不動産投資の利回りとは?基本知識と重要性
不動産投資を検討する際、「利回り」という言葉は必ず耳にします。利回りとは、投資額に対する年間収益の割合を示す指標で、年間収益÷投資額×100で算出されます。
この記事では、不動産投資の利回りについて、表面利回りと実質利回りの違い、物件種別・エリア別の相場、高利回り物件のリスク、利回り以外に確認すべき指標を、国土交通省や日本不動産研究所の公式情報を元に解説します。
利回りは不動産投資の収益性を測る基本的な指標ですが、利回りだけで判断すると失敗するリスクもあります。表面利回りと実質利回りの違いを理解し、物件のリスクやキャッシュフローも含めて総合的に判断することが重要です。
この記事のポイント
- 表面利回りは経費を考慮せず、実質利回りより2-3%高く表示される
- 物件種別・エリア別の利回り相場は、都心区分マンション3.5-4.5%、地方5-6%、中古一棟アパート7-12%程度
- 高利回り物件(10%以上)は空室・修繕費・需要減少リスクが高い可能性がある
- 利回り以外にキャッシュフロー・ローン返済比率・出口戦略を確認すべき
- 投資には必ずリスクが伴うため、複数の情報源を確認し専門家に相談することを推奨
表面利回りと実質利回りの違いと計算方法
不動産投資の利回りには「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。この違いを理解しないと、想定より収益が低くなるリスクがあります。
表面利回り(グロス利回り)の計算式
表面利回りは、年間家賃収入を物件購入価格で割って算出します。
計算式: 表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100
例えば、物件価格3,000万円、年間家賃収入240万円の場合:
240万円 ÷ 3,000万円 × 100 = 8.0%
表面利回りは計算がシンプルで、不動産広告で表示されることが多い指標です。ただし、経費を一切考慮していないため、実際の収益率とは異なります。
実質利回り(ネット利回り)の計算式
実質利回りは、年間家賃収入から経費を差し引き、物件購入価格と購入時諸費用を合計した金額で割って算出します。
計算式: 実質利回り = (年間家賃収入 - 年間経費) ÷ (物件購入価格 + 購入時諸費用) × 100
例えば、物件価格3,000万円、年間家賃収入240万円、年間経費60万円(管理費・修繕費・税金等)、購入時諸費用200万円(仲介手数料・登記費用等)の場合:
(240万円 - 60万円) ÷ (3,000万円 + 200万円) × 100 = 5.6%
具体的なシミュレーション例
表面利回りと実質利回りの差を具体例で比較します(一般的な経費率として家賃収入の25%程度、購入時諸費用として物件価格の6-7%程度をもとに試算)。
| 項目 | 金額 | 
|---|---|
| 物件購入価格 | 3,000万円 | 
| 購入時諸費用 | 200万円 | 
| 年間家賃収入 | 240万円 | 
| 年間経費 | 60万円 | 
| 表面利回り | 8.0% | 
| 実質利回り | 5.6% | 
この例では、表面利回りと実質利回りの差は2.4%になります。経費を考慮すると利回りが大幅に下がることが分かります。
物件種別・エリア別の利回り相場
不動産投資の利回りは、物件種別や立地エリアによって大きく異なります。日本不動産研究所の不動産投資家調査(2024年10月)をもとに、相場を確認しましょう。
区分マンションの利回り相場
区分マンション(1室単位で所有するマンション)の期待利回りは、都心部と地方で差があります。
- 都心部(東京23区や大阪・名古屋の中心部等): 3.5-4.5%程度
- 地方都市: 5-6%程度
都心部は物件価格が高く利回りは低めですが、賃貸需要が安定しており空室リスクが低い傾向があります。地方は利回りが高い一方で、人口減少による需要減少リスクに注意が必要です。
一棟マンション・アパートの利回り相場
一棟マンション・アパート(建物全体を所有)の期待利回りは、築年数や規模によって変動します。
- 新築一棟マンション: 3-4.5%程度
- 中古一棟アパート: 7-12%程度
中古物件は利回りが高い傾向がありますが、修繕費用が増加するリスクや、空室率が高まる可能性があります。
