親の土地に家を建てる方法|税金・法律・トラブル防止ガイド

公開日: 2025/10/31

親の土地に家を建てる基本とメリット・注意点

親の土地に家を建てることを検討している方の中には、「土地購入費用が不要でコストを抑えられる」と期待する一方、「法律や税金の手続きが複雑そう」「親族間トラブルが心配」と感じている方は少なくありません。

この記事では、親の土地に家を建てる際の基本的な流れ、メリット・デメリット、法律・税金の注意点、トラブルを防ぐポイントを、国土交通省国税庁の公式情報を元に解説します。

親の土地を活用して家を建てる正しい方法が分かり、トラブルを避けて安心して進められるようになります。

この記事のポイント

  • 親の土地に家を建てる方法は、①使用貸借(無償)、②賃貸借(地代を払う)、③土地を購入・贈与の3つ
  • 使用貸借なら土地購入費が不要でコストを抑えられるが、住宅ローンの担保設定に制限がある
  • 地代を払うと親に不動産所得が発生し確定申告が必要、権利関係が複雑化
  • 土地の贈与は贈与税がかかるが、相続時精算課税制度を使えば2,500万円まで非課税
  • 建築前に親族間で書面契約を結び、権利関係を明確にすることがトラブル防止の鍵

親の土地に家を建てる3つの方法

親の土地に家を建てる方法は、大きく分けて3つあります。それぞれの特徴と注意点を解説します。

方法1:使用貸借(無償で借りる)

使用貸借とは、親から土地を無償で借りて家を建てる方法です。最も多く採用される方法です。

特徴:

  • 地代を払わない(無償)
  • 土地の所有権は親のまま
  • 建物の所有権は子(建築主)

メリット:

  • 土地購入費が不要でコストを抑えられる
  • 地代を払わないため、親の確定申告が不要
  • 親族間で柔軟に対応できる

デメリット:

  • 住宅ローンの担保設定に制限がある(金融機関により対応が異なる)
  • 親の死後、土地を相続する際に兄弟姉妹とトラブルになる可能性
  • 土地の使用権が法的に不安定(口約束だけでは後々トラブルの原因)

方法2:賃貸借(地代を払う)

賃貸借とは、親に地代を払って土地を借りる方法です。

特徴:

  • 地代を払う(有償)
  • 土地の所有権は親のまま
  • 建物の所有権は子(建築主)

メリット:

  • 借地権が法的に保護される
  • 住宅ローンの担保設定がしやすい

デメリット:

  • 地代を払うため、子の負担が増える
  • 親に不動産所得が発生し、確定申告が必要
  • 地代が相場より著しく低いと、税務署から「使用貸借」と判断され、贈与税が課される可能性
  • 親族間でも賃貸借契約書を作成する必要があり、手続きが煩雑

地代の相場: 土地の固定資産税評価額の2-3%程度が目安です。相場より著しく低い地代は、税務上のリスクがあります。

方法3:土地を購入・贈与してもらう

土地を購入または贈与してもらい、子の所有とする方法です。

土地を購入:

  • 親から土地を買い取る
  • 土地代金を支払う必要がある
  • 親に譲渡所得税が課される可能性
  • 子の住宅ローンに土地代金を含められる

土地を贈与:

  • 親から土地を無償で譲り受ける
  • 贈与税が課される(相続時精算課税制度を使えば2,500万円まで非課税)
  • 土地の所有権が子に移り、権利関係が明確
  • 住宅ローンの担保設定が容易

相続時精算課税制度: 親から子への贈与が2,500万円まで非課税となる制度です。ただし、相続時に贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算します。詳細は国税庁の公式サイトで確認してください。

方法 地代 土地所有権 メリット デメリット
使用貸借 なし コスト抑制、手続き簡単 住宅ローン制限、相続トラブルリスク
賃貸借 あり 借地権保護、担保設定可 地代負担、親の確定申告必要
購入 - 権利明確、担保設定容易 土地代金必要、親に譲渡所得税
贈与 - 権利明確、担保設定容易 贈与税(相続時精算課税で2,500万円まで非課税)

親の土地に家を建てる際の税金と法律の注意点

親の土地に家を建てる際には、税金と法律の注意点を理解しておくことが重要です。

使用貸借でも贈与税がかかる場合

使用貸借(無償)で土地を借りても、原則として贈与税はかかりません。ただし、以下の場合は注意が必要です。

  • 使用貸借の実態がない場合: 名目だけで実際には土地を使用していない場合、贈与とみなされる可能性
  • 親の死後: 親が亡くなった場合、土地は相続財産となり、相続税の対象

