固定資産税は確定申告で控除できる?【結論:自宅は不可、事業用は可】
固定資産税が確定申告で控除できるかどうか、混乱を感じる方は少なくありません。特に、住宅ローン控除と混同してしまうケースが多く見られます。
この記事では、固定資産税が確定申告で控除できる条件、経費計上の方法、住宅ローン控除との違いを、国税庁の公式情報を元に解説します。
自宅・事業用・賃貸用で扱いが異なることを理解し、正しく確定申告を行えるようになります。
この記事のポイント
- 自宅(居住用)の固定資産税は確定申告で控除不可
- 事業用・賃貸用の固定資産税は必要経費として計上可能
- 固定資産税は「所得控除」でも「税額控除」でもなく「必要経費」である
- 住宅ローン控除と固定資産税の経費計上は別制度で併用可能
- 自宅兼事業所の場合は家事按分が必要(合理的な基準で按分)
経費計上できる3つのケース
国税庁によると、固定資産税は事業用資産のみ必要経費として計上できます。以下の3つのケースが該当します。
①不動産所得(賃貸マンション・アパート経営)
賃貸用不動産の固定資産税は、不動産所得の計算上、全額を必要経費として計上できます。賃貸マンション、アパート、駐車場などの固定資産税が対象です。
例えば、賃貸用マンションの固定資産税が年間20万円の場合、この20万円を不動産所得の必要経費として計上し、課税所得を減らすことができます。
②事業所得(店舗・事務所として使用)
店舗や事務所として使用している不動産の固定資産税は、事業所得の計算上、全額を必要経費として計上できます。個人事業主が事業用として所有する不動産が対象です。
例えば、飲食店を経営している場合、店舗の固定資産税を事業所得の必要経費として計上できます。
③自宅兼事業所(家事按分が必要)
自宅の一部を事業所として使用している場合、事業用部分のみを按分して経費計上できます。按分方法には床面積比、使用時間比などがあります。
例えば、自宅100㎡のうち事業用スペースが30㎡の場合:
- 按分率:30㎡ ÷ 100㎡ = 30%
- 固定資産税が年間15万円の場合、経費計上額:15万円 × 30% = 4.5万円
按分率は合理的な基準で設定する必要があり、税務調査で説明できる根拠資料(間取り図、使用時間記録等)を保管することが重要です。恣意的な按分率は否認リスクがあります。
確定申告での計上方法
固定資産税を確定申告で経費計上する際の具体的な方法を解説します。
勘定科目は「租税公課」
固定資産税は勘定科目「租税公課」で計上します。租税公課とは、国・地方公共団体に納める税金(租税)と、公的な負担金(公課)の総称です。
国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、決算書の租税公課欄に固定資産税を記入します。
記入欄と添付書類
確定申告書の記入欄は以下の通りです。
- 青色申告決算書: 「租税公課」欄に固定資産税を記入
- 白色申告収支内訳書: 「租税公課」欄に固定資産税を記入
添付書類として、固定資産税の納税通知書のコピーを保管しておくことを推奨します(提出義務はありませんが、税務調査時の証拠資料となります)。
計上時期の選択肢(納付時 vs 賦課決定時)
マネーフォワード クラウド確定申告によると、固定資産税の計上時期は、納付時(実際に支払った日)または賦課決定時(納税通知書が届いた日)のいずれかを選択できます。
- 納付時計上: 実際に支払った年度に計上。資金繰りと一致しやすい
- 賦課決定時計上: 納税通知書が届いた年度に計上。会計上の発生主義に合致
どちらの方法でも構いませんが、毎年継続適用が原則です。毎年計上時期を変更すると税務上問題となります。
家事按分の注意点(青色申告 vs 白色申告)
自宅兼事業所の場合、家事按分の方法は青色申告と白色申告で異なります。
白色申告の50%ルール
白色申告では、事業用が50%超の場合のみ按分可能です。事業用が50%以下の場合、経費計上できません。
例えば、自宅100㎡のうち事業用スペースが40㎡(40%)の場合、白色申告では固定資産税を経費計上できません。
青色申告は制限なし
青色申告では、事業用が1%でも按分可能です。青色申告承認申請書を提出して青色申告に切り替えることで、少額でも経費計上できます。
例えば、自宅100㎡のうち事業用スペースが20㎡(20%)の場合、青色申告では固定資産税の20%を経費計上できます。
按分率の根拠資料を保管
按分率の根拠資料(間取り図、使用時間記録等)を保管し、税務調査で説明できる準備が必要です。合理的な基準がないと否認リスクがあります。
具体的な按分方法:
- 床面積比: 事業用スペース面積 ÷ 自宅全体面積
- 使用時間比: 事業用使用時間 ÷ 1日の時間(例:8時間 ÷ 24時間 = 33%)
複数の基準を組み合わせることも可能ですが、客観的で合理的な根拠を明示することが重要です。
混同しやすい制度との違い
固定資産税と混同しやすい制度との違いを整理します。
住宅ローン控除(税額控除)との違い
住宅ローン控除は租税特別措置法による税額控除であり、固定資産税は必要経費です。両者は別制度で、併用可能です。
| 項目 | 住宅ローン控除 | 固定資産税 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 租税特別措置法 | 所得税法(必要経費) |
| 控除方法 | 税額控除(計算された税額から直接差し引く) | 必要経費(収入から差し引いて課税所得を減らす) |
| 併用 | 可能 | 可能 |
| 対象 | 居住用住宅のローン | 事業用・賃貸用不動産 |
(出典: 国税庁)
固定資産税の経費計上が住宅ローン控除に影響することはありません。ただし、3,000万円特別控除を使った年は住宅ローン控除が使えないルールがありますが、これは固定資産税とは別の制度です。
不動産取得税・都市計画税との違い
不動産取得税は購入時に1回のみ課税される税金であり、固定資産税は毎年課税される税金です。都市計画税は固定資産税と同時期に課税される別の税金です。
いずれも事業用・賃貸用の場合は必要経費として計上できますが、自宅(居住用)の場合は経費計上できません。
まとめ:事業用・賃貸用なら経費計上可能
固定資産税は、自宅(居住用)の場合は確定申告で控除できません。事業用・賃貸用の固定資産税は、必要経費として計上可能です。
自宅兼事業所の場合は家事按分が必要であり、合理的な基準(床面積比・使用時間比等)で按分します。白色申告は事業用が50%超の場合のみ按分可能、青色申告は制限なしです。
住宅ローン控除と固定資産税の経費計上は別制度で、併用可能です。混同しないよう注意しましょう。
次のアクションとして、税理士への相談、会計ソフトの利用を検討し、正確な確定申告を行いましょう。
