土地の買い取りとは?仲介との違いを理解する
土地を売却する際、「買取」と「仲介」の二つの方法があることをご存知でしょうか。相続で土地を譲り受けたが使い道がない、すぐに現金化したいが仲介では時間がかかる、再建築不可の土地で仲介では売りにくい――このような悩みを抱える方にとって、「買取」は有力な選択肢の一つです。
この記事では、土地買取と仲介の違い、買取のメリット・デメリット、買取が適しているケース、業者選びの注意点を、国土交通省・国税庁の公式情報を元に解説します。
読了後、自分の土地に最適な売却方法を判断できるようになります。
この記事のポイント
- 買取は不動産会社が土地を直接購入する方法で、仲介より早く確実に売却できる
- 買取価格は市場価格の60-80%程度が相場だが、スピード・確実性・瑕疵担保免責のメリットがある
- 相続で急ぎ、再建築不可等の訳あり土地、仲介で売れなかった土地には買取が向いている
- 悪徳業者を避けるため、宅建業免許の確認・複数査定の実施・原野商法の二次被害に注意が必要
- 買取後の税金(譲渡所得税)は所有期間5年超で約20%、5年以下で約39%
仲介と買取の違いを比較(スピード・価格・手数料)
土地売却の「仲介」と「買取」は、売却の仕組みが根本的に異なります。仲介は不動産会社が売主と買主を仲介して取引を成立させる方法で、買取は不動産会社が土地を直接購入する方法です。
この違いにより、スピード・価格・手数料・確実性・瑕疵担保責任の5つの点で大きな差が生じます。以下の表で比較します。
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| スピード | 3-6ヶ月 | 数日-1ヶ月 |
| 価格 | 市場価格(100%) | 市場価格の60-80%程度(不動産買取業界調査) |
| 手数料 | 物件価格×3%+6万円+消費税 | 不要 |
| 確実性 | 買主が見つからない可能性あり | 確実に売却可能 |
| 瑕疵担保責任 | 売主負担(土壌汚染等の発見時) | 免責(契約書で定める) |
(参考: HOME4U)
仲介のメリット・デメリット
仲介のメリットは、市場価格(100%)で売却できる可能性が高い点です。立地が良く需要のある土地であれば、複数の買主候補が現れ、価格交渉で有利に進められることもあります。
デメリットは、買主が見つかるまでに3-6ヶ月かかる点と、仲介手数料(物件価格×3%+6万円+消費税)が発生する点です。また、売却後に土壌汚染や地中埋設物が発見された場合、売主が瑕疵担保責任(契約不適合責任)を負うリスクもあります。
買取のメリット・デメリット
買取のメリットは、スピード(数日-1ヶ月で売却可能)と確実性(買主を探す必要がない)、瑕疵担保責任の免責(契約書で定める)、仲介手数料が不要な点です。相続で急ぎ現金化したい、訳あり土地で仲介では売りにくい場合に有効です。
デメリットは、買取価格が市場価格の60-80%程度に下がる点です。買取業者は土地を再販するため、利益分・リスク分を差し引いた価格で買取ります。高く売りたい場合は仲介を検討すべきですが、スピード・確実性を優先する場合は買取が適しています。
買取が向いているケース・向いていないケース
買取は全ての土地に適しているわけではありません。自分の状況に合わせて、仲介か買取かを選ぶ必要があります。
買取が向いているケース(急ぎ・相続・訳あり土地)
以下のケースでは買取が向いています。
- 相続で急いで現金化したい: 相続税の納税期限(相続開始から10ヶ月以内)が迫っている場合、仲介では間に合わない可能性がある
- 再建築不可・接道義務違反等の訳あり土地: 建築基準法の要件を満たさず、仲介では買主が見つかりにくい土地
- 仲介で売れなかった土地: 数ヶ月間仲介で売却活動をしたが買主が現れなかった土地
- 瑕疵(土壌汚染・地中埋設物等)がある土地: 仲介では瑕疵担保責任を負うが、買取では免責となる契約が可能
- 近隣に知られずに売却したい: 仲介では広告を出すが、買取では秘密裏に取引できる
買取が向いていないケース(高く売りたい・時間に余裕)
以下のケースでは仲介を検討すべきです。
- 時間に余裕があり高く売りたい: 買取より仲介の方が20-40%高く売れる可能性がある
- 立地が良く買主が見つかりやすい土地: 駅近・人気エリアの土地は仲介で早く売れる傾向
土地買取の流れと契約時の注意点
買取の流れを4ステップで解説します。
買取の流れ4ステップ