使用貸借の実態を証明するため、書面契約を結び、土地の使用目的・期間を明記することを推奨します。

賃貸借の地代と税金

賃貸借で地代を払う場合、以下の税金が発生します。

親側:

  • 不動産所得: 地代は親の不動産所得となり、確定申告が必要
  • 所得税・住民税: 不動産所得に対して課税

子側:

  • 地代は経費として計上できない(自宅用の場合)

地代が相場(固定資産税評価額の2-3%)より著しく低い場合、税務署から「使用貸借」と判断され、親に不動産所得が認められず、子に贈与税が課される可能性があります。

贈与税と相続時精算課税制度

土地を贈与してもらう場合、贈与税が課されます。

贈与税の基礎控除: 年間110万円まで非課税

相続時精算課税制度: 国税庁によると、親(60歳以上)から子(18歳以上)への贈与が2,500万円まで非課税となる制度です。

メリット:

  • 2,500万円まで贈与税がかからない
  • 土地の所有権が子に移り、権利関係が明確

デメリット:

  • 相続時に贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算
  • 一度選択すると暦年贈与(年間110万円控除)に戻せない

相続時精算課税制度を利用する場合は、税理士に相談し、将来の相続税も含めた総合的な判断が必要です。

住宅ローンの担保設定と親の同意

親の土地に家を建てる場合、住宅ローンの担保設定に注意が必要です。

使用貸借の場合:

  • 土地に抵当権を設定するには親の同意が必要
  • 金融機関により対応が異なる(土地に抵当権を設定しない場合、建物のみに抵当権を設定)
  • 建物のみの担保では借入可能額が減る可能性

土地を購入・贈与した場合:

  • 土地も子の所有となり、抵当権設定が容易
  • 借入可能額が増える

住宅ローンを組む前に、金融機関に相談し、担保設定の可否を確認してください。

トラブルを防ぐための5つのポイント

親の土地に家を建てる際、トラブルを防ぐための実践的なポイントを解説します。

ポイント1:書面で契約を結ぶ

口約束だけでは、後々トラブルの原因となります。使用貸借でも書面契約を結び、以下を明記してください。

  • 土地の使用目的(自宅建築)
  • 使用期間(例:親の死後は相続人と協議)
  • 地代の有無
  • 建物の所有権

契約書は公証役場で公正証書にすると、法的効力が高まります。

ポイント2:兄弟姉妹に事前に相談

親の土地に家を建てると、親の死後に兄弟姉妹との相続トラブルに発展する可能性があります。

トラブル例:

  • 「長男だけが親の土地を使って得をしている」と不公平感を持たれる
  • 相続時に土地の評価額を巡って争いになる

対策:

  • 建築前に兄弟姉妹に説明し、同意を得る
  • 親の遺言書を作成し、土地の相続先を明確にする
  • 相続時には代償金を支払う等、公平性を保つ工夫をする

ポイント3:親の死後の相続対策を考える

親が亡くなった場合、土地は相続財産となります。相続対策を事前に考えておくことが重要です。

対策:

  • 遺言書の作成: 親に遺言書を作成してもらい、土地の相続先を指定
  • 生前贈与: 相続時精算課税制度を使い、生前に土地を贈与
  • 代償金の準備: 土地を相続する代わりに、兄弟姉妹に代償金を支払う資金を準備

相続対策は税理士・弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けてください。

ポイント4:建築前に土地の権利関係を確認

建築前に、土地の権利関係を確認してください。

確認事項:

  • 土地の登記簿謄本を取得し、所有者・抵当権の有無を確認
  • 境界が確定しているか(境界未確定の場合、測量が必要)
  • 都市計画・建築基準法の制限(建ぺい率、容積率等)

登記簿謄本は法務局で取得できます(手数料600円)。

ポイント5:税理士・司法書士に相談

親の土地に家を建てる際には、税金・法律の専門知識が必要です。以下の専門家に相談してください。

  • 税理士: 贈与税・相続税・不動産所得の計算、相続時精算課税制度の適用判定
  • 司法書士: 土地の登記手続き、契約書の作成
  • 弁護士: 親族間トラブルが発生した場合の法的対応

初回相談は無料の場合が多いため、早めに相談してください。

よくある質問と回答

親の土地に家を建てる際のよくある質問に回答します。

使用貸借と賃貸借、どちらが良いですか?

