相続登記の手続き完全ガイド:必要書類と義務化対応

公開日: 2025/10/27

相続登記義務化とは?2024年4月施行の新制度

不動産を相続した際、「登記はいつまでに済ませればいいのか」「何が必要なのか」と悩む方は少なくありません。

この記事では、2024年4月に施行された相続登記義務化の内容、必要書類、手続きの流れ、費用について、法務省の公式情報を元に解説します。

初めて相続手続きをする方でも、期限や必要な準備を正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が必須(違反時は過料10万円以下)
  • 必要書類は「基本書類」(戸籍謄本、住民票等)と「ケース別追加書類」(遺産分割協議書、遺言書等)に分けられる
  • 戸籍謄本は「出生から死亡まで」の連続した全ての戸籍が必要で、転籍がある場合は複数自治体から取り寄せが必要
  • 費用は登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)と司法書士報酬(5-10万円が相場)
  • 3年以内に遺産分割協議が成立しない場合は「相続人申告登記」で過料を回避可能

相続登記が義務化された背景(所有者不明土地問題)

相続登記の義務化は、所有者不明土地の増加を防ぐために導入されました。法務省によると、所有者不明土地は九州本島の面積を超える規模に達しており、公共事業の遅延や地域の荒廃を招いています。

相続が発生しても登記をしない状態が続くと、次の相続が発生した際に権利関係が複雑化し、さらに登記が困難になる悪循環に陥ります。この問題を解決するため、法律が改正されました。

申請期限と罰則(3年以内、過料10万円以下)

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に申請しない場合、過料10万円以下が科される可能性があります。

法務省のQ&Aでは、「正当な理由」(遺産分割協議の難航、相続人多数で調査に時間がかかる等)がある場合は期限延長が認められる場合があるとされています。

2027年3月31日までの経過措置

施行前(2024年4月1日より前)に発生した相続も義務化の対象です。ただし、経過措置として2027年3月31日までに申請すれば過料は科されません。

相続が数十年前に発生している場合でも、この期限までに登記を済ませる必要があります。

相続登記に必要な書類の詳細

相続登記の必要書類は、「基本書類(全ケース共通)」と「ケース別追加書類」に分けられます。

基本書類(全ケース共通)

以下の書類は、どのケースでも必要です。

書類名 取得先 注意点
被相続人の戸籍謄本 本籍地の市区町村役場 出生から死亡まで連続した全ての戸籍が必要
相続人全員の戸籍謄本 本籍地の市区町村役場 現在の戸籍謄本(相続人であることを証明)
相続人全員の住民票 住所地の市区町村役場 現在の住所を証明
固定資産税評価証明書 不動産所在地の市区町村役場 登録免許税の計算に使用
登記申請書 法務局の様式をダウンロード 自分で作成または司法書士に依頼

戸籍謄本の取得範囲に注意

被相続人の戸籍謄本は、「出生から死亡まで」の連続した全ての戸籍が必要です。転籍(本籍地の移動)がある場合は、複数の自治体から取り寄せる必要があります。

例えば、A市で出生→B市に転籍→C市に転籍→C市で死亡した場合、A市・B市・C市の3自治体から戸籍謄本を取得します。

2024年3月から戸籍の広域交付制度が開始され、最寄りの役場で全国の戸籍を取得できるようになりました(本人・配偶者・直系血族のみ)。

ケース別追加書類(遺産分割協議・遺言・法定相続分)

相続の方法によって、追加で必要な書類が異なります。

遺産分割協議による場合

  • 遺産分割協議書: 相続人全員の署名・実印押印が必要
  • 相続人全員の印鑑証明書: 協議書の実印が本物であることを証明

遺言がある場合

  • 遺言書: 自筆証書遺言、公正証書遺言等
  • 検認済証明書: 自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認が必要(公正証書遺言は不要)

法定相続分による場合

  • 追加書類は不要(基本書類のみ)

相続登記の手続きの流れ(5ステップ)

法務省によると、相続登記は以下の5ステップで進めます。

ステップ1: 相続人の確定

被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)を取得し、相続人を確定します。配偶者、子、父母、兄弟姉妹等の法定相続人を洗い出します。

ステップ2: 遺産分割協議(遺言がない場合)

