妻名義で住宅ローンを組むメリット・注意点を解説

公開日: 2025/11/11

妻名義で住宅ローンは組めるのか

夫婦で住宅購入を検討している際、「妻名義で住宅ローンを組めるのか」「メリット・デメリットは何か」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、妻名義で住宅ローンを組む際の可否、メリット・デメリット、注意点、ペアローンとの比較を、国税庁・金融機関の公式情報を元に解説します。

夫婦で最適な住宅ローンの選択肢を判断できるようになります。

この記事のポイント

  • 妻名義でも夫名義でも、収入・信用情報が審査基準を満たせば問題なく組める(性別による制限はない)
  • 妻の方が収入安定・高収入の場合、審査に有利で住宅ローン控除も最大化できる
  • 夫死亡時は団信の保障対象外、産休・育休中も返済が続く等のデメリットがある
  • 名義と持分の一致が必須(不一致は贈与税リスク)
  • ペアローンや連帯債務を利用すれば、夫婦双方の収入を活用できる

妻名義で住宅ローンを組むメリット

妻名義で住宅ローンを組むことには、以下のメリットがあります。

妻の方が収入安定・高収入の場合、審査に有利

住宅ローンの審査は、収入の安定性と金額が重要な基準となります。妻の方が正社員・公務員で収入が安定している場合、夫が自営業や非正規雇用より審査に通りやすい傾向があります。

また、妻の方が年収が高い場合、借入可能額が増える可能性があります。

住宅ローン控除を妻の所得税から受けられる

住宅ローン控除は債務者の所得税から控除されるため、妻名義なら妻の所得税が対象となります。国税庁によると、妻の所得税が高い場合は控除メリットを最大化できます。

例:

  • 夫の所得税:年10万円
  • 妻の所得税:年30万円
  • 住宅ローン控除額:年25万円

この場合、妻名義なら年25万円の控除を受けられますが、夫名義では年10万円しか控除されません。

妻死亡時は団信で残債が完済される

団体信用生命保険(団信)は債務者が対象のため、カーディフ生命によると、妻名義なら妻死亡時に残債が保険で完済されます。

ただし、夫死亡では保障されない点に注意が必要です(詳しくはデメリットの項で解説)。

妻名義で住宅ローンを組むデメリット

妻名義で住宅ローンを組む場合、以下のデメリットがあります。

夫の収入が考慮されず借入額が限定される

妻のみの収入で審査されるため、世帯収入が高くても借入可能額は妻の収入に限定されます。

例:

  • 妻の年収:400万円
  • 夫の年収:600万円
  • 妻単独の借入可能額:約2,800万円(年収の7倍が目安)
  • 世帯年収での借入可能額:約7,000万円(ペアローン等を利用した場合)

夫死亡時は団信の保障対象外

団信は妻のみ対象で、夫死亡では残債が残ります。夫が主な収入源の場合、カーディフ生命によると、返済困難になるリスクがあります。

対策:

  • 夫の生命保険を厚めに設定
  • ペアローンで双方が団信に加入

産休・育休中も返済が続く

産休・育休中は収入が減少・停止しますが、返済は続きます。アットホームによると、事前に返済資金を確保していないと延滞リスクがあります。

金融機関によっては返済猶予制度がある場合もあるため、事前に確認することをおすすめします。

妻名義で組む際の重要な注意点

妻名義で住宅ローンを組む際には、以下の点に注意してください。

名義と持分の一致が必須(贈与税リスク)

国税庁によると、実際の資金負担割合と登記持分を一致させないと、差額が贈与とみなされ贈与税が課されます。

例:

  • 3,000万円の家を夫2,000万円・妻1,000万円で購入
  • 持分を1/2ずつ(夫1,500万円・妻1,500万円)で登記
  • 妻が夫から500万円の贈与を受けたとみなされ、贈与税が発生(基礎控除110万円を超える部分)

正しい登記:

