土地相続手続きの全体フローと重要な期限
親の土地を相続した際、「どこから手をつければいいのか」「いつまでに何をする必要があるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、土地相続の手続きの流れ、重要な期限、必要書類、費用を、法務省・国税庁の公式情報を元に解説します。
初めて相続する方でも、期限を守り、スムーズに手続きを進められるようになります。
この記事のポイント
- 土地相続は①相続人確定、②遺産分割協議、③相続登記、④相続税申告の4段階で進める
- 相続登記は3年以内が義務(2024年4月~、過料10万円)、相続税申告は10ヶ月以内が期限
- 必要書類は戸籍謄本(出生~死亡)、固定資産評価証明書、遺産分割協議書等
- 費用は登録免許税(評価額の0.4%)、司法書士報酬(5-15万円)、税理士報酬(30-100万円程度)
- 複雑なケースは専門家(司法書士・税理士)への相談が必須
ステップ1:相続人確定と必要書類の取得
土地相続の最初のステップは、相続人を確定することです。民法で定められた法定相続人(配偶者・子・父母・兄弟姉妹等)を特定するため、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得します。
法定相続人の確定方法
法定相続人は以下の順位で決まります。
- 配偶者:常に相続人となる
- 第1順位:子(子が亡くなっている場合は孫)
- 第2順位:父母(父母が亡くなっている場合は祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)
被相続人の戸籍謄本を確認し、すべての法定相続人を特定してください。
戸籍謄本の取得(出生から死亡まで)
相続人を確定するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得します。本籍地の市区町村窓口で申請できます。転籍している場合は、転籍前の市区町村にも請求が必要です。
戸籍謄本の取得には時間がかかる場合があるため、早期に着手することをおすすめします。遠方の場合は郵送請求も可能です。
固定資産評価証明書の取得
固定資産評価証明書は、土地の評価額を証明する書類で、市区町村窓口で取得できます。相続登記・相続税申告で使用するため、必ず取得してください。
登記簿謄本(登記事項証明書)は、法務局またはオンライン(登記情報提供サービス)で取得でき、土地の所有者・地番を確認できます。
(参考: 司法書士解説)
ステップ2:遺産分割協議と協議書の作成
相続人が確定したら、相続人全員で遺産の分け方を話し合います(遺産分割協議)。
遺産分割協議の進め方
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。1人でも欠けた協議は無効となります。遠方に住む相続人がいる場合は、電話・メール・郵送等で連絡を取り、合意を得てください。
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停・審判が必要になる場合があります。トラブルが発生した場合は弁護士に相談してください。
遺産分割協議書の作成(相続人全員の署名・実印)
遺産分割協議の内容を書面にまとめたものが遺産分割協議書です。相続人全員の署名・実印・印鑑証明書が必要です。
遺産分割協議書には印紙税は不要です。協議書の様式は法務局のホームページから入手できます。
協議が長引く場合の対処法(相続人申告登記)
遺産分割協議が長引き、相続登記の3年期限に間に合わない場合は、相続人申告登記を行うことで過料(10万円)を回避できます。
相続人申告登記は、法務局に「自分が相続人である」ことを申告する救済措置です。遺産分割協議が成立した後、改めて相続登記を申請する必要があります。
(出典: 法務省)
ステップ3:相続登記の申請手続き
遺産分割協議が成立したら、土地の名義を相続人名義に変更する相続登記を申請します。
相続登記の申請先(法務局)
相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局で申請します。窓口への持参、郵送、オンライン(登記・供託オンライン申請システム)のいずれかで申請できます。
必要書類一覧
相続登記に必要な書類は以下の通りです。
- 被相続人の戸籍謄本(出生~死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 登記申請書
法務局のホームページから申請書様式をダウンロードできます。
登録免許税の計算(不動産評価額の0.4%)
登録免許税は、不動産評価額の0.4%です。例えば、評価額2000万円の土地なら、登録免許税は8万円(2000万円×0.4%)となります。
登録免許税は、登記申請時に収入印紙または現金で納付します。
司法書士への依頼(5-15万円程度)
相続登記は自分で申請することも可能ですが、相続人が多数、不動産が複数、遺産分割協議が複雑等の場合は司法書士への依頼を推奨します。司法書士報酬は5-15万円程度が相場です。
2024年4月から相続登記が義務化され、相続開始を知った日から3年以内に申請しない場合、過料10万円が科される可能性があります。期限を守って手続きを進めてください。
(参考: 法務省)
ステップ4:相続税の申告と納付
相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告・納付が必要です。
相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)
相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人数」です。例えば、法定相続人が3人なら、4800万円(3000万円+600万円×3人)まで非課税となります。
相続財産の総額が基礎控除額以下なら、相続税の申告は不要です。
申告期限(相続開始から10ヶ月以内)
相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。国税庁によると、期限を過ぎると延滞税・無申告加算税が課される可能性があります。
申告先は、被相続人の住所地を管轄する税務署です。
土地の評価方法(路線価・固定資産評価額)
土地の相続税評価額は、路線価または固定資産評価額を基に算定します。路線価は国税庁のホームページで確認できます。
評価方法が複雑な場合は、税理士に相談してください。
税理士への依頼(30-100万円程度)
相続税の計算・申告は複雑なため、税理士に依頼するのが一般的です。税理士報酬は、遺産総額により異なりますが30-100万円程度が相場です。
基礎控除額を超えるかどうか不明な場合、または配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用する場合は、税理士に相談してください。
(出典: 国税庁)
まとめ:土地相続手続きで失敗しないために
土地相続の手続きは、①相続人確定、②遺産分割協議、③相続登記(3年以内)、④相続税申告(10ヶ月以内)の4段階で進めます。期限を守らないと、過料(相続登記10万円)や延滞税(相続税)が発生する可能性があります。
必要書類(戸籍謄本、固定資産評価証明書、遺産分割協議書等)は早めに準備してください。費用は登録免許税(評価額の0.4%)、司法書士報酬(5-15万円)、税理士報酬(30-100万円程度)が目安です。
相続人が多数、不動産が複数、遺産分割協議が複雑等の場合は、専門家(司法書士・税理士・弁護士)に相談することをおすすめします。2024年4月から相続登記が義務化されたため、早期対応が重要です。
