住宅ローン元金均等返済とは?仕組みと返済額の推移を解説
住宅ローンの返済方法には「元金均等返済」と「元利均等返済」の2種類があり、どちらを選ぶかで返済額や総返済額が大きく変わります。
元金均等返済とは、毎月一定額の元金に利息を上乗せして返済する方式です。当初の返済額は高くなりますが、時間とともに返済額が減少し、総返済額が元利均等返済より少なくなる特徴があります。
この記事では、住宅金融支援機構や金融機関の公式情報を元に、元金均等返済の仕組み、メリット・デメリット、向いている人を詳しく解説します。
この記事のポイント
- 元金均等返済は毎月一定額の元金に利息を上乗せする方式で、当初返済額は高いが総返済額は少ない
- 元利均等返済との総返済額の差は、借入3000万円・金利1%・35年の場合で約55万円(低金利下では差が小さい)
- メリットは総返済額削減・元金減少が早い、デメリットは当初返済額が高く審査基準が厳しい
- 向いている人は高収入・収入安定・早期完済志向の人、向かない人は収入不安定・教育費ピーク前の人
- どちらが「得」かは一概に言えず、収入の安定性・ライフプラン・家計状況によって最適解が異なる
元利均等返済との違いを比較表と具体例で理解する
元金均等返済と元利均等返済の最も大きな違いは、返済額の推移です。
| 項目 | 元金均等返済 | 元利均等返済 |
|---|---|---|
| 返済額 | 当初は高く、徐々に減少 | 一定 |
| 元金の減り方 | 早い | 遅い |
| 総返済額 | 少ない | 多い |
| 審査 | 厳しめ(当初返済額が高いため) | 通りやすい |
| 家計管理 | 難しい(返済額が変動) | 簡単(返済額が一定) |
| 向き不向き | 高収入・早期完済志向 | 収入不安定・当初支出抑制志向 |
(出典: 住宅金融支援機構)
返済額の推移グラフで視覚的に比較
元金均等返済では、毎月一定額の元金に残高に応じた利息を上乗せするため、返済が進むにつれて利息部分が減少し、返済額が減っていきます。
一方、元利均等返済では、元金と利息の合計額が一定になるよう調整されるため、毎月の返済額は変わりません。
借入3000万円・金利1%・35年の具体例
三井住友銀行の試算によると、以下のような差があります。
| 項目 | 元金均等返済 | 元利均等返済 |
|---|---|---|
| 初回返済額 | 約9.4万円 | 約8.5万円 |
| 10年後の返済額 | 約8.6万円 | 約8.5万円 |
| 20年後の返済額 | 約7.8万円 | 約8.5万円 |
| 総返済額 | 約3,157万円 | 約3,212万円 |
| 利息総額 | 約157万円 | 約212万円 |
総返済額の差は約55万円(低金利下)
上記の例では、元金均等返済の方が総返済額で約55万円少ないという結果になっています。ただし、2025年現在のような低金利環境下では、この差は借入額や返済期間によって大きく変動します。
かつての高金利時代(金利3-5%)では、総返済額の差は数百万円に達することもありましたが、現在の低金利環境では「メリットが限定的」とも言われています。
元金均等返済のメリット(総返済額削減・元金減少が早い)
元金均等返済の主なメリットは以下の3つです。
総返済額が元利均等より少ない
元金均等返済は、元金の減少が早いため、利息の累計額が少なくなります。前述の例では、利息総額が約55万円少なくなりました。
ただし、低金利環境下ではこの差が小さく、「数十万円のメリットのために当初の高い返済額を負担する価値があるか」は個別判断が必要です。
元金の減少が早く早期完済しやすい
元金均等返済では、毎月一定額の元金を必ず返済するため、残高の減少スピードが速いのが特徴です。
このため、繰上返済を積極的に行いたい人や、早期完済を目指す人には向いています。
利息総額を抑えられる
元金が早く減ることで、利息の計算対象となる残高が早く減少し、利息総額を抑えられます。
住宅金融支援機構のFP解説によると、「総返済額を重視する人には元金均等が有利」とされていますが、「当初の家計負担を考慮すべき」とも指摘されています。
