土地の名義変更にかかる費用は?相続・売買別の内訳

公開日: 2025/10/31

土地の名義変更にかかる費用を完全解説:相続・売買・贈与別の内訳

土地の所有者が変わったとき、「名義変更にいくらかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。登録免許税や司法書士報酬など、聞き慣れない費用項目が複数あり、合計金額が数万円から数十万円に及ぶケースもあります。

この記事では、相続・売買・贈与の各ケース別に、土地の名義変更にかかる費用の内訳、計算方法、自分で手続きする場合と専門家に依頼する場合の違いを、法務省国税庁の公式情報を元に解説します。

初めて名義変更を行う方でも、必要な資金を正確に把握し、実践的な判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • 土地の名義変更費用は、相続・売買・贈与で登録免許税の税率が大きく異なる(相続0.4%、売買・贈与2.0%)
  • 登録免許税は固定資産評価額×税率で計算され、評価額1,000万円の土地なら相続4万円、売買・贈与20万円
  • 司法書士報酬は全国平均6.5万円だが、土地の筆数・評価額・相続人の数により5-15万円で変動
  • 自分で手続きすれば5,000円程度に抑えられるが、複雑なケースでは専門家に依頼する方が安全
  • 2024年4月施行の相続登記義務化により、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性

土地の名義変更の種類別費用一覧

土地の名義変更(所有権移転登記)にかかる費用は、名義変更の理由によって大きく異なります。主な費用項目は、登録免許税と司法書士報酬の2つです。

名義変更の理由別:登録免許税と司法書士報酬

名義変更の理由 登録免許税の税率 評価額1,000万円の場合の登録免許税 司法書士報酬の目安 合計費用の目安
相続 0.4% 4万円 5-10万円 9-14万円
売買 2.0% 20万円 5-10万円 25-30万円
贈与 2.0% 20万円 5-10万円 25-30万円

(出典: 国税庁 登録免許税の税額表

相続の場合、登録免許税の税率が0.4%と最も低く設定されています。評価額1,000万円の土地なら4万円、司法書士報酬を合わせて総額9-14万円程度が目安です。

売買・贈与の場合、登録免許税の税率は2.0%です。同じ評価額1,000万円の土地で20万円となり、相続の5倍の負担となります。司法書士報酬を合わせて総額25-30万円程度が目安です。

贈与の場合の注意点: 登録免許税に加えて、不動産取得税(固定資産評価額の3%)が別途発生します。そのため、贈与は最も費用がかかる名義変更となります。

2027年3月31日までの免税措置

国税庁によると、2027年3月31日までは、市街化区域外の土地で固定資産評価額が100万円以下の場合、登録免許税が免税となる特例措置があります。対象となる土地をお持ちの方は、期限内に手続きを行うことで費用を抑えられます。

登録免許税の計算方法と最新税率(2024年)

登録免許税は、「固定資産評価額 × 税率」で計算されます。ここでは、固定資産評価額の確認方法と具体的な計算例を示します。

固定資産評価額の確認方法

固定資産評価額は、毎年4月頃に市区町村から送付される「固定資産税の納税通知書」に記載されています。納税通知書が手元にない場合は、市区町村の税務課で「固定資産評価証明書」を取得できます(手数料300円程度)。

具体的な計算例

相続の場合:
固定資産評価額1,000万円の土地を相続する場合
1,000万円 × 0.4% = 4万円

売買の場合:
固定資産評価額1,000万円の土地を売買する場合
1,000万円 × 2.0% = 20万円

贈与の場合:
固定資産評価額1,000万円の土地を贈与する場合
1,000万円 × 2.0% = 20万円

計算時の注意点: 登録免許税は、計算結果の1,000円未満を切り捨てます。例えば、計算結果が41,800円の場合、登録免許税は41,000円となります。

司法書士報酬の相場と変動要因

司法書士報酬は、土地の状況や手続きの複雑さにより変動します。全国平均は約6.5万円ですが、実際は5-15万円の幅があります。

司法書士報酬の全国平均

日本司法書士会連合会のアンケート調査(2025年最新)によると、所有権移転登記の報酬全国平均は約6.5万円です。ただし、以下の要因により変動します。

費用が高くなるケース

  • 土地の筆数が多い: 1筆ごとに追加料金が発生するのが一般的です。例えば、3筆の土地の場合、基本報酬6万円+追加2万円×2筆=10万円となるケースがあります。
  • 固定資産評価額が高い: 評価額が高いほど報酬も高くなる傾向があります。
  • 相続人が多数: 相続人が5人以上いる場合、戸籍謄本の取得・確認作業が増えるため、報酬が高くなります。
  • 遺産分割協議が必要: 遺産分割協議書の作成が必要な場合、別途3-5万円の費用が発生することがあります。

専門家選びのポイント

複数の司法書士に見積もりを依頼し、以下の点を確認しましょう。

  • 費用の内訳が明確か(基本報酬、追加料金、実費の区別)
  • 相続登記の実績が豊富か
  • 説明がわかりやすく、質問に丁寧に答えてくれるか
  • 追加費用の有無を事前に説明してくれるか

