不動産の利回りとは?計算方法と注意点を解説

公開日: 2025/10/27

不動産投資の利回りとは|2種類の利回りを理解

不動産投資を検討する際、「利回りの意味が分からない」「広告の利回りはどこまで信じていいのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産投資の利回りの基礎知識(表面利回りと実質利回りの違い)、計算方法、適正な利回り水準、高利回り物件の注意点を、三菱UFJ銀行の公式情報等を元に解説します。

初めて不動産投資を検討する方でも、利回りを正しく理解し、適切な投資判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産投資の利回りには「表面利回り(グロス利回り)」と「実質利回り(ネット利回り)」の2種類がある
  • 広告で表示されるのは通常「表面利回り」で、満室想定・経費無視の数値のため、実際の収益性とは大きく異なる
  • 実質利回りは年間諸経費・購入時諸費用を全て反映した正確な利回りで、投資判断はこちらで行うべき
  • 適正な利回り水準は、都心区分マンション実質利回り3-5%、地方一棟アパート5-8%が目安
  • 高利回り物件(10%超)は空室リスク・修繕リスク・立地リスクが高い場合が多く、利回りだけで判断すべきではない

不動産投資の利回りとは

不動産投資の利回りとは、投資額に対する年間収益の割合を示す指標です。物件の収益力を判断する重要な基準となります。

不動産投資の利回りには、「表面利回り(グロス利回り)」と「実質利回り(ネット利回り)」の2種類があります。

重要:広告で表示されるのは通常「表面利回り」です。表面利回りは満室想定・経費無視の数値で、実際の収益性とは大きく異なります。投資判断は「実質利回り」で行うべきです。

利回りの種類 計算式 特徴
表面利回り 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100 シンプル、比較しやすい、経費無視
実質利回り (年間家賃収入 - 年間諸経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸費用) × 100 正確、経費反映、実際の収益性

表面利回りとは|広告でよく見る数値

表面利回り(グロス利回り)は、最もシンプルな利回りです。

計算式

表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100

例えば、物件価格3,000万円、年間家賃収入240万円の場合:

  • 表面利回り = 240万円 ÷ 3,000万円 × 100 = 8%

メリット・デメリット

メリット

  • 計算がシンプル
  • 物件間の比較がしやすい
  • 広告で一般的に使われる

デメリット

  • 経費を考慮しない
  • 実際の収益性とは乖離する
  • 満室想定の数値(空室リスクを考慮しない)

みずほ不動産販売の解説によると、表面利回りは物件の収益力を大まかに把握するための指標であり、実際の投資判断には実質利回りを使用すべきです。

実質利回りとは|正確な収益性を反映

実質利回り(ネット利回り)は、年間諸経費と購入時諸費用を全て反映した正確な利回りです。

計算式

実質利回り = (年間家賃収入 - 年間諸経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸費用) × 100

例えば、物件価格3,000万円、年間家賃収入240万円、年間諸経費80万円、購入時諸費用200万円の場合:

  • 年間純収益 = 240万円 - 80万円 = 160万円
  • 総投資額 = 3,000万円 + 200万円 = 3,200万円
  • 実質利回り = 160万円 ÷ 3,200万円 × 100 = 5%

注目:表面利回り8%の物件が、実質利回り5%になりました。実際の収益は表面利回りより大幅に低いことが分かります。

年間諸経費の内訳

三菱UFJ銀行の解説によると、年間諸経費には以下の項目が含まれます。

項目 内容 目安額(年間)
管理費 マンション共用部の管理費用 月1-2万円程度
修繕積立金 大規模修繕に備えた積立金 月1-2万円程度
固定資産税 毎年1月1日時点の所有者に課税 評価額の1.4%
都市計画税 市街化区域内の不動産に課税 評価額の0.3%
火災保険料 建物・家財の火災保険 年1-3万円程度
管理委託費 賃貸管理会社への委託費用 家賃の5%
修繕費 設備の修理・交換費用 家賃の5-10%
空室損失 空室期間の家賃収入ゼロ 年間家賃の10-20%

これらの経費を全て考慮して、実質利回りを計算してください。

購入時諸費用の内訳

購入時諸費用には以下の項目が含まれます(物件価格の5-10%)。

  • 仲介手数料(物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税)
  • 登記費用(登録免許税 + 司法書士報酬)
  • 不動産取得税
  • ローン事務手数料
  • 火災保険料(初回)

