長期金利とは何か
住宅ローンを借りる際、「長期金利」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。しかし、長期金利が実際に何を指し、住宅ローン金利にどう影響するのか理解している方は少ないかもしれません。
この記事では、長期金利と住宅ローン金利の関係、変動・固定金利の選び方、2024-2025年の最新動向を、日本銀行や住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
住宅ローン借入を検討中、または借り換えを検討中の方が、金利の仕組みを理解し、自分に合った選択ができるようになります。
この記事のポイント
- 長期金利は1年超の貸借期間の金利で、代表的な指標は10年国債利回り
- 固定金利(フラット35等)は長期金利に連動し、変動金利は短期金利(日銀政策金利)に連動する
- 2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、今後の金利上昇が予想される
- 返済期間が短い(10年以内)なら変動金利、長い(30年)なら固定金利が一般的な選択肢
- 金利上昇時は変動金利から固定金利への借り換えや繰上げ返済で対応可能
1年超の貸借期間の金利(10年国債利回りが代表例)
日本銀行によると、長期金利とは1年超の貸借期間の金利を指します。代表的な指標は10年国債利回りで、これが固定金利型の住宅ローンの基準となります。
10年国債利回りは、市場の経済予測を反映して変動します。景気見通しが良ければ金利は上昇し、景気不安があれば金利は低下する傾向があります。
短期金利との違い
短期金利は1年未満の貸借期間の金利で、日銀の政策金利が代表例です。変動金利型の住宅ローンは、短期プライムレート(短期金利+1%程度)に連動します。
長期金利と短期金利は、それぞれ異なる要因で変動するため、必ずしも連動しません。長期金利が上昇しても、短期金利がすぐに上がるわけではないため、住宅ローンを選ぶ際にはこの違いを理解することが重要です。
住宅ローン金利への影響
長期金利と短期金利は、それぞれ異なる住宅ローン金利に影響します。固定金利は長期金利に、変動金利は短期金利に連動します。
固定金利は長期金利に連動(フラット35等)
固定金利型の住宅ローン(フラット35等)は、長期金利(10年国債利回り)+金融機関の上乗せ幅で決まります。住宅金融支援機構によると、2025年10月時点でフラット35の金利は1.89%(21-35年、団信あり)です。金利は毎月更新されるため、最新情報は住宅金融支援機構の公式サイトで確認してください。
長期金利が上昇すると、固定金利も上昇します。逆に、長期金利が低下すると、固定金利も低下する傾向があります。
変動金利は短期金利に連動(短期プライムレート)
変動金利型の住宅ローンは、短期プライムレート(銀行が優良企業に貸し出す際の短期金利)に連動します。短期プライムレートは、日銀の政策金利+1%程度で決定されます。
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除するまで、短期金利は長期間ゼロ近辺で推移していたため、変動金利は固定金利より低い水準でした。しかし、今後の日銀の追加利上げにより、変動金利も上昇するリスクがあります。
長期金利が上昇しても、変動金利がすぐに上がるわけではありません。変動金利は短期金利に連動するため、日銀の政策金利の動向を注視する必要があります。
2024-2025年の最新動向
2024年3月以降、日銀の金融政策が大きく転換し、金利上昇局面に入っています。今後の金利動向を理解することで、住宅ローンの選択に役立てることができます。
日銀のマイナス金利解除(2024年3月)
SBI新生銀行によると、日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除しました。これは2016年1月に導入されたマイナス金利政策の終了を意味し、金融政策の歴史的な転換点となりました。
マイナス金利解除により、短期金利はゼロ以上に引き上げられ、変動金利にも上昇圧力がかかり始めています。
追加利上げと今後の金利見通し
日銀は2024年7月・2025年1月に追加利上げを実施しました。長期金利は2025年10月時点で1%前後で推移しています。
