不動産収入とは?賃貸経営の収入・税金・確定申告を解説

公開日: 2025/10/27

不動産収入とは|賃貸経営で得られる収入の種類

不動産投資を検討する際、「不動産収入にはどんな種類があるのか」「税金はどれくらいかかるのか」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産収入の種類、不動産所得の計算方法、税金の仕組み、確定申告の方法について、国税庁の公式情報を元に解説します。

不動産投資を始める前に、収入と税金の全体像を正確に理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産収入には賃料収入、礼金、更新料、駐車場収入等が含まれる
  • 不動産所得は「総収入金額-必要経費」で計算され、給与所得等と合算して総合課税される
  • 必要経費には減価償却費、修繕費、管理費、固定資産税、ローン金利等が含まれる(元本返済は経費にならない)
  • 税率は累進税率5-45%+住民税10%で、所得が高いほど税率が上がる
  • 青色申告を活用すれば最大65万円の特別控除を受けられる

不動産収入の種類

不動産収入とは、不動産の貸付けにより受け取る収入の総額です。国税庁の定義によると、不動産収入には以下のものが含まれます。

賃料収入(家賃)

最も基本的な不動産収入が賃料収入です。賃貸借契約に基づき、毎月受け取る家賃がこれに該当します。

礼金・更新料

礼金のうち返還不要な部分は不動産収入に含まれます。一方、敷金は将来返還する義務があるため、収入には含まれません。更新料も不動産収入に該当します。

駐車場収入・その他

駐車場の貸付け収入、看板設置料、自動販売機の設置料等も不動産収入に含まれます。

不動産収入の種類

種類 内容 収入に含まれるか
賃料(家賃) 毎月の家賃収入 ✓ 含まれる
礼金 返還不要な部分 ✓ 含まれる
更新料 契約更新時の収入 ✓ 含まれる
敷金 将来返還する保証金 × 含まれない
駐車場収入 駐車場の貸付け収入 ✓ 含まれる
その他 看板設置料、自販機設置料等 ✓ 含まれる

(出典: 国税庁

不動産収入と不動産所得の違い

不動産収入と不動産所得を混同する方が多いですが、以下のように異なります。

  • 不動産収入: 賃料・礼金等の総収入金額
  • 不動産所得: 収入から必要経費を差し引いた利益(税金はこの不動産所得にかかる)

不動産所得の計算方法

不動産所得は以下の計算式で算出されます。

不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費

必要経費の範囲

国税庁の規定により、必要経費には以下のものが含まれます。

必要経費に含まれるもの

項目 内容 注意点
減価償却費 建物・設備の経年劣化分 国税庁の規定により、木造22年、RC造47年等で計算
修繕費 現状回復のための費用 価値を高める改良費は資産計上
管理費 管理会社への委託料 -
火災保険料 建物・家財の保険料 -
固定資産税 土地・建物の固定資産税 -
ローン金利 借入金の利息部分 元本返済は経費にならない
税理士報酬 確定申告の報酬 -
広告宣伝費 入居者募集の広告費 -
水道光熱費 共用部分の水道光熱費 -

(出典: 国税庁

経費にならないもの

以下のものは必要経費に含められません。

  • ローン元本の返済: 元本返済は経費にならず、ローン金利のみが経費になります
  • 所得税・住民税: 不動産所得に対する所得税・住民税は経費になりません
  • 私的な支出: 生活費や個人的な支出は経費になりません

注意: 土地取得に係る借入金利息は、不動産所得が赤字の場合、他の所得との損益通算の対象外となります。

不動産収入にかかる税金の計算

不動産所得は給与所得等と合算して総合課税されます。国税庁によると、税率は累進税率(所得が高いほど税率が上がる)で、5-45%の所得税と10%の住民税が課税されます。

総合課税(給与所得等と合算)

不動産所得は、給与所得、事業所得等と合算した課税所得に対して税金が計算されます。

所得税の累進税率

課税所得 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超~330万円以下 10% 97,500円
330万円超~695万円以下 20% 427,500円
695万円超~900万円以下 23% 636,000円
900万円超~1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超~4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

(出典: 国税庁

具体的な税額シミュレーション

【ケース1】給与所得500万円、不動産所得300万円の場合

  • 課税所得: 800万円(給与所得500万円+不動産所得300万円)
  • 所得税: 800万円×23%-63.6万円 = 120.4万円
  • 住民税: 800万円×10% = 80万円
  • 合計: 約200万円

【ケース2】給与所得500万円、不動産所得△200万円(赤字)の場合

  • 課税所得: 300万円(給与所得500万円-不動産所得200万円)
  • 所得税: 300万円×10%-9.75万円 = 20.25万円
  • 住民税: 300万円×10% = 30万円
  • 合計: 約50万円

