不動産投資の利回りとは|2種類の利回りを理解
不動産投資を検討する際、「利回りの意味が分からない」「広告の利回りはどこまで信じていいのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産投資の利回りの基礎知識(表面利回りと実質利回りの違い)、計算方法、適正な利回り水準、高利回り物件の注意点を、三菱UFJ銀行の公式情報等を元に解説します。
初めて不動産投資を検討する方でも、利回りを正しく理解し、適切な投資判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 不動産投資の利回りには「表面利回り(グロス利回り)」と「実質利回り(ネット利回り)」の2種類がある
- 広告で表示されるのは通常「表面利回り」で、満室想定・経費無視の数値のため、実際の収益性とは大きく異なる
- 実質利回りは年間諸経費・購入時諸費用を全て反映した正確な利回りで、投資判断はこちらで行うべき
- 適正な利回り水準は、都心区分マンション実質利回り3-5%、地方一棟アパート5-8%が目安
- 高利回り物件(10%超)は空室リスク・修繕リスク・立地リスクが高い場合が多く、利回りだけで判断すべきではない
不動産投資の利回りとは
不動産投資の利回りとは、投資額に対する年間収益の割合を示す指標です。物件の収益力を判断する重要な基準となります。
不動産投資の利回りには、「表面利回り(グロス利回り)」と「実質利回り(ネット利回り)」の2種類があります。
重要:広告で表示されるのは通常「表面利回り」です。表面利回りは満室想定・経費無視の数値で、実際の収益性とは大きく異なります。投資判断は「実質利回り」で行うべきです。
| 利回りの種類 | 計算式 | 特徴 | 
|---|---|---|
| 表面利回り | 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100 | シンプル、比較しやすい、経費無視 | 
| 実質利回り | (年間家賃収入 - 年間諸経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸費用) × 100 | 正確、経費反映、実際の収益性 | 
表面利回りとは|広告でよく見る数値
表面利回り(グロス利回り)は、最もシンプルな利回りです。
計算式
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
例えば、物件価格3,000万円、年間家賃収入240万円の場合:
- 表面利回り = 240万円 ÷ 3,000万円 × 100 = 8%
メリット・デメリット
メリット
- 計算がシンプル
- 物件間の比較がしやすい
- 広告で一般的に使われる
デメリット
- 経費を考慮しない
- 実際の収益性とは乖離する
- 満室想定の数値(空室リスクを考慮しない)
みずほ不動産販売の解説によると、表面利回りは物件の収益力を大まかに把握するための指標であり、実際の投資判断には実質利回りを使用すべきです。
実質利回りとは|正確な収益性を反映
実質利回り(ネット利回り)は、年間諸経費と購入時諸費用を全て反映した正確な利回りです。
計算式
実質利回り = (年間家賃収入 - 年間諸経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸費用) × 100
例えば、物件価格3,000万円、年間家賃収入240万円、年間諸経費80万円、購入時諸費用200万円の場合:
- 年間純収益 = 240万円 - 80万円 = 160万円
- 総投資額 = 3,000万円 + 200万円 = 3,200万円
- 実質利回り = 160万円 ÷ 3,200万円 × 100 = 5%
注目:表面利回り8%の物件が、実質利回り5%になりました。実際の収益は表面利回りより大幅に低いことが分かります。
年間諸経費の内訳
三菱UFJ銀行の解説によると、年間諸経費には以下の項目が含まれます。
| 項目 | 内容 | 目安額(年間) | 
|---|---|---|
| 管理費 | マンション共用部の管理費用 | 月1-2万円程度 | 
| 修繕積立金 | 大規模修繕に備えた積立金 | 月1-2万円程度 | 
| 固定資産税 | 毎年1月1日時点の所有者に課税 | 評価額の1.4% | 
