土地購入の全体像:必要な費用と流れ
注文住宅を建てるために土地を購入したいと考えているけれど、「何から始めればいいのか」「どれくらい費用がかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、土地購入の流れ、必要な費用・税金、失敗しない土地選びのポイントを、国土交通省・国税庁の公式情報を元に解説します。
初めて土地を購入する方でも、総費用の目安と注意すべきポイントを正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 土地購入の総費用は、土地代金+諸費用(一般的に土地価格の7-10%)が目安
- 諸費用には仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、測量費、地盤調査費等が含まれる
- 土地選びでは用途地域・接道義務・ライフライン・地盤調査等の確認が必須
- 接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接道)を満たさないと原則建築不可
- 契約前の重要事項説明で、都市計画・建築制限・契約不適合責任の範囲を必ず確認すること
土地購入の全体の流れ:予算設定から引渡しまで
土地購入は、以下の7つのステップで進みます。全体のスケジュールは通常3~6ヶ月程度です。
| ステップ | 内容 | 所要期間 | 
|---|---|---|
| ①予算設定 | 土地代+諸費用+建築費+外構費の総額を算出 | 1~2週間 | 
| ②エリア選定 | 通勤・通学、生活利便性、将来性を考慮 | 2~4週間 | 
| ③物件探し | 不動産サイト、仲介会社で候補を絞り込む | 4~8週間 | 
| ④現地確認 | 用途地域、接道、地盤、周辺環境を確認 | 1~2週間 | 
| ⑤重要事項説明 | 宅建士から都市計画・建築制限等の説明を受ける | 1日 | 
| ⑥売買契約 | 契約書を締結し、手付金(一般的に5-10%)を支払う | 1日 | 
| ⑦決済・引渡し | 残金決済と所有権移転登記を実施 | 契約から1~2ヶ月 | 
注文住宅を建てる場合は、土地購入後に建築確認申請→着工→完成という流れが続きます。土地購入から入居までは、通常1年~1年半程度を見込んでおくと良いでしょう。
土地購入にかかる費用・税金の総額
土地代金以外の諸費用(一般的に土地価格の7-10%)
土地購入の総費用は、土地代金だけではありません。以下の諸費用が必要になります。
諸費用の目安: 一般的に土地価格の7~10%
例えば、土地価格が3,000万円の場合、諸費用は210万円~300万円程度が目安です。
仲介手数料(土地価格×3%+6万円+消費税)
不動産会社に支払う仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限が定められています。
仲介手数料の上限:
- 土地価格が400万円超の場合:(土地価格 × 3% + 6万円)× 1.1(消費税)
計算例(土地価格3,000万円の場合):
(3,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 105.6万円
売主から直接購入する場合(仲介業者を介さない場合)は、仲介手数料は不要です。
登録免許税・不動産取得税
登録免許税(所有権移転登記時):
- 税率:固定資産税評価額 × 2.0%
- 2025年時点では2026年3月31日まで軽減措置あり:1.5%
計算例(固定資産税評価額2,000万円の場合):
2,000万円 × 1.5% = 30万円
不動産取得税(土地取得時):
- 税率:固定資産税評価額 × 3%
- 2027年3月31日まで軽減措置あり:1.5%
- 住宅用地の場合、さらなる軽減措置がある場合があります
計算例(固定資産税評価額2,000万円の場合):
2,000万円 × 1.5% = 30万円
(出典: 国土交通省)
固定資産税評価額は、実勢価格(市場価格)の約70%が目安です。毎年送付される固定資産税納税通知書で確認できます。
印紙税・融資手数料
印紙税(売買契約書に貼付):
| 契約金額 | 印紙税額(軽減措置適用) | 
|---|---|
| 500万円超~1,000万円以下 | 5,000円 | 
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 1万円 | 
| 5,000万円超~1億円以下 | 3万円 | 
(2027年3月31日まで軽減措置適用)
融資手数料(住宅ローンを利用する場合):
- 事務手数料:借入額の1~3%または定額3~5万円程度
- 保証料:借入額の0.5~2%程度(または金利に上乗せ)
- ローン契約書の印紙税:借入額により異なる(1,000万円超~5,000万円以下で2万円)
計算例(借入額2,500万円、事務手数料2%の場合):
2,500万円 × 2% = 50万円
測量費・地盤調査費
測量費(境界確定測量):
- 費用:10万円~30万円程度
- 隣地との境界が未確定の場合に必要
- 土地家屋調査士に依頼します
地盤調査費:
- スウェーデン式サウンディング試験:5万円~10万円程度
- 建築前に必須の調査です
- 弱い地盤の場合は地盤改良費(数十万円~数百万円)が別途必要になる可能性があります
