派遣社員でも住宅ローンは組める?審査基準と通りやすくする方法

公開日: 2025/11/11

派遣社員でも住宅ローンは組める!ただし審査は厳しめ

マイホーム購入を検討する派遣社員の方にとって、「住宅ローンは組めるのか」「正社員と比べて不利なのか」という不安は大きいものです。結論から言えば、派遣社員でも住宅ローンは組めますが、正社員より審査が厳しいのが現実です。

住宅金融支援機構の令和6年度「民間住宅ローンの実態に関する調査」によると、約4割の金融機関が派遣社員を長期固定金利ローンの対象外としており、選択肢が限られます。一方で、6割の金融機関は派遣社員でも審査可能としているため、適切な対策を取れば審査通過の可能性があります。

この記事では、派遣社員の住宅ローン審査で重視されるポイント、審査を通りやすくする方法、金融機関の選び方を、住宅金融支援機構・大手派遣会社の公式情報を元に解説します。

この記事のポイント

  • 派遣社員でも住宅ローンは組めるが、約4割の金融機関は対象外としている
  • 無期雇用派遣は登録型派遣より有利、勤続年数は最低1年、推奨3年以上が目安
  • 審査を通りやすくする方法として、頭金増額・連帯債務・フラット35利用が有効
  • フラット35は雇用形態不問で派遣社員に有利、地方銀行・信用金庫も比較的柔軟
  • 返済負担率は20%以下を目標にし、既存の借入を整理することが重要

派遣社員の住宅ローン審査で重視されるポイント

派遣社員の住宅ローン審査では、正社員とは異なる基準で評価されます。金融機関が重視する5つのポイントを理解しておきましょう。

1. 雇用形態(登録型派遣 vs 無期雇用派遣)

派遣社員には大きく分けて2つの雇用形態があります。

雇用形態 特徴 審査への影響
登録型派遣 派遣会社に登録し、仕事がある期間のみ雇用契約 審査が厳しい
無期雇用派遣 派遣会社と無期限の雇用契約、派遣先の有無に関わらず雇用継続 審査で有利

厚生労働省によると、無期雇用派遣は派遣先の有無に関わらず雇用が継続されるため、「雇用の安定性が高い」と判断されます。

2. 勤続年数(最低1年、3年以上が望ましい)

勤続年数は住宅ローン審査で非常に重視されます。

  • 最低半年以上: 多くの金融機関の最低ライン
  • 推奨1年以上: 審査通過の可能性が高まる
  • 推奨3年以上: より有利な条件で借入可能

重要な点として、派遣先が変わっても派遣会社が同じであれば勤続年数は継続してカウントされます。

3. 年収と返済負担率

年収と返済負担率(年収に対する年間返済額の比率)が重視されます。

項目 一般的な基準 派遣社員の推奨基準
年収 300万円以上 300万円以上(近年は200万円以上も可)
返済負担率 10-35% 20%以下を目標

派遣社員の場合、収入が不安定と見なされやすいため、返済負担率を20%以下に抑えることで審査に通りやすくなります。

4. 派遣元の安定性

派遣元(派遣会社)の規模や信用度も審査に影響します。

  • 大手派遣会社(スタッフサービス、テンプスタッフ等): 信用度が高い
  • 中小派遣会社: 信用度が相対的に低い

派遣会社の規模が大きいほど、金融機関は安心感を持ちやすい傾向があります。

5. 信用情報(延滞・多重債務がない)

信用情報に延滞記録や多重債務があると、派遣社員の場合は特に審査が厳しくなります。

チェックされる項目

  • クレジットカードの延滞履歴
  • カードローン・消費者金融の借入状況
  • 他の住宅ローンの返済状況

既存の借入が年収の20%を超えている場合、住宅ローン審査に悪影響を及ぼす可能性があります。

なぜ派遣社員は審査で不利なのか

派遣社員が住宅ローン審査で不利になる理由を理解しておくことで、適切な対策が取れます。

契約更新のリスク(雇用の安定性が低いと見なされる)

