マンションの耐用年数とは?3つの視点で理解する
中古マンション購入を検討する際、「築30年のマンションは大丈夫か」「耐用年数47年を過ぎたらどうなるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、マンションの耐用年数を法定・物理的・経済的の3つの視点で整理し、国税庁・国土交通省の公式情報を元に解説します。
耐用年数の正しい意味を理解することで、中古マンション購入時の判断基準が明確になります。
この記事のポイント
- マンションの耐用年数は3種類: ①法定耐用年数(RC造47年、税務上の数字)、②物理的耐用年数(構造的寿命、適切な管理で60-100年以上)、③経済的耐用年数(資産価値が維持される期間、40-50年程度)
- 法定耐用年数47年は国税庁が定める会計上の数字であり、実際の寿命ではない
- マンションの寿命は管理状態で大きく変わる。大規模修繕の実施状況、修繕積立金の充足率、管理組合の運営状態が重要
- 2022年税制改正で住宅ローン控除の築年数要件が撤廃され、1982年以降の新耐震基準マンションなら控除対象
- 築古マンションのメリット(価格安い、立地良い)とデメリット(修繕費増加、ローン控除対象外リスク)を理解した上で判断すべき
法定耐用年数と実際の寿命は違う
マンションの耐用年数には、法定・物理的・経済的の3つがあります。
法定耐用年数(税務上の数字、RC造47年)
国税庁によると、鉄筋コンクリート造(RC造)住宅用建物の法定耐用年数は47年です。これは税務上の減価償却期間であり、実際の寿命ではありません。
重要: 法定耐用年数は会計上の数字であり、「47年で住めなくなる」という意味ではありません。
物理的耐用年数(構造的寿命、適切な管理で60-100年以上)
国土交通省の研究によると、RC造住宅の平均寿命は68年、物理的寿命は117年と推定されています。適切な管理(大規模修繕の実施、修繕積立金の確保)で寿命は延びます。
経済的耐用年数(資産価値が維持される期間)
経済的耐用年数は、資産価値が維持される期間を指し、40-50年程度とされています。立地・管理状態・市場動向により変動します。
| 種類 | 期間 | 意味 | 
|---|---|---|
| 法定耐用年数 | RC造47年 | 税務上の減価償却期間 | 
| 物理的耐用年数 | 117年(推定) | 建物が物理的に利用可能な期間 | 
| 経済的耐用年数 | 40-50年程度 | 資産価値が維持される期間 | 
マンションの寿命は管理状態で大きく変わる
法定耐用年数47年は税務上の数字であり、実際には適切な管理で60年以上住み続けられるマンションも多くあります。マンション管理組合のミカタによると、マンションの寿命は以下の3つの要因で大きく変わります。
大規模修繕の実施状況(12-15年周期)
大規模修繕とは、マンション全体の外壁・屋上・配管等を修繕する工事です。12-15年周期で実施することで、建物の劣化を防ぎ、寿命を延ばすことができます。
購入前に以下を確認してください。
- 過去の大規模修繕の実施履歴(1回目、2回目の実施年度)
- 次回の大規模修繕計画の有無
- 長期修繕計画の策定状況
修繕積立金の充足率
修繕積立金は、大規模修繕に備えて毎月積み立てる費用です。不足すると以下のリスクがあります。
- 大規模修繕ができず、建物の劣化が進む
- 一時金徴収(数十万〜百万円以上)が発生
- 管理組合内でトラブルが発生
購入前に、修繕積立金の残高と長期修繕計画のバランスを確認してください。
管理組合の運営状態
管理組合がしっかり機能しているマンションは、長期修繕計画が策定され、定期的な総会で修繕方針が議論されています。管理組合が機能していないマンションは、修繕が後回しになり、建物の劣化が進みやすくなります。
中古マンション購入時の注意点:築年数と住宅ローン控除
中古マンション購入時は、築年数だけでなく、住宅ローン控除の適用要件も確認する必要があります。
2022年税制改正で築年数要件撤廃
ファミリーライフサービスによると、2022年税制改正で住宅ローン控除の築年数要件(耐火建築物25年以内)は撤廃されました。
現行制度: 1982年以降の新耐震基準マンションであれば、築年数に関わらず控除対象となります。
新耐震基準(1981年6月以降)が重要
新耐震基準は、1981年6月以降の建築基準法改正で導入された耐震基準です。震度6強-7の地震で倒壊しない設計が求められます。
旧耐震基準(1981年5月以前)のマンション:
- 耐震基準適合証明があれば住宅ローン控除対象
- 証明がない場合は控除対象外
- 資産価値・ローン審査で不利
購入前に、新耐震基準か旧耐震基準かを必ず確認してください。
住宅ローンの審査基準
法定耐用年数を過ぎたマンションは、住宅ローンが組みにくく、借入期間が短縮される場合があります。金融機関は「耐用年数 - 築年数」を目安に審査します。
例: 築30年のマンション(RC造、法定耐用年数47年)の場合、借入期間は最大17年程度に短縮される可能性があります。
築古マンションのメリットとデメリット
築古マンションには、価格面でのメリットがある一方、修繕費やローン控除の面でデメリットもあります。
メリット(価格安い、立地良い)
- 価格が安い: 新築の6-7割程度で購入可能
- 立地が良い: 駅近・都心部等の好立地物件が多い
- 実物を確認できる: 管理状態、住民層、周辺環境を事前に確認可能
デメリット(修繕費増加、ローン控除対象外リスク)
- 設備の老朽化: 給排水・電気設備の法定耐用年数(15年)を過ぎると、大規模修繕費が高額化
- 旧耐震基準の場合: 住宅ローン控除対象外(耐震基準適合証明がない場合)
- 住宅ローンの借入期間短縮: 法定耐用年数を過ぎると、借入期間が短くなる可能性
購入前に、管理状態と修繕履歴を確認し、総合的に判断することが重要です。
まとめ:耐用年数は参考値、管理状態を重視しよう
マンションの耐用年数は、法定耐用年数(RC造47年)が税務上の数字であり、実際の寿命は管理状態で60年以上住めるケースも多くあります。
中古マンション購入時は、築年数だけでなく、以下を確認してください。
- 大規模修繕の実施履歴: 12-15年周期で実施されているか
- 修繕積立金の状況: 不足していないか、一時金徴収のリスクはないか
- 新耐震基準か否か: 1981年6月以降の建築か(1982年以降なら住宅ローン控除対象)
住宅ローン控除は2022年改正で築年数要件が撤廃され、1982年以降なら対象となります。管理状態が良ければ築古でも長く住めるため、管理状態を重視して判断しましょう。