諸費用の一覧表
| 項目 | 目安額(土地価格3,000万円の場合) | 
|---|---|
| 仲介手数料 | 105.6万円 | 
| 登録免許税 | 30万円 | 
| 不動産取得税 | 30万円 | 
| 印紙税(売買契約) | 1万円 | 
| 融資手数料・保証料 | 50万円~75万円 | 
| 司法書士報酬 | 5万円~10万円 | 
| 測量費 | 10万円~30万円 | 
| 地盤調査費 | 5万円~10万円 | 
| 合計 | 236.6万円~291.6万円 | 
諸費用は土地価格の約8~10%となります。
失敗しない土地選びのチェックリスト
土地選びでは、以下の10項目を必ず確認しましょう。確認を怠ると、「建てられない土地」を購入してしまうリスクがあります。
用途地域・建ぺい率・容積率
用途地域は、都市計画法で定められた13種類の地域区分です。建築できる建物の種類や建ぺい率・容積率が異なります。
| 用途地域の種類 | 建築制限の例 | 
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 住宅・小中学校等のみ。店舗・事務所は原則不可 | 
| 第一種住居地域 | 住宅・店舗(3,000㎡以下)等が可能 | 
| 商業地域 | ほぼ全ての建物が可能。風俗営業も一部可 | 
| 工業専用地域 | 住宅は建築不可 | 
建ぺい率: 敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見た面積)の割合の上限。用途地域ごとに30~80%が定められています。
容積率: 敷地面積に対する延べ床面積(全階の床面積の合計)の割合の上限。用途地域ごとに50~1300%が定められています。
計算例(敷地面積150㎡、建ぺい率60%、容積率200%の場合):
- 建築面積の上限:150㎡ × 60% = 90㎡
- 延べ床面積の上限:150㎡ × 200% = 300㎡(例:1階90㎡、2階90㎡、3階90㎡等)
用途地域は、市町村の都市計画課で確認できます。インターネット上の「都市計画情報提供サービス」でも確認可能です。
接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接道)
建築基準法では、建築物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければなりません(接道義務)。
これを満たさない土地は、原則として建築できません(再建築不可物件)。
注意点:
- 幅員4m未満の道路の場合、セットバック(道路の中心線から2m後退)が必要になる場合があります
- セットバック部分は建築面積に算入できません
- 私道の場合、通行・掘削の承諾が必要な場合があります
接道義務の確認は、不動産会社または市町村の建築指導課で行いましょう。
上下水道・ガスの引込状況
土地に上下水道・ガスが引き込まれているか確認が必要です。引き込みがない場合、引込工事費用(数十万円~数百万円)が別途必要になります。
| ライフライン | 引込工事費用の目安 | 
|---|---|
| 上水道 | 30万円~100万円 | 
| 下水道 | 50万円~150万円 | 
| ガス(都市ガス) | 20万円~50万円 | 
下水道が整備されていない地域の場合、浄化槽の設置(100万円~150万円程度)が必要になります。
地盤調査・ハザードマップ
地盤調査:
建築前に地盤調査は必須です。弱い地盤の場合は地盤改良工事(数十万円~数百万円)が必要になります。
- スウェーデン式サウンディング試験:5万円~10万円
- 地盤改良工事(表層改良):30万円~80万円
- 地盤改良工事(柱状改良):80万円~150万円
- 地盤改良工事(鋼管杭):150万円~300万円
ハザードマップ:
市町村が公表するハザードマップで、洪水・土砂災害・地震等のリスクを確認しましょう。
- 国土交通省ハザードマップポータルサイトで全国のハザードマップを確認できます
境界確定の有無
隣地との境界が確定しているか確認が必要です。境界未確定の土地は、以下のリスクがあります。
- 隣地所有者とのトラブル
- 住宅ローンの審査で不利になる可能性
- 将来売却する際に支障が出る可能性
境界確定測量(10万円~30万円)を実施し、隣地所有者の立会いのもとで境界を確定することをおすすめします。
周辺環境・日照・風通し
その他、以下の点も確認しましょう。
- 周辺環境:騒音、悪臭、治安、嫌悪施設の有無
- 日照:南側に高い建物がないか、将来建つ可能性はないか
- 風通し:夏場の風向き、冬場の寒風
- 形状・高低差:不整形地や高低差がある場合、建築コストが増加
- 将来の資産価値:人口動態、駅・商業施設の計画
現地には、平日・休日・昼・夜の異なる時間帯に複数回訪問することをおすすめします。
用途地域・建ぺい率・容積率・接道義務の確認方法
用途地域13種類と建築制限
用途地域は13種類に分類され、それぞれ建築できる建物の種類が異なります。
住居系(8種類):
- 第一種低層住居専用地域:住宅、小中学校等のみ
- 第二種低層住居専用地域:住宅、小中学校、150㎡以下の店舗等
- 第一種中高層住居専用地域:住宅、病院、大学、500㎡以下の店舗等
- 第二種中高層住居専用地域:住宅、病院、大学、1,500㎡以下の店舗等
