不動産投資の利回りとは?種類と意味を理解する
不動産投資を検討する際、「利回り10%の物件」という広告を見て、「本当にこんなに儲かるのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、表面利回り・実質利回り・想定利回りの違い、エリア・物件種別ごとの利回り相場、利回りだけで判断してはいけない理由を、日本不動産研究所の公式情報を元に解説します。
初めて不動産投資を検討する方でも、利回りの正しい見方を理解し、物件選びの判断材料にできるようになります。
この記事のポイント
- 表面利回りは年間家賃収入÷物件価格×100、実質利回りは経費・空室損失を考慮した実際の収益率
- 物件広告の「利回り10%」は想定利回り(満室・想定家賃前提)であり、実際の入居率・家賃相場との乖離リスクがある
- 都心区分マンション3-5%、地方一棟アパート7-10%が相場で、高利回り物件は築古・地方・空室率高等のリスクが高い
- 利回りだけで判断せず、立地・築年数・管理状態・災害リスク・金利上昇リスクを総合的に評価すべき
- 個別物件の投資判断・推奨は金融商品取引法の投資助言業違反リスクがあり、専門家への相談を推奨
利回りの3種類を理解する(表面・実質・想定)
表面利回り(グロス利回り)の計算式
表面利回り(グロス利回り)は、物件価格に対する年間家賃収入の割合です。計算式は以下の通りです。
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
計算例:
- 物件価格: 3,000万円
- 年間家賃収入: 240万円(月20万円×12ヶ月)
- 表面利回り: 240万円 ÷ 3,000万円 × 100 = 8%
表面利回りは経費を考慮せず、物件の収益性を簡易的に評価する指標です。物件広告で「利回り○%」と表示されている場合、多くは表面利回りを指します。
実質利回り(ネット利回り)の計算式
実質利回り(ネット利回り)は、年間経費と購入時諸費用を考慮した実際の収益率です。計算式は以下の通りです。
実質利回り = (年間家賃収入 - 年間経費) ÷ (物件価格 + 購入時諸費用) × 100
計算例:
- 物件価格: 3,000万円
- 購入時諸費用: 200万円(仲介手数料・登記費用等)
- 年間家賃収入: 240万円
- 年間経費: 80万円(管理費・修繕費・固定資産税・空室損失等)
- 実質利回り: (240万円 - 80万円) ÷ (3,000万円 + 200万円) × 100 = 5%
実質利回りは表面利回りより2-3%低くなるのが一般的です。実際の投資判断には実質利回りを重視すべきです。
想定利回りの罠(満室・想定家賃前提)
想定利回りは、満室・想定家賃で計算した表面利回りです。物件広告で「利回り10%」と書かれている場合、多くは想定利回りであることに注意が必要です。
想定利回りのリスク:
- 満室前提: 実際の入居率が80%の場合、利回りは8%に低下
- 想定家賃が相場より高い: 周辺相場より1割高い家賃設定で、実際には入居者が集まらない
健美家の記事によると、想定利回りと実質利回りの差は2-4%程度であり、想定利回りのみで判断すると収益が大幅に悪化するリスクがあります。
エリア・物件種別ごとの利回り相場
都心区分マンション(3-5%)
日本不動産研究所の投資家調査(2023年時点)によると、都心(東京・大阪・名古屋)の区分マンションの期待利回りは3-5%です。
特徴:
- 低利回りだが、立地が良く資産価値が安定
- 入居者が集まりやすく空室リスクが低い
- 物件価格が高く、初期投資額が大きい
地方一棟アパート(7-10%)
地方の一棟アパートの利回り相場は7-10%です(武蔵コーポレーション等の調査による、2023年時点)。
特徴:
- 高利回りだが、空室リスクが高い
- 物件価格が安く、初期投資額が少ない
- 管理・修繕費が高く、実質利回りは表面利回りより2-3%低い
高利回り物件のリスク(築古・地方・空室率高)
利回り15%以上の高利回り物件は、以下のリスクが高い傾向があります。
- 築古: 築30年以上で大規模修繕費が高額
