不動産収入にかかる税金の種類と全体像を理解する
不動産投資を検討する際、「家賃収入にはどんな税金がかかるのか」「確定申告は必要なのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産収入にかかる税金の種類、計算方法、確定申告の手続き、節税対策を、国税庁等の公的機関の情報を元に解説します。
初めて不動産投資をする方でも、税金の仕組みを理解し、適切に申告できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産収入には所得税(累進税率5-45%)、住民税(一律10%)、事業税(事業的規模のみ5%程度)、消費税(課税売上1000万円超)がかかる
- 不動産所得の計算式は「総収入金額 - 必要経費」で、減価償却費・修繕費・固定資産税等を経費計上できる
- 確定申告は2月16日~3月15日に必須で、無申告は無申告加算税5-40%や延滞税の対象
- 青色申告特別控除(最大65万円)を活用すれば大幅な節税が可能
- 家事関連費や土地取得借入金利子の損益通算制限に注意が必要
不動産収入にかかる税金の種類
不動産収入には主に4種類の税金がかかります。
| 税金の種類 | 税率 | 課税対象 | 備考 | 
|---|---|---|---|
| 所得税 | 累進税率5-45% | 不動産所得 | 給与所得等と合算して課税(総合課税) | 
| 住民税 | 一律10% | 不動産所得 | 所得税と同様に総合課税 | 
| 事業税 | 約5% | 事業的規模の不動産所得 | 非事業的規模は課税されない | 
| 消費税 | 10% | 課税売上1000万円超の場合 | 住宅の家賃収入は非課税 | 
(出典: 国税庁 不動産収入を受け取ったとき)
不動産所得は総合課税のため、給与所得等の他の所得と合算し、累進税率(5-45%)で所得税が計算されます。高所得者ほど税負担が大きくなる点に注意が必要です。
確定申告を怠ると、無申告加算税(5-40%)や延滞税が課されるだけでなく、悪質な場合は刑事罰(懲役・罰金)の可能性もあります。アットホームによると、時効は5-7年で遡及して追徴課税されます。
不動産所得の計算方法(総収入金額 - 必要経費)
不動産所得は「総収入金額 - 必要経費」で計算します。国税庁によると、計算式は以下の通りです。
不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費
総収入金額に含まれるもの
総収入金額には以下が含まれます。
- 家賃収入
- 礼金(返還不要な部分)
- 更新料
- 駐車場収入
- 共益費
- 名義書換料
敷金・保証金のうち、返還が必要な部分は収入に含まれません。返還不要な部分のみが収入となります。
必要経費の範囲
国税庁によると、必要経費として計上できるのは以下の通りです。
- 減価償却費: 建物の取得価額を法定耐用年数(木造22年、RC造47年等)で按分し毎年経費計上(土地は対象外)
- 修繕費: 原状回復のための修繕費用
- 管理費: 賃貸管理会社への管理委託料
- 固定資産税: 不動産の固定資産税・都市計画税
- 借入金利子: 不動産購入のためのローンの利子部分(元本は対象外)
- 火災保険料: 建物の火災保険・地震保険
- 広告宣伝費: 入居者募集のための広告費
- 交通費: 不動産の管理・確認のための交通費
計上できない経費(家事関連費)
所得税法では、家事費(個人的な支出)は必要経費に算入できません。以下は経費計上できません。
- 自宅家賃(事業用と明確に区分できない場合)
- 生活費
- 個人的な食事代・交際費
家事関連費を誤って経費に含めると、税務調査で否認され追徴課税される可能性があるため注意が必要です。
確定申告の手続きと必要書類
不動産所得がある場合、原則として確定申告が必要です。ただし、給与所得者で不動産所得が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要です(住民税の申告は必要)。
確定申告の期限
確定申告の期限は毎年2月16日~3月15日です。期限後申告は無申告加算税5%(税務調査後は15-20%)の対象となります。国税庁の確定申告ガイドで最新の提出期限を確認できます。
必要書類
確定申告に必要な書類は以下の通りです。
- 確定申告書