- 第一種住居地域:住宅、3,000㎡以下の店舗・事務所等
- 第二種住居地域:住宅、10,000㎡以下の店舗・事務所、パチンコ店等
- 準住居地域:住宅、店舗、事務所、自動車関連施設等
- 田園住居地域:住宅、農業関連施設等
商業系(2種類):
- 近隣商業地域:住宅、店舗、小規模工場等
- 商業地域:ほぼ全ての建物が可能
工業系(3種類):
- 準工業地域:住宅、工場、危険性の少ない工場等
- 工業地域:工場中心、住宅も可(学校・病院・ホテル不可)
- 工業専用地域:工場のみ(住宅は建築不可)
建ぺい率・容積率の計算方法
建ぺい率の計算:
建築面積 ≦ 敷地面積 × 建ぺい率
容積率の計算:
延べ床面積 ≦ 敷地面積 × 容積率
計算例(敷地面積200㎡、建ぺい率50%、容積率100%の場合):
- 建築面積の上限:200㎡ × 50% = 100㎡
- 延べ床面積の上限:200㎡ × 100% = 200㎡
この場合、例えば1階100㎡、2階100㎡の2階建て住宅が建築可能です。
接道義務とセットバック
接道義務: 幅員4m以上の道路に2m以上接していること
セットバック: 幅員4m未満の道路の場合、道路の中心線から2m後退すること
セットバック例:
幅員3mの道路の場合、道路の中心線から2m後退する必要があります。敷地側に1m後退(3m + 1m = 4m)することで、道路幅員を4mに確保します。セットバック部分は、建築面積に算入できません。
市町村の都市計画課で確認
用途地域・建ぺい率・容積率・接道義務は、市町村の都市計画課で確認できます。
確認方法:
- 市町村のウェブサイトで「都市計画情報提供サービス」を検索
- 地図上で対象の土地を選択
- 用途地域・建ぺい率・容積率・道路幅員等が表示されます
または、市町村の窓口で「都市計画図」を閲覧することもできます。不明な点は、窓口で相談しましょう。
重要事項説明と売買契約の注意点
重要事項説明で確認すべきポイント
売買契約の前に、宅地建物取引士から「重要事項説明」を受けます。以下のポイントを必ず確認しましょう。
確認すべき主な内容:
- 都市計画・建築制限: 用途地域、建ぺい率、容積率、接道義務、高さ制限等
- ライフライン: 上下水道、ガス、電気の引込状況
- 契約不適合責任: 土壌汚染、地中埋設物、境界未確定等の免責範囲
- 法令上の制限: 農地法、文化財保護法、土地区画整理法等の適用の有無
- 私道負担: 私道部分の面積、通行・掘削の承諾の有無
- 手付金の扱い: 金額、保全措置の有無、手付解除の期限
重要事項説明書は事前にコピーをもらい、疑問点を整理してから説明を受けることをおすすめします。
契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)の範囲
2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。
契約不適合責任:
引き渡された土地が契約内容に適合しない場合(土壌汚染、地中埋設物、境界未確定等)、買主は売主に対して修補請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができます。
注意点:
- 土地の売買では、契約不適合責任を免責する特約が付されることが多い
- 免責範囲が広すぎる場合は、交渉して狭めることも検討しましょう
- 特に土壌汚染や地中埋設物については、調査費用の負担や発見時の対応を明記するよう交渉することをおすすめします
手付金の扱いと契約解除
手付金: 売買契約時に買主が売主に支払う金銭で、一般的に売買代金の5~10%です。
手付解除:
- 買主からの解除:手付金を放棄すれば契約解除可能
- 売主からの解除:手付金の倍額を買主に支払えば契約解除可能
- 手付解除の期限:契約書に明記された期限まで(通常は契約から1~2週間程度)
手付解除の期限を過ぎた後の契約解除は、違約金(売買代金の10~20%)が発生する可能性があるため、注意が必要です。
土地の引渡し時期
土地の引渡し時期は、売買契約書に明記されます。通常は契約から1~2ヶ月後です。
引渡し時には、以下の手続きが行われます。
- 残代金の決済(売買代金 - 手付金)
- 所有権移転登記(司法書士が代行)
- 鍵・測量図・境界確認書等の引渡し
- 固定資産税の精算(引渡し日で日割り計算)
引渡し日に住宅ローンの融資実行が間に合うよう、金融機関と事前にスケジュールを調整しましょう。
まとめ:専門家への相談で安全な土地購入を
土地購入は、予算設定→エリア選定→物件探し→現地確認→重要事項説明→売買契約→決済・引渡しの7ステップで進みます。全体のスケジュールは通常3~6ヶ月です。
諸費用は一般的に土地代金の7~10%を見込む必要があります。仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、測量費、地盤調査費等が含まれます。
土地選びでは、用途地域・接道義務・ライフライン・地盤調査・境界確定等の法的チェックが必須です。これらを怠ると、「建てられない土地」を購入してしまうリスクがあります。
契約前の重要事項説明では、都市計画・建築制限・ライフライン・契約不適合責任の範囲を必ず確認しましょう。
不動産会社・司法書士・土地家屋調査士・建築士等の専門家に相談しながら、失敗しない土地購入を実現してください。
