不動産売買仲介の仕組みと選び方:手数料・媒介契約を解説

公開日: 2025/10/27

不動産売買仲介とは|仲介会社の役割

不動産を売買する際、多くの方は不動産会社に仲介を依頼します。不動産売買仲介とは、売主と買主の間に立ち、取引を円滑に進めるためのサービスです。

仲介会社は以下の役割を担います。

  • 物件探し・紹介: 買主の希望条件に合う物件を探し、提案
  • 価格交渉: 売主と買主の間で適正な価格を調整
  • 重要事項説明: 物件の権利関係、法的制限などを専門家として説明
  • 契約書作成: 売買契約書を作成し、トラブルを未然に防止
  • 決済・引渡しのサポート: 売買代金の決済から物件の引渡しまでをサポート

日本では、1つの不動産会社が売主と買主の両方から仲介手数料を受け取る「両手仲介」が一般的です。ただし、海外では利益相反を理由に規制されている国もあり、議論が続いています。

国土交通省の調査によると、仲介手数料の上限は法律で定められており、適正な取引を促す制度が整備されています。

媒介契約の種類|3つの契約形態

不動産会社に仲介を依頼する際、媒介契約を結びます。媒介契約には以下の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。

契約種類 複数社との契約 自己発見取引 REINS登録 報告頻度
一般媒介契約 可能 可能 任意 なし
専任媒介契約 不可(1社のみ) 可能 義務(7日以内) 2週間に1回
専属専任媒介契約 不可(1社のみ) 不可 義務(5日以内) 1週間に1回

一般媒介契約

複数の不動産会社と同時に契約できる形態です。自分で買主を見つけた場合(自己発見取引)も可能で、最も自由度が高い契約です。ただし、REINS(不動産流通機構)への登録義務がなく、情報が広く共有されない可能性があります。

専任媒介契約

1社のみと契約する形態です。自己発見取引は可能で、REINS登録が義務付けられています(契約後7日以内)。2週間に1回、売却活動の報告を受けられます。

全日本不動産協会によると、専任媒介契約は1社が集中的に販売活動を行うため、人気が低い物件ほど効果的とされています。

専属専任媒介契約

1社のみと契約し、自己発見取引も不可の形態です。REINS登録が義務付けられており(契約後5日以内)、1週間に1回の報告を受けられます。最も制約が厳しい反面、不動産会社が最も力を入れて販売活動を行う契約形態です。

ホームズの調査では、「人気物件(駅近・好立地等)は一般媒介で複数社に競争させる」「人気が低い物件は専任媒介で1社に集中させる」という選び方が推奨されています。

仲介手数料の仕組みと計算方法

仲介手数料は、不動産売買が成立した際に不動産会社に支払う報酬です。法律で上限が定められており、物件価格によって変動します。

法定上限額

国土交通省によると、仲介手数料の法定上限は以下の通りです。

  • 物件価格の3% + 6万円 + 消費税10%

この上限額は、売主・買主それぞれが支払う金額です。両手仲介の場合、不動産会社は売主と買主の双方から受け取ることができます。

計算例

3,000万円の物件を売買した場合の仲介手数料(上限)を計算してみます。

  1. 基本計算: 3,000万円 × 3% = 90万円
  2. 固定額加算: 90万円 + 6万円 = 96万円
  3. 消費税加算: 96万円 × 1.1 = 105.6万円

結果: 最大105.6万円

ただし、この金額はあくまで上限であり、実際には交渉可能です。「上限額を必ず払わなければならない」わけではないことを理解しておきましょう。

仲介会社の選び方|4つのチェックポイント

仲介会社選びは、不動産取引の成否を左右する重要な要素です。以下の4つのポイントで比較しましょう。

実績(取引件数、地域密着度)

大手不動産会社(三井のリハウス、東急リバブル、住友不動産販売等)は全国ネットワークを持ち、広範囲の顧客にアプローチできます。一方、地域密着型の会社は地元情報に強く、地域特有のニーズに対応できます。

