妻名義で住宅ローンは組めるのか
夫婦で住宅購入を検討している際、「妻名義で住宅ローンを組めるのか」「メリット・デメリットは何か」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、妻名義で住宅ローンを組む際の可否、メリット・デメリット、注意点、ペアローンとの比較を、国税庁・金融機関の公式情報を元に解説します。
夫婦で最適な住宅ローンの選択肢を判断できるようになります。
この記事のポイント
- 妻名義でも夫名義でも、収入・信用情報が審査基準を満たせば問題なく組める(性別による制限はない)
- 妻の方が収入安定・高収入の場合、審査に有利で住宅ローン控除も最大化できる
- 夫死亡時は団信の保障対象外、産休・育休中も返済が続く等のデメリットがある
- 名義と持分の一致が必須(不一致は贈与税リスク)
- ペアローンや連帯債務を利用すれば、夫婦双方の収入を活用できる
妻名義で住宅ローンを組むメリット
妻名義で住宅ローンを組むことには、以下のメリットがあります。
妻の方が収入安定・高収入の場合、審査に有利
住宅ローンの審査は、収入の安定性と金額が重要な基準となります。妻の方が正社員・公務員で収入が安定している場合、夫が自営業や非正規雇用より審査に通りやすい傾向があります。
また、妻の方が年収が高い場合、借入可能額が増える可能性があります。
住宅ローン控除を妻の所得税から受けられる
住宅ローン控除は債務者の所得税から控除されるため、妻名義なら妻の所得税が対象となります。国税庁によると、妻の所得税が高い場合は控除メリットを最大化できます。
例:
- 夫の所得税:年10万円
- 妻の所得税:年30万円
- 住宅ローン控除額:年25万円
この場合、妻名義なら年25万円の控除を受けられますが、夫名義では年10万円しか控除されません。
妻死亡時は団信で残債が完済される
団体信用生命保険(団信)は債務者が対象のため、カーディフ生命によると、妻名義なら妻死亡時に残債が保険で完済されます。
ただし、夫死亡では保障されない点に注意が必要です(詳しくはデメリットの項で解説)。
妻名義で住宅ローンを組むデメリット
妻名義で住宅ローンを組む場合、以下のデメリットがあります。
夫の収入が考慮されず借入額が限定される
妻のみの収入で審査されるため、世帯収入が高くても借入可能額は妻の収入に限定されます。
例:
- 妻の年収:400万円
- 夫の年収:600万円
- 妻単独の借入可能額:約2,800万円(年収の7倍が目安)
- 世帯年収での借入可能額:約7,000万円(ペアローン等を利用した場合)
夫死亡時は団信の保障対象外
団信は妻のみ対象で、夫死亡では残債が残ります。夫が主な収入源の場合、カーディフ生命によると、返済困難になるリスクがあります。
対策:
- 夫の生命保険を厚めに設定
- ペアローンで双方が団信に加入
産休・育休中も返済が続く
産休・育休中は収入が減少・停止しますが、返済は続きます。アットホームによると、事前に返済資金を確保していないと延滞リスクがあります。
金融機関によっては返済猶予制度がある場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。
妻名義で組む際の重要な注意点
妻名義で住宅ローンを組む際には、以下の点に注意してください。
名義と持分の一致が必須(贈与税リスク)
国税庁によると、実際の資金負担割合と登記持分を一致させないと、差額が贈与とみなされ贈与税が課されます。
例:
- 3,000万円の家を夫2,000万円・妻1,000万円で購入
- 持分を1/2ずつ(夫1,500万円・妻1,500万円)で登記
- 妻が夫から500万円の贈与を受けたとみなされ、贈与税が発生(基礎控除110万円を超える部分)
正しい登記:
- 夫の持分:2/3
- 妻の持分:1/3
夫が返済すると贈与税が課される
妻名義のローンを夫が返済すると、年110万円超の部分に贈与税が課されます。アットホームによると、夫婦間でも住宅ローン返済は生活費・教育費に該当せず、贈与扱いとなります。
例:
- 妻名義のローン月々10万円(年120万円)を夫が返済
- 120万円 - 110万円(基礎控除)= 10万円に贈与税が課される
連帯保証人要求と離婚時の影響
金融機関は夫を連帯保証人として要求することが多いです。離婚時に妻が家を単独所有したくても、夫が連帯保証人のままだと処分・売却に制約が生じる可能性があります。
対策:
- 離婚時は金融機関への相談が必須
- 必要に応じて借り換えや名義変更を検討
ペアローン・連帯債務との比較
妻単独名義以外にも、夫婦で住宅ローンを組む選択肢があります。
4つの選択肢比較表
PayPay銀行の情報を参考に、4つの選択肢を比較します。
| 項目 | 妻単独名義 | 夫単独名義 | ペアローン | 連帯債務 |
|---|---|---|---|---|
| 債務者 | 妻のみ | 夫のみ | 夫婦それぞれ | 夫婦双方 |
| 連帯保証人 | 夫(多くの場合) | 妻(多くの場合) | 相互に保証人 | 不要 |
| 団信対象 | 妻のみ | 夫のみ | 夫婦それぞれ | 主債務者のみ |
| 住宅ローン控除 | 妻のみ | 夫のみ | 夫婦それぞれ | 夫婦それぞれ |
| 借入可能額 | 妻の収入のみ | 夫の収入のみ | 合算収入 | 合算収入 |
住宅ローン控除の適用範囲
ペアローン・連帯債務は、国税庁によると、双方が住宅ローン控除を受けられる点が単独名義との最大の違いです。
ペアローン:
- 夫婦それぞれが別々の契約を結ぶ
- 双方が債務者かつ相手の連帯保証人となる
- 双方が団信に加入可能
連帯債務(フラット35等):
- 1つの契約で双方が全額の返済義務を負う
- 主債務者が団信に加入(一部商品では夫婦連生団信も選択可能)
- 双方が住宅ローン控除を受けられる
まとめ:自分たちに最適な選択肢を
妻名義でも夫名義でも、収入・信用情報が審査基準を満たせば問題なく組めます。ただし、収入・持分・税制メリット・将来のライフイベント(産休・育休、離婚等)を総合的に考慮して判断すべきです。
妻の方が収入安定・高収入なら妻名義が有利ですが、夫死亡時の団信保障がない点に注意してください。双方の収入を活用したい場合はペアローンや連帯債務を検討しましょう。
名義と持分の一致が贈与税回避の鍵です。次のアクションとして、金融機関への事前相談や、ファイナンシャルプランナーへの相談をおすすめします。