登録型派遣は契約期間ごとに更新が必要で、更新されない可能性があります。金融機関は「収入が不安定」と判断し、審査を厳しくします。

金融機関の懸念

  • 契約更新されない場合、返済が滞るリスク
  • 派遣先が倒産した場合、次の派遣先が見つかるまで収入がない

3年ルールの影響(勤続年数が短くなりやすい)

労働者派遣法の「3年ルール」により、同じ派遣先で同じ業務に3年以上派遣できない原則があります。このため、派遣社員の勤続年数が短くなりやすく、審査で不利に働きます。

ローン実行時の雇用確認リスク

住宅ローンの審査通過後、実際にローンが実行されるタイミングで雇用確認が行われます。

リスクのケース

  • 審査時に派遣会社Aで働いていたが、ローン実行時に派遣会社Bに変わっていた
  • 審査時に契約中だったが、ローン実行時に契約未更新だった

このような場合、融資が実行されないリスクがあります。審査からローン実行まで雇用状況を安定させることが重要です。

派遣社員が住宅ローン審査を通りやすくする方法

派遣社員でも、以下の対策を取ることで審査通過の可能性を高められます。

1. 頭金を増やす(物件価格の20%以上)

頭金を増やすことで、金融機関のリスクが減り、審査に有利になります。

頭金の割合 審査への影響
0%(フルローン) 審査が厳しい
10%以上 一般的な水準
20%以上 審査に有利

頭金を増やすことで、借入額も減り、返済負担率も下がるため、二重のメリットがあります。

2. 配偶者との連帯債務を検討する

配偶者が正社員であれば、連帯債務にすることで審査に通りやすくなります。

連帯債務のメリット

  • 夫婦2人の収入を合算できる
  • 借入可能額が増える
  • 審査通過の可能性が高まる

連帯債務の注意点

  • 夫婦2人とも返済義務を負う
  • 離婚時にトラブルになる可能性がある

3. フラット35を利用する(雇用形態不問)

フラット35は、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利住宅ローンで、派遣社員に最も有利な選択肢です。

フラット35のメリット

  • 雇用形態不問(派遣社員も正社員も同じ基準で審査)
  • 勤続年数の条件が比較的柔軟(最低半年以上)
  • 登録型派遣でも審査対象

フラット35の審査基準

  • 年収: 明確な最低基準はないが、返済負担率が基準内であること
  • 返済負担率: 年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下
  • 勤続年数: 最低半年以上

4. 勤続年数を積む(最低1年、推奨3年以上)

派遣社員の場合、勤続年数を積むことで信用度が上がります。

勤続年数を積むポイント

  • 同じ派遣会社で働き続ける(派遣先が変わっても継続カウント)
  • 契約更新を確実にする
  • 無期雇用派遣への転換を検討する

5. 返済負担率を下げる(借入額を抑える)

返済負担率を20%以下に抑えることで、返済能力をアピールできます。

返済負担率を下げる方法

  • 借入額を減らす(頭金を増やす)
  • 物件価格の予算を下げる
  • 借入期間を長くする(月々の返済額を減らす)

6. 既存の借入を整理する

既存の借入(カードローン、消費者金融等)を整理し、年収の20%以下にすることが重要です。

整理の優先順位

  1. 金利の高い借入から返済
  2. カードローン・消費者金融を完済
  3. クレジットカードのリボ払いを一括返済

派遣社員に適した金融機関の選び方

派遣社員が審査に通りやすい金融機関を選ぶことで、成功率を高められます。

フラット35(住宅金融支援機構)

