路線価から土地価格を計算する方法│実勢価格との換算式を解説

公開日: 2025/10/30

路線価とは?相続税計算用の土地評価額を知る基礎知識

相続や売買で土地の価格を知りたいとき、「路線価」という言葉を耳にすることがあります。しかし、路線価がどのような指標で、実際の売買価格とどう違うのか分からない方は少なくありません。

この記事では、路線価の基本、調べ方、計算方法、そして実勢価格との換算式を、国税庁の公式情報を元に解説します。

相続税の計算や売買価格の目安を知るための実用的な知識を、初めての方でも理解できるように提示します。

この記事のポイント

  • 路線価は国税庁が公表する相続税・贈与税の計算用の土地評価額であり、実際の売買価格ではない
  • 路線価は公示地価の約80%が目安で、毎年7月1日に公表(1月1日時点の評価)
  • 国税庁の財産評価基準書サイトで全国約32万地点の路線価を検索可能
  • 路線価から実勢価格を推計する換算式は「路線価÷0.8×1.1~1.2」
  • 補正率の計算は複雑なため、正確な価格が必要な場合は専門家に相談

路線価の3つの特徴

1. 相続税・贈与税の計算用であり売買価格ではない

路線価は、相続税や贈与税を計算するための評価額です。実際に売買される価格(実勢価格)とは異なります。売買価格は売主・買主の合意で決まり、路線価より高い場合も安い場合もあります。

2. 公示地価の約80%が目安

路線価は、国土交通省が公表する公示地価(1月1日時点の正常価格)の約80%に設定されています。これは、相続税の納税者に配慮した水準です。

3. 毎年7月1日に公表(1月1日時点の評価)

国税庁が毎年7月1日に公表し、1月1日時点の評価額を反映します。2025年の路線価は前年比+2.7%で4年連続上昇しています。

(出典: 国税庁)

路線価の調べ方:国税庁「財産評価基準書」の使い方

路線価は、国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」サイトで調べられます。

調べる手順

  1. 財産評価基準書にアクセス
  2. 都道府県を選択
  3. 市区町村を選択
  4. 路線価図を表示

路線価図の見方

  • 数字: 千円単位/㎡(例:「300」は30万円/㎡)
  • アルファベット記号(A~G): 借地権割合を示す
    • A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%
  • 地区区分: ビル街地区、普通住宅地区等7種類

借地権割合は借地権評価に使用しますが、自用地(自分で所有する土地)の評価では考慮不要です。

(出典: 国税庁)

路線価から土地価格を計算する基本計算式

路線価方式の計算式

土地評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 面積

計算例

  • 路線価: 300(30万円/㎡)
  • 奥行価格補正率: 1.0(補正なし)
  • 面積: 100㎡

計算:

30万円/㎡ × 1.0 × 100㎡ = 3,000万円

この3,000万円は相続税評価額であり、実際の売買価格ではありません。

注意: 路線価図の数字は千円単位のため、1000倍する必要があります(例:「300」→30万円/㎡)。

(出典: 国税庁)

路線価から実勢価格を推計する換算式

路線価から実勢価格の目安を推計する方法を解説します。

換算式

ステップ1: 路線価から公示価格相当額を算出

公示価格相当額 = 路線価 ÷ 0.8

ステップ2: 公示価格から実勢価格の目安を算出

実勢価格の目安 = 公示価格相当額 × 1.1 ~ 1.2

計算例

  • 路線価: 30万円/㎡
  • 面積: 100㎡

ステップ1: 公示価格相当額

30万円/㎡ ÷ 0.8 = 37.5万円/㎡

ステップ2: 実勢価格の目安

37.5万円/㎡ × 1.1 ~ 1.2 = 41万円/㎡ ~ 45万円/㎡

土地全体の実勢価格の目安:

41万円/㎡ × 100㎡ = 4,100万円
45万円/㎡ × 100㎡ = 4,500万円

注意点

  • この金額はあくまで推計値であり、確実な価格ではありません
  • 都心と地方で公示価格と実勢価格の乖離率が異なります
  • 正確な価格が必要な場合は、不動産鑑定士に依頼しましょう

(出典: ホームセレクト)

路線価の補正率とは:奥行価格補正率など

路線価の補正率には、以下のような種類があります。

主な補正率

  • 奥行価格補正率: 奥行が短すぎる・長すぎる土地は利用価値が低いため評価額を減額
  • 側方路線影響加算: 角地など2つの道路に面する土地の評価額を加算
  • 二方路線影響加算: 正面と裏面に道路がある土地の評価額を加算

地区区分

補正率は地区区分により異なります。

  • ビル街地区
  • 高度商業地区
  • 繁華街地区
  • 普通商業・併用住宅地区
  • 普通住宅地区
  • 中小工場地区
  • 大工場地区

専門家への相談を推奨

補正率の計算は複雑で、誤った計算をすると相続税が過大または過小になる可能性があります。詳細は税理士または不動産鑑定士に相談することを推奨します。

(出典: レガシィ)

まとめ:路線価は目安、正確な価格は専門家に相談

路線価は、相続税・贈与税の計算用の土地評価額であり、実際の売買価格ではありません。国税庁の財産評価基準書サイトで調べられ、路線価÷0.8×1.1~1.2で実勢価格の目安を推計できます。

ただし、この金額は推計値であり確実な価格ではありません。補正率の計算も複雑で、奥行価格補正率、側方路線影響加算等を適用する必要があります。

正確な価格が必要な場合は、不動産鑑定士に鑑定を依頼するか、税理士に相続税評価の計算を依頼することを推奨します。

よくある質問

Q1路線価で土地を売買できますか?

A1できません。路線価は相続税・贈与税の計算用の評価額であり、実際の売買価格ではありません。売買価格は売主・買主の合意で決まり、路線価より高い場合も安い場合もあります。

Q2路線価が載っていない土地はどうすればいいですか?

A2倍率方式を使います。路線価が定められていない地域(地方部)では、固定資産税評価額に一定倍率を乗じて土地評価額を算出します。倍率は国税庁の「評価倍率表」で確認可能です。

Q3路線価は毎年いつ公表されますか?

A3毎年7月1日に国税庁が公表します。1月1日時点の評価額を反映します。相続税・贈与税の計算は、相続・贈与が発生した年の路線価を使用します。

Q4借地権割合のアルファベット記号は何ですか?

A4路線価図のアルファベット記号(A~G)は借地権割合を示します。A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%。借地権評価に使用しますが、自用地(自分で所有する土地)の評価では考慮不要です。