不動産贈与にかかる税金の種類
不動産を贈与する際、「税金がどれくらいかかるのか」「節税方法はあるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産贈与にかかる税金の種類、計算方法、節税方法を国税庁・総務省の公式情報を元に解説します。
親から子へ不動産を贈与したい、または贈与を受ける予定の方が、税金の種類と節税方法を正しく理解できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産贈与には贈与税・不動産取得税・登録免許税の3つが課税される
- 贈与税は基礎控除110万円を超える部分に10-55%の税率で課税
- 不動産取得税は評価額の3%(2027年3月末まで)、登録免許税は評価額の2%
- 節税方法として住宅取得等資金の贈与税非課税措置(最大1000万円)や配偶者控除(2000万円)がある
- 贈与と相続では登録免許税・不動産取得税が大きく異なり、総合的な判断が必要
不動産贈与で発生する税金は、以下の3つです。それぞれ計算基準・税率・納付先が異なるため、明確に区別して理解することが重要です。
| 税金の種類 | 計算基準 | 税率 | 納付先 | 
|---|---|---|---|
| 贈与税(国税) | 評価額 - 基礎控除110万円 | 10-55%(一般) 10-45%(特例) | 国(税務署) | 
| 不動産取得税(地方税) | 固定資産税評価額 | 3%(2027年3月末まで) | 都道府県 | 
| 登録免許税(国税) | 固定資産税評価額 | 2.0%(相続は0.4%) | 国(法務局) | 
(出典: 国税庁|財産をもらったとき、不動産の贈与にかかる税金)
贈与税(国税)
贈与税は、個人から財産をもらった際に課税される税金です。基礎控除110万円を超える部分に、10-55%の税率で課税されます。
税率は、贈与者と受贈者の関係により「一般税率」と「特例税率」に分かれます。
- 一般税率: 10-55%(兄弟間・他人間等)
- 特例税率: 10-45%(直系尊属から20歳以上の子・孫への贈与)
不動産取得税(地方税)
不動産取得税は、不動産を取得した際に課税される地方税です。固定資産税評価額の3%(2027年3月末まで軽減税率)が課税されます。
重要: 相続の場合は不動産取得税が 非課税 ですが、贈与の場合は課税されます。
登録免許税(国税)
登録免許税は、不動産の所有権移転登記の際に課税される国税です。贈与の場合、固定資産税評価額の 2.0% が課税されます。
重要: 相続の場合は 0.4% と大幅に低くなります。
贈与税の計算方法
贈与税の計算は、以下の手順で行います。
不動産の評価額の算定方法
不動産の評価額は、以下の方法で算定します。
- 土地: 路線価または固定資産税評価額
- 建物: 固定資産税評価額
固定資産税評価額は、市区町村から送られる固定資産税課税明細書で確認できます。路線価は国税庁ホームページで公開されています。
重要: 不動産の評価額 ≠ 購入価格です。評価額は時価の約70-80%が目安です。
暦年課税と相続時精算課税の違い
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 | 
|---|---|---|
| 基礎控除 | 110万円/年 | 2500万円(一生涯) | 
| 税率 | 10-55% | 20% | 
| 相続時の扱い | 加算されない | 加算される | 
| 対象者 | すべての贈与 | 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫 | 
(出典: 国税庁|財産をもらったとき)
暦年課税: 1月1日~12月31日の1年間にもらった財産の合計額から基礎控除110万円を差し引き、残額に税率10-55%を乗じる方式です。
相続時精算課税: 2500万円まで非課税ですが、相続時に加算されます。一度選択すると暦年課税に戻れません。
計算例: 評価額3000万円の不動産を贈与(暦年課税・特例税率)
- 課税価格: 3000万円 - 110万円 = 2890万円
- 贈与税: 2890万円 × 45% - 265万円 = 1035.5万円
不動産贈与の節税方法
不動産贈与には、節税方法がいくつか用意されています。
住宅取得等資金の贈与税非課税措置
直系尊属(父母・祖父母)から住宅取得資金をもらった場合、以下の金額まで非課税となります。
- 省エネ住宅: 1000万円
- その他の住宅: 500万円
適用期限: 2026年12月31日まで
適用要件:
- 贈与を受ける年の1月1日時点で18歳以上
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、居住すること
- 床面積40㎡以上240㎡以下
- 所得2000万円以下(床面積40-50㎡の場合は1000万円以下)
(出典: 国税庁|直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税)
配偶者控除(おしどり贈与)
婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する際、2000万円 + 基礎控除110万円 = 2110万円 まで非課税となります。
適用要件:
- 婚姻期間20年以上
- 居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し、その後も居住し続ける見込み
(出典: 国税庁|夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除)
贈与と相続の税負担比較
不動産を移転する方法として、贈与と相続のどちらが有利かは、ケースにより異なります。
| 税金の種類 | 贈与 | 相続 | 
|---|---|---|
| 贈与税・相続税 | 10-55% | 10-55% | 
| 不動産取得税 | 評価額の3% | 非課税 | 
| 登録免許税 | 評価額の2.0% | 評価額の0.4% | 
(出典: 不動産の生前贈与は税率に注意)
贈与が有利なケース
- 不動産の評価額が将来大幅に上昇する見込みがある
- 住宅取得等資金の贈与税非課税措置や配偶者控除を活用できる
- 相続人が多く、相続時の遺産分割トラブルを避けたい
相続が有利なケース
- 不動産の評価額が高く、贈与税が高額になる
- 登録免許税・不動産取得税を抑えたい(相続は0.4% + 非課税)
- 不動産の評価額が将来下落する見込みがある
受贈者が納税資金を用意できない場合のリスク
不動産贈与は現金ではないため、受贈者が贈与税・不動産取得税・登録免許税を支払えないリスクがあります。
対策:
- 事前に納税資金を確保する
- 現金と合わせて贈与する
- 分割贈与(年間110万円以内)を活用する
まとめ
不動産贈与には、贈与税・不動産取得税・登録免許税の3つが課税されます。贈与税は基礎控除110万円を超える部分に10-55%、不動産取得税は評価額の3%、登録免許税は評価額の2%が目安です。
節税方法として、住宅取得等資金の贈与税非課税措置(省エネ住宅1000万円・その他500万円)や配偶者控除(2000万円)がありますが、適用要件とデメリットを理解した上で選択することが重要です。
贈与と相続の税負担を総合的に比較し、専門家(税理士・弁護士)に相談して最適な方法を選びましょう。
