旧土地台帳とは?相続した土地の取得費を調べる方法と取得手順

公開日: 2025/11/4

旧土地台帳とは何か

旧土地台帳とは、1960年(昭和35年)まで使用されていた土地の権利関係を記録する公簿です。現在の不動産登記制度が確立する前、明治時代から昭和中期にかけて、土地の所有者や面積、地目(土地の用途)などを記録するために使われていました。

旧土地台帳が必要になるのは、主に以下のようなケースです。

  • 古い土地を相続した際、取得時期や取得費が不明
  • 登記簿に記載がない「未登記の土地」の所有者を調べたい
  • 土地の境界や面積に関する歴史的な記録を確認したい
  • 譲渡所得税の計算で、概算取得費(売却額の5%)を避けたい

旧土地台帳は現在では登記簿に統合されていますが、法務局に閉鎖された台帳として保存されており、申請すれば閲覧・取得が可能です。

この記事のポイント

  • 旧土地台帳は1960年まで使用された土地の公簿で、現在は法務局に閉鎖台帳として保存されている
  • 相続した土地の取得時期・取得費が不明な場合、旧土地台帳から過去の所有者や取引履歴を調査できる可能性がある
  • 取得方法は法務局窓口またはオンライン請求で、手数料は450円(窓口)または365円(オンライン)
  • 旧土地台帳を活用することで、概算取得費(売却額の5%)ではなく実際の取得費を証明し、譲渡所得税を大幅に削減できる

旧土地台帳が必要になるケース

相続した土地の取得費が不明な場合

親や祖父母から相続した土地を売却する際、最も困るのが取得費(購入価格)が分からないというケースです。

土地の売却には譲渡所得税がかかりますが、その計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

取得費が不明な場合、国税庁の規定により**概算取得費(売却価格の5%)**を使用できますが、これは実際の取得費より大幅に低くなることが多く、譲渡所得が膨らんで税負担が重くなります。

具体例:

  • 売却価格: 3,000万円
  • 実際の取得費: 1,500万円(不明)
  • 概算取得費: 150万円(3,000万円 × 5%)
  • 譲渡費用: 100万円

実際の取得費が使えれば譲渡所得は1,400万円ですが、概算取得費では2,750万円となり、税額の差は約274万円(長期譲渡所得20.315%の場合)にもなります。

このような場合、旧土地台帳から過去の所有者や取引履歴を調査することで、取得時期を特定し、当時の取引価格を推定できる可能性があります。

未登記の土地の所有者を調べたい

現在の不動産登記制度では、すべての土地が登記されていることが原則ですが、実際には未登記の土地(登記簿に記載がない土地)が存在します。

未登記の土地が発生する理由:

  • 明治時代に登記制度ができた際、登記されなかった
  • 相続が繰り返されたが、登記手続きがされなかった
  • 農地や山林など、経済的価値が低いため放置された

未登記の土地でも、旧土地台帳には記録が残っている可能性があります。旧土地台帳を調査することで、過去の所有者を辿り、現在の真の所有者を特定する手がかりが得られます。

土地の境界や面積の歴史的記録を確認したい

土地の境界トラブルや面積の不一致が発生した場合、旧土地台帳が有力な証拠となることがあります。

旧土地台帳には以下の情報が記載されています。

  • 地番
  • 地目(田、畑、宅地、山林等)
  • 地積(面積)
  • 所有者の氏名・住所
  • 取得年月日

現在の登記簿と旧土地台帳を比較することで、過去に境界変更や分筆・合筆が行われたかを確認でき、境界紛争の解決に役立つ場合があります。

旧土地台帳の取得方法と手数料

法務局での申請方法

旧土地台帳は、土地が所在する地域を管轄する法務局で取得できます。

窓口での申請手順:

  1. 管轄の法務局を確認(法務局ホームページで検索可能)
  2. 法務局の窓口に行く
  3. 「閉鎖登記簿・旧土地台帳の交付申請」を行う
  4. 申請書に必要事項を記入
    • 土地の地番
    • 申請者の氏名・住所
    • 使用目的(相続、売却、境界確認等)
  5. 手数料450円を支払う
  6. 交付を受ける(即日または数日後)

申請には本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)が必要です。また、旧土地台帳は誰でも申請できるため、相続人であることを証明する必要はありません。

オンライン請求の手順

法務局に行く時間がない場合、オンライン請求も可能です。登記・供託オンライン申請システムを利用します。

オンライン請求手順:

