土地の評価額の調べ方|路線価・固定資産税評価額・実勢価格の違い

公開日: 2025/10/27

土地の評価額とは?用途別の4種類を理解しよう

土地の売却・購入・相続を検討する際、「評価額がどれくらいか分からない」「路線価と固定資産税評価額の違いが分からない」と困る方は少なくありません。

この記事では、土地の評価額の種類(路線価、固定資産税評価額、公示地価、実勢価格)と調べ方、用途別の使い分けを国税庁国土交通省の公式情報を元に解説します。

用途に応じた正しい評価額を調べ、土地の適正価格を把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 土地の評価額には用途別に4種類(路線価、固定資産税評価額、公示地価、実勢価格)があり、水準が異なる
  • 路線価は相続税・贈与税の計算に使用し、公示地価の約80%の水準、国税庁サイトで毎年7月公表
  • 固定資産税評価額は固定資産税・不動産取得税の計算に使用し、公示地価の約70%の水準、3年ごと評価替え
  • 公示地価は国土交通省が毎年3月公表し、実勢価格の目安となる
  • 売却時は実勢価格(査定)、相続税計算は路線価、固定資産税計算は固定資産税評価額を使用

相続税評価額の調べ方

路線価方式と倍率方式

相続税・贈与税の土地評価には、路線価方式倍率方式の2つの方法があります。

路線価方式:

路線価が定められた地域(主に市街地)で、道路に面する土地を「路線価×補正率×面積」で評価する方法です。

倍率方式:

路線価が定められていない地域(主に郊外・農村部)で、固定資産税評価額に一定倍率を乗じて相続税評価額を計算する方法です。

(出典: 国税庁

路線価方式は都市部、倍率方式は郊外・農村部で使用されるのが一般的です。

財産評価基準書の使い方

相続税路線価は、国税庁の財産評価基準書で調べられます。過去8年分のデータを参照可能です。

検索手順:

  1. 国税庁「財産評価基準書」にアクセス
  2. 対象年度・都道府県・市区町村を選択
  3. 路線価図または評価倍率表を選択
  4. 路線価図の場合:対象地の道路を確認し、路線価(千円/㎡単位)を読み取る
  5. 評価倍率表の場合:固定資産税評価額×倍率で相続税評価額を計算

路線価は毎年7月に公表され、前年1月1日時点の価格が基準となります。公示地価の約80%の水準で設定されています。

固定資産税評価額の調べ方

固定資産税納税通知書で確認

固定資産税評価額は、毎年4-6月に送付される固定資産税納税通知書で確認できます。

記載場所:

  • 「価格」または「評価額」の欄に記載
  • 土地・建物それぞれの評価額が記載される

固定資産税評価額は公示地価の約70%水準で、3年に1度評価替えが行われます(直近は2024年、次回は2027年)。

市区町村窓口での閲覧

固定資産税納税通知書を紛失した場合や、他人の土地の評価額を確認したい場合は、市区町村の固定資産税課窓口で台帳閲覧を依頼できます。

閲覧可能な期間:

  • 縦覧期間(4-5月): 他人の土地の評価額も閲覧可能(自分の土地との比較のため)
  • 通年: 自分の土地の評価額は年中閲覧可能

閲覧には本人確認書類(運転免許証等)が必要です。

公示地価・基準地価の調べ方

標準地・基準地検索システム

公示地価・基準地価は、国土交通省の不動産情報ライブラリで検索できます。

検索手順:

  1. 不動産情報ライブラリにアクセス
  2. 「地価公示・都道府県地価調査」を選択
  3. 住所または地図から標準地・基準地を検索
  4. 1㎡あたりの価格、前年比変動率、用途地域等を確認

公示地価は国土交通省が毎年3月に公表し、1月1日時点の標準地(全国約26,000地点)の1㎡あたりの正常な価格を示します。基準地価は都道府県が毎年9月に公表し、7月1日時点の基準地(全国約21,000地点)の価格を示します。

4つの評価制度の比較

国土交通省によると、4つの公的土地評価制度の違いは以下の通りです。

評価制度 公表機関 評価時点 公表時期 水準 用途
公示地価 国土交通省 1月1日 3月 100%(基準) 適正取引の指標
基準地価 都道府県 7月1日 9月 100%(公示地価と同等) 公示地価の補完
路線価 国税庁 前年1月1日 7月 公示地価の約80% 相続税・贈与税
固定資産税評価額 市区町村 3年ごと 4月 公示地価の約70% 固定資産税・不動産取得税

(出典: 国土交通省

実勢価格との関係

評価額から売却価格を推定

実勢価格(実際の取引価格)は、公示地価の約90-100%の水準が目安とされますが、需給バランスで変動します。

推定方法:

  1. 公示地価を確認(国土交通省の不動産情報ライブラリ)
  2. 路線価を確認(国税庁の財産評価基準書)
  3. 路線価÷0.8で公示地価の目安を算出
  4. 公示地価×0.9~1.1で実勢価格の目安を推定

計算例:

  • 路線価: 20万円/㎡
  • 公示地価の目安: 20万円÷0.8 = 25万円/㎡
  • 実勢価格の目安: 25万円×0.9~1.1 = 22.5~27.5万円/㎡

ただし、この計算はあくまで目安であり、土地の個別性(形状、接道状況、用途地域)により実勢価格は大きく異なります。

複数の評価額を一括確認

全国地価マップでは、相続税路線価・固定資産税路線価・公示地価・基準地価の4種類を1つの地図で視覚的に比較できます。

活用方法:

  1. 全国地価マップにアクセス
  2. 住所または地図から対象地を検索
  3. 4種類の評価額を同時に確認
  4. 各評価額の水準を比較

複数の評価額を同時に確認することで、土地の価格相場を多角的に把握できます。

用途別の評価額の使い分け

相続税・贈与税の計算

相続税・贈与税の計算には、路線価を使用します。

計算方法:

  • 路線価方式: 路線価×補正率×面積
  • 倍率方式: 固定資産税評価額×倍率

路線価は公示地価の約80%の水準で、相続税評価額は実勢価格より低めに算定されます。これは、相続税の納税負担を軽減する配慮です。

固定資産税・不動産取得税の計算

固定資産税・都市計画税・不動産取得税の計算には、固定資産税評価額を使用します。

計算方法:

  • 固定資産税: 固定資産税評価額×1.4%(標準税率)
  • 都市計画税: 固定資産税評価額×0.3%(上限税率)
  • 不動産取得税: 固定資産税評価額×3%(住宅の場合)

固定資産税評価額は公示地価の約70%の水準で、3年に1度評価替えが行われます。

売却価格の査定

売却価格の査定には、実勢価格を参考にします。実勢価格は、以下の方法で調べられます。

  1. 国土交通省の不動産情報ライブラリで過去の取引事例を検索
  2. 不動産会社に査定を依頼
  3. 複数社の査定額を比較

公示地価・路線価はあくまで目安であり、売却時は不動産業者の査定が必須です。

評価額を調べる際の注意点

評価額=売却価格ではない

「評価額=売却価格」という誤解は禁物です。路線価は公示地価の約80%、固定資産税評価額は約70%であり、実勢価格とは大きく異なります。

水準の違い:

評価額 公示地価との比率 実勢価格との比率
公示地価 100% 90-100%
路線価 約80% 約72-80%
固定資産税評価額 約70% 約63-70%

売却価格を知りたい場合は、実勢価格(不動産業者の査定)を確認する必要があります。

路線価と固定資産税評価額の混同

相続税路線価(国税庁、公示地価の80%)と固定資産税路線価(市区町村、公示地価の70%)は別物です。用途と水準が異なるため、混同しないよう注意が必要です。

古いデータのタイムラグ

公的評価額は評価時点から時間が経過しているため、実勢価格とのタイムラグがあります。

評価額 評価時点 公表時期 タイムラグ
公示地価 1月1日 3月 2ヶ月
路線価 前年1月1日 7月 18ヶ月
固定資産税評価額 3年ごと 4月 最大3年

地価が急激に変動している時期は、タイムラグにより公的指標が実勢価格と大きく乖離する可能性があります。最新の相場は不動産業者に確認することをおすすめします。

まとめ:用途に応じた評価額を正しく使い分けよう

土地の評価額には用途別に4種類(路線価、固定資産税評価額、公示地価、実勢価格)があり、水準が異なります。相続税計算は路線価(公示地価の約80%)、固定資産税計算は固定資産税評価額(公示地価の約70%)、売却時は実勢価格(不動産業者の査定)を使用します。

評価額はあくまで目安であり、土地の個別性(形状・接道・用途地域)により実勢価格は大きく異なります。公的指標で相場感を掴んだ上で、専門家のアドバイスを受けながら、適正価格を把握することが重要です。

複数の評価額を組み合わせて判断し、納得のいく価格で取引を進めましょう。

よくある質問

Q1路線価から売却価格を推定できる?

A1目安程度です。路線価は公示地価の約80%、実勢価格は公示地価の約90-100%なので、路線価÷0.8×0.9~1.1で推定できます。ただし、土地の個別性(形状・接道・用途地域)により実勢価格は大きく変動するため、売却時は不動産業者の査定が必須です。路線価はあくまで相続税計算用であり、売却価格の査定には向きません。

Q2固定資産税評価額と路線価の違いは?

A2用途と水準が異なります。固定資産税評価額は固定資産税・不動産取得税の計算に使用され、公示地価の約70%水準です。路線価は相続税・贈与税の計算に使用され、公示地価の約80%水準です。両者は別の評価制度であり、混同しないよう注意が必要です。固定資産税評価額は市区町村、路線価は国税庁が公表します。

Q3固定資産税評価額はどこで確認できる?

A3①固定資産税納税通知書(毎年4-6月に送付)、②市区町村の固定資産税課窓口、③固定資産税台帳の閲覧(縦覧期間:4-5月)で確認可能です。固定資産税評価額は公示地価の約70%水準で、3年に1度評価替えが行われます。最新の市況を反映していない場合があるため、実勢価格とは大きく異なる可能性があります。

Q4評価額=売却価格ではない?

A4その通りです。路線価は公示地価の約80%、固定資産税評価額は約70%であり、実勢価格(売却価格)とは大きく異なります。実勢価格は公示地価の約90-100%が目安ですが、需給バランス・立地・形状で変動します。売却価格を知りたい場合は、国土交通省の不動産情報ライブラリで過去の取引事例を確認するか、不動産業者に査定を依頼する必要があります。

Q5路線価は毎年更新されますか?

A5はい、路線価は毎年7月に公表されます。ただし、評価時点は前年1月1日なので、公表時点で既に18ヶ月のタイムラグがあります。固定資産税評価額は3年に1度評価替えが行われるため、路線価の方が更新頻度は高いです。地価が急激に変動している時期は、タイムラグにより路線価が実勢価格と大きく乖離する可能性があります。