土地の生前贈与|2024年改正後の税負担を徹底比較

公開日: 2025/10/26

土地の生前贈与とは?2024年税制改正のポイント

相続対策として「生前贈与」を検討する際、「本当に税金面で得なのか」「どの方法を選ぶべきか」と迷う方は少なくありません。

この記事では、土地の生前贈与の方法、贈与税・相続税の違い、節税効果を、国税庁の公式情報を元に解説します。

2024年1月の税制改正で暦年贈与の持ち戻し期間が7年に延長されたため、最新の制度を正しく理解することが重要です。

この記事のポイント

  • 2024年1月から暦年贈与の持ち戻し期間が3年→7年に延長
  • 生前贈与の方法は暦年贈与・相続時精算課税・配偶者控除の3種類
  • 税負担面では相続が有利なケースが多い(登録免許税0.4%、不動産取得税非課税、小規模宅地等の特例)
  • 生前贈与が有利なのは将来値上がりが見込まれる土地等の限定的なケース

土地の生前贈与の3つの方法

土地の生前贈与には、主に3つの方法があります。

暦年贈与(年110万円の基礎控除)

国税庁によると、暦年贈与は1年単位(1月1日〜12月31日)で区切って贈与税を計算する方法です。

年110万円の基礎控除があり、この範囲内なら贈与税が非課税です。ただし、相続開始前7年以内(2024年1月改正後)の贈与は相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。

相続時精算課税制度(2500万円+110万円)

国税庁によると、相続時精算課税制度は、生前贈与時に2500万円まで贈与税非課税とする制度です。

2024年1月から基礎控除110万円が追加されたため、毎年110万円までは相続財産に加算されません。ただし、相続時に贈与財産を相続財産に加算して精算するため、最終的な税負担は相続税と同等になります。

配偶者控除の特例(2000万円)

婚姻期間20年以上の配偶者に居住用不動産を贈与する場合、2000万円まで贈与税が非課税となります。ただし、同じ配偶者からの贈与は一度のみ適用可能です。

3つの方法の比較

方法 非課税枠 持ち戻し期間 適用対象
暦年贈与 年110万円 7年 誰でも
相続時精算課税 2500万円+年110万円 全期間(110万円超の分) 60歳以上の親・祖父母→18歳以上の子・孫
配偶者控除 2000万円 なし 婚姻期間20年以上の配偶者

(出典: 国税庁

生前贈与と相続の税負担を比較

税負担面では、相続の方が有利なケースが多いです。

贈与税と相続税の税率比較

贈与税の税率は、暦年贈与の場合、贈与額に応じて10-55%の累進課税です。一方、相続税は基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人数)があり、多くのケースで非課税または低税率で済みます。

登録免許税・不動産取得税の違い

国税庁によると、登録免許税は贈与で2%、相続で0.4%と5倍の差があります。

項目 贈与 相続
登録免許税 固定資産税評価額の2% 固定資産税評価額の0.4%
不動産取得税 土地3%(2027年3月31日まで軽減) 非課税

(出典: 国税庁

例えば、固定資産税評価額2000万円の土地なら、贈与で登録免許税40万円+不動産取得税60万円=計100万円かかりますが、相続なら登録免許税8万円のみで済みます。

小規模宅地等の特例は相続のみ

小規模宅地等の特例は、相続時のみ適用可能です。居住用宅地なら330㎡まで80%減額されるため、評価額を大幅に圧縮できます。

生前贈与ではこの特例が使えないため、税負担が重くなる可能性があります。

生前贈与が有利なケース・不利なケース

有利なケース(将来値上がりが見込まれる土地)

税理士法人チェスターによると、生前贈与が有利なのは以下のケースです。

  • 将来値上がりが見込まれる土地: 贈与時点の評価額で贈与すれば、値上がり分は相続財産に含まれない
  • 収益物件: 賃料収入が贈与後は受贈者に帰属するため、相続財産の増加を防げる
  • 生前の意思表示: 特定の相続人に確実に渡したい場合

不利なケース(税負担が相続より重い)

税負担面では、相続の方が有利なケースが多いです。

  • 登録免許税・不動産取得税の負担(相続の5-10倍)
  • 小規模宅地等の特例が使えない
  • 基礎控除後の贈与税率が高い(10-55%)

具体的な数値例で比較すると、評価額2000万円の土地を子に渡す場合、贈与では登録免許税40万円+不動産取得税60万円+贈与税(暦年贈与なら約500万円)=計600万円かかりますが、相続なら登録免許税8万円+相続税(基礎控除内なら0円)=計8万円で済む可能性があります。

土地の生前贈与にかかる3つの税金と手続き

生前贈与には、贈与税・登録免許税・不動産取得税の3つの税金がかかります。

贈与税

暦年課税または相続時精算課税を選択します。暦年課税の場合、年110万円を超える贈与は贈与税の申告が必要です。

登録免許税(2%)

所有権移転登記時に、固定資産税評価額の2%を納付します。司法書士に依頼する場合、報酬として5-10万円程度が別途かかります。

不動産取得税(土地3%、2027年3月31日まで)

横浜相続税相談窓口によると、不動産取得税は土地3%(2027年3月31日まで軽減税率)です。

軽減税率の期限切れ後は4%に戻る可能性があるため、最新情報を確認してください。

手続きの流れ

  1. 贈与契約書の作成
  2. 登記申請(法務局)
  3. 贈与税の申告(翌年2月1日〜3月15日)
  4. 不動産取得税の納付(都道府県から納税通知書が届く)

まとめ

税負担面では相続が有利なケースが多いですが、生前贈与にも意義があります(将来値上がりが見込まれる土地、生前の意思表示等)。

2024年の税制改正で持ち戻し期間が7年に延長されたため、早めの計画が重要です。

個別具体的な判断は、税理士への相談をおすすめします。

よくある質問

Q1110万円以下の土地なら贈与税はかかりませんか?

A1暦年贈与の基礎控除(年110万円)は贈与税に対するものです。登録免許税(2%)と不動産取得税(3%)は贈与額に関わらず課税されます。例えば、評価額2000万円の土地なら、贈与税が非課税でも登録免許税40万円+不動産取得税60万円=計100万円かかります。

Q2生前贈与した土地は遺留分の対象になりますか?

A2なります。民法上、相続開始前10年以内の贈与は遺留分の計算に含まれます。特別受益として持ち戻される可能性があるため、他の相続人との関係に注意が必要です。贈与契約書に遺留分に関する特約を記載することも検討しましょう。

Q3相続時精算課税を選択すると暦年贈与に戻せますか?

A3戻せません。一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与は全て相続時精算課税が適用され続けます。慎重な判断が必要です。適用前に税理士に相談することをおすすめします。

Q4不動産取得税の軽減税率はいつまで適用されますか?

A4土地の不動産取得税は2027年3月31日まで3%の軽減税率が適用されます。期限切れ後は4%に戻る可能性があるため、贈与を検討している場合は期限前の実行を検討しましょう。最新情報は都道府県の税務課にご確認ください。