- 査定依頼: 複数の買取業者に一括査定を依頼。最低3社以上に依頼し、価格を比較
- 現地調査: 買取業者が現地を確認し、査定価格を提示。境界確定の有無・残置物の有無等を確認
- 価格交渉: 複数社の査定価格を比較して最も高い業者と交渉。査定価格に残置物処分費・測量費が含まれるか確認
- 売買契約: 契約書を締結し決済・引き渡し。数日-1ヶ月で完了
契約時の注意点(費用の範囲・追加費用請求)
契約前に以下の点を確認することで、買取後の追加費用請求トラブルを防げます。
- 買取価格に何が含まれるか: 残置物処分費・境界確定測量費・建物解体費等が買取価格に含まれるか明確化
- 瑕疵担保責任の免責範囲: 土壌汚染・地中埋設物が発見された場合の責任の所在を契約書で確認
- 契約解除の条件: 買取業者都合でキャンセルされる可能性があるか確認
買取後の税金(譲渡所得税)
土地を買取で売却した場合、譲渡所得税がかかります。譲渡所得は、売却価格から取得費・譲渡費用を引いた利益です。
国税庁によると、税率は所有期間により異なります。
- 所有期間5年超(長期譲渡): 約20%(所得税15.315%+住民税5%)
- 所有期間5年以下(短期譲渡): 約39%(所得税30.63%+住民税9%)
取得費が不明な場合、売却価格の5%を取得費として計算できる特例があります。詳細は国税庁の公式サイトをご確認ください。
信頼できる買取業者の選び方と悪徳業者の見分け方
買取業者選びは慎重に行う必要があります。悪徳業者に騙されないための3つのポイントを解説します。
宅建業免許の確認方法(国土交通省のサイトで確認)
買取業者は宅地建物取引業法により宅建業免許を取得する義務があります。国土交通省のサイトで免許番号・更新回数を確認しましょう。
免許番号の見方は「東京都知事(5)第○○号」のように表示されます。括弧内の数字は更新回数で、数字が大きいほど実績がある業者です(5年ごとに更新)。
複数査定の重要性(1社だけでは価格が適正か判断できない)
1社だけの査定では、価格が適正か判断できません。最低3社以上に査定依頼し、最も高い価格を提示した業者と交渉することが重要です。
査定価格に大きな差がある場合(例: A社500万円、B社800万円)、理由を確認しましょう。不動産買取業者により、再販戦略や評価基準が異なるため、このような差が生じることがあります。A社が安すぎるのか、B社が高すぎるのかを判断する材料になります。
原野商法の二次被害に注意(「土地を買い取ります」は詐欺の可能性)
政府広報オンラインによると、原野商法の二次被害が増加しています。原野商法とは、価値のない原野を「将来値上がりする」と偽って販売する詐欺です。
二次被害の手口は、「あなたの土地を買い取ります」と勧誘し、別の土地を買わされたり、調査費・測量費を請求されるケースです。以下の特徴に該当する業者は詐欺の可能性が高いため注意してください。
- 「どんな土地でも高価買取」と断定する
- 突然訪問・電話で「土地を買い取ります」と勧誘
- 「この地域は将来値上がりする」と根拠なく説明
- 調査費・測量費を先に請求する
地方自治体による土地買取(公拡法)も検討する
民間の買取業者以外に、地方自治体が土地を買い取る制度もあります。公拡法(公有地の拡大の推進に関する法律)により、一定規模以上の土地を売却する際、地方自治体に買取の機会を与える制度です。
対象となる土地は、市街化区域内2000㎡以上、市街化調整区域内5000㎡以上の土地です。地方自治体が公共施設・道路等の用地として必要とする場合に買い取ってもらえる可能性があります。
ただし、買取価格は不動産鑑定士の評価額となり、買取業者より低くなることが多い点に注意してください。手続きは、土地所在地の市区町村役場に届出を提出し、自治体の回答(買取希望の有無)を待ちます。
まとめ:買取は価格より確実性・スピードを優先する選択
土地の買い取りは、仲介より価格が低くなる(市場価格の60-80%程度)が、スピード・確実性・瑕疵担保免責等のメリットがあります。相続で急ぎ、再建築不可等の訳あり土地、仲介で売れなかった土地には向いています。
複数の買取業者に査定依頼し、宅建業免許を確認し、契約前に費用の範囲を明確化することが重要です。原野商法の二次被害(「土地を買い取ります」と勧誘し騙す)にも注意してください。
次のアクションとして、複数の買取業者に一括査定を依頼、宅建業免許の確認、地方自治体への相談(公拡法)を検討しましょう。信頼できる買取業者を選び、無理のない売却計画を立ててください。