都心部と地方の利回り差
一般的に、都心部ほど利回りは低く、地方ほど高くなります。これは物件価格と賃貸需要のバランスによるものです。
| エリア | 利回り相場 | 特徴 | 
|---|---|---|
| 都心部 | 3-5%程度 | 資産価値安定、空室リスク低、売却しやすい | 
| 地方都市 | 5-8%程度 | 利回り高、人口減少リスク、売却難易度高 | 
(出典: 日本不動産研究所、武蔵コーポレーション)
高利回り物件が多い地方は、人口減少による需要減少、空室率の上昇リスクが高いことに注意が必要です。
高利回り物件のリスクと注意点
利回り10%以上の物件は魅力的に見えますが、高利回りの背景には必ず理由があります。リスクを正しく理解しないと、想定外の損失を被る可能性があります。
空室リスク
高利回り物件は、地方や築古物件であることが多く、空室リスクが高い傾向があります。
- 地方物件: 人口減少により賃貸需要が減少している
- 築古物件: 設備が古く、入居者が集まりにくい
空室が長期化すると、表面利回りが高くても実際の収益は大幅に下がります。周辺の空室率や賃貸需要を必ず確認しましょう。
修繕費増加リスク
築年数が古い物件は、修繕費用が増加するリスクが高まります。
- 外壁・屋根修繕: 数百万円規模の費用が発生(一般的な相場として定着しています)
- 設備交換(給湯器・エアコン等): 定期的な更新が必要
修繕費用を考慮すると、実質利回りが大幅に下がる可能性があります。修繕積立金の充足状況や、今後の修繕予定を確認することが重要です。
想定利回りの落とし穴
空室物件の場合、「想定利回り」が表示されることがあります。これは満室時の想定家賃をもとに計算した利回りで、以下のリスクがあります。
- 相場より高い家賃設定: 実際には入居者が集まらない
- 空室期間が考慮されていない: 満室状態が続く前提
想定利回りではなく、現況の家賃や周辺相場をもとに実質利回りを試算することが重要です。
利回りだけで判断してはいけない理由
不動産投資では、利回りだけでなく、キャッシュフロー、ローン返済比率、出口戦略を総合的に判断する必要があります。
キャッシュフローの重要性
キャッシュフローとは、家賃収入からローン返済・経費を差し引いた実際の手元資金です。
計算式: キャッシュフロー = 家賃収入 - ローン返済 - 経費
利回りが高くても、ローン返済額が大きい場合、キャッシュフローがマイナスになる可能性があります。毎月の収支が赤字になると、自己資金を補填し続けることになり、破綻リスクが高まります。
ローン返済比率と金融機関の審査基準
ローン返済比率とは、家賃収入に占めるローン返済額の割合です。
計算式: ローン返済比率 = ローン年間返済額 ÷ 年間家賃収入 × 100
金融庁の投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果(2019年)によると、金融機関はローン返済比率50%以下を目安に審査するケースが多いとされています。返済比率が高すぎると、空室時の資金繰りが厳しくなります。
出口戦略(売却時の価格)
不動産投資では、売却時の価格(出口戦略)も重要です。
- 都心物件: 資産価値が安定しており、売却しやすい
- 地方物件: 買い手がつきにくく、売却時に大幅な値下げが必要な場合がある
利回りが高くても、売却時に価格が大幅に下落すると、トータルでの収益がマイナスになる可能性があります。物件の資産価値や流動性(買い手のつきやすさ)も確認しましょう。
まとめ:利回りの正しい見方と投資判断のポイント
不動産投資の利回りは、表面利回りと実質利回りの2種類があり、経費を考慮した実質利回りで評価することが重要です。物件種別・エリア別の相場は、都心区分マンション3.5-4.5%、地方5-6%、中古一棟アパート7-12%程度が目安です。
高利回り物件(10%以上)は魅力的に見えますが、空室リスク・修繕費増加リスク・需要減少リスクが高い可能性があります。表面的な高利回りに惑わされず、実質利回り、キャッシュフロー、ローン返済比率、出口戦略を総合的に判断しましょう。
不動産投資には必ずリスクが伴います。複数の情報源を確認し、不動産会社や税理士等の専門家に相談しながら、無理のない投資計画を立てることをおすすめします。