- 地方: 人口減少エリアで入居者が集まらない
- 空室率高: 現時点で半分以上が空室
高利回り物件は、利回りだけでなく、立地・築年数・管理状態を総合的に評価する必要があります。
利回りだけで判断してはいけない理由
立地・築年数・管理状態の重要性
不動産投資と収益物件の情報サイトの記事によると、利回りだけで判断すると以下のリスクがあります。
立地の重要性:
- 駅から徒歩10分以内: 入居者が集まりやすい
- 駅から徒歩15分以上: 空室リスクが高い
築年数の影響:
- 築10年以内: 大規模修繕費が少ない
- 築20年以上: 大規模修繕費が高額(屋根・外壁・配管等)
管理状態:
- 管理会社が適切に管理している物件は資産価値が維持される
- 管理が行き届いていない物件は入居者が集まらず、空室率が高い
空室リスク・修繕費・金利上昇リスク
実質利回りに大きく影響するリスク要因は以下の通りです。
空室リスク:
- 入居率80%の場合、表面利回り10%でも実質利回りは6-7%程度に低下
修繕費:
- 築20年以上の物件は大規模修繕費(屋根・外壁・配管)が年間数十万円~数百万円
金利上昇リスク:
- 変動金利で借入している場合、金利上昇により月々の返済額が増加し、実質利回りが低下
災害リスク(地震・水害・土砂災害)
災害リスクも考慮すべきです。
- 地震: 旧耐震基準(1981年以前)の物件は倒壊リスクが高い
- 水害: ハザードマップで浸水想定区域を確認
- 土砂災害: 傾斜地の物件は土砂災害リスクが高い
災害リスクが高いエリアの物件は、高利回りでも長期的な資産価値が維持されない可能性があります。
実質利回りの計算シミュレーション
ケース1: 都心区分マンション(表面利回り5%)
前提条件(物件により異なりますが、目安として):
- 物件価格: 3,000万円
- 購入時諸費用: 200万円
- 年間家賃収入: 150万円(月12.5万円×12ヶ月)
- 年間経費: 50万円(管理費・修繕積立金・固定資産税等)
計算:
- 表面利回り: 150万円 ÷ 3,000万円 × 100 = 5%
- 実質利回り: (150万円 - 50万円) ÷ (3,000万円 + 200万円) × 100 = 3.1%
ケース2: 地方一棟アパート(表面利回り10%)
前提条件(物件により異なりますが、目安として):
- 物件価格: 3,000万円
- 購入時諸費用: 200万円
- 年間家賃収入: 300万円(月25万円×12ヶ月、満室想定)
- 実際の入居率: 80%
- 年間経費: 120万円(管理費・修繕費・固定資産税・空室損失等)
計算:
- 表面利回り(満室想定): 300万円 ÷ 3,000万円 × 100 = 10%
- 実際の年間家賃収入: 300万円 × 80% = 240万円
- 実質利回り: (240万円 - 120万円) ÷ (3,000万円 + 200万円) × 100 = 3.75%
結論:
表面利回り10%の地方物件と表面利回り5%の都心物件の実質利回りは、実際にはほぼ同等(3-4%程度)となります。表面利回りだけで判断すると、実際の収益性を見誤るリスクがあります。
まとめ:利回りは実質利回りで比較し、総合的に判断する
不動産投資の利回りは、表面利回り(年間家賃収入÷物件価格)、実質利回り(経費・空室損失を考慮)、想定利回り(満室・想定家賃前提)の3種類があり、実際の収益性を評価するには実質利回りを重視すべきです。
物件広告の「利回り10%」は想定利回り(満室・想定家賃前提)であることが多く、実際の入居率・家賃相場との乖離により、実質利回りは2-4%低くなります。
都心区分マンション3-5%、地方一棟アパート7-10%が相場ですが、高利回り物件は築古・地方・空室率高等のリスクが高いため、利回りだけで判断せず、立地・築年数・管理状態・災害リスク・金利上昇リスクを総合的に評価することが重要です。
次のアクションとして、日本不動産研究所の投資家調査でエリア別の期待利回りを確認し、不動産投資の専門家(不動産会社・ファイナンシャルプランナー)に相談することをおすすめします。