フラット35は派遣社員に最も有利な選択肢です。

メリット

  • 雇用形態不問
  • 勤続年数の条件が柔軟(最低半年以上)
  • 長期固定金利で安心

デメリット

  • 金利が変動金利より高め
  • 物件の条件(床面積、建築基準等)が厳しい

地方銀行・信用金庫

地方銀行・信用金庫は地域密着型で、柔軟な審査を行う傾向があります。

メリット

  • 個別事情を考慮してくれる場合がある
  • 地域の不動産事情に詳しい

デメリット

  • 金利がメガバンクより高い場合がある
  • 審査基準が金融機関により大きく異なる

メガバンクは厳しい傾向

メガバンクは審査基準が厳格で、派遣社員の場合は通りにくい傾向があります。

メガバンクの審査基準

  • 勤続年数3年以上を求められる場合が多い
  • 年収400万円以上を基準とする場合がある
  • 無期雇用派遣でないと対象外とする場合がある

派遣社員の場合、メガバンクは最初の選択肢から外し、フラット35や地方銀行を優先的に検討することを推奨します。

複数の金融機関に相談する

1つの金融機関で断られても、他の金融機関では審査に通る可能性があります。

相談の流れ

  1. フラット35取扱金融機関に相談
  2. 地方銀行・信用金庫に相談
  3. 必要に応じてメガバンクに相談

複数の金融機関に相談し、条件を比較することが重要です。

まとめ:派遣社員でも住宅ローンは組めるが、準備が重要

派遣社員でも住宅ローンは組めますが、正社員より審査が厳しいのが現実です。令和6年度調査では約4割の金融機関が派遣社員を対象外とし、6割が可能という状況です。

審査を通りやすくするための具体的な対策として、頭金増額(物件価格の20%以上)、配偶者との連帯債務、フラット35利用、勤続年数の積み上げ(最低1年、推奨3年以上)、返済負担率の低減(20%以下を目標)、既存の借入整理が有効です。

無期雇用派遣への転換や正社員登用も長期的な選択肢として検討する価値があります。金融機関に相談する際は、派遣社員でも柔軟に対応してくれる金融機関(フラット35、地方銀行等)を優先的に選びましょう。

適切な準備と金融機関選びにより、派遣社員でも住宅ローンの審査通過は十分可能です。まずは自分の年収・勤続年数・返済負担率を確認し、無理のない資金計画を立てることから始めましょう。

よくある質問

Q1登録型派遣でも住宅ローンは組めますか?

A1登録型派遣でも組めますが、無期雇用派遣より審査が厳しくなります。勤続年数を積む(最低1年、推奨3年以上)、年収を安定させる、頭金を増やす等の対策が必要です。フラット35は雇用形態不問のため、比較的有利です。審査に通るには、返済負担率を20%以下に抑えることも重要です。

Q2派遣社員の勤続年数は何年必要ですか?

A2最低半年以上、推奨1年以上です。派遣先が変わっても、派遣会社が同じであれば勤続年数は継続してカウントされます。ただし、3年以上の勤続があると審査でより有利になります。金融機関により基準が異なるため、複数の金融機関に相談することを推奨します。

Q3フラット35は派遣社員に有利ですか?

A3はい、フラット35は雇用形態による差別が少なく、勤続年数の条件も比較的柔軟です(最低半年以上)。登録型派遣でも審査対象となり、派遣社員にとって最も有利な選択肢の一つです。長期固定金利で返済計画が立てやすい点もメリットです。

Q4無期雇用派遣と登録型派遣、どちらが有利ですか?

A4無期雇用派遣のほうが有利です。派遣会社と無期限の雇用契約を結んでいるため、派遣先の有無に関わらず雇用が継続され、「雇用の安定性が高い」と判断されます。可能であれば無期雇用派遣への転換を検討することも有効です。正社員登用も長期的な選択肢として検討する価値があります。

Q5派遣社員でも住宅ローン控除は受けられますか?

A5はい、住宅ローン控除は雇用形態を問わず受けられます。条件は、①本人が居住すること、②床面積50㎡以上、③借入期間10年以上、④合計所得金額2,000万円以下等です。初年度は確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で控除が受けられます。