癌ステージ1でも住宅ローンは組める?審査への影響と対策

公開日: 2025/11/11

癌ステージ1でも住宅ローンは組める?審査への影響と対策

癌(がん)と診断された方、特にステージ1の早期癌の方が住宅ローンを検討する際、「審査に通るのか」「団体信用生命保険(団信)に加入できるのか」と不安に感じることは少なくありません。

この記事では、癌ステージ1の方が住宅ローンを組む際の審査への影響、団信の加入条件、利用できる選択肢を、専門家の解説金融機関の情報を参考に解説します。

癌ステージ1でも住宅ローンを組める可能性は十分にあります。この記事を読めば、団信の種類、ワイド団信・引受基準緩和型団信の活用方法、フラット35の選択肢が分かります。

この記事のポイント

  • 癌ステージ1は早期癌で治療成績が良好だが、通常の団信加入は難しい場合が多い
  • ワイド団信・引受基準緩和型団信は持病があっても加入できる可能性がある(金利上乗せあり)
  • フラット35は団信加入が任意のため、団信なしで住宅ローンを組める選択肢
  • 完治後5-10年経過すれば、通常の団信に加入できる可能性が高まる
  • 事前審査・告知義務を正確に行うことが重要(虚偽の告知は契約解除リスク)

癌ステージ1とは:早期癌の治療成績と住宅ローン審査への影響

癌のステージは、癌の進行度を示す指標で、ステージ0からステージ4までの5段階に分類されます。ステージ1は早期癌で、癌が原発巣(最初に発生した部位)にとどまり、リンパ節転移や遠隔転移がない状態を指します。

ステージ1の治療成績(5年生存率)

国立がん研究センターによると、ステージ1の5年生存率は癌の種類により異なりますが、多くの癌種で80-95%以上と良好です。

癌の種類 ステージ1の5年生存率
胃癌 約95%
大腸癌 約95%
肺癌 約80-90%
乳癌 約95-99%
前立腺癌 ほぼ100%

ステージ1の癌は、手術や放射線治療により完治する可能性が高く、医学的には予後良好とされています。

住宅ローン審査への影響

しかし、住宅ローン審査では、癌の診断歴があると団体信用生命保険(団信)への加入が難しくなる場合があります。

団信とは:

  • 住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合、保険金で住宅ローン残債が完済される生命保険
  • 多くの金融機関では、団信加入が住宅ローンの融資条件となっている

癌の診断歴がある場合、通常の団信では「健康状態に関する告知事項」で癌の診断・治療歴を申告する必要があり、加入を断られる可能性があります。

団信の種類と加入条件

住宅ローンの団信には、以下の3種類があります。

通常の団信(健康状態が良好な方向け)

特徴:

  • 金利上乗せなし
  • 健康状態に関する告知事項が厳格

告知事項の例:

  • 過去3年以内の疾病(癌、心疾患、脳血管疾患等)
  • 現在治療中の疾病
  • 過去の手術歴

癌ステージ1の診断・治療歴がある場合、通常の団信への加入は難しい場合が多いです。

ワイド団信(持病があっても加入できる可能性)

SBIグループの情報によると、ワイド団信(引受基準緩和型団信)は、持病があっても加入できる可能性がある団信です。

特徴:

  • 通常の団信より告知事項が緩和されている
  • 金利が0.3%程度上乗せされる

加入可能な条件の例:

  • 癌の治療終了後、一定期間(2-5年)が経過している
  • 再発がない
  • 現在治療中ではない

ワイド団信の審査基準は金融機関により異なるため、複数の金融機関に相談することをおすすめします。

引受基準緩和型団信(さらに緩和された条件)

引受基準緩和型団信は、ワイド団信よりさらに告知事項が緩和された団信です。

特徴:

  • 告知事項が最も緩和されている(過去1-2年以内の治療歴等)
  • 金利が0.5%程度上乗せされる場合がある

注意点:

