司法書士の登記費用とは?報酬と実費の内訳
不動産売買や相続登記を控えている方にとって、「司法書士の登記費用はいくらかかるのか」「どこまでが報酬でどこまでが実費なのか」という疑問は大きな不安材料です。司法書士費用は「報酬(司法書士への支払い)」と「実費(登録免許税等)」の2つに分かれており、それぞれの内訳を理解することで適正価格を判断できます。
この記事のポイント
- 司法書士費用は「報酬(司法書士への手数料)」と「実費(登録免許税、書類取得費等)」の2つに分かれる
- 報酬は平成15年から自由化され、各事務所が独自に設定(所有権移転登記で5-10万円が相場)
- 登録免許税は固定資産税評価額や債権額により変動(相続0.4%、売買2%、抵当権設定0.4%)
- 複数の司法書士事務所から見積もりを取ることで費用を比較でき、自分で登記する選択肢もあるがリスクも存在
この記事では、日本司法書士会連合会や法務省の公式情報を元に、司法書士の登記費用の内訳、相場、節約方法を解説します。
司法書士費用の内訳:報酬と実費の違い
司法書士費用は大きく2つに分かれます。それぞれの性質と金額の決まり方を理解することで、見積もりの妥当性を判断できます。
司法書士報酬(手数料)
司法書士報酬は、司法書士に支払う手数料です。平成15年の報酬自由化により、各事務所が独自に設定しています。日本司法書士会連合会の報酬アンケート(令和6年3月実施)によると、報酬は登記の種類や手続きの複雑さにより異なります。
主な登記の報酬相場は以下の通りです。
| 登記の種類 | 報酬相場 | 
|---|---|
| 所有権移転登記(売買) | 5-10万円 | 
| 抵当権設定登記 | 3-6万円 | 
| 相続登記 | 5-15万円 | 
| 抵当権抹消登記 | 1-3万円 | 
報酬は事務所により異なるため、複数社から見積もりを取って比較することを推奨します。
登録免許税(実費)
登録免許税は、不動産の登記手続き時に国に納める税金です。法務省の公式情報によると、税率は登記の種類により異なります。
| 登記の種類 | 税率 | 課税標準 | 
|---|---|---|
| 相続登記 | 0.4% | 固定資産税評価額 | 
| 売買(土地) | 1.5%(2026年3月まで軽減) | 固定資産税評価額 | 
| 売買(建物) | 2%(新築住宅は0.15%等の軽減あり) | 固定資産税評価額 | 
| 抵当権設定 | 0.4%(住宅ローンは0.1%に軽減) | 債権額 | 
(出典: 法務省)
例えば、固定資産税評価額2,000万円の土地を相続した場合、登録免許税は8万円(2,000万円×0.4%)です。
その他の実費(書類取得費等)
登記申請に必要な書類の取得費用も実費として請求されます。主な書類の取得費用は以下の通りです。
- 戸籍謄本:450円
- 除籍謄本:750円
- 印鑑証明書:300-450円(自治体により異なる)
- 固定資産評価証明書:300-400円(自治体により異なる)
合計で1-2万円程度が目安です。
登記種類別の費用相場と計算例
登記の種類により、報酬と登録免許税の合計額が異なります。具体的な計算例を参考に、自分のケースでの費用を概算してください。
所有権移転登記(売買)
所有権移転登記(売買)は、不動産を購入した際の名義変更登記です。
費用例(固定資産税評価額2,000万円の土地):
- 司法書士報酬:5-10万円
- 登録免許税:30万円(2,000万円×1.5%、2026年3月まで軽減適用)
- その他実費:1-2万円
- 合計:36-42万円
新築住宅の建物は、一定の要件を満たすと登録免許税が0.15%に軽減されます。軽減措置の適用条件は国土交通省の公式サイトで確認してください。
抵当権設定登記
抵当権設定登記は、住宅ローンを利用する際に金融機関が不動産に担保権を設定する登記です。
費用例(借入額3,000万円):
- 司法書士報酬:3-6万円
- 登録免許税:3万円(3,000万円×0.1%、住宅ローン軽減適用)
- その他実費:0.5-1万円
- 合計:6.5-10万円
住宅ローンを利用する場合、登録免許税が0.1%に軽減されます(本則0.4%)。
相続登記
相続登記は、相続により不動産の所有権を取得した際の名義変更登記です。2024年4月から義務化され、3年以内に登記しない場合は罰則(10万円以下の過料)があります。
費用例(固定資産税評価額2,000万円の不動産):
- 司法書士報酬:5-15万円(相続人の数や手続きの複雑さにより変動)
- 登録免許税:8万円(2,000万円×0.4%)
- その他実費:1-3万円(戸籍謄本、除籍謄本等の取得費)
- 合計:14-26万円
相続登記の報酬は、相続人の数や遺産分割協議の有無により大きく変動するため、事前に見積もりを取ることが重要です。
司法書士費用を抑える方法
司法書士費用を抑えるためには、複数社見積もりや軽減措置の活用、自分で登記する選択肢を検討してください。
複数の司法書士事務所から見積もりを取る
司法書士報酬は自由化されており、事務所により異なります。複数の事務所から見積もりを取って比較することで、適正価格を判断できます。見積もり時には、報酬と実費の内訳を明示してもらい、不明点があれば質問してください。
軽減措置の適用を確認する
登録免許税には、一定の要件を満たすと軽減措置が適用される場合があります。主な軽減措置は以下の通りです。
- 土地の売買:2026年3月まで1.5%(本則2%)
- 新築住宅の建物:築年数・床面積等の要件を満たすと0.15%(本則2%)
- 住宅ローンの抵当権設定:0.1%(本則0.4%)
軽減措置の適用条件は国土交通省の公式サイトで確認してください。
自分で登記する選択肢とそのリスク
登記手続きは自分で行うこともできます。司法書士報酬(5-15万円)を節約できますが、以下のリスクがあることを理解してください。
- 書類不備による再申請:登記申請書や添付書類に不備があると、法務局から補正指示が出され、再申請が必要になります。
- 金融機関が認めないケース:住宅ローンを利用する場合、金融機関が司法書士による登記を条件とすることがあります。
- 時間と手間:登記手続きには専門知識が必要で、平日に法務局へ出向く必要があります。
自分で登記する場合は、法務局の公式サイトで手続きの詳細を確認し、不明点があれば法務局の相談窓口を利用してください。
まとめ:司法書士費用は報酬と実費の内訳を理解して適正価格を判断
司法書士の登記費用は「報酬(司法書士への手数料)」と「実費(登録免許税、書類取得費等)」の2つに分かれます。報酬は平成15年から自由化され、各事務所が独自に設定しているため、複数社から見積もりを取って比較することが重要です。
登録免許税は固定資産税評価額や債権額により変動し、軽減措置を活用することで費用を抑えられる場合があります。自分で登記する選択肢もありますが、書類不備や金融機関の要件を考慮してください。
次のアクションとして「複数の司法書士事務所から見積もりを取る」「軽減措置の適用条件を確認する」「自分で登記する場合は法務局の相談窓口を利用する」を検討してください。