元金均等返済のデメリット(当初返済額・審査・金利上昇リスク)
元金均等返済には以下のようなデメリットもあります。
当初返済額が高く家計を圧迫する可能性
元金均等返済の最大のデメリットは、当初の返済額が元利均等より1-2割高いことです。
前述の例では、初回返済額が約9.4万円(元金均等)vs 約8.5万円(元利均等)で、約9,000円の差がありました。この差が家計を圧迫する可能性があります。
特に、住宅購入直後は引っ越し費用や家具・家電の購入で出費がかさむため、貯蓄が十分でないと生活費不足に陥るリスクがあります。
審査基準が厳しくなる(返済負担率)
金融機関の審査では、年収に対する年間返済額の割合(返済負担率)が重視されます。一般的に、返済負担率は35%以内が審査の目安とされています。
元金均等返済は当初返済額が高いため、審査時の返済負担率が上がり、求められる年収基準が高くなります。希望額を借りられない可能性があるため、注意が必要です。
金融機関の選択肢が限られる
元金均等返済を取り扱わない金融機関も多く、特にネット銀行では非対応が多いのが現状です。
住信SBIネット銀行の公式サイトでも、元金均等返済の取り扱い状況は金融機関により異なることが明記されています。希望する銀行が対応しているか、事前に確認しましょう。
変動金利の場合、金利上昇時の返済額増加が早い
変動金利で元金均等返済を選んだ場合、金利上昇時の返済額増加が早いというリスクがあります。
元利均等返済では5年ルール(返済額が5年間一定)や125%ルール(返済額の増加は前回の125%まで)が適用されることが多いですが、元金均等返済ではこうした保護措置がない場合があります。
教育費ピーク時に貯蓄しにくい
返済開始から5-10年は返済額が多く、貯蓄がしにくいという問題があります。
この時期に子どもの教育費がピークを迎える家庭には、元金均等返済は不向きです。ライフプランを慎重に検討しましょう。
元金均等返済が向いている人・向かない人の判断基準
元金均等返済が向いているかどうかは、収入の安定性やライフプランによって異なります。
向いている人:高収入・収入安定・早期完済志向
以下のような人には、元金均等返済が向いています。
- 高収入で当初の返済額負担に余裕がある
- 収入が安定している(公務員、大企業の正社員等)
- 早期完済を目指している
- 貯蓄が十分にある(住宅購入後も生活費・教育費に余裕)
- 総返済額を重視する
FPの解説によると、「将来的に収入が安定している人、繰上返済を積極的に行う予定の人に向いている」とされています。
向かない人:収入不安定・教育費ピーク前・当初支出抑制志向
以下のような人には、元金均等返済は向かない可能性があります。
- 収入が不安定(自営業、契約社員等)
- 教育費ピークが5-10年後に控えている
- 当初の支出を抑えたい
- 元金均等非対応の金融機関を希望
- 家計管理を簡単にしたい(返済額一定の方が良い)
どちらが「正解」かは個別判断
三井住友信託銀行の解説でも、「どちらを選ぶかは正解がない個別判断」とされています。
総返済額を重視するなら元金均等、家計管理のしやすさを重視するなら元利均等という基準で考え、自分の状況(収入、家計、ライフプラン)に応じて判断することが重要です。
まとめ:自分に合った返済方法を選ぶためのポイント
元金均等返済は、毎月一定額の元金に利息を上乗せする方式で、当初返済額は高いが総返済額が少ない特徴があります。一方、元利均等返済は、毎月の返済額が一定で家計管理がしやすい方式です。
どちらが「得」かは一概に言えず、収入の安定性・ライフプラン・家計状況によって最適解が異なります。低金利環境下では総返済額の差が小さいため、「数十万円のメリットのために当初の高い返済額を負担する価値があるか」を慎重に検討しましょう。
金融機関の返済シミュレーションツールを活用したり、ファイナンシャルプランナーに相談したりしながら、無理のない返済計画を立てることをおすすめします。
住宅金融支援機構では、返済方法の変更手続きも用意されていますので、途中で家計状況が変わった場合には、変更を検討することも可能です。