複数の金融機関による予測では、今後の長期金利は1.5-1.8%程度の範囲で推移する見通しとされています。ただし、金利見通しは経済情勢(景気動向、物価上昇率、為替変動等)により変動するため、「必ず上がる」と断定することはできません。今後の日銀の金融政策決定会合の結果を注視する必要があります。
金利上昇局面では、固定金利も上昇傾向となります。フラット35の金利は2024年以降、緩やかに上昇しており、今後も長期金利の動向次第で上昇する可能性があります。
変動金利と固定金利の選び方
住宅ローンを選ぶ際、変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか迷う方は多いでしょう。それぞれのメリット・リスクを理解し、自分の状況に合った選択をすることが重要です。
| 項目 | 変動金利 | 固定金利 |
|---|---|---|
| 金利水準 | 低い(0.3-0.8%程度) | 高い(1.2-2.0%程度) |
| 金利変動リスク | あり(短期金利に連動) | なし(全期間固定) |
| 返済額 | 金利上昇時に増える | 一定 |
| 適した人 | 返済期間が短い、返済余力がある | 返済期間が長い、安定志向 |
(出典: HOME4U)
返済期間が短い(10年以内)なら変動
HOME4Uによると、返済期間が短い(10年以内)場合は変動金利がおすすめです。低金利のメリットを享受でき、金利が上昇しても返済期間が短いため影響が限定的です。
返済余力(月収の25%以内)がある場合も、変動金利が有利です。金利が上昇しても繰上げ返済で対応できるためです。
返済期間が長い(30年)なら固定
返済期間が長い(30年)場合は固定金利がおすすめです。全期間にわたって返済額が一定のため、長期的な資金計画が立てやすく、金利上昇リスクを回避できます。
安定志向の方や、金利が今後上昇すると予想する方にも固定金利が適しています。
金利上昇リスクと返済余力の検討
変動金利を選ぶ場合、金利上昇リスクを理解しておく必要があります。金利が1%上昇すると、3000万円・35年ローンの場合、月々の返済額が約1.5万円増える計算です。
返済余力(月収の25%以内)があれば、金利上昇時にも対応できます。逆に、返済余力が少ない場合は、固定金利で返済額を固定する方が安全です。
金利上昇時の対応策
金利が上昇した場合、変動金利で借りている方は返済額が増えるリスクがあります。以下の対応策を検討しましょう。
変動金利から固定金利への借り換え
金利が上昇し始めた段階で、変動金利から固定金利への借り換えを検討できます。これにより、今後の金利上昇リスクを回避できます。
ただし、借り換え時には手数料(数十万円)がかかるため、費用対効果を確認する必要があります。残債が多く、返済期間が長い場合は、借り換えのメリットが大きくなります。
繰上げ返済で元本を減らす
繰上げ返済により元本を減らすことで、金利上昇の影響を軽減できます。元本が減れば、金利が上昇しても利息額が抑えられるためです。
繰上げ返済には、返済期間短縮型(返済期間を短くする)と返済額軽減型(月々の返済額を減らす)の2種類があります。返済期間短縮型の方が総利息額を削減できますが、返済額軽減型の方が月々の負担を軽減できます。
金利上昇リスクを過度に恐れる必要はありません。返済余力と金利観を踏まえ、冷静に判断することが重要です。
まとめ:住宅ローンと長期金利の関係理解
長期金利(10年国債利回り)は固定金利の基準、短期金利(日銀政策金利)は変動金利の基準です。固定金利は長期金利に連動し、変動金利は短期金利に連動するため、それぞれ異なる要因で変動します。
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、金利上昇局面に入っています。変動金利は低金利だが金利上昇リスクあり、固定金利は高金利だが返済額が一定で安心という特性があります。
返済期間が短い(10年以内)なら変動金利、長い(30年)なら固定金利が一般的な選択肢です。金利上昇時は借り換え・繰上げ返済で対応できます。
次のアクションは、複数金融機関の金利比較と返済シミュレーションです。信頼できる金融機関に相談しながら、無理のない資金計画を立てましょう。