  • 提供している金融機関が限定的
  • 保険金額に上限がある場合がある

ワイド団信・引受基準緩和型団信の活用方法

癌ステージ1の方がワイド団信・引受基準緩和型団信を活用する方法を解説します。

治療終了後の経過期間が重要

FPの解説によると、癌の治療終了後、一定期間(2-5年)が経過していることが、ワイド団信加入の重要な条件です。

治療終了後の経過期間 ワイド団信加入の可能性
1年未満 加入困難
1-2年 一部金融機関で可能
2-5年 多くの金融機関で可能
5年以上 通常の団信も検討可能

治療終了後の経過期間が長いほど、加入できる可能性が高まります。

金利上乗せのコスト

ワイド団信・引受基準緩和型団信は、金利が0.3-0.5%程度上乗せされます。

金利上乗せのコスト例:

  • 借入額3000万円、返済期間35年
  • 通常の団信: 金利1.0% → 総返済額約3,557万円
  • ワイド団信: 金利1.3% → 総返済額約3,739万円(差額約182万円)

金利上乗せのコストは大きいですが、団信に加入できることで、万が一の際に家族が住宅ローン残債を負担しなくて済むメリットがあります。

複数の金融機関に相談する重要性

ワイド団信・引受基準緩和型団信の審査基準は金融機関により異なります。1つの金融機関で断られても、他の金融機関では加入できる可能性があります。

相談先の例:

  • メガバンク(三菱UFJ銀行、三井住友銀行等)
  • 地方銀行・信用金庫
  • ネット銀行(住信SBIネット銀行、auじぶん銀行等)
  • フラット35取扱金融機関

複数の金融機関に事前審査を申し込み、条件を比較することをおすすめします。

フラット35の選択肢(団信なしで住宅ローンを組める)

フラット35は、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利住宅ローンで、団信加入が任意です。

団信加入が任意の仕組み

フラット35では、団信に加入しなくても住宅ローンを組むことができます。これは、癌ステージ1の方にとって重要な選択肢です。

団信なしのメリット:

  • 健康状態に関わらず住宅ローンを組める
  • 団信の保険料(金利上乗せ)が不要

団信なしのデメリット:

  • 万が一の際、家族が住宅ローン残債を負担する
  • 別途、生命保険に加入する必要がある

別途、生命保険に加入する方法

団信に加入しない場合、別途、生命保険に加入することで、万が一の際のリスクをカバーできます。

生命保険の種類:

  • 定期保険: 一定期間(10年、20年等)の保障。保険料が安い。
  • 収入保障保険: 死亡時に年金形式で保険金を受け取る。住宅ローン返済に適している。
  • 終身保険: 一生涯の保障。保険料が高い。

癌ステージ1の診断歴がある場合、生命保険の加入も審査があります。ただし、癌の種類・治療法・経過期間により、加入できる生命保険があります。保険会社や保険代理店に相談することをおすすめします。

フラット35の金利と条件

フラット35の金利は、民間ローンより高めに設定されることが多いですが、長期固定金利のため、将来の金利上昇リスクを回避できます。

フラット35の特徴:

  • 長期固定金利(返済期間中、金利が変わらない)
  • 保証料・繰上返済手数料が不要
  • 物件の技術基準を満たす必要がある

完治後5-10年経過すれば通常の団信も検討可能

専門家の解説によると、癌の治療終了後5-10年が経過し、再発がない場合、通常の団信に加入できる可能性が高まります。

完治の定義と告知義務

癌の「完治」は医学的に明確な定義がありませんが、一般的に以下のような状態を指します。

  • 治療終了後5年以上経過
  • 再発・転移がない
  • 定期検査で異常がない

団信の告知事項は「過去3年以内の疾病」が一般的ですが、癌の場合は「過去5年以内」等、期間が長く設定されることがあります。金融機関により異なるため、告知書の内容を確認してください。

再発リスクと審査

癌ステージ1の再発リスクは、癌の種類により異なります。

癌の種類 5年以内の再発率
胃癌ステージ1 約5-10%
大腸癌ステージ1 約5-10%
肺癌ステージ1 約10-20%
乳癌ステージ1 約5-15%

再発リスクが低いほど、団信加入の可能性が高まります。完治後5-10年経過し、再発がない場合は、通常の団信への加入を検討できます。

事前審査・告知義務を正確に行うことの重要性

住宅ローンの審査では、健康状態に関する告知義務があります。虚偽の告知は契約解除リスクがあるため、正確に行うことが重要です。

虚偽の告知は契約解除リスク

団信の告知書に虚偽の記載(癌の診断歴を隠す等)をした場合、以下のリスクがあります。

  • 団信の保険金が支払われない: 万が一の際、保険金が支払われず、家族が住宅ローン残債を負担する
  • 契約解除: 金融機関が契約を解除し、住宅ローンの一括返済を求める可能性がある
  • 損害賠償請求: 金融機関から損害賠償を請求される可能性がある

