土地売却とは|売却の流れと全体像
土地を売却する際、「どこから手をつければいいのか」「費用や税金はいくらかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、土地売却の全ステップ(査定→媒介契約→売却活動→売買契約→決済・引渡し)を時系列で整理し、各段階で必要な書類・期間・費用を明示します。国税庁や国土交通省の公式情報を元に、譲渡所得税の計算方法と節税特例も具体例で解説します。
初めて土地を売却する方でも、失敗しないための重要なポイントを理解できるようになります。
この記事のポイント
- 土地売却は査定→媒介契約→売却活動→契約→決済の5ステップで、全体で4-8ヶ月程度かかる
- 費用は仲介手数料(売却価格×3%+6万円+消費税が上限)、測量費(30-80万円)、登記費用(1-3万円)が目安
- 税金は譲渡所得税で、短期譲渡(5年以下)39.63%、長期譲渡(5年超)20.315%
- 3000万円特別控除等の節税特例を活用できる場合がある
- 相続登記・境界確定・地下埋設物の確認がトラブル回避の鍵
土地売却の流れ(全5ステップ)
土地売却は以下の5ステップで進みます。
ステップ1: 査定(期間目安:1週間)
複数の不動産会社に査定を依頼し、売却価格の相場を把握します。査定は3-5社に依頼して比較することが推奨されます。
国土交通省の土地総合情報システムで実際の取引事例を確認し、事前に相場を把握しておくとスムーズです。
ステップ2: 媒介契約(期間目安:1日)
査定結果を比較し、信頼できる不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には以下の3種類があります。
| 媒介契約の種類 | 依頼先 | 自己発見取引 | 報告義務 | レインズ登録 | 
|---|---|---|---|---|
| 専属専任 | 1社のみ | 不可 | 週1回以上 | 5営業日以内 | 
| 専任 | 1社のみ | 可能 | 2週間に1回以上 | 7営業日以内 | 
| 一般 | 複数社可 | 可能 | 義務なし | 義務なし | 
(出典: 国土交通省)
売却期限がある場合は専任系、じっくり売りたい場合は一般媒介が適しています。
ステップ3: 売却活動(期間目安:3-6ヶ月)
不動産会社が広告掲載、現地案内、価格交渉等を実施します。専任媒介契約の場合、定期的に活動報告を受けられます。
ステップ4: 売買契約(期間目安:1日)
買主が決まったら、売買契約を締結します。手付金(売却価格の5-10%)を受け取り、重要事項説明を受けます。
ステップ5: 決済・引渡し(期間目安:1-2ヶ月)
残金を受け取り、所有権移転登記を行います。土地を引き渡して売却完了です。
全体で4-8ヶ月程度かかることを見込んでおきましょう。
土地売却にかかる費用と税金
土地売却では、費用と税金の両方が発生します。
売却にかかる費用
主な費用は以下の通りです。
| 費用項目 | 内容 | 金額目安 | 
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税(上限) | 100-200万円 | 
| 確定測量費 | 隣地所有者立会いのもと境界を確定 | 30-80万円(土地家屋調査士会による) | 
| 登記費用 | 抵当権抹消等の登記手続き | 1-3万円 | 
| 印紙税 | 売買契約書に貼付 | 1-3万円 | 
仲介手数料の計算式(売却価格×3%+6万円+消費税)は上限額であり、交渉可能です。
譲渡所得税の計算と税率
土地を売却して利益が出た場合、譲渡所得税(所得税+住民税)がかかります。
計算式:
- 譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用
- 課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 特別控除
- 税額 = 課税譲渡所得 × 税率
取得費は土地を購入したときの価格や諸費用(仲介手数料、登記費用等)です。不明な場合は概算取得費(売却価格の5%)を使用できますが、実額のほうが節税になります。
譲渡費用は仲介手数料、測量費、登記費用等です。
税率は所有期間によって異なります。
| 所有期間 | 区分 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | 
|---|---|---|---|---|---|
| 5年以下 | 短期譲渡 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% | 
| 5年超 | 長期譲渡 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% | 
(出典: 国税庁)
所有期間は売却年の1月1日時点で判定します。例:2019年4月購入→2024年5月売却の場合、2024年1月1日時点で4年9ヶ月のため短期譲渡となります。
特別控除の活用
居住用財産(自宅の土地)を売却した場合、以下の特例を活用できる可能性があります。
- 3000万円特別控除:譲渡所得から最大3000万円を控除(所有期間は不問だが、住まなくなって3年経過後の売却は適用外)
- 軽減税率の特例:所有期間10年超の自宅を売却した場合、課税譲渡所得6000万円以下の部分に税率14.21%を適用
詳細は国税庁のWebサイトで確認してください。
査定から媒介契約まで
複数社査定の重要性
査定価格は不動産会社によって異なります。1社のみの査定では適正価格を判断できません。
査定依頼のポイント:
- 3-5社に依頼して比較
- 国土交通省の土地総合情報システムで相場を事前確認
- 査定根拠(周辺の成約事例、土地の特性等)を確認
媒介契約の種類と選び方
媒介契約は専属専任・専任・一般の3種類があります。
選び方の目安:
- 専属専任・専任:1社に集中して売却活動を依頼したい、報告義務で進捗を把握したい、売却期限がある場合
- 一般:複数社に依頼して比較したい、じっくり売りたい場合
専任媒介契約では、不動産会社がレインズ(不動産流通機構の物件情報システム)に登録する義務があり、多くの買主候補に情報が届きます。
土地売却の注意点とよくあるトラブル
相続登記の義務化(2024年4月施行)
2024年4月に相続登記が義務化され、現在も適用されています。相続した土地は売却前に必ず登記を完了させる必要があります。
登記せずに放置すると、10万円以下の過料が課される可能性があります。司法書士に依頼して早めに登記してください。
境界確定測量の必要性
境界が未確定のまま売却すると、買主とのトラブルや売買契約解除のリスクがあります。
確定測量のポイント:
- 隣地所有者の立会いのもと境界を確定
- 費用は30-80万円が目安
- 測量図を作成し、境界標を設置
境界確定により、安心して売却できます。
地下埋設物・土壌汚染のリスク
地下埋設物(古い基礎、浄化槽、廃材等)や土壌汚染が売却後に発覚すると、契約不適合責任を追及される可能性があります。
対策:
- 事前に地歴調査(過去の土地利用状況を調査。費用は5-10万円程度)や土壌調査を実施
- 告知義務を怠らない(知っている事実は必ず買主に伝える)
- 契約不適合責任の範囲を契約書で明確化
売却以外の選択肢(活用・寄付)
土地を売却せずに活用する方法もあります。
活用方法:
- 賃貸(駐車場、資材置き場等)
- 太陽光発電設備の設置
- 農地として利用
売却が困難な土地(再建築不可、法令制限、立地不良)は、自治体への寄付や相続土地国庫帰属制度の活用も選択肢です。
ただし、寄付は自治体が受け入れるとは限らず、国庫帰属は審査と負担金(10-20万円程度)が必要です。
まとめ|土地売却で失敗しないために
土地売却は査定→媒介契約→売却活動→契約→決済の5ステップで、全体で4-8ヶ月程度かかります。費用は仲介手数料・測量費が主で、税金は譲渡所得税(短期39.63%、長期20.315%)です。
相続登記の義務化、境界確定、地下埋設物の確認がトラブル回避の鍵となります。複数社に査定を依頼し、相場を把握した上で信頼できる不動産会社を選びましょう。
税金や法的な手続きに不安がある場合は、税理士や司法書士等の専門家に相談することをおすすめします。
