固定資産税評価額の計算とシミュレーション|物件別の試算例

公開日: 2025/10/26

固定資産税評価額とは?計算シミュレーションの前に知っておくべきこと

不動産を所有すると毎年課税される固定資産税。「評価額はどう決まるのか」「自分の物件の税額はいくらか」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、固定資産税評価額の仕組み、計算方法、軽減措置、実際のシミュレーション例を、総務省・国税庁の公式情報を元に解説します。

評価額の決まり方を理解することで、固定資産税額を正確に把握し、軽減措置を活用して税負担を抑えることができます。

この記事のポイント

  • 固定資産税評価額は市町村が決定し、3年ごとに評価替えが行われる(基準年度:2024年、2027年…)
  • 固定資産税は評価額×1.4%が標準税率(都市計画税は評価額×0.3%が上限)
  • 住宅用地の軽減措置(200㎡まで評価額×1/6)や新築住宅の軽減措置(3年間または5年間、税額×1/2)を活用できる
  • 評価額は固定資産税課税明細書で確認、市町村の担当課で閲覧も可能

固定資産税評価額の決まり方

固定資産税評価額は、市町村が「固定資産評価基準」に基づいて決定します。

評価替えは3年ごと

総務省によると、固定資産税評価額は3年ごとに評価替えが行われます。

直近の基準年度は2024年(令和6年)で、次回は2027年(令和9年)です。評価替えにより、地価の変動や建物の経年劣化が反映されます。

土地の評価方法

土地の評価額は、路線価方式または倍率方式で算出されます。

路線価方式は、市街地に適用される方法で、道路に面した土地1㎡あたりの価格(路線価)を基準に算出します。路線価は公示地価の約70%水準です。

倍率方式は、市街地以外に適用される方法で、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算出します。

建物の評価方法

建物の評価額は、再建築価格(同じ建物を新築する場合の費用)から経年劣化を差し引いて算出します。

築年数が経過するほど評価額は下がりますが、一定の下限値(再建築価格の20%程度)まで下がると、それ以上は減額されません。

固定資産税の計算方法

固定資産税は、評価額に税率を乗じて算出します。

標準税率は1.4%

総務省によると、固定資産税の標準税率は1.4%です。ただし、市町村によっては独自の税率を設定している場合があります。

固定資産税 = 固定資産税評価額 × 1.4%

都市計画税は0.3%が上限

都市計画区域内の土地・建物には、固定資産税とは別に都市計画税が課されます。税率は0.3%が上限です。

都市計画税 = 固定資産税評価額 × 0.3%(上限)

合計すると、固定資産税1.4%+都市計画税0.3%=1.7%が標準的な税率です。

固定資産税の軽減措置

住宅用地や新築住宅には、軽減措置が適用されます。

住宅用地の軽減措置(小規模住宅用地の特例)

総務省によると、住宅用地には以下の軽減措置が適用されます。

区分 面積 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 200㎡まで 評価額×1/6 評価額×1/3
一般住宅用地 200㎡超 評価額×1/3 評価額×2/3

(出典: 総務省

例えば、評価額3000万円の土地(200㎡以下)なら、固定資産税は評価額3000万円×1/6×1.4%=7万円となります(軽減なしなら42万円)。

新築住宅の軽減措置(3年間または5年間、税額×1/2)

新築住宅の建物部分には、以下の軽減措置が適用されます。

  • 一般住宅: 新築後3年間、固定資産税が1/2に減額
  • 3階建以上の耐火・準耐火建築物(マンション等): 新築後5年間、固定資産税が1/2に減額

適用条件は、床面積50㎡以上280㎡以下の住宅です。

固定資産税の計算シミュレーション例

具体的な例で、固定資産税額を計算してみましょう。

例1:新築戸建て住宅(土地200㎡、建物評価額1000万円)

前提条件:

  • 土地評価額: 3000万円(200㎡以下)
  • 建物評価額: 1000万円(新築、床面積100㎡)
  • 税率: 固定資産税1.4%、都市計画税0.3%

計算:

土地:

  • 固定資産税: 3000万円×1/6×1.4% = 7万円
  • 都市計画税: 3000万円×1/3×0.3% = 3万円
  • 土地合計: 10万円

建物(新築3年間軽減あり):

  • 固定資産税: 1000万円×1.4%×1/2 = 7万円
  • 都市計画税: 1000万円×0.3% = 3万円
  • 建物合計: 10万円

初年度合計: 20万円

4年目以降(建物軽減なし): 10万円(土地)+14万円(建物)= 24万円

例2:中古マンション(専有面積70㎡、土地持分評価額1000万円、建物評価額800万円)

前提条件:

  • 土地持分評価額: 1000万円(マンション全体の敷地の持分)
  • 建物評価額: 800万円(築15年、軽減なし)
  • 税率: 固定資産税1.4%、都市計画税0.3%

計算:

土地:

  • 固定資産税: 1000万円×1/6×1.4% = 2.3万円
  • 都市計画税: 1000万円×1/3×0.3% = 1万円
  • 土地合計: 3.3万円

建物:

  • 固定資産税: 800万円×1.4% = 11.2万円
  • 都市計画税: 800万円×0.3% = 2.4万円
  • 建物合計: 13.6万円

年間合計: 16.9万円

固定資産税評価額の確認方法

固定資産税評価額は、以下の方法で確認できます。

固定資産税課税明細書

毎年4-6月頃に市町村から送付される固定資産税課税明細書に、評価額が記載されています。土地・建物それぞれの評価額を確認しましょう。

市町村の担当課で閲覧

市町村の固定資産税担当課(税務課等)で、固定資産課税台帳を閲覧できます。本人確認書類(運転免許証等)を持参し、窓口で申請しましょう。

固定資産評価証明書の取得

市町村の窓口で固定資産評価証明書を取得できます。手数料は1通300-400円程度です。相続・売買等で評価額の証明が必要な場合に利用します。

まとめ

固定資産税評価額は、市町村が3年ごとに評価替えを行い決定します(基準年度:2024年、2027年…)。

固定資産税は評価額×1.4%が標準税率で、都市計画税は評価額×0.3%が上限です。

住宅用地の軽減措置(200㎡まで評価額×1/6)や新築住宅の軽減措置(3年間または5年間、税額×1/2)を活用することで、税負担を抑えられます。

評価額は固定資産税課税明細書で確認できます。疑問があれば、市町村の担当課に問い合わせましょう。

よくある質問

Q1固定資産税評価額は毎年変わりますか?

A1いいえ、3年ごとの評価替えのタイミングで変わります。直近の基準年度は2024年(令和6年)で、次回は2027年(令和9年)です。ただし、新築や増改築があった場合は、その年から評価額が変わります。評価替え以外の年は、原則として評価額は据え置かれます。

Q2固定資産税評価額と実勢価格(市場価格)の違いは?

A2固定資産税評価額は課税のための公的評価で、土地は公示地価の約70%水準、建物は再建築価格から経年劣化を差し引いた額です。実勢価格は市場での取引価格で、需給バランスにより変動します。一般的に、実勢価格の方が固定資産税評価額より高い傾向にあります。

Q3固定資産税の納付時期はいつですか?

A3市町村により異なりますが、一般的に年4回(6月、9月、12月、2月)に分けて納付します。一括払いも可能です。納付書は毎年4-6月頃に送付されます。納付期限を過ぎると延滞金が発生するため、期限内に納付しましょう。

Q4空き家の固定資産税は高くなりますか?

A4「特定空家等」に指定されると、住宅用地の軽減措置が適用されなくなり、固定資産税が最大6倍に増えます。特定空家等とは、倒壊の危険がある、衛生上有害である、景観を著しく損なう等の空き家です。適切な管理を行い、特定空家等に指定されないよう注意しましょう。

Q5固定資産税評価額に不服がある場合はどうすればいいですか?

A5評価額に不服がある場合、固定資産評価審査委員会に審査の申出ができます。申出期限は、固定資産税課税明細書の交付を受けた日から3か月以内です。申出には理由(「近隣の類似物件より評価が高い」等)と証拠資料が必要です。市町村の担当課に相談しましょう。