土地境界線の立会い完全ガイド!注意点と事前準備を解説

公開日: 2025/10/31

土地境界線の立会いとは?いつ必要になるのか

土地の境界確定が必要な場面で、「隣地所有者との立会いでトラブルにならないか」「何を準備すればいいのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地境界線の立会いの流れ、事前準備のチェックリスト、当日の注意点、トラブル事例と対処法を、法務省日本土地家屋調査士会連合会の公式情報を元に解説します。

初めて境界確定を行う方でも、トラブルを避けて円滑に立会いを進められるようになります。

この記事のポイント

  • 土地境界線の立会いは、土地の売却・相続・建築時に必要な手続き
  • 立会いは5つのステップ(土地家屋調査士への依頼→資料収集→隣地所有者への連絡→現地立会い→境界確認書の作成)で進む
  • 事前準備として、過去の測量図・境界標の有無・隣地との関係を整理すべき
  • 立会い当日は感情的にならず、その場で即決せず、記録を残すことが重要
  • 立会い拒否や主張が食い違う場合は、筆界特定制度(平均8.6ヶ月、費用約50万円)や調停・訴訟に移行できる

土地境界線の立会いの流れ:5つのステップ

境界確定は以下の5つのステップで進みます。各ステップを順番に進めることで、トラブルを避けて円滑に境界を確定できます。

ステップ1:土地家屋調査士への依頼

境界確定測量は、土地家屋調査士法により土地家屋調査士の独占業務と定められています。複数の事務所に見積もりを取り、費用相場(30万円~80万円)を確認してから依頼しましょう。

費用相場

土地の状況 費用目安
一般的な宅地(1筆) 30-50万円
複数筆・広い土地 50-80万円
境界標がない場合 追加で10-20万円

(参考: 日本土地家屋調査士会連合会

ステップ2:資料収集(登記簿、公図、測量図)

法務局で以下の資料を取得します。これらの資料は、境界の位置を確認する重要な根拠となります。

  • 登記簿謄本: 土地の所有者・面積等の情報
  • 公図: 土地の位置関係を示す地図
  • 地積測量図: 土地の面積や境界点の座標を記録した図面

ただし、国土交通省によると、全国の地籍調査完了率は53%(2025年時点)で、明治時代の古い地図が約半数残る現状があります。測量図が存在しない場合もあるため、その場合は過去の境界標やGPSデータから境界を復元する必要があります。

ステップ3:隣地所有者への連絡

隣地所有者に立会いの目的と日程を説明し、調整します。連絡先が不明な場合は、法務局の登記簿謄本から確認できます。

連絡時のポイント

  • 立会いの目的(売却・相続・建築等)を明確に伝える
  • 複数の日程候補を提示する
  • 土地家屋調査士も同席することを伝える

ステップ4:現地立会い

土地家屋調査士と隣地所有者が現地で境界を確認します。既存の境界標がある場合はその位置を、ない場合は測量により境界を復元します。

確認事項

  • 境界標の位置(コンクリート杭、金属プレート、石杭等)
  • 測量結果と過去の測量図との整合性
  • 越境物の有無(ブロック塀、樹木等)

ステップ5:境界確認書の作成・署名

境界の位置に双方が合意したら、境界確認書を作成します。双方の署名押印により法的効力を持つため、内容を慎重に確認してから署名してください。

境界確認書の記載内容

  • 境界の位置(座標データ)
  • 境界標の設置箇所
  • 測量図の添付
  • 双方の署名押印

立会い前の事前準備チェックリスト

立会いをスムーズに進めるため、以下の4点を事前に準備しましょう。

過去の測量図・公図の確認(法務局で取得)

法務局で地積測量図・公図を取得し、過去の境界確定状況を確認します。測量図が存在する場合、境界の位置を推定しやすくなります。

測量図が存在しない場合(地籍調査完了率53%のため約半数は未整備)、過去の境界標やGPSデータから境界を復元する必要があります。

境界標の有無確認(現地調査)

現地で境界標(コンクリート杭、金属プレート、石杭等)があるか確認します。境界標がある場合、境界の位置を特定しやすくなります。

境界標がない場合、土地家屋調査士が測量後に新たに境界標を設置します。

隣地との関係整理(連絡先、過去のトラブル有無)

隣地所有者の連絡先を確認し、過去のトラブル有無を整理します。感情的な対立がある場合は、第三者(土地家屋調査士、調停委員等)の同席を検討しましょう。

土地家屋調査士への依頼と費用確認

複数の事務所に見積もりを取り、費用相場(30万円~80万円)を確認します。費用は原則として、境界確定を求める側(売主、相続人等)が負担しますが、隣地所有者との協議により折半することも可能です。