  1. 登記・供託オンライン申請システムにアクセス
  2. 利用者登録(初回のみ、無料)
  3. 「不動産登記関係」→「登記事項証明書等の交付請求」を選択
  4. 土地の地番等を入力
  5. 手数料365円を電子納付
  6. 郵送で受け取る(数日〜1週間程度)

オンライン請求の場合、手数料が窓口より85円安くなります。ただし、郵送料(実費)が別途かかります。

手数料と所要時間

旧土地台帳の取得にかかる費用と時間をまとめると以下の通りです。

申請方法 手数料 所要時間 受取方法
窓口 450円 即日〜数日 窓口受取
オンライン 365円 数日〜1週間 郵送

(出典: 法務局

旧土地台帳は保存状態により、すぐに交付できない場合や、データが存在しない場合もあります。事前に法務局に電話で確認すると確実です。

旧土地台帳の見方と記載内容

記載されている情報(地番、地目、地積、所有者等)

旧土地台帳には以下の情報が記載されています。

項目 内容 活用方法
地番 土地を特定する番号 現在の登記簿と照合
地目 土地の用途(田、畑、宅地、山林等) 過去の土地利用状況を確認
地積 土地の面積(坪または㎡) 現在の面積と比較し、分筆・合筆の有無を確認
所有者 当時の所有者の氏名・住所 相続の経緯を辿る手がかり
取得年月日 所有権を取得した日付 譲渡所得税の計算で所有期間を証明

旧土地台帳は手書きで記載されている場合が多く、古いものでは読み取りが困難なこともあります。筆跡が不明瞭な場合は、法務局の職員に相談するか、専門家(司法書士、土地家屋調査士)に依頼することも検討しましょう。

現在の登記簿との照合方法

旧土地台帳を取得したら、現在の登記簿(登記事項証明書)と照合することで、過去から現在までの変遷を確認できます。

照合手順:

  1. 現在の登記事項証明書を取得(法務局窓口またはオンライン)
  2. 旧土地台帳と登記事項証明書を並べて比較
  3. 地番、地目、地積が一致しているか確認
  4. 所有者の変遷を辿る
  5. 分筆・合筆の記録があるか確認

地番が現在と異なる場合は、分筆や合筆により地番が変更された可能性があります。法務局で「地番変更履歴」を確認するか、閉鎖登記簿も併せて取得すると、変遷の全体像が把握できます。

取得費の証明に使えるか

旧土地台帳に記載された取得年月日や所有者情報は、譲渡所得税の計算における取得費の証明に使える可能性があります。

ただし、旧土地台帳には取得価格(購入価格)が記載されていないため、以下の方法で取得費を推定する必要があります。

  1. 路線価や公示地価から推定

    • 取得年の路線価や公示地価を調査
    • 当時の価格水準を基に取得費を推定
  2. 相続税評価額から推定

    • 相続した土地の場合、相続税申告書に記載された評価額を参考にする
  3. 専門家に依頼

    • 不動産鑑定士に当時の取引価格を推定してもらう

推定した取得費を使用する場合は、国税庁の規定に従い、合理的な根拠を示す必要があります。税理士に相談することをおすすめします。

旧土地台帳活用の注意点

データが存在しない場合もある

旧土地台帳はすべての土地について保存されているわけではありません。以下のような理由でデータが存在しない場合があります。

  • 戦災や災害により台帳が焼失・滅失した
  • そもそも旧土地台帳に記載されていなかった(未記録)
  • 保存期間が経過し、廃棄された

法務局に申請しても「該当データなし」と回答される場合は、他の方法で取得費を証明する必要があります。例えば:

  • 固定資産税の課税台帳を自治体で閲覧
  • 相続税申告書(被相続人が申告していた場合)
  • 古い売買契約書や領収書を親族・金融機関に照会

専門家への相談が推奨される場合

旧土地台帳の解読や取得費の推定は専門的な知識が必要なため、以下のような場合は専門家に相談することをおすすめします。

  • 旧土地台帳の記載が不鮮明で読み取れない
  • 分筆・合筆の履歴が複雑で、現在の土地との対応が分からない
  • 取得費の推定方法が分からない
  • 譲渡所得税の計算を確実に行いたい

相談先:

  • 司法書士: 登記関係の専門家、旧土地台帳の解読に強い
  • 土地家屋調査士: 境界・地積の専門家、分筆・合筆の履歴調査に強い
  • 税理士: 譲渡所得税の計算、取得費の推定方法を助言
  • 不動産鑑定士: 過去の取引価格を鑑定