虚偽の告知は絶対に避け、正確に申告してください。

告知書の記載内容

告知書には、以下のような健康状態に関する質問があります。

  • 過去3年以内(または5年以内)に、医師の診察・検査・治療・投薬を受けたことがあるか
  • 現在治療中の疾病があるか
  • 過去の手術歴

癌ステージ1の診断・治療歴がある場合、正確に申告し、診断書や治療経過の記録を提出することで、審査に有利になる場合があります。

事前審査の活用

事前審査(仮審査)を活用することで、本審査前に団信加入の可否を確認できます。事前審査で断られた場合でも、他の金融機関やワイド団信・フラット35の選択肢を検討できます。

複数の金融機関に事前審査を申し込み、条件を比較することをおすすめします。

まとめ

癌ステージ1でも住宅ローンを組める可能性は十分にあります。

選択肢:

  1. ワイド団信・引受基準緩和型団信: 治療終了後2-5年経過していれば加入できる可能性あり(金利0.3-0.5%上乗せ)
  2. フラット35(団信なし): 団信加入が任意のため、健康状態に関わらず住宅ローンを組める(別途、生命保険に加入推奨)
  3. 完治後5-10年経過後: 通常の団信への加入を検討可能

重要なポイント:

  • 告知義務を正確に行う(虚偽の告知は契約解除リスク)
  • 複数の金融機関に相談し、条件を比較する
  • 事前審査を活用する

癌ステージ1の診断を受けた方でも、適切な選択肢を選ぶことで、マイホームの夢を実現できます。金融機関やファイナンシャルプランナーに相談し、自分に合った住宅ローンを見つけましょう。

よくある質問

Q1癌ステージ1の診断を受けましたが、住宅ローンは組めますか?

A1はい、組める可能性は十分にあります。選択肢として、①ワイド団信・引受基準緩和型団信(治療終了後2-5年経過していれば加入できる可能性あり、金利0.3-0.5%上乗せ)、②フラット35(団信加入が任意のため、団信なしで住宅ローンを組める)があります。複数の金融機関に相談し、事前審査を活用することをおすすめします。

Q2ワイド団信と通常の団信の違いは何ですか?

A2ワイド団信(引受基準緩和型団信)は、通常の団信より告知事項が緩和されており、持病があっても加入できる可能性があります。ただし、金利が0.3%程度上乗せされます。通常の団信は健康状態が良好な方向けで、金利上乗せはありません。癌の診断歴がある場合、通常の団信への加入は難しく、ワイド団信が選択肢となります。

Q3フラット35で団信なしの場合、どうすればいいですか?

A3フラット35で団信なしの場合、別途、生命保険に加入することをおすすめします。定期保険や収入保障保険に加入することで、万が一の際のリスクをカバーできます。癌ステージ1の診断歴がある場合、生命保険の加入も審査がありますが、癌の種類・治療法・経過期間により、加入できる生命保険があります。保険会社や保険代理店に相談してください。

Q4癌の診断歴を隠して団信に加入するとどうなりますか?

A4絶対に避けてください。虚偽の告知をした場合、①団信の保険金が支払われない(万が一の際、家族が住宅ローン残債を負担する)、②契約解除(金融機関が契約を解除し、住宅ローンの一括返済を求める可能性)、③損害賠償請求(金融機関から損害賠償を請求される可能性)のリスクがあります。告知義務を正確に行い、診断書や治療経過の記録を提出することが重要です。

Q5完治後何年経過すれば通常の団信に加入できますか?

A5一般的に、治療終了後5-10年経過し、再発がない場合、通常の団信に加入できる可能性が高まります。団信の告知事項は「過去3年以内の疾病」が一般的ですが、癌の場合は「過去5年以内」等、期間が長く設定されることがあります。完治後5年以上経過し、定期検査で異常がない場合は、通常の団信への加入を検討できます。金融機関により異なるため、告知書の内容を確認してください。