遺言がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。全員が合意したら、遺産分割協議書を作成し、全員が署名・実印押印します。

ステップ3: 必要書類の準備

戸籍謄本、住民票、固定資産税評価証明書等を取得します。特に戸籍謄本の取得には時間がかかる場合があるため、早めに着手しましょう。

ステップ4: 登記申請書の作成

法務局の様式をダウンロードし、登記申請書を作成します。不安な場合は、法務局の無料相談窓口(予約制)を利用できます。

ステップ5: 法務局への申請

不動産所在地を管轄する法務局に、窓口・郵送・オンラインで申請します。申請から完了まで1-2週間が目安です。

相続登記にかかる費用

相続登記の費用は、「登録免許税」と「司法書士報酬」(依頼する場合)に分けられます。

登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)

登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。

計算例(固定資産税評価額が3,000万円の場合):

3,000万円 × 0.4% = 12万円

グリーン司法書士法人によると、登録免許税は国に納める税金であり、誰が申請しても同額です。

司法書士報酬(5-10万円が相場)

司法書士に依頼する場合、報酬は5-10万円が相場です。物件数・相続人数・相続関係の複雑さにより変動します。

2025年3月末までの免税措置

以下の条件を満たす場合、2025年3月末まで登録免許税が免税されます。

  • 相続人が登記前に死亡した場合(数次相続)
  • 土地の固定資産税評価額が100万円以下の場合

ただし、免税措置の適用には条件があるため、法務局または司法書士に確認しましょう。

相続人申告登記(救済措置)と自分でできるかの判断

3年以内に遺産分割協議が成立しない場合の救済措置

法務省のQ&Aによると、「相続人申告登記」は2024年4月に新設された救済措置です。

3年以内に遺産分割協議が成立しない場合、相続人の氏名・住所を法務局に申し出ることで、過料を回避できます。この制度を利用することで、時間をかけて遺産分割協議を進めることが可能です。

自分で申請できるケース・司法書士に依頼すべきケース

自分で申請できるケース:

  • 相続人が少数(2-3人)
  • 遺産分割協議が円満に成立
  • 不動産が1-2件

司法書士に依頼すべきケース:

  • 相続人多数(5人以上)
  • 遺産分割協議が難航
  • 不動産が多数(3件以上)
  • 相続関係が複雑(前妻の子、養子縁組等)

法務局の無料相談窓口(予約制)も活用できますが、個別具体的な書類作成は司法書士のみが行えます(司法書士法)。

まとめ:相続登記は早めに手続きを

2024年4月の義務化により、相続を知った日から3年以内の登記が必須となりました。放置すると過料10万円以下が科される可能性があります。

必要書類の準備(特に被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本取得)を早めに開始し、遺産分割協議が難航する場合は「相続人申告登記」で過料を回避しましょう。

複雑な相続関係の場合は司法書士への依頼を推奨します。法務局の無料相談窓口も活用しながら、適切な手続きを進めましょう。

よくある質問

Q1相続登記をしないとどうなりますか?

A12024年4月の義務化により、相続を知った日から3年以内に登記しないと過料10万円以下が科される可能性があります。さらに、不動産の売却・担保設定ができず、次の相続で手続きが複雑化するリスクもあります。早めの手続きを強く推奨します。

Q2戸籍謄本はどこで取得できますか?

A2本籍地の市区町村役場で取得できます。郵送請求も可能です。転籍がある場合は複数自治体から取り寄せが必要です。2024年3月から戸籍の広域交付制度が開始され、最寄りの役場で全国の戸籍を取得できるようになりました(本人・配偶者・直系血族のみ)。

Q3遺産分割協議書は自分で作成できますか?

A3作成可能です。法務局のひな形を参考にし、相続人全員の署名・実印押印が必要です。ただし、不備があると登記が却下されるため、不安な場合は司法書士に依頼することを推奨します。法務局の無料相談窓口(予約制)も活用できます。

Q4相続登記の期限はいつまでですか?

A4相続を知った日から3年以内です。施行前(2024年4月1日より前)の相続も対象で、2027年3月31日までの経過措置があります。遺産分割協議が難航する場合は「相続人申告登記」で過料を回避できます。