費用は専門家により異なりますが、司法書士・税理士への相談は5万円〜15万円程度が目安です。概算取得費(売却額の5%)を使うと数百万円の税負担増になる場合もあるため、専門家への依頼はコストパフォーマンスが高いと言えます。

概算取得費との比較

旧土地台帳から取得費を推定できた場合と、概算取得費(売却額の5%)を使った場合の税負担の差を比較してみましょう。

ケース1: 旧土地台帳から取得費を推定できた場合

  • 売却価格: 3,000万円
  • 推定取得費: 1,500万円(旧土地台帳から昭和40年取得と判明、当時の公示地価から推定)
  • 譲渡費用: 100万円
  • 譲渡所得: 1,400万円
  • 税額(長期譲渡20.315%): 約284万円

ケース2: 概算取得費を使った場合

  • 売却価格: 3,000万円
  • 概算取得費: 150万円(3,000万円 × 5%)
  • 譲渡費用: 100万円
  • 譲渡所得: 2,750万円
  • 税額(長期譲渡20.315%): 約559万円

税額の差: 約275万円

旧土地台帳を活用することで、275万円もの税負担を軽減できる可能性があります。手数料450円と専門家費用10万円程度で、275万円の節税効果が得られるなら、十分に元が取れる投資と言えます。

まとめ:相続した土地の取得費を調べるなら旧土地台帳を活用しよう

旧土地台帳は、1960年まで使用されていた土地の公簿で、現在は法務局に閉鎖台帳として保存されています。相続した土地の取得費が不明な場合、旧土地台帳から過去の所有者や取得時期を調査することで、概算取得費(売却額の5%)ではなく実際の取得費を証明し、譲渡所得税を大幅に削減できる可能性があります。

取得方法は法務局窓口またはオンライン請求で、手数料は450円(窓口)または365円(オンライン)と非常に安価です。旧土地台帳に記載された情報を基に、路線価や公示地価から取得費を推定することで、数百万円の節税効果が期待できます。

旧土地台帳の解読や取得費の推定には専門的な知識が必要なため、司法書士や税理士に相談することをおすすめします。費用は5万円〜15万円程度ですが、概算取得費を使った場合の税負担増(数百万円)と比べれば、十分に元が取れる投資です。

相続した土地を売却する際は、まず旧土地台帳の取得から始めてみましょう。

よくある質問

Q1旧土地台帳はどこで取得できますか?

A1土地が所在する地域を管轄する法務局で取得できます。窓口での申請の他、登記・供託オンライン申請システムを利用したオンライン請求も可能です。手数料は窓口450円、オンライン365円です。管轄法務局は法務局ホームページで検索できます。申請には本人確認書類が必要ですが、相続人であることを証明する必要はなく、誰でも申請できます。

Q2旧土地台帳に取得価格は記載されていますか?

A2記載されていません。旧土地台帳には地番、地目、地積、所有者、取得年月日等が記載されていますが、取得価格(購入価格)は含まれていません。取得費を証明するには、取得年月日を基に当時の路線価や公示地価を調査し、取得費を推定する必要があります。専門家(税理士、不動産鑑定士)に依頼することで、合理的な根拠に基づく取得費の推定が可能です。

Q3旧土地台帳が見つからない場合はどうすればいいですか?

A3戦災や災害により台帳が焼失・滅失した場合や、そもそも記載されていなかった場合、データが存在しないことがあります。この場合、他の方法で取得費を証明する必要があります。固定資産税の課税台帳を自治体で閲覧、相続税申告書(被相続人が申告していた場合)の確認、古い売買契約書や領収書を親族・金融機関に照会するなどの方法があります。それでも見つからない場合は、概算取得費(売却額の5%)を使用します。

Q4旧土地台帳を使って取得費を証明できますか?

A4可能性があります。旧土地台帳に記載された取得年月日を基に、当時の路線価や公示地価を調査し、取得費を推定することで、国税庁の規定に従って取得費として認められる場合があります。ただし、合理的な根拠を示す必要があるため、税理士に相談することをおすすめします。概算取得費(売却額の5%)と比べて数百万円の節税効果が期待できるため、専門家への依頼費用(5万円〜15万円程度)は十分に元が取れます。

Q5旧土地台帳の解読は自分でできますか?

A5旧土地台帳は手書きで記載されている場合が多く、古いものでは筆跡が不鮮明で読み取りが困難なこともあります。また、分筆・合筆の履歴が複雑な場合、現在の土地との対応関係を把握するのは専門的な知識が必要です。自分で解読が難しい場合は、司法書士や土地家屋調査士に相談することをおすすめします。費用は5万円〜15万円程度が目安です。