適正な利回り水準|エリア・物件種別ごと

適正な利回り水準は、エリア・物件種別により異なります。

都心区分マンション

不動産投資の利回り相場によると、2023年4月時点の平均利回りは以下の通りです。

  • ワンルーム:実質利回り4.6%
  • ファミリー:実質利回り4.7%

都心区分マンションは立地が良く、空室リスクが低い傾向がありますが、利回りは低めです。実質利回り3-5%が目安です。

地方一棟アパート

エリア別の利回り相場によると、地方一棟アパートは以下の傾向があります。

  • 実質利回り:5-8%
  • 空室リスク:都心より高い
  • 修繕費:築年数により大きく変動

地方一棟アパートは利回りが高い傾向がありますが、空室リスク・修繕リスクも高いため、慎重に判断してください。

戸建て

戸建ては以下の傾向があります。

  • 実質利回り:5-7%
  • 空室期間:ファミリー層のため長期入居が期待できる
  • 修繕費:一棟アパートよりも高額になる場合がある

物件種別の利回り相場(新築 vs 中古)

利回りの理想水準によると、新築と中古で利回り相場が異なります。

物件種別 表面利回り目安 実質利回り目安
新築物件 3-10% 2-8%
中古物件 5.5-15% 4-12%

中古物件は利回りが高い傾向がありますが、修繕費が高額になる可能性があります。築年数・修繕履歴を必ず確認してください。

高利回り物件の罠|リスクを見極める

高利回り物件(10%超)は魅力的に見えますが、空室リスク・修繕リスク・立地リスクが高い場合が多いため、注意が必要です。

野村不動産ソリューションズの専門家による解説によると、広告の想定利回りには以下の「罠」があります。

広告の想定利回りの罠

  • 満室想定:空室リスクを考慮していない
  • 相場より高い家賃設定:実際にはその家賃で入居者が見つからない
  • 経費無視:管理費・修繕費・税金等を考慮していない
  • 購入時諸費用無視:仲介手数料・登記費用等を考慮していない

高利回り物件を検討する場合は、以下の点を必ず確認してください。

  • 立地:駅から徒歩何分か、周辺環境はどうか
  • 築年数:大規模修繕が必要な時期か
  • 修繕状況:過去の修繕履歴、修繕積立金の残高
  • 空室率:地域の空室率、物件の空室履歴
  • 出口戦略:将来売却できる物件か

利回りの高さだけで判断せず、物件の実態を慎重に確認してください。

まとめ|実質利回りと総合判断が重要

不動産投資の利回りには、表面利回り(グロス利回り)と実質利回り(ネット利回り)の2種類があります。広告で表示されるのは通常「表面利回り」で、満室想定・経費無視の数値です。

投資判断は「実質利回り」で行ってください。実質利回りは、年間諸経費(管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料、管理委託費、修繕費、空室損失)と購入時諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税等)を全て反映した正確な利回りです。

適正な利回り水準は、都心区分マンション実質利回り3-5%、地方一棟アパート5-8%が目安です。高利回り物件(10%超)は空室リスク・修繕リスク・立地リスクが高い場合が多いため、慎重に判断してください。

利回りだけでなく、出口戦略(将来売却できるか)、空室リスク、修繕費、税務等を総合的に判断し、自分でシミュレーションすることを推奨します。不明点があれば、不動産会社や税理士等の専門家に相談してください。

よくある質問

Q1表面利回りと実質利回り、どちらを重視すべきですか?

A1実質利回りを重視すべきです。表面利回りは経費を無視した数値で、実際の収益性とは大きく異なります。年間諸経費(管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料、管理委託費、修繕費、空室損失)と購入時諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税等)を全て反映した実質利回りで判断してください。例えば、表面利回り8%の物件が実質利回り5%になることは珍しくありません。

Q2利回り何%なら良い投資と言えますか?

A2エリア・物件種別により異なりますが、都心区分マンション実質利回り3-5%、地方一棟アパート5-8%が目安です。ただし、利回りだけでなく空室リスク・修繕費・出口戦略も総合的に判断すべきです。利回りが高いほど良いとは限りません。高利回り物件(10%超)は空室リスク・修繕リスク・立地リスクが高い場合が多いため、慎重に判断してください。

Q3高利回り物件は買うべきですか?

A3高利回り物件(10%超)は空室リスク・修繕リスク・立地リスクが高い場合が多いため、利回りの高さだけで判断すべきではありません。立地(駅から徒歩何分か、周辺環境)、築年数(大規模修繕が必要な時期か)、修繕状況(過去の修繕履歴、修繕積立金の残高)、空室率(地域の空室率、物件の空室履歴)、出口戦略(将来売却できるか)を慎重に確認してください。広告の想定利回りは満室想定・相場より高い家賃設定である可能性があります。

Q4想定利回りとは何ですか?

A4想定利回りとは、満室を想定して計算される利回りです。空室リスクを考慮していないため、実際の収益はこれより低くなる場合が多いです。広告では相場より高い家賃で計算されている可能性もあります。想定利回りはあくまで参考値であり、実際の収益を保証するものではありません。投資判断は、空室リスク・年間諸経費・購入時諸費用を全て反映した実質利回りで行ってください。