土地の分筆とは?手続き・費用・注意点を解説

公開日: 2025/10/31

土地の分筆とは何か

「親から相続した広い土地を複数の相続人で分けたい」「土地の一部だけを売却したい」と考える方は少なくありません。このような場合に必要になるのが分筆です。

この記事では、土地の分筆の仕組み、手続きの流れ、費用、メリット・デメリットを、法務省や土地家屋調査士の専門情報を元に解説します。

分筆とは何か、いつ必要になるのか、どのような手続きが必要か、費用はいくらかかるのかを理解できます。

この記事のポイント

  • 分筆とは1筆の土地を複数の筆に分割し、それぞれに新たな地番を付けて登記し直すこと
  • 相続対策、一部売却、共有名義の解消等で分筆が必要になる
  • 手続きは境界確定測量(2~3ヶ月)→分筆案作成→登記申請(1~2週間)の3ステップ
  • 費用は合計で50万円~100万円以上(測量費30~50万円、土地家屋調査士報酬15~30万円等)
  • メリット(相続対策、資産の流動性向上)とデメリット(費用負担、接道義務違反リスク、評価額への影響)を理解することが重要

分筆とは、1筆の土地を複数の筆に分割し、それぞれに新たな地番を付けて登記し直すことです。「筆」とは土地の単位で、登記簿上で1つの土地として扱われます。

例えば、100㎡の土地(1筆)を50㎡ずつの2筆に分けることが分筆です。分筆後は、それぞれに新しい地番が付けられ、独立した土地として登記されます。

分筆は土地家屋調査士の独占業務であり、素人では手続きできません。不動産の表示に関する登記の専門家である土地家屋調査士に依頼する必要があります。

分筆が必要になるケース

分筆が必要になる具体的なケースを3つに分けて解説します。

相続対策(複数の相続人で分割)

複数の相続人がいる場合、広い土地を1筆のまま共有名義にすると、将来的に売却や活用の際に全員の同意が必要になり、トラブルが発生しやすくなります。

分筆して各相続人が1筆ずつ取得することで、相続トラブルを防止できます。例えば、200㎡の土地を2人の相続人で分ける場合、100㎡ずつ2筆に分筆し、それぞれが所有することでトラブルを回避できます。

一部売却(土地の一部だけを売却)

広い土地の一部だけを売却し、残りを保有したい場合、分筆が必要です。1筆のままでは土地全体を売却することになりますが、分筆すれば必要な部分だけを売却できます。

例えば、300㎡の土地のうち100㎡だけを売却したい場合、100㎡と200㎡の2筆に分筆し、100㎡の方を売却します。

共有名義の解消(2023年4月民法改正対応)

2023年4月の民法改正により、共有地の分筆要件が緩和されました。従来は全員の同意が必要でしたが、持分過半数で分筆が可能になりました。

これにより、共有状態を解消しやすくなり、トラブルを未然に防ぐことができます。例えば、3人で共有している土地(持分1/3ずつ)のうち、2人が分筆に賛成すれば実行できます。

詳細はこちらの専門サイトで解説されています。

分筆の手続きの流れと所要期間

分筆の手続きを時系列で3ステップに整理します。

ステップ1:境界確定測量(2~3ヶ月)

分筆の第一歩は、隣地との筆界(境界)を確定し、地積測量図を作成することです。境界確定測量には、隣地所有者の立会いが必要です。

測量には通常2~3ヶ月かかります。隣地所有者の協力が得られない場合や、所有者不明の場合は、さらに時間がかかります。

法務省の公式ページによると、隣地所有者が不明または同意が得られない場合は、筆界特定制度(法務局が筆界を判断する制度)を活用できます。2022年10月改正で手続きが簡素化されましたが、さらに時間と費用がかかります。

ステップ2:分筆案作成と隣地所有者の同意

境界が確定したら、どのように分割するか(分筆案)を決定します。分筆案は、相続対策や売却目的等に応じて、土地家屋調査士と相談して作成します。

隣地所有者の同意を取得する必要があります。境界確定ができない場合は、前述の筆界特定制度を活用します。

ステップ3:登記申請(1~2週間)

土地家屋調査士が法務局に分筆登記を申請します。登記完了までには通常1~2週間かかります。

登記が完了すると、それぞれの筆に新しい地番が付けられ、独立した土地として登記されます。

分筆にかかる費用の内訳と目安

分筆にかかる費用を3つに分けて目安金額を提示します。

測量費(30~50万円)

境界確定測量にかかる費用です。土地の面積・形状・隣地の数により変動します。一般的には30~50万円が目安ですが、広い土地や隣地が多い場合はさらに高額になります。

土地家屋調査士報酬(15~30万円)

分筆登記の手続き代行費用です。一般的には15~30万円が目安です。分筆の複雑さや土地の規模により変動します。

登記費用(数万円)