立会い当日の注意点:トラブルを避けるための4つのポイント

立会い当日は、以下の4点に注意してトラブルを避けましょう。

感情的にならない:冷静に境界の根拠を確認

境界の主張が食い違う場合でも、冷静に境界の根拠(過去の測量図、境界標、公図等)を確認します。感情的になると、その後の交渉が困難になります。

その場で即決しない:専門家の意見を聞く

境界の主張が食い違う場合は、その場で無理に合意せず、専門家(土地家屋調査士、弁護士等)の意見を求めます。後日「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、即決は避けましょう。

記録を残す:写真・メモを取る

境界標の位置、隣地所有者の主張、測量結果等を写真・メモで記録します。後日のトラブル防止に役立ちます。

記録すべき項目

  • 境界標の位置(写真)
  • 測量結果(数値データ)
  • 隣地所有者の主張(メモ)
  • 立会い参加者の氏名・日時

境界確認書の内容を慎重に確認:署名前に熟読

署名前に境界確認書の内容を熟読し、境界の位置、測量結果、境界標の設置箇所等が正確か確認します。署名後の修正は困難です。

立会い拒否・境界の主張が食い違う場合の対処法

トラブルが発生した場合、以下の対処法があります。

立会い拒否された場合:筆界特定制度の活用(平均8.6ヶ月、費用約50万円)

隣地所有者が立会いを拒否した場合、筆界特定制度を活用できます。

筆界特定制度とは

法務局の筆界特定登記官が、外部専門家の意見を踏まえて筆界の位置を特定する公的制度(2006年開始)です。

特徴

項目 内容
期間 平均8.6ヶ月(裁判は平均16ヶ月)
費用 約50万円
申請条件 一方の申請のみで手続き開始可能
法的効力 強制力はないが実務上は尊重される

(出典: 政府広報オンライン

境界の主張が食い違う場合:調停・訴訟(1~2年以上)

境界の主張が食い違う場合、調停・訴訟に移行できます。

調停

  • 裁判所の調停委員が仲介し、双方の合意を目指す
  • 期間:6ヶ月~1年
  • 費用:数万円~十数万円

境界確定訴訟

  • 調停不成立の場合、裁判所が境界を確定
  • 期間:1~2年以上
  • 費用:数十万円~百万円以上(弁護士費用含む)

筆界と所有権界の違い:合意で変更できる範囲

筆界(ひっかい)は、土地が登記された際に定められた線で、所有者間の合意では変更できません。筆界を変更するには、分筆・合筆登記が必要です。

所有権界は、所有者間の合意で変更可能です。例えば、隣地と合意して境界を変更し、その後地積更正登記を行うことができます。

まとめ:境界線の立会いは事前準備と冷静な対応が鍵

土地境界線の立会いは、土地家屋調査士への依頼、資料収集、隣地所有者への連絡、現地立会い、境界確認書の作成・署名の5つのステップで進みます。

事前準備として、過去の測量図・公図の確認、境界標の有無確認、隣地との関係整理が重要です。立会い当日は、感情的にならず冷静に対応し、その場で即決せず、記録を残し、境界確認書の内容を慎重に確認すべきです。

立会い拒否や境界の主張が食い違う場合は、筆界特定制度(平均8.6ヶ月、費用約50万円)や調停・訴訟に移行する選択肢があります。

次のアクションとして、①土地家屋調査士に見積もりを依頼、②法務局で過去の測量図・公図を取得、③隣地所有者に連絡、の3点から始めましょう。専門家に相談しながら、トラブルを避けて円滑に境界確定を進めてください。

よくある質問

Q1隣地所有者が立会いを拒否した場合、どうすればいいですか?

A1筆界特定制度を活用できます。法務局が筆界の位置を特定する公的制度で、一方の申請のみで手続き開始可能です。平均8.6ヶ月、費用約50万円で、裁判(平均16ヶ月)よりも迅速です。強制力はありませんが実務上は尊重されます。詳細は法務局にご相談ください。

Q2境界標がない場合、どうやって境界を確認しますか?

A2過去の測量図や公図を法務局で取得し、GPSデータや隣地の境界標から境界を復元します。土地家屋調査士が測量後、新たに境界標(コンクリート杭、金属プレート等)を設置します。測量図が存在しない場合もあります(地籍調査完了率53%)ので、その場合は測量により境界を確定します。

Q3測量費用は誰が負担しますか?

A3原則として、境界確定を求める側が負担します。売却時は売主、相続時は相続人が負担することが多いです。隣地所有者との協議により折半することも可能です。費用相場は30万円~80万円(土地の広さ・筆数により変動)です。複数の土地家屋調査士事務所に見積もりを取ることをおすすめします。

Q4土地家屋調査士に依頼せず、自分で境界確定できますか?

A4法律上は可能ですが、境界確定測量は土地家屋調査士の独占業務であり、専門知識がないと正確な測量は困難です。隣地所有者との合意形成も難航する可能性が高く、後日トラブルに発展するリスクがあります。費用はかかりますが、専門家への依頼を強く推奨します。