と店頭金利の違い
変動型住宅ローンには、「基準金利」と「店頭金利(優遇後金利)」の2種類があります。
| 金利の種類 | 内容 | 例 | |-----------|------|----|| | 基準金利 | 金融機関が設定する標準金利 | 2.475% | | 店頭金利(優遇後金利) | 基準金利から優遇幅を差し引いた実際の適用金利 | 0.475%(基準金利2.475% - 優遇幅2.0%) |
金利見直しでは、基準金利が変動し、優遇幅は契約時に固定されることが一般的です。そのため、基準金利が上昇すると、店頭金利も連動して上昇します。
5年ルールと125%ルール
変動型住宅ローンには、金利上昇時の返済負担を緩和するため、「5年ルール」と「125%ルール」という2つの保護ルールがあります。
5年ルールとは(返済額の固定期間)
5年ルールとは、金利が見直されても返済額は5年間固定される仕組みです。
具体例:
- 当初の月々返済額:10万円
- 金利が上昇して利息部分が増加しても、5年間は月々10万円のまま
金利が上昇すると、利息部分が増加し、元金返済部分が減少します。極端な場合、元金が全く減らず、利息だけを払う状態(未払利息)になるリスクもあります。
125%ルールとは(返済額の上限)
125%ルールとは、5年ごとの返済額見直し時に、返済額の増加が前回の125%までに制限される仕組みです。
具体例:
- 当初の月々返済額:10万円
- 5年後の見直し時、金利が大幅に上昇していても、返済額は最大12.5万円(10万円×125%)まで
この仕組みにより、急激な返済負担の増加を防ぐことができます。ただし、125%を超える利息分は「未払利息」として残り、最終的に一括返済が必要になる可能性があります。
未払利息のリスク
5年ルールと125%ルールにより返済額が固定されると、金利上昇時に以下のリスクが発生します。
未払利息とは:
- 返済額が固定されているため、利息部分が返済額を超えた場合、超過分が「未払利息」として累積する
- 元金が減らず、返済期間が延びる、または最終的に一括返済が必要
具体例:
- 月々返済額:10万円(元金7万円+利息3万円)
- 金利上昇後:利息が5万円に増加
- 実際の返済:元金5万円+利息5万円(元金返済が減少)
- さらに金利上昇:利息が12万円に増加
- 実際の返済:元金0円+利息10万円、未払利息2万円(元金が全く減らない)
このように、金利が大幅に上昇すると、返済が利息だけになり、元金が減らないリスクがあります。
金利見直しのタイミング
変動型住宅ローンの金利見直しタイミングを理解することで、返済計画を適切に管理できます。
短期プライムレートとの関係
変動型住宅ローンの基準金利は、短期プライムレート(銀行が優良企業に貸し出す短期金利)に連動しています。
短期プライムレートは、日本銀行の政策金利(無担保コール翌日物金利)に影響を受けます。2025年3月に日銀がマイナス金利を解除したことで、短期プライムレートも上昇傾向にあります。
日銀の金融政策の影響
日本銀行の金融政策は、変動型住宅ローンの金利に大きな影響を与えます。
2025年3月のマイナス金利解除:
- 日銀が政策金利をマイナス0.1%から0%以上に引き上げ
- 短期プライムレートが上昇し、変動型住宅ローンの基準金利も上昇傾向
今後、日銀がさらに利上げを行う可能性があり、変動型住宅ローンの金利上昇リスクに注意が必要です。
金利上昇時のリスクと対策
変動型住宅ローンは低金利時には有利ですが、金利上昇時のリスクに備える必要があります。
返済額が増加するシミュレーション
金利が上昇した場合の返済額増加をシミュレーションしてみましょう。
前提条件:
- 借入額:3,000万円
- 返済期間:35年
- 当初金利:0.5%
| 金利 | 月々返済額 | 総返済額 | 増加額(月々) |
|---|---|---|---|
| 0.5% | 約7.8万円 | 約3,270万円 | - |
| 1.0% | 約8.5万円 | 約3,557万円 | +約0.7万円 |
| 2.0% | 約10.0万円 | 約4,174万円 | +約2.2万円 |
| 3.0% | 約11.5万円 | 約4,849万円 | +約3.7万円 |
※5年ルール・125%ルールを考慮しない単純計算
このように、金利が3.0%に上昇すると、月々返済額が約3.7万円増加します。5年ルール・125%ルールがあっても、未払利息が累積するリスクがあります。
繰り上げ返済の活用
金利上昇リスクに備えるため、繰り上げ返済を活用することが有効です。
繰り上げ返済のメリット:
- 元金が減少し、利息負担が軽減される
- 金利上昇時の影響を抑えられる
注意点:
- 繰り上げ返済手数料がかかる場合がある(金融機関により異なる)
- 手元資金が減少するため、緊急時の備えも考慮する
固定金利への借り換え検討
金利上昇が予想される場合、固定金利への借り換えを検討することも選択肢です。
固定金利のメリット:
- 金利が固定されるため、返済額が変わらず安心
- 金利上昇リスクを回避できる
固定金利のデメリット:
- 変動金利よりも金利が高い(2025年時点で1.5-2.0%程度)
- 借り換え時に諸費用(登記費用、手数料等)がかかる
金利上昇が予想される場合は、固定金利への借り換えを検討しましょう。
まとめ
変動型住宅ローンの金利見直しは**半年ごと(年2回)**が一般的で、5年ルール(返済額は5年間固定)と125%ルール(返済額の増加は前回の125%まで)により、急激な返済負担の増加を防ぐ仕組みがあります。
ただし、金利が大幅に上昇すると、未払利息が累積し、元金が減らないリスクがあります。2025年3月に日銀がマイナス金利を解除し、今後の金利上昇リスクに備えた対策が必要です。
次のステップとして、金融機関の返済シミュレーションツールを活用し、金利上昇時の影響を試算してみましょう。繰り上げ返済や固定金利への借り換えも検討し、無理のない返済計画を立てることをおすすめします。