| 都市計画税 | 市街化区域内の不動産に課税 | 評価額の0.3% | 
| 火災保険料 | 建物・家財の火災保険 | 年1-3万円程度 | 
| 管理委託費 | 賃貸管理会社への委託費用 | 家賃の5% | 
| 修繕費 | 設備の修理・交換費用 | 家賃の5-10% | 
| 空室損失 | 空室期間の家賃収入ゼロ | 年間家賃の10-20% | 
これらの経費を全て考慮して、実質利回りを計算してください。
購入時諸費用の内訳
購入時諸費用には以下の項目が含まれます(物件価格の5-10%)。
- 仲介手数料(物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税)
- 登記費用(登録免許税 + 司法書士報酬)
- 不動産取得税
- ローン事務手数料
- 火災保険料(初回)
適正な利回り水準|エリア・物件種別ごと
適正な利回り水準は、エリア・物件種別により異なります。
都心区分マンション
不動産投資の利回り相場によると、2023年4月時点の平均利回りは以下の通りです。
- ワンルーム:実質利回り4.6%
- ファミリー:実質利回り4.7%
都心区分マンションは立地が良く、空室リスクが低い傾向がありますが、利回りは低めです。実質利回り3-5%が目安です。
地方一棟アパート
エリア別の利回り相場によると、地方一棟アパートは以下の傾向があります。
- 実質利回り:5-8%
- 空室リスク:都心より高い
- 修繕費:築年数により大きく変動
地方一棟アパートは利回りが高い傾向がありますが、空室リスク・修繕リスクも高いため、慎重に判断してください。
戸建て
戸建ては以下の傾向があります。
- 実質利回り:5-7%
- 空室期間:ファミリー層のため長期入居が期待できる
- 修繕費:一棟アパートよりも高額になる場合がある
物件種別の利回り相場(新築 vs 中古)
利回りの理想水準によると、新築と中古で利回り相場が異なります。
| 物件種別 | 表面利回り目安 | 実質利回り目安 | 
|---|---|---|
| 新築物件 | 3-10% | 2-8% | 
| 中古物件 | 5.5-15% | 4-12% | 
中古物件は利回りが高い傾向がありますが、修繕費が高額になる可能性があります。築年数・修繕履歴を必ず確認してください。
高利回り物件の罠|リスクを見極める
高利回り物件(10%超)は魅力的に見えますが、空室リスク・修繕リスク・立地リスクが高い場合が多いため、注意が必要です。
野村不動産ソリューションズの専門家による解説によると、広告の想定利回りには以下の「罠」があります。
広告の想定利回りの罠
- 満室想定:空室リスクを考慮していない
- 相場より高い家賃設定:実際にはその家賃で入居者が見つからない
- 経費無視:管理費・修繕費・税金等を考慮していない
- 購入時諸費用無視:仲介手数料・登記費用等を考慮していない
高利回り物件を検討する場合は、以下の点を必ず確認してください。
- 立地:駅から徒歩何分か、周辺環境はどうか
- 築年数:大規模修繕が必要な時期か
- 修繕状況:過去の修繕履歴、修繕積立金の残高
- 空室率:地域の空室率、物件の空室履歴
- 出口戦略:将来売却できる物件か
利回りの高さだけで判断せず、物件の実態を慎重に確認してください。
まとめ|実質利回りと総合判断が重要
不動産投資の利回りには、表面利回り(グロス利回り)と実質利回り(ネット利回り)の2種類があります。広告で表示されるのは通常「表面利回り」で、満室想定・経費無視の数値です。
投資判断は「実質利回り」で行ってください。実質利回りは、年間諸経費(管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税、火災保険料、管理委託費、修繕費、空室損失)と購入時諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税等)を全て反映した正確な利回りです。
適正な利回り水準は、都心区分マンション実質利回り3-5%、地方一棟アパート5-8%が目安です。高利回り物件(10%超)は空室リスク・修繕リスク・立地リスクが高い場合が多いため、慎重に判断してください。
利回りだけでなく、出口戦略(将来売却できるか)、空室リスク、修繕費、税務等を総合的に判断し、自分でシミュレーションすることを推奨します。不明点があれば、不動産会社や税理士等の専門家に相談してください。