マンション売却相談センターの2025年データでは、大手・地域密着型それぞれに強みがあり、物件の特性に応じて選ぶことが推奨されています。

担当者の対応

  • レスポンスの速さ: 質問に迅速に回答してくれるか
  • 専門知識: 法律、税金、ローン等の知識が豊富か
  • 誠実さ: 都合の悪い情報も隠さず説明してくれるか

サービス内容

  • 写真撮影: プロのカメラマンによる撮影サービス
  • 広告掲載: ポータルサイトや新聞折込チラシ等の広告展開
  • 内覧対応: 内覧者への対応や説明

口コミ・評判

国民生活センターには、高齢者を狙った強引な契約迫りや不適切な営業手法のトラブル事例が報告されています。複数の口コミサイトや知人の紹介も参考にしましょう。

最終的には、複数社(3-5社)の査定・提案を比較して選ぶことを強く推奨します。

囲い込みと両手仲介の注意点

「囲い込み」とは、不動産会社が両手仲介(売主・買主双方から手数料を受け取る)を狙って、他社に物件情報を出さず、自社の顧客のみに紹介する不適切な行為です。

囲い込みが行われると、以下の問題が発生します。

  • 売却期間の長期化: 他社経由の買主候補が排除されるため
  • 売却価格の低下: 買主候補が限定されるため、価格交渉力が低下

専任媒介契約・専属専任媒介契約では、REINS(不動産流通機構)への登録が義務付けられています。登録されていれば、他社も物件情報を見られるため、囲い込みを防ぐ効果があります。

売主は、契約時に「REINS登録証明書」の交付を受けることができます。この証明書で、自分の物件が正しく登録されているかを確認しましょう。

両手仲介自体は日本では合法ですが、海外(アメリカの一部州等)では利益相反を理由に規制されている場合もあります。この点については、業界内でも議論が続いています。

まとめ|複数社を比較して選ぶ

不動産売買仲介では、媒介契約の種類(一般媒介・専任媒介・専属専任媒介)によって義務や報告頻度が異なります。仲介手数料の法定上限は「物件価格の3% + 6万円 + 消費税」ですが、上限内で交渉可能です。

囲い込みを防ぐため、専任媒介契約時はREINS登録証明書を確認しましょう。最終的には、複数社の査定・提案を比較して、実績・担当者の対応・サービス内容・口コミを総合的に判断することが重要です。

信頼できる不動産会社を選び、納得のいく取引を実現しましょう。

よくある質問

Q1仲介手数料は必ず払わなければいけませんか?

A1仲介サービスを受けた場合は支払いが必要です。ただし、法定上限(物件価格の3%+6万円+消費税)内で交渉可能です。仲介なしで個人間取引する場合は不要ですが、重要事項説明がない、トラブル時の責任所在が不明等のリスクがあります。

Q2専任媒介と一般媒介、どちらを選ぶべきですか?

A2人気物件(駅近・好立地等)は一般媒介契約で複数社に依頼し、競争させる方が有利です。人気が低い物件は専任媒介契約で1社に集中的に販売活動してもらう方が効果的です。物件の特性や市場の状況に応じて判断しましょう。

Q3仲介会社は途中で変更できますか?

A3一般媒介契約は自由に変更可能です。専任媒介・専属専任媒介契約は契約期間(最長3ヶ月)中は原則変更不可です。ただし、営業活動の不履行等の正当な理由があれば解約できる場合があります。

Q4囲い込みを見抜く方法はありますか?

A4専任媒介契約・専属専任媒介契約の場合、REINS登録証明書の交付を求めましょう。登録されていれば他社も物件情報を見られるため、囲い込みは困難です。また、専任媒介は2週間に1回、専属専任媒介は1週間に1回の売却活動報告があることも確認しましょう。