登記申請の代理業務は司法書士の独占業務であり、他の専門家(税理士、行政書士等)は行えません。

自分で手続きする場合:費用とメリット・デメリット

土地の名義変更は、自分で手続きすることも可能です。司法書士報酬を節約できますが、手間と時間がかかる点に注意が必要です。

自分で手続きする場合の費用:5,000円程度

自分で手続きする場合、必要な費用は以下の通りです。

項目 金額
登録免許税 固定資産評価額×税率(相続0.4%、売買・贈与2.0%)
登記事項証明書 600円/通
戸籍謄本(相続の場合) 450円/通
印鑑証明書 300円/通
固定資産評価証明書 300円/通
郵送費・交通費 1,000円程度

相続の場合、登録免許税を除く証明書発行手数料や郵送費は合計5,000円程度に抑えられます。

必要書類と手順

法務局の公式サイトによると、相続の場合の必要書類は以下の通りです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(遺産分割を行う場合)
  • 固定資産評価証明書
  • 登記申請書

手順:

  1. 市区町村で必要書類を取得
  2. 法務局で登記申請書の様式を入手(または公式サイトからダウンロード)
  3. 登記申請書を作成
  4. 法務局の窓口に提出(または郵送)
  5. 1-2週間後に登記完了

専門家への依頼を検討すべきケース

以下のケースでは、専門家に依頼する方が安全で効率的です。

  • 相続人が多数いる(5人以上)
  • 遺産分割協議が難航している
  • 土地の境界が不明確
  • 複雑な権利関係がある(抵当権設定、共有名義等)
  • 時間がない、または手続きに不安がある

時間と手間を考慮すると、複雑なケースでは司法書士に依頼する方が結果的に安全で効率的です。

相続登記義務化と名義変更をしないリスク

2024年4月から相続登記が義務化されました。名義変更を放置すると、法的なペナルティや実務上の問題が発生します。

2024年4月施行:3年以内の登記義務と10万円以下の過料

法務省によると、2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

3年以内の登記が難しい場合は、「相続人申告登記」という簡易的な救済制度を利用できます。これは、正式な遺産分割前に相続人であることを申告する制度で、義務違反のペナルティを回避できます。

名義変更を放置した場合のリスク

名義変更を放置すると、以下のリスクが発生します。

  • 土地を売却・担保設定できない: 登記上の所有者でないと、売却や住宅ローンの担保設定ができません。
  • 共有者が増えてトラブルになる: 世代を経るごとに相続人が増え、遺産分割協議が困難になります。例えば、祖父の代から放置すると、相続人が数十人に及ぶケースもあります。
  • 10万円以下の過料の対象となる: 2024年4月以降は、3年以内の登記義務違反で過料が科される可能性があります。

義務化の背景

相続登記義務化の背景には、所有者不明土地の増加があります。国土交通省の調査によると、所有者不明土地は全国で約410万ヘクタール(九州の面積に相当)に及び、公共事業や災害復旧の妨げになっています。

早期に名義変更を行うことで、将来のトラブルを回避し、土地の円滑な活用が可能になります。

まとめ:土地の名義変更は早めの対処が鍵

土地の名義変更にかかる費用は、相続の場合で登録免許税4万円+司法書士報酬5-10万円の合計9-14万円程度が目安です。売買・贈与の場合は登録免許税が20万円となり、総額25-30万円程度が必要です。

自分で手続きすれば5,000円程度に抑えられますが、複雑なケース(相続人が多数、遺産分割協議が必要等)では、専門家に依頼する方が安全で効率的です。

2024年4月施行の相続登記義務化により、3年以内の登記が必須となりました。まずは市区町村で固定資産評価額を確認し、複数の司法書士に見積もりを依頼することから始めましょう。

よくある質問

Q1相続と売買で、名義変更の費用はどれくらい違いますか?

A1登録免許税の税率が大きく異なります。相続は0.4%、売買は2.0%です。例えば、固定資産評価額1,000万円の土地の場合、相続では登録免許税が4万円ですが、売買では20万円となり、5倍の差があります。司法書士報酬はどちらも5-10万円程度で同水準です。そのため、総費用は相続で9-14万円程度、売買で25-30万円程度が目安となります。

Q2土地の名義変更は自分でできますか?

A2はい、可能です。法務局で申請でき、費用は登録免許税と証明書発行手数料のみで5,000円程度に抑えられます。ただし、相続人が多数いる、遺産分割協議が難航している、土地の境界が不明確、複雑な権利関係がある等のケースでは、専門家への依頼を推奨します。時間と手間を考慮すると、複雑なケースでは司法書士に依頼する方が結果的に安全で効率的です。

Q3土地の名義変更はいつまでにする必要がありますか?

A3相続の場合、2024年4月施行の義務化により、相続を知った日から3年以内に登記が必須です。期限を過ぎると10万円以下の過料が科される可能性があります。3年以内の登記が難しい場合は、相続人申告登記という簡易的な救済制度を利用できます。売買・贈与の場合は法的な期限はありませんが、放置すると売却・担保設定ができなくなるため、速やかに手続きすることをおすすめします。

Q4司法書士の選び方のポイントは何ですか?

A4以下の4点を確認しましょう。①複数の司法書士に見積もりを依頼し、費用の内訳(基本報酬・追加料金・実費)を比較する。②相続登記の実績が豊富か確認する。③説明が丁寧でわかりやすいか、質問に誠実に答えてくれるか。④追加費用の有無を事前に説明してくれるか。報酬相場は5-15万円ですが、最安値だけでなく、実績と信頼性も考慮して総合的に判断することが重要です。