不動産購入申込書の書き方と注意点!キャンセルや法的拘束力も解説

公開日: 2025/11/1

不動産購入申込書とは

不動産購入を検討中で購入申込書の提出を求められている方にとって、「申込書の記入内容」「法的効力」「提出後にキャンセルできるか」は重要な疑問です。

購入申込書は、不動産購入の意思を売主に伝える書類であり、買付証明書とも呼ばれます。一般的には法的拘束力はなく、売買契約前なら原則ペナルティなしでキャンセル可能ですが、誠実な対応が求められます。

この記事では、法務省の民法改正資料や不動産専門サイトの実務的知見を元に、購入申込書の法的位置づけ、記入項目の具体的な書き方、申込証拠金の扱い、キャンセル時の注意点を実践的に解説します。

この記事のポイント

  • 購入申込書は購入意思の表明であり、一般的には法的拘束力はない(売買契約前ならペナルティなしでキャンセル可能)
  • 申込証拠金は1-10万円程度で、契約不成立時は全額返還が原則(宅建業法で返還拒否は禁止)
  • 手付金は契約締結時に支払う金銭(物件価格の5-10%)で、申込証拠金とは法的性質が異なる
  • 申込書提出により優先交渉権を獲得できるが、誠実な対応は必要(無断キャンセルは推奨しない)
  • 記入項目は購入希望価格、購入条件、資金計画、契約希望日等を具体的に記載する

購入申込書の法的位置づけ

契約の成立時期

法務省の民法改正資料によると、契約は「申込みと承諾」により成立します。購入申込書は「申込み」に該当しますが、売主の「承諾」がない限り契約は成立しません。

購入申込書と売買契約書の違い

項目 購入申込書 売買契約書
法的拘束力 なし あり
キャンセル 原則ペナルティなし 手付金放棄
目的 購入意思の表明 契約の成立

売買契約書に署名・押印した時点で法的拘束力が発生し、キャンセルには手付金の放棄が必要となります。購入申込書は契約前の意思表示であり、法的拘束力はありません。

キャンセル時の注意点

モゲチェックの記事によると、購入申込書に法的拘束力はありませんが、売主に損害を与えた場合は損害賠償請求の可能性があります。

キャンセル可能なケース

  • 申込書提出直後(売主が準備を始める前)
  • 重要事項説明前
  • 住宅ローン事前審査前

慎重に判断すべきケース

  • 売主が契約準備を進めている(重要事項説明書の作成、登記手続きの準備等)
  • 他の購入希望者を断った後
  • 売主が引越し準備を始めた後

これらのケースでは、売主に実損害が発生しているため、損害賠償請求のリスクがあります。キャンセルする場合は、速やかに不動産会社を通じて売主に連絡し、誠実に対応することが重要です。

購入申込書の記入項目と書き方

購入希望価格の記入方法

SUUMOによると、購入申込書には以下の項目を記入します。

購入希望価格

  • 売主の希望価格と同額で申込むのが一般的
  • 値下げ交渉したい場合は、希望価格を記入(例:売主希望5,000万円 → 購入希望4,800万円)
  • 根拠を示すと交渉しやすい(例:「周辺相場より高いため」「リフォーム費用を考慮して」)

購入条件

  • 契約希望日(例:申込から2週間後)
  • 引渡希望日(例:契約から1ヶ月後)
  • 住宅ローン特約の有無(審査が通らなかった場合の契約解除条件)

資金計画の記入方法

自己資金

  • 頭金の金額(例:500万円)
  • 手付金の金額(例:物件価格の5%)

住宅ローン

  • 借入予定額(例:4,500万円)
  • 借入予定先(例:〇〇銀行)
  • 事前審査の有無(事前審査済みの場合は有利)

資金計画が明確であるほど、売主に安心感を与え、交渉が有利に進みます。

その他の記入項目

  • 購入者氏名・住所・連絡先
  • 現在の住まい(持ち家・賃貸)
  • 申込日
  • 有効期限(例:申込から1週間)

有効期限を設定することで、売主の返答を促すことができます。ただし、期限を短く設定しすぎると売主が判断できない場合があるため、1週間程度が目安です。

申込証拠金の扱い

申込証拠金の金額と目的

申込証拠金は、購入申込書提出時に売主に預ける金銭です。一般的に1-10万円程度で、購入意思の真剣さを示す目的があります。

申込証拠金の特徴

  • 契約不成立時は全額返還が原則
  • 宅建業法により返還拒否は禁止
  • 契約成立時は手付金の一部に充当される

SUUMOによると、申込証拠金は必須ではありませんが、預けることで購入意思の真剣さを示し、他の購入希望者より優先される効果があります。

申込証拠金と手付金の違い

項目 申込証拠金 手付金
支払時期 購入申込書提出時 売買契約締結時
金額 1-10万円程度 物件価格の5-10%
返還 契約不成立時は全額返還 契約後キャンセル時は没収
法的性質 預り金 契約の一部履行

申込証拠金と手付金は法的性質が異なります。申込証拠金は契約不成立時に全額返還されますが、手付金は契約成立後のキャンセル時に没収されます。

返還されるケース・されないケース

返還されるケース

  • 売主が申込を拒否した場合
  • 重要事項説明で問題が発覚し、購入を断念した場合
  • 住宅ローン審査が通らなかった場合(住宅ローン特約あり)
  • 購入者が申込をキャンセルした場合(契約前)