登録免許税(筆数×1000円)、地積測量図作成費等が含まれます。一般的には数万円です。

合計で50万円~100万円以上かかる場合があります。事前に複数社から見積もりを取ることを推奨します。

農地の場合は、農業委員会の許可が必要で、さらに費用・期間がかかることを注記します。

費用項目 目安金額 備考
測量費 30~50万円 面積・形状・隣地数で変動
土地家屋調査士報酬 15~30万円 複雑さや規模で変動
登記費用 数万円 筆数×1000円+諸費用
合計 50~100万円以上 農地はさらに費用増

(出典: SUUMO、専門家情報)

分筆のメリットとデメリット

分筆のメリット・デメリットをバランスよく記載します。

メリット(相続対策、資産の流動性向上等)

メリット:

  • 相続トラブルの防止: 複数の相続人で分割し、各自が1筆ずつ取得できる
  • 一部売却が可能: 必要な部分だけを売却し、残りを保有できる
  • 共有状態の解消: 2023年4月民法改正により持分過半数で分筆可能
  • 有効活用: 建物用・駐車場用等に分けて活用できる

デメリット(費用負担、接道義務違反リスク、評価額への影響等)

デメリット:

  • 費用負担: 50万円~100万円以上の費用がかかる
  • 接道義務違反リスク: 分筆後に幅員4m以上の道路に2m以上接していないと建物が建てられない(建築基準法の接道義務)
  • 評価額への影響: 不整形地・極小地は評価額が下がる可能性がある
  • 固定資産税の増加: 住宅用地の特例(住宅が建っている土地の固定資産税を軽減)が適用されなくなる場合がある
  • 節税目的の不自然な分筆は税務署に否認されるリスク: 極端に狭い土地や不自然な形状の分筆は、税務署に否認され、分筆前の状態で課税される可能性がある

重要: 分筆後に接道義務(建築基準法で定められた「幅員4m以上の道路に2m以上接すること」の要件)を満たさなくなると、建物が建てられなくなるリスクがあります。事前に都市計画情報・建築指導課で接道義務を確認する必要があります。

土地家屋調査士による専門解説では、分筆ができない土地の具体例と対処法が詳細に説明されています。

まとめ:分筆する前に確認すべきこと

土地の分筆は、相続対策・一部売却等に有効ですが、費用・期間・デメリットを十分に理解する必要があります。

特に以下の点を事前に確認してください。

  • 接道義務違反リスク: 分筆後も幅員4m以上の道路に2m以上接しているか
  • 評価額への影響: 不整形地・極小地になると評価額が下がる可能性
  • 隣地所有者の同意取得: 境界確定に協力が得られるか
  • 費用負担: 50万円~100万円以上の費用を用意できるか

まずは土地家屋調査士・不動産会社・税理士等の専門家に相談し、自分のケースで分筆すべきか判断することを推奨します。

信頼できる専門家に相談しながら、適切な判断をしましょう。

よくある質問

Q1分筆は自分でできますか?

A1分筆登記は土地家屋調査士の独占業務のため、自分では手続きできません。不動産の表示に関する登記を行うには専門的な知識と測量技術が必要です。境界確定測量も専門的な測量技術が必要なため、必ず土地家屋調査士に依頼する必要があります。費用は測量費30~50万円、土地家屋調査士報酬15~30万円が目安です。

Q2隣地所有者の同意が得られない場合はどうすればいいですか?

A2筆界特定制度(法務局が筆界を判断する制度)を活用できます。[法務省の公式ページ](https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00519.html)によると、2022年10月改正で手続きが簡素化され、隣地所有者不明・拒否時でも境界確定が可能になりました。ただし、通常の境界確定より時間と費用がさらにかかります。詳細は法務局または土地家屋調査士にご相談ください。

Q3分筆すると固定資産税は安くなりますか?

A3必ずしも安くなりません。住宅用地の特例(住宅が建っている土地の固定資産税を軽減する制度)が適用されなくなり、分筆後に建物のない土地の固定資産税が上昇する場合があります。また、節税目的の不自然な分筆(極端に狭い土地、不自然な形状等)は税務署に否認され、分筆前の状態で課税されるリスクもあります。分筆前に税理士に相談することを推奨します。

Q4分筆後に建物が建てられない土地になることはありますか?

A4あります。分筆後の各筆が接道義務(建築基準法で定められた「幅員4m以上の道路に2m以上接すること」の要件)を満たさないと、建物が建てられなくなります。これは非常に重要なリスクです。事前に都市計画情報・建築指導課で接道義務を確認する必要があります。土地家屋調査士に相談し、分筆案を慎重に検討してください。

Q5分筆と合筆の違いは何ですか?

A5分筆は1筆の土地を複数の筆に分割すること、合筆は複数の筆を1筆にまとめることです。合筆は隣接地のみ可能で、地目・所有者が同じ等の条件があります。相続対策や一部売却では分筆を、固定資産税の納税通知を1通にまとめたい場合は合筆を使います。どちらも土地家屋調査士の独占業務です。