土地売買とは?基本的な流れと全体像
土地の売買を検討する際、「どんな手続きが必要なのか」「どれくらい時間がかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、土地売買の流れを売主・買主それぞれの視点で解説し、必要書類・費用・注意点を、国土交通省等の公式情報を元に詳しく説明します。
土地売買とは、売主・買主双方が契約を結び、代金と引き換えに所有権を移転する取引です。一般的に不動産会社の仲介を通じて行われ、査定→媒介契約→販売活動→契約→決済・引渡しの流れが標準的です。期間は3-6ヶ月程度かかります。個人間売買も可能ですが、重要事項説明書・契約書作成不備等のリスクが高いため、専門家の活用が推奨されます。
この記事のポイント
- 土地売買は査定→媒介契約→販売活動→契約→決済・引渡し→確定申告の流れで進む
- 境界確定測量は法的には必須ではないが、実務上ほぼ必須(費用80-100万円、期間1-3ヶ月)
- 仲介手数料は売買代金×3%+6万円+消費税が法定上限
- 一定面積以上の土地取引(市街化区域2000㎡以上等)は国土利用計画法で届出義務あり
- 個人間売買は仲介手数料を節約できるが、重要事項説明書・契約書不備等のリスクが高い
土地売買の流れ(売主側の手順)
売主側の流れを時系列で5ステップに整理します。
ステップ1: 査定・相場確認と媒介契約
土地売却を決めたら、まず相場を確認します。
相場確認方法:
- 国土交通省の土地総合情報システムで実際の取引価格(547万件)を検索
- 複数の不動産会社に査定依頼(最低3社以上推奨)
査定後、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には3種類あります。
| 媒介契約の種類 | 複数社との契約 | 自己発見取引 | 報告義務 | 
|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 不可 | 不可 | 1週間に1回以上 | 
| 専任媒介 | 不可 | 可 | 2週間に1回以上 | 
| 一般媒介 | 可 | 可 | なし | 
専属専任・専任媒介は1社に絞るため、不動産会社が積極的に販売活動を行う傾向があります。一般媒介は複数社に依頼できますが、不動産会社の優先度が下がる場合があります。
ステップ2: 販売活動と買主との交渉
不動産会社が以下の販売活動を実施します。
- 不動産ポータルサイトへの掲載
- チラシ配布
- 購入希望者の案内・現地確認
買主が見つかったら、価格交渉を行います。販売活動期間は1-3ヶ月程度が一般的ですが、立地や市況により変動します。
ステップ3: 売買契約の締結
買主と条件が合意できたら、売買契約を締結します。
契約時の主要事項:
- 手付金の受領(売買代金の10%程度)
- 重要事項説明(宅地建物取引士が実施)
- 契約書調印(売主・買主双方が署名・押印)
- 印紙税の納付(売買代金に応じ1万-6万円)
契約時には、契約不適合責任の期間(引渡しから2-3ヶ月が一般的)を明記します。土壌汚染・地中埋設物・権利関係の不備があった場合、売主が責任を負う期間です。
ステップ4: 決済・引渡しと所有権移転登記
契約から1-2ヶ月後、決済・引渡しを行います。
決済時の流れ:
- 残代金の受領(売買代金 - 手付金)
- 固定資産税・都市計画税の精算
- 所有権移転登記(司法書士が実施)
- 鍵・関係書類の引渡し
住宅ローンが残っている場合は、売却代金でローン残債を完済し、金融機関から抵当権を抹消してもらう必要があります。
ステップ5: 確定申告(譲渡所得税)
土地を売却した翌年の2-3月に、確定申告が必要です。
譲渡所得税の計算式:
- 譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
- 所有期間5年超: 長期譲渡所得(税率20.315%)
- 所有期間5年以下: 短期譲渡所得(税率39.63%)
居住用財産(建物と土地)を譲渡した場合に適用される3000万円特別控除等の特例がありますが、土地のみの売却では適用されないケースがあります。税理士に相談することをおすすめします。
土地売買にかかる費用と必要書類
土地売買には、売主・買主それぞれに費用と必要書類があります。
売主が負担する費用一覧(仲介手数料・測量費・税金)
HOME'Sによると、売主が負担する主な費用は以下の通りです。
| 費用項目 | 金額目安 | 内容 | 
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売買代金×3%+6万円+消費税 | 不動産会社への報酬 | 
| 確定測量費 | 80-100万円(土地の形状や地域により異なります) | 隣地所有者立会い・境界確認書取得 | 
| 印紙税 | 1万-6万円 | 売買契約書に貼付 | 
| 抵当権抹消登記 | 2-3万円 | ローン完済時 | 
| 譲渡所得税 | 利益×20.315%または39.63% | 確定申告で納付 | 
例:売買代金3000万円の場合、仲介手数料は105.6万円(3000万円×3%+6万円=96万円+消費税9.6万円)になります。
買主が負担する費用一覧(仲介手数料・登記費用・税金)
買主が負担する主な費用は以下の通りです。
| 費用項目 | 金額目安 | 内容 | 
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売買代金×3%+6万円+消費税 | 不動産会社への報酬 | 