返還されないケース(宅建業法違反)

  • 不動産会社が「申込証拠金は返還しない」と主張する
  • 契約不成立なのに返還を拒否する

これらは宅建業法違反であり、不動産会社に返還を請求できます。返還を拒否された場合は、消費生活センターや弁護士に相談しましょう。

申込書提出後〜正式契約までの流れ

ステップ1:購入申込書提出

購入申込書を不動産会社に提出し、申込証拠金を預けます(任意)。不動産会社が売主に申込内容を伝え、売主の返答を待ちます。

ステップ2:売主の返答

売主が申込を承諾すると、優先交渉権を獲得できます。複数の購入希望者がいる場合、申込が早い順、条件が良い順で優先されます。

売主が条件交渉を希望する場合、価格や引渡時期について調整が行われます。

ステップ3:重要事項説明

宅建士が物件の詳細情報を説明する手続きです。重要事項説明書には以下の内容が含まれます。

  • 物件の権利関係(所有者、抵当権の有無等)
  • 法令上の制限(用途地域、建ぺい率、容積率等)
  • 設備の状況(給排水、電気、ガス等)
  • 契約解除の条件(住宅ローン特約等)

重要事項説明で問題が発覚した場合、この時点でキャンセルすることが可能です(申込証拠金は全額返還)。

ステップ4:住宅ローン事前審査

住宅ローンを利用する場合、事前審査を受けます。事前審査は1週間程度かかり、年収・勤続年数・信用情報等が確認されます。

ステップ5:売買契約締結

重要事項説明と住宅ローン事前審査が完了すると、売買契約を締結します。契約時に手付金(物件価格の5-10%)を支払い、契約書に署名・押印します。

この時点で法的拘束力が発生し、契約後のキャンセルは手付金の放棄が必要となります。

まとめ:購入申込書は慎重に、誠実に対応しよう

購入申込書は購入意思の表明であり、一般的には法的拘束力はありません。売買契約前ならペナルティなしでキャンセル可能ですが、売主に損害を与えた場合は損害賠償請求のリスクがあります。

申込証拠金は1-10万円程度で、契約不成立時は全額返還が原則です。宅建業法により返還拒否は禁止されており、返還されない場合は消費生活センターや弁護士に相談しましょう。

記入項目は購入希望価格、購入条件、資金計画を具体的に記載し、売主に安心感を与えることが重要です。キャンセルする場合は、速やかに不動産会社を通じて売主に連絡し、誠実に対応しましょう。

個別具体的な法律相談や契約トラブルについては、弁護士にご相談ください。信頼できる不動産会社と相談しながら、慎重に購入手続きを進めることを推奨します。

よくある質問

Q1購入申込書を提出した後でもキャンセルできますか?

A1一般的にはキャンセル可能です。購入申込書に法的拘束力はなく、売買契約前ならペナルティなしでキャンセルできます。ただし、売主に実損害を与えた場合(契約準備を進めた後、他の購入希望者を断った後等)は損害賠償請求のリスクがあります。キャンセルする場合は、速やかに不動産会社を通じて売主に連絡し、誠実に対応することが重要です。申込書提出直後、重要事項説明前であれば、問題なくキャンセルできるケースが多いです。

Q2申込証拠金は必ず預けないといけませんか?

A2必須ではありません。申込証拠金は購入意思の真剣さを示す目的で預けるものであり、法的義務はありません。ただし、預けることで他の購入希望者より優先される効果があります。金額は1-10万円程度が一般的で、契約不成立時は全額返還が原則です。宅建業法により返還拒否は禁止されており、不動産会社が「返還しない」と主張する場合は違法です。返還を拒否された場合は、消費生活センターや弁護士に相談しましょう。

Q3申込証拠金と手付金の違いは何ですか?

A3申込証拠金は購入申込書提出時に預ける金銭(1-10万円程度)で、契約不成立時は全額返還されます。手付金は売買契約締結時に支払う金銭(物件価格の5-10%)で、契約後のキャンセル時は没収されます。法的性質が異なり、申込証拠金は預り金、手付金は契約の一部履行です。申込証拠金は契約成立時に手付金の一部に充当されることが一般的です。混同しないよう注意しましょう。

Q4購入希望価格は売主の希望価格より低く記入しても良いですか?

A4可能ですが、交渉が必要です。売主の希望価格と同額で申込むのが一般的ですが、値下げ交渉したい場合は希望価格を記入できます。ただし、根拠を示すと交渉しやすくなります。例えば「周辺相場より高いため」「リフォーム費用を考慮して」等の理由を添えることで、売主の理解を得やすくなります。複数の購入希望者がいる場合、条件が良い順で優先されるため、大幅な値下げ要求は申込が通らないリスクがあります。

Q5購入申込書の有効期限はどれくらいが適切ですか?

A51週間程度が目安です。有効期限を設定することで、売主の返答を促すことができます。ただし、期限を短く設定しすぎると売主が判断できない場合があります。売主が遠方に住んでいる、複数の相続人で判断が必要等の場合は、2週間程度の期限を設定することも検討しましょう。期限を過ぎた場合、申込は無効となり、他の購入希望者に優先権が移る可能性があります。