不動産所得が赤字の場合、給与所得と損益通算(相殺)することで、税金を抑えられる場合があります。ただし、土地取得に係る借入金利息は損益通算の対象外です。

確定申告の方法(青色申告・白色申告)

不動産所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。

青色申告特別控除(最大65万円)

国税庁の規定により、青色申告承認申請書を提出し、以下の要件を満たすと最大65万円の特別控除を受けられます。

青色申告特別控除の要件

控除額 要件
65万円 ①複式簿記で記帳②貸借対照表・損益計算書を作成③e-Taxで申告または電子帳簿保存
55万円 ①複式簿記で記帳②貸借対照表・損益計算書を作成(e-Tax不要)
10万円 簡易な帳簿付け

(出典: 国税庁

確定申告の期限と提出書類

確定申告の期限は、翌年2月16日~3月15日です。提出書類は以下の通りです。

青色申告の場合

  • 確定申告書
  • 青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)
  • 各種控除証明書

白色申告の場合

  • 確定申告書
  • 収支内訳書
  • 各種控除証明書

青色申告承認申請書の提出期限

青色申告を行うには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。提出期限は以下の通りです。

  • 開業1年目: 開業後2か月以内
  • 2年目以降: 青色申告を行う年の3月15日まで

不動産収入の注意点

不動産収入を得る際には、以下の点に注意が必要です。

一定規模以上で個人事業税が課税

不動産貸付業が一定規模以上(いわゆる「5棟10室基準」)に達すると、個人事業税(税率5%)が課税されます。

5棟10室基準

不動産の種類 基準
戸建て 5棟以上
アパート・マンション 10室以上
駐車場 10台以上

(出典: 国税庁

消費税の課税事業者判定

事業用不動産(店舗・事務所等)の賃料収入が年間1,000万円を超えると、2年後から消費税の課税事業者となります。住宅用不動産の賃料収入は消費税の課税対象外です。

空室・修繕費等のリスク

不動産投資には以下のようなリスクがあります。

  • 空室リスク: 入居者が見つからず、賃料収入が途絶える
  • 修繕費: 設備の故障や経年劣化による修繕費が発生
  • 金利上昇: 変動金利の場合、金利上昇により返済額が増加
  • 災害リスク: 地震・火災等による建物の損壊

不動産所得の計算や確定申告は複雑なため、税理士に相談することをおすすめします。

まとめ:不動産収入を正しく理解して適切に申告しよう

不動産収入は賃料・礼金・更新料等を含む総額で、不動産所得(収入-経費)は給与所得等と合算して総合課税されます。税率は累進税率5-45%+住民税10%で、所得が高いほど税率が上がります。

青色申告を活用すれば最大65万円の特別控除を受けられるため、事前に青色申告承認申請書を提出しましょう。

一定規模以上(5棟10室基準)で個人事業税が課税される点や、空室リスク・修繕費等のリスクも考慮する必要があります。税理士に相談して適切に申告し、健全な不動産経営を目指しましょう。

よくある質問

Q1不動産収入と不動産所得の違いは?

A1不動産収入は賃料・礼金等の総収入金額です。不動産所得は収入から必要経費(減価償却費、修繕費、管理費、固定資産税、ローン金利等)を差し引いた利益です。税金は不動産所得にかかります。例えば、年間収入600万円・必要経費300万円の場合、不動産所得は300万円となり、この300万円に対して税金が課税されます。

Q2ローン元本返済は経費になりますか?

A2ローン元本返済は経費になりません。経費になるのはローン金利(利息部分)のみです。例えば、月々の返済額10万円のうち元本7万円・金利3万円の場合、経費になるのは金利3万円だけです。ただし、土地取得に係る借入金利息は、不動産所得が赤字の場合、他の所得との損益通算の対象外となるため注意が必要です。

Q3不動産収入が少額でも確定申告が必要?

A3不動産所得(収入-経費)が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。20万円以下の場合でも、給与所得者は確定申告不要ですが、住民税の申告は必要です。また、不動産所得が赤字の場合、確定申告を行うことで給与所得と損益通算し、還付を受けられる可能性があります。確定申告の期限は翌年2月16日~3月15日です。

Q4個人事業税はいくらから課税される?

A4一定規模以上(いわゆる「5棟10室基準」)で不動産貸付業と認定された場合、地方税法により個人事業税(税率5%)が課税されます。基準は戸建て5棟以上、アパート・マンション10室以上、駐車場10台以上です。例えば、アパート10室を所有し不動産所得が500万円の場合、個人事業税は(500万円-290万円控除)×5% = 約10.5万円となります。