| 所有権移転登記 | 固定資産税評価額×2.0% | 登録免許税+司法書士報酬 | 
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額×3-4% | 取得後6ヶ月-1年後に納付 | 
| 印紙税 | 1万-6万円 | 売買契約書に貼付 | 
売主が準備すべき書類(権利証・測量図・固定資産税評価証明等)
HOME4Uによると、売主が準備すべき書類は以下の通りです。
査定時:
- 登記済権利証または登記識別情報通知書
- 固定資産税納税通知書
- 測量図(確定測量図が理想)
契約時:
- 印鑑証明(3ヶ月以内)
- 固定資産税評価証明
- 境界確認書
決済時:
- 実印
- 本人確認書類(運転免許証等)
境界確定測量図は、隣地所有者立会いのもと土地家屋調査士が境界を測量し、境界確認書を取得した測量図です。作成費80-100万円(土地の形状や地域により異なります)、期間1-3ヶ月(一般的な測量会社の見積もりによる)かかります。
土地売買で特に注意すべき3つのポイント
土地売買では、以下の3点に特に注意が必要です。
境界確定測量の重要性(隣地所有者立会い必須)
境界確定測量は法的には必須ではありませんが、実務上ほぼ必須です。
境界未確定のリスク:
- 引渡し後に隣地所有者との紛争になる
- 測量・確定費用(80-100万円、土地の形状や地域により異なります)を買主が負担するケースも
- 売買契約が成立しない場合がある
おうちクラベルによると、境界未確定のまま売買を進めるとトラブルになるケースが多いとされています。売主側で境界確定測量(隣地所有者立会い・承諾)を完了してから売却するのが一般的です。
契約不適合責任の期間制限(土壌汚染・地中埋設物)
契約不適合責任とは、2020年民法改正で導入された制度(旧瑕疵担保責任)です。売主は契約内容に適合しない場合に責任を負います。
責任を負うケース:
- 土壌汚染
- 地中埋設物(コンクリートガラ等)
- 権利関係の不備
期間は引渡しから2-3ヶ月が一般的ですが、契約書で明示する必要があります。故意に隠蔽した場合は免責されません。
建築制限・用途地域の調査(都市計画法・建築基準法)
買主は、希望する建物が建築可能か確認が必須です。
確認すべき事項:
- 用途地域(住居地域・商業地域等)
- 建ぺい率・容積率
- 接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接道)
市街化調整区域は原則建築不可、再建築不可物件もあります。不動産会社が重要事項説明書で説明しますが、買主自身でも市区町村の都市計画課で確認することをおすすめします。
個人間売買のリスクと不動産会社仲介の必要性
個人間売買は仲介手数料を節約できますが、リスクが高い点に注意が必要です。
個人売買の3つのリスク
HOME4Uによると、個人間売買には以下のリスクがあります。
1. 重要事項説明書・契約書作成不備:
- 契約不適合責任の期間が未記載
- 特約事項が不十分
- 引渡し後のトラブル対応が困難
2. 相場判断誤り:
- 適正価格が分からず、不適正価格で取引
- 売主が損をする、または買主が高値で購入
3. 境界確定・測量省略:
- 境界未確定のまま引渡し
- 引渡し後に隣地所有者との紛争
仲介手数料を節約するメリットvsリスク
仲介手数料(売買代金×3%+6万円+消費税)を節約できるメリットはありますが、以下のリスクが大きい点に注意が必要です。
- 契約不適合責任の期間制限未明示
- 契約書の法的不備
- 引渡し後のトラブル対応費用(司法書士・弁護士費用)が結局かかるケースも
不動産会社仲介を推奨します。司法書士・不動産会社への相談も有効です。
一定面積以上の土地取引は届出義務あり
国土交通省の土地取引規制制度によると、一定面積以上の土地取引は国土利用計画法第23条(事後届出)で届出義務があります。
届出が必要な面積:
- 市街化区域: 2,000㎡以上
- 市街化調整区域(都市計画区域の非市街化区域): 5,000㎡以上
- 都市計画区域外: 10,000㎡以上
契約締結後2週間以内に市区町村長に届出が必要です。違反時は罰則(国土利用計画法第47条、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金)があります。不動産会社仲介の場合、不動産会社が手続きをサポートします。
まとめ:土地売買は専門家を活用して安全に進めよう
土地売買の流れは、査定→媒介契約→販売活動→契約→決済・引渡し→確定申告の順で進みます。期間は3-6ヶ月程度が一般的です。売主・買主それぞれに費用(仲介手数料・測量費・登記費用・税金等)がかかり、必要書類(権利証・印鑑証明・測量図)も準備が必要です。
特に注意すべき3つのポイントは、境界確定測量(隣地所有者立会い必須、費用80-100万円)、契約不適合責任の期間制限(引渡しから2-3ヶ月)、建築制限・用途地域の調査です。個人間売買は仲介手数料を節約できますが、重要事項説明書・契約書不備、相場判断誤り、境界確定省略等のリスクが高いため、不動産会社仲介を推奨します。
土地売買は手続きが複雑で法的リスクも高いため、不動産会社・司法書士・税理士等の専門家を活用して安全に進めることをおすすめします。複数社への査定依頼、境界確定測量の準備、専門家への相談予約を次のアクションとして検討しましょう。