使用貸借が向いている場合:

  • 地代を払いたくない
  • 親の確定申告を避けたい
  • 親族間で信頼関係がある

賃貸借が向いている場合:

  • 借地権を法的に保護したい
  • 住宅ローンの担保設定をスムーズにしたい

一般的には、使用貸借が多く採用されます。ただし、書面契約を結ぶことが重要です。

住宅ローン控除は使えますか?

親の土地に家を建てる場合でも、住宅ローン控除は使えます。

要件:

  • 住宅の床面積が50㎡以上
  • 住宅ローンの返済期間が10年以上
  • 新築または取得から6ヶ月以内に入居
  • 合計所得金額が2,000万円以下

土地の所有者が親でも、建物が子の所有なら住宅ローン控除は適用されます。詳細は国税庁の公式サイトで確認してください。

親の土地に家を建てると固定資産税はどうなりますか?

土地の固定資産税: 土地の所有者である親が負担

建物の固定資産税: 建物の所有者である子が負担

使用貸借の場合、土地の固定資産税は親が払い続けます。親に負担をかけたくない場合は、子が代わりに支払う等の工夫も可能です。

まとめ:親の土地に家を建てる正しい方法とトラブル防止のポイント

親の土地に家を建てる方法は、使用貸借(無償)、賃貸借(地代を払う)、土地を購入・贈与の3つがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。

使用貸借なら土地購入費が不要でコストを抑えられますが、住宅ローンの担保設定に制限があります。土地を贈与してもらう場合は、相続時精算課税制度を使えば2,500万円まで非課税です。

次のアクションとして、以下を推奨します。

  • 親と相談し、土地の使用方法(使用貸借・賃貸借・贈与)を決定
  • 兄弟姉妹に事前に説明し、同意を得る
  • 書面契約を結び、権利関係を明確にする
  • 税理士・司法書士に相談し、税金・法律の専門的なアドバイスを受ける
  • 住宅ローンを組む前に、金融機関に担保設定の可否を確認

親の土地を活用して家を建てることは、コストを抑えられる大きなメリットがありますが、トラブルを防ぐには事前の準備と専門家への相談が不可欠です。正しい方法で進め、安心して家を建てましょう。

よくある質問

Q1親の土地を無償で借りる場合、贈与税はかかりますか?

A1原則として贈与税はかかりません。使用貸借(無償)で土地を借りる場合、地代相当額の贈与とはみなされないため、贈与税は課税されません。ただし、使用貸借の実態が証明できない場合や、名目だけで実際には土地を使用していない場合は、税務署から贈与と判断される可能性があります。書面契約を結び、土地の使用目的・期間を明記することを推奨します。

Q2相続時精算課税制度を使うべきですか?

A2将来の相続税も含めた総合的な判断が必要です。相続時精算課税制度は2,500万円まで贈与税が非課税となりますが、相続時に贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算します。親の財産が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合、相続税が課される可能性があります。税理士に相談し、将来の相続税も含めたシミュレーションを行うことを推奨します。

Q3兄弟姉妹とのトラブルを防ぐにはどうすればいいですか?

A3建築前に兄弟姉妹に説明し、同意を得ることが重要です。親の土地に家を建てると、親の死後に相続トラブルに発展する可能性があります。事前に説明し、親の遺言書を作成してもらい、土地の相続先を明確にしてください。相続時には代償金を支払う等、公平性を保つ工夫も有効です。トラブルが発生した場合は、弁護士に相談し、法的対応を検討してください。

Q4住宅ローンを組む際、親の土地に抵当権を設定できますか?

A4親の同意があれば設定できますが、金融機関により対応が異なります。使用貸借の場合、土地の所有者である親の同意があれば、土地に抵当権を設定できます。ただし、金融機関により対応が異なり、土地に抵当権を設定しない場合は建物のみに抵当権を設定します。建物のみの担保では借入可能額が減る可能性があります。住宅ローンを組む前に、金融機関に相談し、担保設定の可否を確認してください。

Q5親の土地に家を建てると固定資産税はどうなりますか?

A5土地の固定資産税は親、建物の固定資産税は子が負担します。使用貸借の場合、土地の所有者である親が固定資産税を払い続けます。建物の所有者である子は、建物の固定資産税を負担します。親に負担をかけたくない場合は、子が土地の固定資産税を代わりに支払う等の工夫も可能です。親子間で話し合い、負担方法を決めてください。