  • 夫の持分:2/3
  • 妻の持分:1/3

夫が返済すると贈与税が課される

妻名義のローンを夫が返済すると、年110万円超の部分に贈与税が課されます。アットホームによると、夫婦間でも住宅ローン返済は生活費・教育費に該当せず、贈与扱いとなります。

例:

  • 妻名義のローン月々10万円(年120万円)を夫が返済
  • 120万円 - 110万円(基礎控除)= 10万円に贈与税が課される

連帯保証人要求と離婚時の影響

金融機関は夫を連帯保証人として要求することが多いです。離婚時に妻が家を単独所有したくても、夫が連帯保証人のままだと処分・売却に制約が生じる可能性があります。

対策:

  • 離婚時は金融機関への相談が必須
  • 必要に応じて借り換えや名義変更を検討

ペアローン・連帯債務との比較

妻単独名義以外にも、夫婦で住宅ローンを組む選択肢があります。

4つの選択肢比較表

PayPay銀行の情報を参考に、4つの選択肢を比較します。

項目 妻単独名義 夫単独名義 ペアローン 連帯債務
債務者 妻のみ 夫のみ 夫婦それぞれ 夫婦双方
連帯保証人 夫(多くの場合) 妻(多くの場合) 相互に保証人 不要
団信対象 妻のみ 夫のみ 夫婦それぞれ 主債務者のみ
住宅ローン控除 妻のみ 夫のみ 夫婦それぞれ 夫婦それぞれ
借入可能額 妻の収入のみ 夫の収入のみ 合算収入 合算収入

住宅ローン控除の適用範囲

ペアローン・連帯債務は、国税庁によると、双方が住宅ローン控除を受けられる点が単独名義との最大の違いです。

ペアローン:

  • 夫婦それぞれが別々の契約を結ぶ
  • 双方が債務者かつ相手の連帯保証人となる
  • 双方が団信に加入可能

連帯債務(フラット35等):

  • 1つの契約で双方が全額の返済義務を負う
  • 主債務者が団信に加入(一部商品では夫婦連生団信も選択可能)
  • 双方が住宅ローン控除を受けられる

まとめ:自分たちに最適な選択肢を

妻名義でも夫名義でも、収入・信用情報が審査基準を満たせば問題なく組めます。ただし、収入・持分・税制メリット・将来のライフイベント(産休・育休、離婚等)を総合的に考慮して判断すべきです。

妻の方が収入安定・高収入なら妻名義が有利ですが、夫死亡時の団信保障がない点に注意してください。双方の収入を活用したい場合はペアローンや連帯債務を検討しましょう。

名義と持分の一致が贈与税回避の鍵です。次のアクションとして、金融機関への事前相談や、ファイナンシャルプランナーへの相談をおすすめします。

よくある質問

Q1夫婦で収入を合算して借入額を増やすことはできますか?

A1はい、可能です。ペアローン(夫婦それぞれが別契約)、連帯債務(1つの契約で双方が債務者)、連帯保証(一方が債務者、配偶者が保証人)の3つの方法があります。借入額や住宅ローン控除の適用範囲が異なるため、金融機関で比較することをおすすめします。

Q2婚姻期間20年以上なら贈与税がかからないと聞きましたが、名義と持分が一致していなくても大丈夫ですか?

A2贈与税の配偶者控除(婚姻期間20年以上で2,110万円まで非課税)が適用される場合があります。ただし、適用には贈与税の申告が必要です。購入時から名義と持分を一致させる方が確実です。具体的な適用については税理士に相談することをおすすめします。

Q3産休中に住宅ローン審査は通りますか?

A3産休・育休中は収入が減少・停止するため、審査が厳しくなる可能性が高いです。復職予定であることを示す書類(会社の証明書等)の提出を求められることがあります。復職後に申し込む方が審査に有利です。

Q4離婚した場合、妻名義の住宅ローンはどうなりますか?

A4妻が債務者のため、原則として妻が返済義務を負い続けます。ただし、夫が連帯保証人の場合、夫の同意なしに家の処分・売却が制約される可能性があります。離婚時は金融機関への相談と、必要に応じて借り換えや名義変更を検討してください。