土地相続手続き完全ガイド|期限・必要書類・費用を解説

公開日: 2025/10/31

土地相続手続きの全体フローと重要な期限

親の土地を相続した際、「どこから手をつければいいのか」「いつまでに何をする必要があるのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地相続の手続きの流れ、重要な期限、必要書類、費用を、法務省国税庁の公式情報を元に解説します。

初めて相続する方でも、期限を守り、スムーズに手続きを進められるようになります。

この記事のポイント

  • 土地相続は①相続人確定、②遺産分割協議、③相続登記、④相続税申告の4段階で進める
  • 相続登記は3年以内が義務(2024年4月~、過料10万円)、相続税申告は10ヶ月以内が期限
  • 必要書類は戸籍謄本(出生~死亡)、固定資産評価証明書、遺産分割協議書等
  • 費用は登録免許税(評価額の0.4%)、司法書士報酬(5-15万円)、税理士報酬(30-100万円程度)
  • 複雑なケースは専門家(司法書士・税理士)への相談が必須

ステップ1:相続人確定と必要書類の取得

土地相続の最初のステップは、相続人を確定することです。民法で定められた法定相続人(配偶者・子・父母・兄弟姉妹等)を特定するため、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得します。

法定相続人の確定方法

法定相続人は以下の順位で決まります。

  • 配偶者:常に相続人となる
  • 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫)
  • 第2順位:父母(父母が亡くなっている場合は祖父母)
  • 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)

被相続人の戸籍謄本を確認し、すべての法定相続人を特定してください。

戸籍謄本の取得(出生から死亡まで)

相続人を確定するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得します。本籍地の市区町村窓口で申請できます。転籍している場合は、転籍前の市区町村にも請求が必要です。

戸籍謄本の取得には時間がかかる場合があるため、早期に着手することをおすすめします。遠方の場合は郵送請求も可能です。

固定資産評価証明書の取得

固定資産評価証明書は、土地の評価額を証明する書類で、市区町村窓口で取得できます。相続登記・相続税申告で使用するため、必ず取得してください。

登記簿謄本(登記事項証明書)は、法務局またはオンライン(登記情報提供サービス)で取得でき、土地の所有者・地番を確認できます。

(参考: 司法書士解説

ステップ2:遺産分割協議と協議書の作成

相続人が確定したら、相続人全員で遺産の分け方を話し合います(遺産分割協議)。

遺産分割協議の進め方

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。1人でも欠けた協議は無効となります。遠方に住む相続人がいる場合は、電話・メール・郵送等で連絡を取り、合意を得てください。

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停・審判が必要になる場合があります。トラブルが発生した場合は弁護士に相談してください。

遺産分割協議書の作成(相続人全員の署名・実印)

遺産分割協議の内容を書面にまとめたものが遺産分割協議書です。相続人全員の署名・実印・印鑑証明書が必要です。

遺産分割協議書には印紙税は不要です。協議書の様式は法務局のホームページから入手できます。

協議が長引く場合の対処法(相続人申告登記)

遺産分割協議が長引き、相続登記の3年期限に間に合わない場合は、相続人申告登記を行うことで過料(10万円)を回避できます。

相続人申告登記は、法務局に「自分が相続人である」ことを申告する救済措置です。遺産分割協議が成立した後、改めて相続登記を申請する必要があります。

(出典: 法務省

ステップ3:相続登記の申請手続き

遺産分割協議が成立したら、土地の名義を相続人名義に変更する相続登記を申請します。

相続登記の申請先(法務局)

相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局で申請します。窓口への持参、郵送、オンライン(登記・供託オンライン申請システム)のいずれかで申請できます。

必要書類一覧

相続登記に必要な書類は以下の通りです。

  • 被相続人の戸籍謄本(出生~死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 登記申請書

法務局のホームページから申請書様式をダウンロードできます。

登録免許税の計算(不動産評価額の0.4%)

登録免許税は、不動産評価額の0.4%です。例えば、評価額2000万円の土地なら、登録免許税は8万円(2000万円×0.4%)となります。

登録免許税は、登記申請時に収入印紙または現金で納付します。

司法書士への依頼(5-15万円程度)

相続登記は自分で申請することも可能ですが、相続人が多数、不動産が複数、遺産分割協議が複雑等の場合は司法書士への依頼を推奨します。司法書士報酬は5-15万円程度が相場です。

2024年4月から相続登記が義務化され、相続開始を知った日から3年以内に申請しない場合、過料10万円が科される可能性があります。期限を守って手続きを進めてください。

(参考: 法務省

ステップ4:相続税の申告と納付

相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告・納付が必要です。

相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)

相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人数」です。例えば、法定相続人が3人なら、4800万円(3000万円+600万円×3人)まで非課税となります。

相続財産の総額が基礎控除額以下なら、相続税の申告は不要です。

申告期限(相続開始から10ヶ月以内)

相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。国税庁によると、期限を過ぎると延滞税・無申告加算税が課される可能性があります。

申告先は、被相続人の住所地を管轄する税務署です。

土地の評価方法(路線価・固定資産評価額)

土地の相続税評価額は、路線価または固定資産評価額を基に算定します。路線価は国税庁のホームページで確認できます。

評価方法が複雑な場合は、税理士に相談してください。

税理士への依頼(30-100万円程度)

相続税の計算・申告は複雑なため、税理士に依頼するのが一般的です。税理士報酬は、遺産総額により異なりますが30-100万円程度が相場です。

基礎控除額を超えるかどうか不明な場合、または配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用する場合は、税理士に相談してください。

(出典: 国税庁

まとめ:土地相続手続きで失敗しないために

土地相続の手続きは、①相続人確定、②遺産分割協議、③相続登記(3年以内)、④相続税申告(10ヶ月以内)の4段階で進めます。期限を守らないと、過料(相続登記10万円)や延滞税(相続税)が発生する可能性があります。

必要書類(戸籍謄本、固定資産評価証明書、遺産分割協議書等)は早めに準備してください。費用は登録免許税(評価額の0.4%)、司法書士報酬(5-15万円)、税理士報酬(30-100万円程度)が目安です。

相続人が多数、不動産が複数、遺産分割協議が複雑等の場合は、専門家(司法書士・税理士・弁護士)に相談することをおすすめします。2024年4月から相続登記が義務化されたため、早期対応が重要です。

よくある質問

Q1相続登記を自分で行うことはできますか?

A1可能です。法務局の公式ハンドブックや申請書様式を参照し、必要書類を揃えて申請できます。ただし、相続人が多数、不動産が複数、遺産分割協議が複雑等の場合は司法書士への依頼を推奨します。司法書士報酬は5-15万円程度が相場です。不明点は法務局の登記相談窓口で相談できます。

Q2相続税が発生しない場合、申告は不要ですか?

A2基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)以下なら申告不要です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用する場合は、控除後の税額がゼロでも申告が必要です。申告要否の判断が不明な場合は税理士に相談してください。

Q3遺産分割協議が3年以内に成立しない場合はどうなりますか?

A3相続人申告登記を行うことで過料(10万円)を回避できます。これは法務局に「自分が相続人である」ことを申告する救済措置です。遺産分割協議が成立した後、改めて相続登記を申請する必要があります。協議が長引く見込みの場合は、早めに相続人申告登記を行ってください。

Q4相続登記の義務化は過去の相続にも適用されますか?

A4適用されます。2024年4月1日以前に発生した相続も、同日から3年以内(2027年3月31日まで)に相続登記を行う必要があります。未登記のまま放置していた場合は早急に対応が必要です。期限を過ぎると過料10万円が科される可能性があります。