不動産贈与の税金を解説|贈与税・不動産取得税・登録免許税

公開日: 2025/10/27

不動産贈与にかかる税金の種類

不動産を贈与する際、「税金がどれくらいかかるのか」「節税方法はあるのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産贈与にかかる税金の種類、計算方法、節税方法を国税庁総務省の公式情報を元に解説します。

親から子へ不動産を贈与したい、または贈与を受ける予定の方が、税金の種類と節税方法を正しく理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産贈与には贈与税・不動産取得税・登録免許税の3つが課税される
  • 贈与税は基礎控除110万円を超える部分に10-55%の税率で課税
  • 不動産取得税は評価額の3%(2027年3月末まで)、登録免許税は評価額の2%
  • 節税方法として住宅取得等資金の贈与税非課税措置(最大1000万円)や配偶者控除(2000万円)がある
  • 贈与と相続では登録免許税・不動産取得税が大きく異なり、総合的な判断が必要

不動産贈与で発生する税金は、以下の3つです。それぞれ計算基準・税率・納付先が異なるため、明確に区別して理解することが重要です。

税金の種類 計算基準 税率 納付先
贈与税(国税) 評価額 - 基礎控除110万円 10-55%(一般)
10-45%(特例)
国(税務署)
不動産取得税(地方税) 固定資産税評価額 3%(2027年3月末まで) 都道府県
登録免許税(国税) 固定資産税評価額 2.0%(相続は0.4%) 国(法務局)

(出典: 国税庁|財産をもらったとき不動産の贈与にかかる税金

贈与税(国税)

贈与税は、個人から財産をもらった際に課税される税金です。基礎控除110万円を超える部分に、10-55%の税率で課税されます。

税率は、贈与者と受贈者の関係により「一般税率」と「特例税率」に分かれます。

  • 一般税率: 10-55%(兄弟間・他人間等)
  • 特例税率: 10-45%(直系尊属から20歳以上の子・孫への贈与)

不動産取得税(地方税)

不動産取得税は、不動産を取得した際に課税される地方税です。固定資産税評価額の3%(2027年3月末まで軽減税率)が課税されます。

重要: 相続の場合は不動産取得税が 非課税 ですが、贈与の場合は課税されます。

登録免許税(国税)

登録免許税は、不動産の所有権移転登記の際に課税される国税です。贈与の場合、固定資産税評価額の 2.0% が課税されます。

重要: 相続の場合は 0.4% と大幅に低くなります。

贈与税の計算方法

贈与税の計算は、以下の手順で行います。

不動産の評価額の算定方法

不動産の評価額は、以下の方法で算定します。

  • 土地: 路線価または固定資産税評価額
  • 建物: 固定資産税評価額

固定資産税評価額は、市区町村から送られる固定資産税課税明細書で確認できます。路線価は国税庁ホームページで公開されています。

重要: 不動産の評価額 ≠ 購入価格です。評価額は時価の約70-80%が目安です。

暦年課税と相続時精算課税の違い

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。

項目 暦年課税 相続時精算課税
基礎控除 110万円/年 2500万円(一生涯)
税率 10-55% 20%
相続時の扱い 加算されない 加算される
対象者 すべての贈与 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫

(出典: 国税庁|財産をもらったとき

暦年課税: 1月1日~12月31日の1年間にもらった財産の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残額に税率10-55%を乗じる方式です。

相続時精算課税: 2500万円まで非課税ですが、相続時に加算されます。一度選択すると暦年課税に戻れません。

計算例: 評価額3000万円の不動産を贈与(暦年課税・特例税率)

  • 課税価格: 3000万円 - 110万円 = 2890万円
  • 贈与税: 2890万円 × 45% - 265万円 = 1035.5万円

不動産贈与の節税方法

不動産贈与には、節税方法がいくつか用意されています。

住宅取得等資金の贈与税非課税措置

直系尊属(父母・祖父母)から住宅取得資金をもらった場合、以下の金額まで非課税となります。

  • 省エネ住宅: 1000万円
  • その他の住宅: 500万円

適用期限: 2026年12月31日まで

適用要件:

  • 贈与を受ける年の1月1日時点で18歳以上
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、居住すること
  • 床面積40㎡以上240㎡以下
  • 所得2000万円以下(床面積40-50㎡の場合は1000万円以下)

(出典: 国税庁|直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

配偶者控除(おしどり贈与)

婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する際、2000万円 + 基礎控除110万円 = 2110万円 まで非課税となります。

適用要件:

  • 婚姻期間20年以上
  • 居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し、その後も居住し続ける見込み

(出典: 国税庁|夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

贈与と相続の税負担比較

不動産を移転する方法として、贈与と相続のどちらが有利かは、ケースにより異なります。

税金の種類 贈与 相続
贈与税・相続税 10-55% 10-55%
不動産取得税 評価額の3% 非課税
登録免許税 評価額の2.0% 評価額の0.4%

(出典: 不動産の生前贈与は税率に注意

贈与が有利なケース

  • 不動産の評価額が将来大幅に上昇する見込みがある
  • 住宅取得等資金の贈与税非課税措置や配偶者控除を活用できる
  • 相続人が多く、相続時の遺産分割トラブルを避けたい

相続が有利なケース

  • 不動産の評価額が高く、贈与税が高額になる
  • 登録免許税・不動産取得税を抑えたい(相続は0.4% + 非課税)
  • 不動産の評価額が将来下落する見込みがある

受贈者が納税資金を用意できない場合のリスク

不動産贈与は現金ではないため、受贈者が贈与税・不動産取得税・登録免許税を支払えないリスクがあります。

対策:

  • 事前に納税資金を確保する
  • 現金と合わせて贈与する
  • 分割贈与(年間110万円以内)を活用する

まとめ

不動産贈与には、贈与税・不動産取得税・登録免許税の3つが課税されます。贈与税は基礎控除110万円を超える部分に10-55%、不動産取得税は評価額の3%、登録免許税は評価額の2%が目安です。

節税方法として、住宅取得等資金の贈与税非課税措置(省エネ住宅1000万円・その他500万円)や配偶者控除(2000万円)がありますが、適用要件とデメリットを理解した上で選択することが重要です。

贈与と相続の税負担を総合的に比較し、専門家(税理士・弁護士)に相談して最適な方法を選びましょう。

よくある質問

Q1不動産贈与と相続、どちらが税金が安い?

A1登録免許税(贈与2% vs 相続0.4%)・不動産取得税(贈与3% vs 相続非課税)は相続が有利です。贈与税・相続税は評価額と相続人数で変動します。不動産の評価額が将来上昇する場合は贈与、下落する場合は相続が有利なケースがあります。総合的に判断し、税理士等の専門家に相談することが重要です。

Q2相続時精算課税制度のデメリットは?

A22500万円まで非課税ですが、相続時に加算されます。一度選択すると暦年課税(基礎控除110万円/年)が使えなくなります。不動産価格が将来下落する場合、高い評価額で相続税が計算されるため不利になる可能性があります。慎重に判断してください。

Q3不動産の評価額はどう算定する?

A3土地は路線価または固定資産税評価額、建物は固定資産税評価額で算定します。固定資産税評価額は市区町村の固定資産税課税明細書で確認可能です。路線価は国税庁ホームページで公開されています。評価額は時価の約70-80%が目安です。

Q4受贈者が納税資金を用意できない場合は?

A4不動産贈与は現金ではないため、受贈者が贈与税・不動産取得税・登録免許税を支払えないリスクがあります。事前に納税資金を確保するか、現金と合わせて贈与することが重要です。分割贈与(年間110万円以内)を活用する方法もあります。