- 収支内訳書(白色申告)または青色申告決算書(青色申告)
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
- 支払調書(不動産の管理会社から交付)
- 領収書・帳簿(経費の証拠)
国税庁の令和6年分 収支内訳書の書き方で、記載方法を確認できます。
無申告のペナルティ
無申告・申告漏れは以下のペナルティの対象となります。
- 無申告加算税: 5-40%(自主申告5%、税務調査後15-20%、悪質な場合40%)
- 延滞税: 納付期限から納付日までの日数に応じて年利2.4-8.7%程度
- 刑事罰: 悪質な場合は懲役・罰金の可能性
時効は5-7年で、遡及して追徴課税されます。アットホームによると、確定申告を怠ると重いペナルティが課されるため、必ず期限内に申告することが重要とされています。
青色申告による節税対策(最大65万円の特別控除)
青色申告特別控除を活用すれば、不動産所得から最大65万円を控除できます。
青色申告特別控除のメリットと要件
国税庁によると、青色申告特別控除の金額と要件は以下の通りです。
| 区分 | 控除額 | 要件 | 
|---|---|---|
| 事業的規模 | 最大65万円 | ①青色申告承認 ②複式簿記 ③電子申告またはe-Tax | 
| 事業的規模 | 最大55万円 | ①青色申告承認 ②複式簿記(電子申告なし) | 
| 非事業的規模 | 最大10万円 | ①青色申告承認 ②簡易帳簿 | 
(出典: 国税庁 No.2072 青色申告特別控除)
青色申告にはその他のメリットもあります。
- 繰越控除: 赤字を3年間繰越して黒字と相殺できる
- 家族従業員への給与: 青色事業専従者給与を経費計上できる
- 減価償却の特例: 少額減価償却資産(30万円未満)の一括経費計上
事業的規模と非事業的規模の違い(5棟10室基準)
国税庁によると、事業的規模の判定基準は以下の通りです。
- 戸建て5棟以上
- 区分所有(マンション・アパート)10室以上
- 駐車場50台以上(駐車場のみの場合)
この基準を満たすと事業的規模とみなされ、青色申告特別控除が最大65万円になります。非事業的規模の場合は最大10万円です。
青色申告承認申請の手続き
青色申告承認申請書は、開業から2ヶ月以内(既に事業を開始している場合は、青色申告を適用したい年の3月15日まで)に税務署へ提出が必要です。提出を忘れると青色申告特別控除を受けられないため注意が必要です。
その他の節税対策と注意点
損益通算(赤字を給与所得と相殺)
不動産所得が赤字の場合、給与所得等の黒字と相殺し、所得税を軽減できます。これを損益通算と呼びます。
ただし、国税庁によると、土地取得借入金利子相当額は損益通算不可(所得税法第69条)とされています。建物の借入金利子は損益通算可能ですが、土地の借入金利子は赤字の場合に損益通算できません。
減価償却の活用
建物の取得価額を法定耐用年数(木造22年、RC造47年等)で按分し、毎年経費計上する減価償却は、節税の基本です。ただし、建物と土地の区分、耐用年数の判定、計算方法を誤ると過少申告・過大申告の原因となるため、税理士への相談を推奨します。
違法な節税スキームに注意
以下の行為は違法で、税務調査で発覚すると重加算税35-40%に加え刑事罰の可能性があります。
- 架空経費の計上
- 領収書の偽造
- 家事費の不正な経費計上
「必ず節税できる」と謳う業者の中には、違法な節税スキームを提案する悪質業者が存在するため注意が必要です。合法的な軽減措置を正しく活用してください。
まとめ:確定申告を正しく行い適切な節税を
不動産収入には所得税(累進税率5-45%)、住民税(一律10%)、事業税(事業的規模のみ5%程度)、消費税(課税売上1000万円超)の4種類の税金がかかります。不動産所得の計算式は「総収入金額 - 必要経費」で、減価償却費・修繕費・固定資産税等を経費計上できます。
確定申告は2月16日~3月15日に必須で、無申告は無申告加算税5-40%や延滞税の対象となります。青色申告特別控除(最大65万円)、損益通算、減価償却の活用で節税が可能です。
家事関連費の誤計上、減価償却の誤り、土地取得借入金利子の損益通算制限等に注意してください。不明点は税理士に相談し、合法的な軽減措置を正しく活用することが大切です。個別具体的な税務相談は税理士法の関係で税理士にご相談ください。
